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太陽の王国4 進む者、流される者(前)

「ここが……?」
「そう、おまえの生まれ故郷のターラント村だ」
 僕の先を歩いていたウォルフ先輩が振り返り、穏やかにそう言った。
 目の前に広がるのは、一見するとごくありふれた農村――しかし、一目でそれが異常であると、誰もがすぐに気付くだろう。
 男たちは実った作物を刈り取り、女たちがカゴに入れてそれらを運んでいく。
 女たち――そのほとんどが、男はおろか同性の女ですら惹きつける妖艶さを振りまいている。
 そう、彼女たちは淫魔だった。
 幾人かは心底楽しそうに農作業に勤しみ、幾人かは心底不服そうに農作業に従事している。
 ただ、彼女たちに共通しているのは、男性に向ける視線が獲物を狙うそれではなく、あくまで対等の立場の者を見る種類のものであった。
 僕――淫魔ハンターのハルトは、ただただ驚くことしか出来ない。
 淫魔と人間が、対立することも無く共に過ごしている。しかもここは、かつて淫魔に滅ぼされ、地図からその存在を抹消された僕の故郷なのだ。
 建ち並ぶ家々は僕が記憶していた頃に比べて修繕の跡があちこちに見られ、人々は僕の知っている人間など一人も居ない。
 生まれ育ち、淫魔に滅ぼされた場所に、淫魔たちが暮らしている――このことに怒りを覚えていいのか、それとも困惑に思考を止めるか、とにかく驚いたままでいるか……感情の落ち着きどころがわからない。
「……もしかして、わたくしも土いじりなどをしなくてはなりませんの?」
 僕の隣に立つ、ドレス姿の淫魔ラーデが恐怖混じりに呟いた。
「ああ、それについては心配しなくてもいい。“北風”がここに居ない以上、君が――」
「お兄、ちゃん?」
 ウォルフ先輩の言葉に被せられたのは、聞き覚えのある声。
 そちらに目を向ける――美しくも、可愛らしさを残した少女――一日たりとも忘れたことのない、僕の妹!
「カリン!?」
「お兄ちゃん!」
 頭の中は空白になる。ただ僕は走り、彼女も走り、力いっぱい抱き合った。
 髪から香る甘い匂いの中に、土と太陽の残滓が嗅ぎ取れる。あの頃よりも肉つきが良くなっても、華奢で小柄な容姿はあの頃の面影を残していた。
「カリン……カリン、カリン!」
「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」
 失ったはずの、最愛の家族! 何度も夢に見た! こうして……こうしてまた、この腕で抱けるなんて!
「離さない、もう絶対に離さない!」
「うん……うん!」
 ああっ……! こんな、こんな――
「……いつまで兄妹で睦み合っているのですか?」
 鋭く冷たい怒声を投げてきたのは、ラーデだ。
「あ、ああ……うん」
 僕もカリンも、照れ笑いを見合わせながら体を離した。
「カリン、今までどうしてたんだい?」
「……お兄ちゃんを逃がした後、結局淫魔の本能のままに人間を襲っていたの。けど、ウォルフさんに呪縛されて」
 僕はウォルフ先輩の方に目を向けるが、既に立ち去っていた。
 気を使ってくれたのかな。……その割にはラーデが残っているけど。
「それでミューゼル様に、この村に人間と住むように命令されたの。けど、あたしって淫魔だから、人間と一緒なんて……って思ってた。元々人間だったのにね」
 俯き浮かべる自嘲の笑いは、とても悲しげで痛々しい。
 僕が手を握ってあげると、カリンは弱々しく握り返して、そっと顔を上げた。
「そういう気持ちもあったし、呪縛で無理やり服従させられている反感もあったし、人間を見ると力尽くで犯して精気を欲しいって思うこともあったから、最初は凄く嫌だった」
 ……聞くのが辛い告白だ。カリンはもう、人間ではなく淫魔であると、思い知らされる。
