1683

太陽の王国4 進む者、流される者(後)

「あ、あなたたちは何者ですかっ!?」
 ボクはハンターのレオ。目の前でボクたちを見て警戒しているのは、ナイダさんっていう淫魔らしい。
 確かにすっごく美人だけど、委員さんの奥さんなのに、本当に淫魔なのかなぁ?
「お初にお目にかかります、カッツ委員夫人のナイダ様」
 そう言って格好良く一礼したのは、ボクと一緒にここに来たミューゼル隊長だ。
 ここは、カッツ委員の自宅。さすが委員さんの住んでいるところなだけあって大きな家なんだけど、その割に使用人とかが居ないのが少し変かなぁ。
「私の名はミューゼル。カッツ委員には日頃からお世話になっている者です」
「ミューゼル? ……!?」
 ナイダさんは垂れ目がちの瞳を大きく開いて、質素な服に包まれている自分の体を抱いた。
「おや、私のことはご存じで?」
「……主人から良く伺っています。とても優秀な方だとか」
「それは光栄です。どんな風に優秀か、お聞きしたことありますか?」
「…………」
「私は観察とかが得意でしてね。人間に偽装した淫魔なんかも、すぐに見抜けるんですよ。……ナイダさん?」
 ボクにもわかるほど、ナイダさんはびくびくしている。
 隊長からは淫魔だって聞いてるけど、なんだかちょっと可哀想だな。
「回りくどいのは嫌いなので、本題に入らせてもらいます。カッツ委員はハンター協会の幹部であり、その奥方であるあなたは淫魔。これが他人に知られたら大変なことになるのは、わかりますね?」
「……はい」
 ナイダさんは真っ青な顔で頷いた。
「お、お願いします。わたしを殺したいのなら、抵抗はしません。けれど主人だけは、あの人だけはどうか……」
 跪いて両手を木の床に着き、ナイダさんは懇願する。
 あまりにも一所懸命な姿に、ボクは思わず隊長の袖を引いた。
「隊長、なんとかしてあげられませんか……?」
「やれやれ。おまえが同情してどうする」
 隊長は苦笑して、ボクの頭をくしゃくしゃ乱暴に撫で回した。
 もー、すぐに子供扱いするんだからさ。
「さて、私もカッツ委員には恩があります。なにせ、私の師ですしね。しかし、私にも立場がある。はいそうですか、と見逃すわけにもいきません」
「それはわかります、けれど――」
「だから一つ、ゲームをしましょう」
 にやりと、隊長は心底意地の悪い笑みを浮かべた。
 ボクの背中を軽く押して、一歩前に押し出す。
「こいつは私の部下で、レオといいます。今から彼と戦ってもらいましょう。もちろんそちらは、全力でかかってきてくださって結構です」
「た、隊長ぉ……」
 この人、有名人だったカッツさんに勝った淫魔なんでしょ? 無茶だよぉ……。
 でも隊長は、見上げるボクの視線なんか全然無視して、ナイダさんに語り続ける。
「あなたがレオに勝てば私の部下が呪縛されるわけですから、お互いの弱味を握ったことになります。私も迂闊な行動は取れなくなってしまいますね」
 嘘だ……絶対嘘だ。いざとなったらボクを切り捨てるくせにぃ……。
 ああ、でもこんな酷い人についてこうと思ったボク自身がいけないのか。
「そして、レオがあなたに勝ったら……」
 隊長はわざとらしく言葉を切って、ナイダさんをじっと見た。
「淫魔のわたしは跡形もなく消えて、主人を追いつめるような証拠は無くなる……そういうことですか」
「さて、ね。ただ、私は今もカッツ委員を尊敬しています。最終的には、あの方にとって悪いことにはならないようにするつもりですよ」
「……わかりました。その勝負、お受けしましょう」
 ナイダさんは、瞳の色を懇願から決意へと染め変えた。さっきまでの弱々しい女性は消えて、一人の狩人が立ち上がる。
 ううっ、怖いなぁ、自信無いなぁ……。
「私は、人間・淫魔に関わらず、自分以外のものに対して覚悟を決められる人を尊敬します」
「約束を守って頂けるということですね?」
「誓って」
 この時ばかりは隊長は真剣な表情になった。
「ただし、勝負にはあまり時間をかけない方がよろしいですよ。第八遊撃隊は常に監視されています。我々を尾けてきた会長派のハンターが、事情を察知して踏み込んでこないとも限りませんので」
「っ……!」
 ナイダさんは緊張と焦りに、厚っぽい唇を噛み締めた。
 ……隊長、また嘘ばっかり。オスカーさんにそういう連中を抑えさせて、ばっちり撒いたくせに。
「では、そろそろ始めましょうか。……レオ、出番だぞ」
「……はぁい」
 気が進まないなぁ。ナイダさん可哀想だし、しかも強いんだろうし。
 けど、仕方ないか。ボクも覚悟を決めなくちゃ。隊長が目指す国は、こういう人が救われるような国なんだ。ボクのせいで、それを遅らせるわけにはいかない。
 ああ、でも自信無いなぁ……ナイダさん、凄くエッチな体してるしなぁ……。


 ナイダさんはゆっくりと服を脱ぎながら、全身から淫気を解放していく。
 染み一つ無い白い肌、大きなおっぱい、柔らかな曲線を描くお尻、むっちりとした太腿……
 ボクが思わずゴクリと喉を鳴らすと、ナイダさんは優しく微笑んだ。
「あら。こんなおばちゃんにも、興奮してくれるの?」
「お、おばちゃんだなんてそんな! す、凄く綺麗です!」
 確かに大人の魅力はたっぷりだけど、老けて見えるとかそんなことは全然無いよ!
