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月の女王 / 最終話(前編)


「うふふふふ、まさか、貴方から出向いてもらえるなんてね、嬉しいわ」
アルテミスが俺を魅了するかのように見つめる
「アポロンに何をした?」
その視線を意図的に無視して言わずもがなの質問をする俺
「ふふふ、分かってるくせに・・・、かつて貴方が体験した事と同じよ
彼は私に負けただけ、ただそれだけよ」
まるでペットに触るようにアポロンの頭をなでながら俺をかるくあしらう
「ガルルルルルルルルル・・・」
アポロンがマーキューリーをみて唸る
「そう、貴女が結衣ちゃんなのね・・・、いいのよアポロン、犯ってしまいなさい
そうすれば彼女はお前のものになるのよ」
アルテミスは目でマーキュリーを見ながらアポロンの耳元で優しく囁く
その冷たい目線とアポロンの狂気を孕んだ目線に俺たちは鳥肌が立つ
そんな俺たちを守るかのようにアテナが俺たちの前に出る
「彼は私が相手をするわ、貴方はアルテミスを・・・、って、え?ちょっと、結衣ちゃん?」
アテナを更に手で押しのけてマーキューリーがアポロンを見つめる
「お願い、お兄ちゃんは私にやらせて、というより私がやらなきゃダメなの」
「何言ってるのよ?近親相姦はダメでしょー?!」
アテナの相変わらずの発言に一気に場の緊張感がなくなる
「本当は皆知ってるんでしょ?私たちは本当の兄妹じゃないって だから大丈夫なの、ね、だからお願い」
無邪気に微笑みながらアテナに手を合わせて「お願い」と頼み込むマーキュリー、
その表情を見たアテナが困った表情で頭をポリポリと掻く
「はぁ〜、全くしょーがないわねー、もー好きにしなさい」
腰に手を当てて教師が生徒に説教をするように言い聞かせるアテナ
「任せてよ!」
「一応先に言っておいてあげるけど貴女とアポロンでは ただの強姦にしかならないわよ?
私は全然構わないけど・・・ いいえ、むしろそっちの方が好きなよね。」
少し未来の情景を思い浮かべたアルテミスが「クック」と笑う
「ご期待に添えるよう努力だけはしてみるわ」
その言葉を合図にマーキュリーから強烈な淫気が漂い始める
「貴女、一体・・・?」
淫気を感じ取ったアルテミスは眉をしかめる
同時に心配そうに見守る俺とアテナ
はっとして俺を見るアルテミス
「そう、貴方の犠牲者なの?彼女は、だから・・・」
「ぐるるるるるるるるるる」
獣と化してしまったマーキュリーはかつての兄であった獣へと襲い掛かっていった

それはSEXとは呼べないものだった
今まで互いを求めつつも許されなかった存在が本能の赴くままに貪りあう
人間の言葉を使わずにうなり声、叫び声のみが部屋に響き渡る
マーキュリーはいきなりアポロンを押し倒してモノを掴んですぐさま自分のモノへあてがい
挿入を行い、後先考えず全力で腰を振る
「おぉーーーーーーーーーーーーーーー」
アポロンというよりただの雄から狂喜の叫びが発せられる
ひとしきり叫んだ後、雌を突き上げて反撃を開始する
「おおぅ」
雌も喜びを隠さずに一言咆えて雄の胸板に手を乗せて姿勢を維持しつつ腰を振り続ける
この二人?二匹?の闘いが終わる前に俺も闘いを始めなければならない
俺達の秘策がアルテミスに分かってしまう前に・・・

「俺たちもそろそろ始めないか」
二人の痴態を楽しそうに眺めていたアルテミスへ話かける
「あら?貴方達はこの結果が気にならないのかしら?」
さも以外といわんばかりの表情で問いかけられる
「いいえ、全然。だって分かりきった結果の過程に興味なんかないわ
私が興味があるのは貴女が彼に負けたときの表情だけよ?」
アテナがアルテミスを挑発する
「ほら、貴方男なんだから女性をエスコートして
さっさと隣の部屋にでもいきなさいよ、甲斐性なしねー、本当に」
ドンっと背中を押されてアルテミスの前へ突き出される俺
美しいアルテミスの顔を改めて近距離でみてしまい、つい顔を赤らめてしまう
「じゃぁ、いこうぜ」
と、俺は照れ隠しで強引に彼女の手を引いて隣の部屋へ連れ込む
「アポロンは紳士的だったけど、貴方って見かけによらず強引なのね・・・
ふふ、でもそういうのって嫌いじゃないわ」
さらに赤面するような言葉で俺をからかうアルテミス
それを見たアテナが右手を顔にあてて天を仰いでいる
おそらく「oh、GOD・・・(だめだこりゃ)」とでも呟いているのだろう

「さぁ、始めましょう・・・」
ゆっくりと黒い衣装を脱ぎ始めたアルテミスが逆に俺を誘う
その脱ぎ方が優雅で艶かしい
ついつい見とれてしまう俺の腕を仏頂面のアテナがぐいっと引っ張る
「いい、分かってる?照れてる場合じゃないのよ?
貴方が負けたら全てがパァーになるのよ!もっと気合を入なさいよ!」
「あぁ、そうだな・・・」
なんとも冴えない返事をした俺の頬に突然ぱぁんという音と共に衝撃が走る
「ったいな!何するんだよ!?」
「どう?気合はいった?」
いきなり平手打ちを食らわせた俺に向かって平然とアテナが言う
この一発と一言で緊張がとれた事に気づいた俺は冗談で逆襲する
「あぁ、しっかりと。アン○ニオ○木顔負けの威力だったよ」
「・・・ばか」
逆に照れるアテナ
「最後、貴方は必ず帰ってくるのよ。何処でもない、私の所へ・・・」
今までとは打って変わって真剣な表情で俺を見つめるアテナ
「あぁ、必ず帰ってくる。だから任せとけ」
ごく自然な表情で微笑みかける俺に向かって
「よし、行って来い」と笑顔で送り出す彼女、その笑顔は以前みた女神の微笑みと同じで
“あぁ、俺はこの笑顔に惹かれたんだな・・・”と改めて認識してアルテミスへ向き合っていった


後編へ続く・・・
しばらく気がのらなかったのですがようやくこの話を完結させる気になりました。
長いので前編・後編に分けています。
これでも都合上大分いきさつを省いているので
展開上分かりにくいと思いますがご容赦ください。

今回も読んでくださいましてありがとうございます。
あともうちょっとだけお付き合いください
お願いします。

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