「けど、いろんな人たちと一緒に過ごして、助け合って生きていくうちに、だんだん人間らしい気持ちを取り戻したっていうか……ううん、ちょっと違うか。淫魔も人間も、そんなに違いはないって思えてきたの」
 にこりと、誇らしげな笑顔で、カリンは僕の顔を見つめた。
「淫魔だって人間を嫌っていたし、人間も淫魔を憎んでた。なのに今は、隣に居るのが当たり前に思えて、楽しいことがあったら笑いあって、人間のために淫魔が働いて、淫魔のために人間は精気をくれて」
 カリンは両の手で僕の手を包み込んで、胸に抱きしめる。
「淫魔になったあたしでも、ハンターになったお兄ちゃんと一緒に居ていいんだって、そのことがわかった時は、本当に嬉しかったんだよ」
「そう……だね」
 僕はずっと考えていた。
 ハンターになった僕が、淫魔に脅かされている人々を守る役目を負った僕が、淫魔になったカリンと再び出会うことがあったのならどうしたらいいのだろうって。
 ハンターであるなら、殺さなければならない。血を分けた最愛の妹をこの手で。
 カリンの兄であるなら、見逃さなければならない。ハンターである僕が、これからも人間を殺し続ける淫魔を。
 けれど、選択肢はもう一つあったんだ。カリンを守って、人間も守る。……あるいは、人間の敵である淫魔を、敵で無いようにする、と。
 僕一人では気付かなかった。気付けなかった。
 だから、僕が見えていなかった道を照らしたミューゼル隊長に、出会えて良かったと心から思える。
「僕もカリンも不幸だったけど……不幸だけじゃなかったのかもね」
「うん。わかり合えることがわかったってことは、多分幸せなことなんだよ」
 家族や村の人たちを亡くしたことは、今も忘れていない。そのことを思うと、胸を掻きむしりたくなるほどに苦しい。
 けれどそれでも、いま僕たちは……幸せだった。
「ラーデ、少しいいか?」
 と、ウォルフ先輩が戻ってきた。
 ラーデは、不機嫌そうな様子を隠そうともせず先輩の方を向く。
「シュタインから連れてきた淫魔たちが、広場に集まっている。彼女たちの指導を君に頼みたい」
「それは構いませんが、わたくしも新参ですわよ。勝手などわかりませんが?」
「君ならすぐに馴染める。それに、“北風”が戻るまで、君に淫魔たちを導いてもらわなければならないしな。少し慣れておくべきだろう」
「……仕方ありませんわね」
 肩を竦めると、ラーデは僕の傍に寄って腕を絡めてきた。
「ちょっ、ちょっとラーデ!?」
「主人に従うのは、騎士の務めではなくて?」
 楽しげに、彼女にしては少々幼い口調で僕を見上げる。
 強引だなぁ……。ま、奴隷から騎士に格上げされているのは。ちょっと嬉しいかな?
「駄目ー! お兄ちゃんは今から、あたしと村を見て回るの!」
 カリンが、握っていた僕の手を引っ張った。
「カ、カリン?」
「何を仰いますのやら。ハルト様、あなたの仕事はわたくしの補佐であると、ミューゼル殿下にも命じられましたわよね?」
「別にお兄ちゃんが居なくたって、淫魔の指導ぐらい出来るじゃない!」
「小娘にはわからないことですわ。さ、ハルト様。参りましょうか」
「だから駄目だってばー!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて二人とも……」
 僕が言うと、二人は一瞬こっちを刺すように睨んで、再び互いを罵るべく口を開く。
「落ち着くも何も、ハルト様がさっさとこの小娘に言ってやればよろしいのです。一昨日来い、と」
「一昨日来るのはそっちでしょ! 兄妹感動の再会に水を差して、空気読みなさいよ!」
 な、なんなんだろうこれは……。
 僕はウォルフ先輩に助けを求めようと視線を送ったが、先輩は苦笑するだけだった。
「ハルト様!」