「ふふ……こっちにいらっしゃい?」
 両腕を広げて、ナイダさんはボクを誘う。
「う、うん……」
 ボクはふらふらと歩き、彼女の目の前で足を止めた。頭一つ分の身長差があるため、ナイダさんの顔を見上げる。
「あら、どうしたの? ハンターさんなのに、かかってこないの?」
「え、えっと……」
 こんなに魅力的な人、迂闊に責めたらあっという間にイッちゃいそうだよぉ……。
「仕方のない子ね……」
 ナイダさんはバカにするでもなく、両手でボクの頬を包み込んだ。
 そして、紅く濡れ光る口で、ボクの唇をゆっくりと覆い尽くす。
「んー!?」
「んっ……」
 ナイダさんの舌が、ボクの舌の先端にキス。口内へぬるりと侵入してきて、じっくりと絡みついてくる。
 う、わぁ……! ボ、ボク、委員さんの奥さんと、キスしちゃってるよぉ!
「んっ、む、んっ……」
「んんっ、んんんっ!」
 唾液がじわりじわりと送り込まれて、ボクは抵抗も出来ずに飲むしかなかった。
 美味しい……頭がぼーっとしてきた……。
 さらに、ボクの口の中をナイダさんの舌が余すところなく舐め取る。ゆっくりとゆっくりと、嬲るようですらなく、むしろ子猫の毛繕いをする母猫のように。
「ふぁ……」
「ふむっ、ちゅっ……」
 ちゅるちゅるって、ボクの舌が吸い込まれ始めた。ボクはそれに引っ張られ、導かれるままにナイダさんの中へ誘われる。
 ナイダさんの潤んだ瞳が、何かを訴えかけている……あ、えっと、さっきボクがされたみたいに、ナイダさんのお口の中を舐めろってことなのかな。
 なんだろ……ボクはハンターなんだからこんなこと初めてじゃないのに、凄くドキドキする。
 そんな気持ちを抑え込みながら、ボクのベロはまずナイダさんの歯茎に軽く触れた。
「んっ……」
 そんなちょっとしたことで、ナイダさんの鼻から甘い息が漏れる。
 けど、多分これ演技だよね。ボクのキスなんかで、こんな人が本気で感じてくれるはずなんかないよ……。
 何となく落ち込みながら、ボクはナイダさんにされたみたいに、ナイダさんの舌に絡みついた……というより、しがみついた。
 ぬるぬる、ぬるぬるってして、ナイダさんがやったように上手に責められない。
「…………」
 ナイダさんは『仕方ないわね』とでも言いたげに目で笑い、ボクが動きやすいように舌の位置をずらしてくれる。
 根元を突っつき、頬裏を撫で、口蓋に触れる。その度にナイダさんは敏感に反応してくれるけど、これだってきっとボクの自信を無くさないようにしてくれているだけだ。
 そんなボクの気持ちに気付いたのか、ナイダさんはそっと唇を離した。
 ボクとナイダさんの間に唾液の梯子が伸びて、途切れる。その光景に、ボクはなんとなく寂しさを覚えた。
「ナイーブなのね、レオくんは」
 甘く低い声が、ボクの心を優しくくすぐる。
「でも、女は男の人に乱暴に奪われたいものなのよ」
「そんな、乱暴なんてボクには……」
「もっと自信を持って、ね?」
 ナイダさんは、ボクをしっとりと抱きしめた。
 ボクの顔がナイダさんの胸に挟まれる形になって、その、なんというか……
「今さら照れないの」
「は、はい……」
「わかる? わたしもドキドキしてるの」
 どくん、どくん、って、聞こえる。い、淫魔もそうなんだ。
 ナイダさんはボクの肩を押して、少しだけ体を離す。そして手を取って、自分の胸に押し当てた。
「わ、わっ」
「好きにしていいのよ」
「うん……」
 恐る恐る触ると、むにゅうって指が簡単に埋もれた。
 や、柔らかぁ……。
「どうしたの? もっと強くして……」
 ボクは無言で頷き、じわじわと力を入れる。
「んふ……」
 ナイダさんの熱い吐息がボクの髪を揺らし、ますますおっぱいを揉む指を押し込めた。
「あっ……ん、そう、もっと……」
 でも、あんまり強くしすぎると痛いだろうし……無理はしたくないなぁ。
 そう思っているのを見透かされたのか、ナイダさんは咎める視線でボクを見下ろしていた。
「遠慮はしちゃだめ、って言ったでしょう?」
「けど……」
「しょうがない子ね」
 彼女はボクのシャツに手を掛けて、ボタンを外し始めた。
「え、え?」
「じっとしてなさい。わたしが脱がせてあげるから」
 言われるままに身を任せ、あっという間に上半身を裸にさせられる。そして、ボクの薄い胸を包み込むような形で両手を当てた。
「レオくんも」
「え? あ、うん」
 同じように、ボクもナイダさんのおっぱい二つに手の平を引っ付ける。
 あっ、乳首が硬い……。
「わたしと同じようにしてね」
 言うと、ナイダさんはボクの胸をさわさわと揉むように触り始めた。ボクは言われた通りに、彼女の手の動きに合わせてナイダさんのおっぱいを弄ぶ。
 手に伝わるやわやわする感触が気持ちよくて、同時に自分の胸を触られる感触がなんだかボクを変な気分にする。
 まるでボク、女の子になったみたい……。
「そう、そうよ、優しく、時に強く……」
 こりこりってボクの乳首を摘みながら、耳元に息を吹きかけてくる。
「ああんっ」
 ボクも同じように乳首を転がすけど、頭がぼーっとして上手に出来ないよぉ。
「んっ……ふふ、どっちが女かわからないわね」
 ぎゅうっ! って力いっぱい乳首を捻った!
「くぅんっ!?」
「あはぁっ!」
 反射的にボクも同じことをしたので、二人一緒に悲鳴を上げる。
 やっ……凄いよ、びりびりってするよ!