「お兄ちゃん!」
 うわぁ……どうしよう……。


 私はカッツ。淫魔ハンターだ。
 消極的な協会や王国の意向に反し、今まで数知れぬほどの淫魔と戦ってきた。
 それゆえ、“オルデンの魔狼”などと英雄扱いされている。そして、その名に恥じぬ実力であるとの自負もあった。
 しかし、私は揺らいでいる。
 彼女は……とても美しかった。
「あなたのお名前は……?」
 淫魔が口を開いた。甘いハスキーボイスが耳から心の奥まで入り込み、全身に染み渡る。
「……カッツ。君は?」
「ナイダと言います」
 淫魔――ナイダは、泣きぼくろを傍に置いた瞳を潤ませ、私を見上げる。
 ……ここはどこだったか、そう、滅ぼされた村の宿だ。
 村は壊滅させられた。たった一人生き残った少年が、泣くことも出来ないほど衰弱した体で逃げ延び、その報せはただちに協会まで届けられた。
 通報を受けた協会は、しかし動かなかった。なんだかんだと理由をつけていたが、結局のところは協会と王国の癒着が原因だ。王国へ納める税が少ない集落を切り捨てたのだ。
 ゆえに、私は単身その村に向かった。
 そこで出会ったのが……この淫魔だった。
 波打つ黒髪に、豊満な乳房。厚い唇は赤くぬらついていて、成熟した妖艶さを醸し出している。
 淫気も濃密で、思春期の少年ならば呼吸するだけで達してしまいそうなほどだ。
 ……しかし、私の心を捉えたのは、美貌や淫気ではなかった。
 なんと言おうか。魂に惹かれたでも表現するべきか。
 最も適しているのは、夢見がちな少女がよく使う言葉――すなわち、運命を感じたからであった。
 だが……
「ナイダ、君がこの村を滅ぼした淫魔なのだな?」
「……はい」
 ナイダは、私の視線から逃げるように顔を逸らした。
「それが君の手口か? そうやって同情を買う仕草で惑わせ、相手を籠絡するのが」
「…………」
 何も応えず、ただ睫毛を伏せる。その悲しげな様子が、私の心臓を締めつけ……くそっ、何を考えているのだ私は!
 私は、全裸のままのナイダをベッドに押し倒した。
 剥き出しの乳房を、力一杯握り込む。
「ああぁぁぁっ!」
 喉から嬌声が放たれた。
 指がどこまでも埋まりそうなほどに柔らかく、包み込まれる。
 乳首を摘み、引っ張ると、
「んんっ!」
 びくんびくんと体を震わせて反応した。
 私はさらに、右の胸に口を寄せて、桜色の頂を歯で挟み込む。
「やっ……はっ、もっと……」
 熱に浮かされたナイダの声に誘われ、明らかに痛みが先に立つほどの強さで乳首を噛み締めた。
「ひぁああぁっ!」
 彼女の肌は紅潮し、汗ばんでくる。
 明らかに興奮している……! このまま!
 私は自分の優勢を確信すると、左の乳房をこね回す。
「やぁっ……出ちゃう、出ちゃうのぉ!」
「……!?」
 びゅるびゅるっ! と音を立てて、乳首から白い液体が飛び出した。私は避けることも出来ず、顔や口内にそれを受けてしまう。
 かっ、と腹の底から熱くなる感覚――興奮を呼び起こす淫液だ。
「は、恥ずかしいっ……」
 ナイダは羞恥に顔を歪めていた。
「ふん、何が恥ずかしいだ。淫魔の分際で」
 乳房を握っていない方の手で、淫花の傍に息づくクリトリスに触れる。包皮を剥き、親指と人差し指で潰すように摘んだ。
「いっ、あああっ、痛い、痛いですっ!」
 苦しげな言葉とは裏腹に、乳淫液は噴出する量を増し、膣口からは愛液が私の手をぬるぬるに濡らし、声は快楽に震えている。
「嘘をつくな、このマゾめ!」
 私が罵倒すると、びくん、と全身を痙攣させた。
「そんな、違いますわたしっ」
「まだほざくか!」
 私は乳肉に歯を突き立て、噛みちぎろうとする。
「つぅっ!」
「痛いのがいいのだろう? 愛液が止まらんぞ」
 膣に指を入れる。一本、二本、三本、
「あっ、そんな、多いっ」
 一息に五本!
「ひぎっ……!」
「緩いなぁ。これならば、指どころか腕も入りそうだな?」
 ナイダは、驚愕と恐怖に目を見開いた。
「無理です、出来るはずがありません!」
「淫魔ならば死ぬこともないだろう? どれ、試してやろう」
 私は指を引き抜いて、拳を握り込み――無理やり挿入した。
「はあぁぁぁぁぁぁっっ!!」
 多少の抵抗は力尽くで押し込んで、どんどんねじ込む。
 拳が入り、手首まで埋まったところで、何かに突き当たる感触。私はそこで手を止めると、マゾ淫魔の顔を見やった。
 涎を垂れ流し、涙がぼろぼろ流れている。陸にあげられた魚のように口をぱくぱく開閉させ、舌をわななかせていた。
 最初に感じた上品な妖艶さは欠片も残らず消し飛んで、ただの醜い肉塊がぶるぶる震えている。
「くっ、はははっ! どうしたナイダ、人間に手も足も出ていないではないか!」
 私はさらに、膣を犯していない手で、指を五本まとめて尻穴に突き入れた。
「っっっっ!!??」
 ナイダは全身の筋肉を硬直させた。もはや悲鳴すら上げられず、ひたすら苦痛に耐えるのみだ。
 その姿に、もはや知性ある生物の尊厳など無い。こんな様になっても、なお愛液を垂れ流し膣に突っ込んだ腕を締めつける者に、尊厳などあるはずがない!
 拳をぐりぐりと膣内で回すと、
「ぉぉおぉぉぉおおお、あああああああ!」
 苦しみだけではない、明らかに悦びの混ざった声色で絶叫する。
「このようなことをされてなお、よがり狂うとはな……」
 私は鼻を鳴らし、興奮に朱く染まった肌に唾を吐き捨てた。すると、ナイダの唇の端が嬉しそうに歪む。
「物のように扱われるのが好みとは、品性の欠片もない屑だな」
 膣と尻穴に入れていた手を、乱暴に引き抜く。
「かはっ……!」
 股間回りのシーツを見ると、垂れ流れ続ける愛液でぐっしょりと濡れていた。
「はは……本当に好き者だな、ええ?」
「はぁっ、はぁっ、はっ……」
 息も絶え絶えでありながら、物欲しそうに腰が動いている。
「まったく……おまえばかりが気持ちよくなってどうする?」
「は……はい、申し訳ありません……」
 ナイダは力の抜けた体を緩慢に動かし、私のズボンに手を掛ける。
 丁寧な動作で下着ごと脱がし、飛び出た肉棒を優しく一撫でした。
「……それでは、失礼します」
 堂の入った挨拶をし、亀頭に口づける。
 既に興奮していた私のそれは先走りに濡れ、彼女の唇との間に粘つく糸を引いた。
「…………」
 ごくりと、隠せぬ愉悦に唾液を呑み込む。
 そんな私の様子を上目遣いに窺いながら、ナイダは口を開いて肉棒を呑み込んだ。
「んっ……ちゅるっ……」
 唾液まみれの軟体が竿に絡みつき、喉奥で先端を締めつける。
「むっ……」
「じゅる……ちゅっ……んんっ……」
 ずるずると啜り、吸引する感触は心地よい。求めていた刺激が、じっくりと与えられている。
 しかし、全体的な動作が緩やかすぎて、今ひとつ物足りなかった。あと少し、もうちょっと動きを早く欲しいのだが……もどかしさが、じわじわと募ってくる。
「気の利かない淫魔だな」
 私は吐き捨てるように言って、ナイダの濡れ羽色の黒髪ごと後頭部を掴んだ。
「んむっ!?」
 そして、膣にそうするように抽送を開始する。
「んん! んんん!」
 苦しげにナイダは呻くが、私は構わない――いや、その苦悶に歪む表情が見たくて、激しさを増して頭を前後させた。
「じゅっ、む、んっ、ぬっ、んぁっ!」
「愚図め、もっと気を入れろ!」
 高まる嗜虐心と、蓄積していく快感。
 私は無我夢中となって、ナイダの口腔を余すところなく肉棒で汚していく。
「もっとだ、もっと……もっと、おまえを汚してやる」
 そして、私だけの物にしてやる!