「あっ、わたしもだめっ……」
 びゅるるるっ! ナイダさんのおっぱいから、白いお汁が噴き出した。
 わわっ! ボクの顔にびちゃびちゃかかっちゃったよ!
 なにこれ……さらさらしてるのに、ねっとり鼻の奥まで匂う。熟した果実みたいな、思わず食べちゃいたくなるような感じ。
「味わってみたいの?」
「え……?」
「甘えん坊さんは、ママのおっぱいが恋しいのかしら」
 ううっ……な、なんか凄く恥ずかしいよ。多分ボク、顔真っ赤だ。耳まで熱いもん。
「いいのよ。好きにしていいって言ったでしょ?」
「そ、それじゃ……」
 ボクはナイダさんの、大きく尖った赤い蕾を口に含んだ。
 じゅわぁ、っていっぱいに広がる濃い甘さに、たちまちボクは夢中になってちゅうちゅう吸い始める。
「ん……そうよ坊や、遠慮しないで……」
 ナイダさんがボクの頭を抱えて、まるでお母さんみたいに撫でてくれた。
 いいな……優しい人だな……。
 母乳が美味しくて、ナイダさんはあったかくて、ボクはどんどんおっぱいを吸うのにのめり込んでいく。
 そうだ、気持ちよくして上げたら、もっといっぱいお乳が出るかな?
 舌で乳首をころころ転がしてみる。
「あっ……!?」
 感じているような声。と共に、ボクの口の中に母乳がどんどん溢れてきた。
 そうだ、これでいいんだ。よーし、もっと頑張っちゃおう!
 じゅるじゅるって啜りながら、ベロで乳首をビンタするように叩く。
「ひぅっ!」
 歯を軽く押し当て、ちょっとずつ力を込めた。
「やぁっ……!」
 ぎゅうっ、って撫でていたボクの頭を抱きしめた。
 あっ、痛かったの!?
「ちがっ、やめないで、もっとして!」
 ええ!? でももっとって言っても、酷いことはしたくないよ……。
 ボクは痛くしたナイダさんの乳首を、舌で優しく労った。ボクの唾液と彼女の母乳を馴染ませて、ゆっくりゆっくり撫で回す。
「やっ、もどかしいのっ、切ないの……!」
 そ、そんなこと言われても、こっちの方がいい気がするし……。
 思い切り吸って、力任せに揉み嬲りたい気持ちは確かにある。ナイダさんは、ボクが何かする度に悶えるんだもの。
 けど、乱暴なのはやっぱり良くないよね。
「レオくん、坊や、焦らすなんて、悪い子……」
 こくっ、こくっ、と一口ごとに、母乳はボクの喉を焼いてお腹の中で暴れ回る。おちんちんにミルクがそのまま注ぎ込まれたみたいに、ボクのアレは痛いほどガチガチになっていた。
 苦しいよぉ……美味しいけど、辛いよぉ……
「ふっ、ん……あ、あら、こんなになっちゃって……」
 ナイダさんはめざとくボクの状態を察し、ズボンの上からボクのおちんちんを掴んだ。
「ああんっ」
「ごめんね、気付かずに。今、楽にしてあげるからね」
 ズボンに手を掛け、子供にするみたいに脱がそうとする。
「い、いいよ! それぐらい出来るよ!」
「服はわたしが脱がせたでしょ? いまさらじゃない」
 抵抗はやんわりと受け流されちゃった。ううっ、ボク、これでも一人前のハンターなのにさ……。
「あっ!?」
 びょん、って勢いよく飛び出したボクのおちんちんを見て、ナイダさんは目を丸くした。
 ハンター養成学校の先生が言うには、ボクのおちんちんはフリッツさんに次ぐ大きさと硬さがあるらしい。今まで何回か淫魔を倒したことがあるけど、彼女たちもずいぶんボクのおちんちんにびっくりしてたしなぁ。
「凄い、こんな……」
 まじまじと見つめ、感触を確かめるように手を這わせてくる。
「ナ、ナイダさぁん……」
「ご、ごめんなさいね」
 謝って、ナイダさんは手早くボクのズボンを全部脱がした。
「それにしても、本当に大きい……」
 息がかかるほどの近さで、じっくりと観察を始める。竿を軽く握って、亀頭を一舐め。
「ひゃぁん!」
「あら? これだけで、そんなよがってどうするの」
「で、でも、でもぉ!」
 びくんびくん脈打つボクのおちんちん。ナイダさんはおっぱいを前に持ってきた。
「ほら、坊やの好きなお乳を……」
 びゅるびゅる! おっぱいから沢山の母乳が噴き出す。おちんちんに降り掛かり、たちまち濡れ濡れになっちゃった!
「な、なにこれっ」
 熱い、おちんちんが熱いよ。もっともっと硬くなって、ドキドキして、ああんっ!
「やっ、ああっ、ナイダさん、ナイダさぁん!」
「……ママって呼んだら、楽にしてあげるわよ」
 ナイダさんの目つきが、何だかおかしいよ……ボクにさせてあげるって言った時と違って、凄くボクを食べたそうな感じになってるよ……。
「ママ、ママぁ!」
「っ……!」
 ぶるぶるって体を震わせてる……。
「ママお願い! ボクをどうにかしてぇ!」
「ええ……」
 ナイダさん……ママは反り返ってお腹にひっついてるボクのおちんちんを掴むと、おっきなおっぱいに挟み込んだ。
「柔らかい……」
「そうでしょう」
「ぬるぬるしてる……」
「もっとぬるぬるにしてあげる」
 唾を口から垂れ落として、ボクのおちんちんをいっぱいドロドロにしちゃってる……。
「さあ、動きなさい坊や」
「うんっ、うんっ」
 ボクは腰を前後させ始める。ぬるっ、ぬるっ、むにゅっ、むにゅっ、って、ああ……溶けちゃいそうだよ。
「まだまだよ。ママのおっぱいを犯すの」
「で、でも……」
「ほら……」
 ママは舌を伸ばして、ボクの亀頭にぎりぎり触れるようにした。
「頑張ったら、もっと気持ちよくなれるのよ?」
「う、うんっ」
 えいっ、って思い切りおちんちんを突き上げると、先っぽにママのベロが当たる。
「くぅんっ」
 ああっ、気持ちいい! やわやわする感触の後に、尿道ににゅるって突き刺さる!
 けど……
「うぅん、ママ、でも足りないよっ……!」
 気持ちいいのがゆっくりゆっくり来るから、いつまで経ってもイケない。同じところで足踏みしたままだよ。
「激しくしていいのよ? 坊やの思う通りにして」
「出来ないよっ、気持ちよくって、足ががくがくして」
 それに、そんな無理やりっぽくしたって、気持ちよくなれないよ。
「もう、本当に仕方ない子なんだから」
 呆れ半分、優しさ半分、欲情全部の潤んだ瞳でママはそう言った。
「ごめんね……」
「いいのよ。ほら、いくわよ」
 ママはおっきなおっぱいに両手を添えて、ぎゅっ! って真ん中に寄せる。
 たちまち、ボクのおちんちんはむにゅむにゅの柔らかいのでぐにゅぐにゅにされちゃった。
「あああぁ!」
「あらあら、そんな大きな声を出して……」
 妖艶に笑いながら、ママは胸を左右互い違いにこね回す。
「ふぅん、ママ、ボクおかしくなっちゃうぅ!」
「いいのよ、おかしくなりなさい。大丈夫、おかしくなっても、わたしとカッツの子供にしてあげるから」
 ママは唾液をさらに流し込んで、自分の体ごと上下に揺さぶった。
「あっ、あっ、すごっ、凄いっ」
「ふふ……男の子を嬲るのが、こんなにいいなんて……」
 目をうつろにして、ママはどんどんおちんちんを嬲る速度を速めていく。
 雁も、棒も、しっとりしたやわやわが張り付いてきて、亀頭はママの舌が鞭みたいに叩いてきて、たまらないよ、たまらないよぉ!
「ママ、ママ、イキたい、イカせて?」
「イッっていいの、ほら、ほら!」
 おっぱいをランダムにぐにぐにさせて、ボクのおちんちんは柔いお肉の中で振り回されてるぅ!
「でもイケないの、後ちょっとなのに、切ないのだけがどんどん溜まって、イケないの!」
「そうなの? ママのおっぱいじゃ駄目なの?」
「ああぁんっ! うんっ、ごめんっ、ごめんねママっ! こんなに気持ちいいのに、ごめんなさい……!」
 出したいのに、気持ちいいのに、精液がぐんぐん来る感覚が来ないよ……嫌だよこんなの、生殺しみたいだよ……!
「そんな泣きそうな顔しないで。わかったわ。ママが最後までちゃんとさせてあげるから」
 ママはおちんちんから、おっぱいを離した。どろどろでねちゃねちゃの中から出てきたボクのおちんちんは、てらてらに光って凄くいやらしい。
 立ち上がったママは、ボクとママが着ていた服を床に敷いた。
「背中が痛いけど、ここに寝てくれない?」
「うん」
 ボクは頷き、言われるままに木の床に横たわる。ママはボクの顔を優しく撫でて、ボクの股間を跨いで膝立ちになった。
「ほら、見える?」
 ママはおマンコの口を、見せつけながら開いていく。
 くぱぁ……と、淫液でぬるぬるになった膣の中は、ボクのことを食べちゃおうとしているのかひだひだが妖しく蠢いていた。
「あ、あ……」
「この中に坊やが入るの。どう?」
「は、早く入れてっ! お願いっ、ボクを食べてぇ!」
「んふ……いいわよ……」
 じわじわと腰を落としていき、おちんちんの先端がおマンコに触れる。
「あ……」
 ぴちゃってする感触と共に、ボクの胸の中で期待はどんどん膨らんだ。
「……全部、食べてあげる」
 ずぶずぶずぶぅ! 一気にボクのおちんちんは飲み込まれちゃった!
 ぐにゅるぐにゅる、襞の一つ一つが柔らかく柔らかく締めつけて、ぬるぬるって、ぬるぬるって!
「やぁぁんっ!」
「あぁっ……!」
 ママが髪を振り乱して、真っ白な喉を仰け反らせた。
「硬いっ、子宮まで当たってるっ!」
「ママ、お願い! もっと動いて! 気持ちよくしてよぉ!」
 心の底からの叫びが伝わってくれたのか、ママは大きなお尻をたぷんたぷん揺らしながら跳ねた。
「坊やはっ、ううんっ! 本当、に、自分じゃ何も出来ないのねっ!」
「だってぇ、だってママの中、凄いんだもん! 動けないよ、こんなの!」
 もみもみってしてくる! 溶けちゃう! 蕩けちゃう!
「感じるわ、坊やの精気! 出すのね、出したいのね!?」
「ママ、出させてよ! いっぱいいっぱい出したいよ!」
「いいわ、出させて上げる! 坊やが死ぬぐらい、いっぱい出させて上げるの!」
 ぐりぐり腰を回して、ボクをもっと高めてくる! ママは自分のおっぱいを掴むと、お乳を絞り出してボクの体のあちこちに振りまいた。
「熱い! 美味しいぃ!」
「そうよ! わたしのミルク美味しいのよぉ! 坊やがわたしのものになったらお腹が壊れるまで飲ませてあげるわ!」
 ママの全身が弾んでる。肌は興奮で真っ赤になってて、汗を飛び散らせて、暴れ馬に乗ったみたいに動き回っていた。
「ママ、凄いよ! 最高だよ! ボクもう駄目ぇ!」
 おちんちんが、痛いぐらいに刺激されている。愛液がどろどろに肉棒を包み、内側から爆発しそうなほど精液がこみ上げてくる。
「イッちゃう! ボク出しちゃう!」
「出して、わたし、わた、わたしもっ、ああっ、あああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
 ママはびくびくっ! って全身を痙攣させた。イッちゃったんだ、ママイッちゃったんだ!
 ぎゅうううっ! って最後に締めて――
「ボクもイッちゃうううううぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!!!!」
 出ちゃう――前に、反射的に魔力を練り上げて、えーと……ママに全部、あげるのっ!
 びゅくびゅくびゅくびゅくっ!
 ボクの精液が、尿道を傷つける勢いでママに注ぎ込まれる。どくん、どくん、と何回も何回も、魂まで吐き出されるようだ。
 心臓が痛い、苦しい、でも気持ちいいよ……このまま死ねたら幸せなんだろうなぁ……。


 隊長が会心の笑みで、ボクを見下ろしていた。
 ボクはというと、疲労困憊で仰向けになったままなので、立ち上がることはおろかボクの体の上で気絶しているママ……じゃなかった、ナイダさんを除けることも出来ない。
「よくやったな」
「危なかったですよぉ……ボク、本気で堕ちてましたし」
「そういう展開になることは読めていたから、問題ない」
 隊長はボクの傍らに座り込む。
「だいたい無茶だったんですよ。ママ……じゃなくて、ナイダさんってカッツ委員さんを倒した人なんでしょ? ボクなんて、ミューゼル隊に入ったばかりの新入りですよ」
「だから、いろいろ布石を撒いておいたんだ。例えば、早くしないとミューゼル隊以外のハンターが来る、とかな」
「それが何か意味があるんですか?」
 ぽんぽん、と子供をあやすように隊長はボクの頭を叩いた。
「ナイダはマゾだ」
「マゾ……? って、受け専門ですよね。そんな淫魔だったら、カッツ委員さん以外のハンターにやられてそうなもんですけど」
「そうでもないさ。相手に責めさせて、そのうちに相手の冷静さを奪い射精させるという戦い方なんだ。責めている方は自分が優勢と勘違いして、いつの間にか限界を迎えている。それに気付くこともないままに、あの体に溺れるんだ」
 隊長の言葉に、ボクの胸の上で潰れているナイダさんのおっぱいを意識してしまう。……う、またおちんちんが大きくなってきちゃった。
「だが、今回に限っては時間が無いから、自分から責めなければならなかった。ましてやレオ、おまえもナイダと同じく受け専門だからな。さすがのナイダも、自分と同じタイプのハンターとやり合ったことはなかっただろうし」
「ボク、マゾじゃないですよぉ……」
 拗ねて抗議しても、綺麗な笑顔でさらりとかわされてしまった。
 ううっ、美形はずるいなぁ。
「能力の相性、状況、すべてはこちらの手の内だ。格上相手でも、やり方次第では勝てるってことを覚えておけよ」
「はぁい」
「カッツ先生も、こいつに惚れなければわざと負けるなんてこともしなかったんだろうな……」
 表情に影を落として独り言のように呟く。
「んっ……」
 と、ボクの上で寝ていたナイダさんが呻いて、うっすら目を開けた。
「あ、れ……わたしは……」
「目覚めたか」
 隊長は、先ほどまでの暖かさをすべて消し去って、冷たく言った。
「隊長、ナイダさんに酷いことは……」
「しないさ。呪縛したという事実さえあればそれでいい。俺自身、こいつに興味はない」
 立ち上がって、ナイダさんの腕を掴んで無理やり引きずり起こす。
「後はカッツの態度次第だ。ま、腑抜けにはちょうどいい薬になるだろうさ」
「あ、あの人に何を……」
 ナイダさんは、弱々しく隊長を睨み付けた。が、隊長は一向に意に介した様子はなく、彼女に視線を向けることすらしない。
「レオ、そろそろ回復したな? 餌を使って狼を起こしに行くぞ」
 隊長が、ナイダさんを拘束していない方の手をボクに差し出す。
「…………」
 ナイダさんがボクに助けを求めるような目を向けた。
「……ごめんなさい、ママ」
 ボクは隊長の手を取って、立ち上がる。ナイダさんは無言で目蓋を伏せ、項垂れた。
 本当にごめん、ママ……。


 養成学校を卒業したばかりのハンター、レオは私とナイダに申し訳なさそうな視線を交互に送っている。
 なぜ、なぜ私の最愛の妻が、ミューゼルの部下の彼に連れてこられているのだ!?
「ナイダっ!」
 私がナイダに駆け寄ろうとすると、ミューゼルが立ちはだかった。
「まだ話は終わっていないぞ、カッツ」
「どけぇ!」
 ミューゼルを殴り飛ばそうと拳を振るう――彼の着ている黒いコートから突然女性の腕が生えて、私の手首を掴んだ!
「なっ……!?」
「ミュー様、どうします?」
 コートから、幼い少女のような声が沸きだす。
「放してやれ。……あと、ミュー様はやめろ」
「えー? ミュー様のためにこんなに尽くしたっていうのにー」
「オスカーの奴、本当にちゃんと躾けたんだろうな……」
 なんだあのコートは……そうか!
「メタモルフォーゼか……!」
「正解。王都のハンターを狩っていた淫魔、リンだ。会長子飼いの連中は無能だから、俺たちがこういう人材を得られるわけだな」
 ミューゼル隊が処理していたと聞いていたが、王都に居たハンターが誰一人敵わなかった淫魔を呪縛するとは……。
「その淫魔もナイダも呪縛したのだな!? 呪縛法を使って!」
 私は掴まれていた腕を振り払って、ミューゼルを睨み付ける。
「ああ。何の警戒もしていない家に侵入して、おまえの妻を物にするぐらいわけはなかった。聞きたいか? おまえが倒せなかった女が、どんな風に鳴いたか」
 血が全身から引いて、灼熱を伴い駆け巡る――
「貴様ぁぁっ!」
 殺してやる……! 殺してやるッッッ!
 感情にまかせて拳をミューゼルの顔面に撃ち込むが、先ほどと同じようにコートが変形して紐を伸ばし、私の四肢に絡みついてきた。
「このっ……!」
 メタモルフォーゼ能力――スライム系か、そうでなくてもどうせ生物系!
 私は呼吸を一秒かからず整え、魔力を集中し、電撃に変えて全身から放電する。
「あつっ!」
 両手両足を捕らえていた紐が私を解放する。私はそのままミューゼルに、
「ふっ!」
 ――顎先をミューゼルの掌底で打たれ、一瞬意識が飛んだ。
「あ……」
 足を払われて、床にくずおれたところを踏みつけられる。
「あなたっ!?」
「ナ、ナイダさん駄目! 動かないで!」
「っ……!」
 遠くから聞こえるやり取り……くそ、くそっ! 私の妻が囚われているのに、私はなにも出来ないのか……!
「少しは勘を取り戻したと思ったが……所詮、この程度か」
「ぐうぅっ!」
 悔しさに呻くことしか出来ない私を、ミューゼルはまるで犬畜生を見るように見下した。
「今さらおまえに命令などしない。ナイダを通じれば、いちいちおまえの意思など確認する必要も無いからな」
 こいつっ……こいつはっ!
 視線に力があるのなら、私は既に千回ミューゼルを八つ裂きにしている。それほどに、この男を殺したい……!
 だが、今の私にその力は無く、
「負け犬ですら無い獣など、他の獣に食われるだけということを知れ。戦うことも逃げることも選ばなかった屑は、流されるしか無いんだよ」
 ただ、この屈辱を受け入れるしかなかった……。


「カッツ……」
 私の肩に額を押し当てているナイダが、消え入るような声で呼びかける。
 既にミューゼルとレオは帰り、この場には私たち夫婦だけが残されていた。
 部屋に流れる空気は重く、私たちを押し潰そうとしている。そして、それを振り払う術も無い。
 私は、無力だった。
「……ナイダ、すまない」
「あなたが謝ることなんてありません。わたしが……っ!」
 言葉は嗚咽に代わり、私の服を彼女の涙が濡らす。
「いや、ミューゼルの言う通りだ。君との愛を貫くなら、私のことなど誰も知らない場所へ逃げればよかった。人間を守るためにハンターであることを選ぶなら、君を殺せばよかった。どちらも出来なかった弱さが、こんな事態を招いた」
「……どちらも選べなかったのは、あなたの優しさでしょう?」
 私の服を掴む手に、力がこもる。
「弱さだよ。君と一緒に逃げきる自信が無かった。それだけだった……」
 だが、このままでは終われない。
 私をここまで貶め、最愛の妻を汚したあの男に、いいように使われたままでいてたまるものか……!
 そのためには力が必要だ。ならば今はミューゼルと組んででも、力を蓄える時だ。
 そして、機会が来たら、いずれ奴に同じ屈辱を与えてやる……!

 ここは場末の娼館だが、同時に俺と部下たち――ミューゼル隊が呪縛した淫魔を住まわせている隠れ家でもある。
 俺はその一室、大きめのベッドしか無い粗末な部屋で、寝具に腰を降ろし一息ついていた。カッツとのやり取りの後にもいろいろやることがあって、ようやく解放されたのだ。
 今はもう夜。明日は王宮に行って国王エルウィンと謁見し、姉のローゼとも打ち合わせをしなければならない。
 だが、神経が高ぶっていて寝付けそうになかった。酒を嗜むことも無いので、こういう時の気晴らしに困ることがたまにある。
「ミューゼル様っ!」
 と、扉を勢いよく開けてきたのは、銀髪の淫魔クフリだった。
「なんだ騒々しい」
「なんだ、じゃありません! ミューゼル様らしくないことはやめてください!」
 乱暴にドアを閉め、彼女らしくもなく荒々しい足音を立てて俺の傍まで来る。
「はぁ? いきなり何を……」
 俺は腰を上げて、訝しげにクフリを見下ろした。
 柳眉を逆立てて腰に手を当て、まるで『ぷんすか』と擬音をつけたくなるような可愛らしい怒り方だ。
「カッツさんという人のこと、リンちゃんから聞きました! どうしてそんな酷いことをするんですか!?」
 ああ……脅迫したことを怒っているのか、こいつは。
「……おまえには関係ない。俺のやることに、いちいち口出しするな」
 俺は鬱陶しい気分になり、手を振って追い払おうとする。
 だがクフリはその俺の手を掴んで、力いっぱい握り締めた。
 ……別にこんな小娘程度の力では痛くないが、何やら苛ついてくる。
「ミューゼル様が間違っているなら、誰かが口を出さなきゃいけないでしょう!」
「俺が、間違っているだと?」
「そうです! 人質を取って脅すなんて、ミューゼル様らしく無いやり方は間違っています!」
「……おまえに何がわかる」
「わかります! ミューゼル様なら正々堂々、カッツさんを説得出来ました!」
「ふん、やっぱり何もわかっちゃいない。あの腑抜けが、口で言っただけで立ち上がるものか」
 ――ぱん。
 乾いた音が、乾いた部屋に響く。クフリが平手で、俺の頬を打った。
「自分でも信じていないことを口にするのは、やめてください!」
 なんだこいつは……俺のことを叱っているのか? 俺の何を気取っているつもりだ、この女……!
「適当なことを言っているのは、おまえだろうが!」
「違います! ……カッツさんという方は、ミューゼル様の先生だそうですね?」
「それがどうした」
「憧れていた方が情けない姿を見せたから、ミューゼル様は裏切られたような気持ちになったんです。それで子供みたいに拗ねて、酷い仕打ちをして仕返ししたつもりに――」
「んの、おまえっ!」
 俺は思わず、クフリの胸倉を力任せに掴んでいた。服が彼女の喉を絞めるが、淫魔相手に加減など!
「ミュっ……ゼル様はっ、カッツさんをっ……っっ……!」
 たちまち顔を青くして、苦しげに呻く。……あっ! そうか、こいつは!
「す、すまん!」
 俺が手を放すと、クフリはうずくまって咳き込んだ。
「かはっ、けほっ……」
「だ、大丈夫か!?」
「は、はい、わたしこそっ……ごほっ……」
「喋るな、楽にしてろ!」
 俺はクフリを抱き上げ、ベッドの横たえさせる。
 彼女はなおも何かを言おうとしたが、俺が眼前に手をかざしてそれを制した。
「すまない、配慮が足りなかった」
 クフリは頭を左右に振って、俺の手を両手で包み込む。その表情は、慈愛の笑顔と……嬉しさのようなものが滲み出ていた。
「どうして笑う?」
「……わたしって、淫魔なのに首を絞められたぐらいで苦しむような出来損ないですけど、そのおかげでミューゼル様に優しくしてもらえて、幸せだなぁって。初めて、この体で良かった、って思えました」
「……バカだろ、おまえ」
「はいっ」
 明るさに満ちた顔で頷いた。
「やれやれ……」
 苦笑する俺の頬に、クフリは指を伸ばして添える。
「ミューゼル様は太陽みたいな人です。何もかも焼き尽くすほどに輝くことも出来るし、みんなを温かく照らすことも出来ます。だからどうか、暖かさを、優しさを忘れないでください」
 ささくれ立っていた感情が、柔らかく収まっていくのを自分でも感じ取れた。
 ……優しさ、か。
 俺の野望は、怒りと復讐に拠っている。
 もちろん、報われない人々に正しい居場所を与えたいという気持ちはあるが、それ以上に優先するのは現在の腐りきった王国とそれに連なる屑どもの粛正だ。
 だから俺は、必要以上の犠牲が出ることを厭わない。実際、恩師であるカッツ先生を貶めたし、要塞都市シュタインではブルーノやアルフが死ぬであろうことをわかっていても彼らを作戦に加えた。
 そんな俺が、優しさか……。
「ミューゼル様?」
 黙ったままクフリを見つめる俺に、彼女は首を傾げた。
 ……俺一人ではそんな心ではいられないが、こいつと一緒なら。
 そんな国も、悪くないかもな。
「なんでもない」
 俺は、月の光を銀色に照り返す彼女の髪を、そっと撫でた。
 ……だが、今は優しさを前に出すことは出来ない。
 ベルを俺のものにしたあの時から、歴史は新たな方向へ回り出した。動き出した歯車は、今さら止まれない。
 まずは人類を守り、淫魔の勢力を減退させる。そのためには、今しばらく大量の血が流れ続けるだろう。
 俺はまだ、優しい太陽にはなれそうになかった。


「つまりベル、あんたは自分の持ち場を放棄して、人間如きにびびっておめおめ逃げてきた……そういうわけね?」
 わたしの隣に立つ淫魔、グリューネ様の左腕であるレッサが、あからさまにバカにした物言いをする。
「面目ない」
 わたしはぞんざいに言って、わたしたちに背を向けている主君、グリューネ様の背中を見た。
 ――『月虹の間』と呼ばれるこの場所は、元々はオルデン王国が所有していた貴族専用の別荘らしい。
 全周囲を囲むガラスは、月の光を屈折して増幅するよう計算されて配置されている。そしてそれは、まさしく『月虹の間』の名にふさわしく、空間を月光が生み出した虹で埋め尽くしていた。
 夜露を纏った花々は星の光で着飾っていて、まるで壮麗な舞踏会のような光景である。
 ここに限らず、この一帯の建設物は贅の限りを尽くされていた。趣味がいいのは結構なことだが、掛かった労力と資金は莫大であるだろう。
 それだけ人間の力を費やしたものが、今は王国を滅ぼそうとする淫魔の拠点になっているのは、人間たちにとって屈辱的であるに違いない。
「あなたが無事なのは喜ばしいことなのだけれど……」
 グリューネ様が、ゆっくりとした仕草でこちらに振り向いた。
 靡く銀色の髪は月虹を受け、幻惑的な輝きを煌めかせている。ほっそりとした体つきは儚い印象を与えるが、同時に成熟した色気を併せ持っており、淫気など無くとも人間を狂わせるには過剰なほどの美貌であった。
 さすがオルデン王国・フリープ共和国を跨るエリアの攻略を担当する、総司令官といったところか。
「あなたが逃げてきたというのは、どうにも納得がいかないわね。あなたを凌ぐ人間が居たということもそうだし、そんな相手から逃げられたということも不思議だわ」
「ラーデが身代わりになって逃がしてくれたから」
 わたしは無表情、無感情に答えた。
 その態度が悲しみを押し隠しているとでも思ってくれたのか、グリューネ様はすまなさそうに睫毛を伏せた。
「……そう。そうね。ラーデはあれで、気に入った相手に尽くすところがあるから」
「確か、グリューネ様のご息女とも仲がよろしかったとか……」
 レッサが自らの赤毛に指を絡ませ、記憶の底から引っ張り出した事柄を口にする。
「ええ。彼女やリンには、よく世話になったわ」
 母親の顔で、グリューネ様が頷いた。
 ……なるほど。やはり、この路線でいけるかな。
「そのことも含めてなんだけど、グリューネ様、レッサ」
「なによ?」
「そろそろ、王都攻略のために全軍を挙げてもいい頃合だと思う」
 ひゅうっ、とレッサが口笛を吹いた。
「その提案も、あなたにしては珍しいことね。力押しは嫌いだと思っていたけど?」
 グリューネ様はいささか訝しげにこちらを流し見る。さすがに多少の疑念は持たれるか。
「有効なら、そういう手段も問題ない。人間側で警戒すべきなのは、わたしを追いつめたミューゼルという男と、彼が率いる一部隊だけ」
「…………」
 細い顎に指を当て、考え込む仕草。わたしは構わず続ける。
「シュタインに攻めてきた時、ミューゼルの部隊以外の人間が増援を出さなかった。普通、そういう作戦には、支援と制圧のためにそれなりの戦力が集められるはずなのに。これはつまり、まともな戦力がその部隊だけしかないことを示している。事実、ミューゼルの部隊にやられるまでは、シュタインに侵入されることすら無かったのだから」
「つまり、人間どもは弱っちぃからガンガン攻める方がいいって?」
 嬉しそうに尋ねるレッサに、わたしは首を縦に振ってやった。
「回りくどいのが好きなあんたにしちゃ、悪くないね。グリューネ様、配下の淫魔たちも痺れを切らしていますし、ベルだってこんなこと言い出すぐらいなんですよ。やってしまいましょう!」
 配下の淫魔……それはグリューネ様の部下であり、レッサのしもべたちでもある。
 レッサは大貴族の娘で、家柄だけを見ればグリューネ様より格上だ。そして、このエリア攻略に託された淫魔たちの大半は、レッサの家から遣わされている。
 まあ、レッサは心からグリューネ様に忠誠を誓っているから、その辺はあまり問題にならないのだが。
 問題なのは、グリューネ様が率いる淫魔たちが『レッサみたい』なことだ。
 簡単に言うと、人間を侮り、力押しが好きで、短気な上に単純。
 こういう連中は抑えつけすぎると暴走するから、ある程度は気の済むようにさせてやらなければならない。
 それに加えて、わたしが敗退したことにより、人間に対する報復心とか、レッサの対抗勢力であるわたしを追い落とすために手柄を挙げたい気持ちが湧き上がっている等々、とにかく連中はおおっぴらに暴れ回りたくて仕方がないのだ。
 元々、慎重なグリューネ様や策を弄したがるわたしよりも、レッサのやり方の方が淫魔という種族の性に合っているということもある。
 そろそろ、若い淫魔たちの忍耐も限界にきていることだろう。
「それに、オルデンに潜伏していると思しきご息女の探索も、王国を征服すればやりやすくなりますよ!」
「私の個人的な感情を理由にしては、いかなる作戦も認めることは出来ないわ。レッサ、そういう発言は以後慎んで頂戴」
「は、はっ……申し訳ありません」
 しゅんとして、レッサは頭を下げた。
 こういうところは可愛らしいんだけどなぁ。
「……もう少し、時間を掛けて話し合いましょう。今すぐに決められることではないわ」
「はいっ!」
 泣いた赤子が笑うように、表情を一転させて嬉しそうにレッサは答えた。
 以前から彼女は、似たような意見を出しては却下されてきた。それが『考慮する』になったのだから、浮かれるのも無理はないか。
 ……しかしグリューネ様、溺愛していた娘のこととなると弱いな。口では否定していたけど、あれが最後の一押しになったのは確実だろう。
「ベル! 今度の作戦で、あんたのやり方より、あたしの方が優れてるって証明してやるから! 覚悟しときなさいよ」
 グリューネ様には聞こえないぐらいの小声で、しかしたっぷりと競争心を含んだ声をぶつけてきた。
 ……レッサは、大貴族である自分が平民出身であるわたしと同格であるのが気に入らないとか、オルデン北方攻略に成功したわたしが妬ましいとか、そもそも性格が合わないとか、いろいろな理由でわたしを敵視している。
 だから、この機会に一気に戦果を挙げて、わたしと差をつけるつもりだろう。
 普段は鬱陶しいことこの上ない思考だが、今はそれがありがたい。
 ついでに、もう少し煽ってやるか。
「上手くいったらいいね。ドジ踏んで、実家に帰れなくなるようなことにならなきゃいいけど」
「こ、このっ……!」
 ちょっと突いたら怒る怒る。本当、単純なんだから。
 この調子だと、後でグリューネ様にもう一度大攻勢の嘆願をしにいくな。
 ありがたいことだ。わたしとミューゼルのために、せいぜい踊ってもらおう。
「頑張ってね」
 わたしが心からそう言うと、ぎりぎり歯を鳴らしてわたしから顔を背けた。
 こういう、自分が流されていることに気付けない奴は、実に扱いやすい。
 わたしはレッサの様子を確認すると、グリューネ様の方に視線を向ける。
「…………」
 わたしがかつて忠誠を誓った主君は、糸のように細い銀髪を掻き上げて、物憂げに月を見上げていた。
 ……ごめんなさい、グリューネ様。でも多分、グリューネ様にとっても悪いようにはならないから。
 レッサはまあ、どうでもいいか。
コメントを送ってくださった方々、拙作を読んでくださった方々、いつもありがとうございます。
ご指摘も励ましも、とてもありがたく思っております。

しかし今回も長すぎてしまい、申し訳ありません。
自分なりに反省したつもりでしたが、結果このようになっているのは情けない限りです。
己の力不足を痛感いたします。

しかも自分で読み直したら、前回より文章も下手くそになっているような感じです。
何もかも、本当に申し訳ありません。

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