 喉奥を突かれて涙目になっているナイダを、私は突き飛ばした。
「けほっ……あ、あの……?」
「降りろ。そして跪け」
 ベッドの上で怪訝そうにしているナイダに命令し、彼女が動くのを待つまでもなく腕を掴んで引きずり降ろす。
「きゃっ!?」
「ふん……」
 私は床に座り込んだナイダに、尻を向けた。
「舐めろ。徹底的に清めるんだぞ」
「は、い……」
 戸惑いと嫌悪の中に潜む恍惚を、私は聞き逃さなかった。
 ぴちゃ、と濡れた感触が尻穴に伝わる。
 丹念に、丁寧に、まずは入り口を舐め解す。
「う……」
 思わず、呻き声が漏れた。
 それに気をよくしたのか、アヌスの淵を濡れた淫舌が這い回り、ゆっくりと押し広げる。
「美味しいです……」
 熱っぽい言葉と共に、柔らかい舌が遠慮がちに入り込んでくる。
 排泄するための器官に、異物が侵入する――私は違和感と快美感に全身を震わせた。
 これまで淫魔に責められることは多々あった箇所だが、今この時は『攻撃されている』ではなく『奉仕させている』という優越感に満ちており、その気持ちがこれまでになく私を敏感にさせていた。
「ちゅっ、むふっ……」
 唇を尻に押しつけ、ねじ込んだ舌は腸壁をくすぐり愛撫する。
「うっ、くっ」
 尻の奥まで刺激され、肉棒が大きく跳ね上がった。それとは逆に、アヌスを弄られた時の脱力感にも似た感覚が全身を走り、膝ががくがくと震える。
「くぅっ、も、もういい」
「……ふぁい」
 名残惜しそうに舌が離れていった。
 私ももっと味わっていたかったが、そうはいかない。
「四つん這いになれ」
「はい」
 私の言葉を受けて、ナイダは瞳に期待を滲ませる。
 従順に木の床に手と膝を突き、私が抱えやすいよう腰を高く上げた。
「いくぞ……」
 声を掛けるだけで、ぶるりと尻が震える。
 ふふ、いいぞ……。私の命令に悦びを覚えているその仕草、実に素晴らしい。
 私は笑い出しそうな楽しさを噛み殺し、肉棒を膣口に押し当て――貫いた。
「あいいぃぃっ!」
「くくっ! 啼け! 獣のようにみっともなくな!」
 ぱん! ぱん! 打ち付ける肌が激しく音を立て、その度に、
「くうぅぅぅうんっ!」
 ナイダは歓喜の雄叫びを上げる。
「ははっ! もっとだ!」
「いいっ、ああっ、いいっ、素敵、いいですっ、あああぁっ!」
 ゆるゆると柔らかい感触は、激しい抽送を妨げることなく徐々に私の射精感を高めていく。
 だが、口淫の時と同じく緩やかすぎて物足りない。
 ひくつく淫魔のアヌスに、人差し指を根元まで埋め込んだ。
「ひぐぅぅ!?」
 一転、痛いぐらいの締めつけが肉棒を襲う。
「つっ……」
 だが、それが一気に快楽を植え付けてきた。
 竿を奥まで力尽くで引き寄せ、襞が貪欲にむしゃぶりついてくる。淫液の量はどんどん増えて、締まりの強さにも関わらずピストンはスムーズに進んでいった。
「ほらほら、もっと締めろ!」
 大きく揺れる果実のような尻を、手の平で容赦なく打ち据える。
「あはぁっ!?」
 ぱちん、ぱちん、と一叩きするごとに、膣は私のペニスを食らい尽くそうとあらゆる動きで翻弄してきた。
「いいぞ、いいぞ……」
「ひぁぁっ、もっと、もっと突いて、もっと頂戴ぃぃ!」
「ああ、くれてやる! どんなに泣き叫ぼうが、構うものかっ!」
 熱に浮かされた頭では、もうほとんど思考らしき思考は働いていない。
 私は無我夢中で、ナイダの中に引きずり込まれていく。
「出る、出すぞっ!」
「ください、お情けを、ああっ、わたしにあなたのお情けを! わたしを、あなたのものにしてぇ!」
「いいだろう! おまえのような精液にまみれて喜ぶ豚は、一生飼ってやる! 嬉しいか? 嬉しいだろう!」
「あはっ、嬉しっ、ご主人様、ああぁっ!」
 ぐんぐんと無限大に膨れ上がる快楽が――弾けた!
「くうぅぅっ!」
「あああぁぁぁぁぁぁっ!」
 ナイダは涎を飛び散らせ、だらしなく口を開いたまま恍惚に震えている。
 私も似たようなものだろう。魂ごと引き抜かれるような感覚と共に、精液がナイダの奥へぶちまけられる。
「はぁっ、はぁっ、くぉっ!」
 私はさらに腰を振り立てた。白濁液をすべて吐き出してなお、硬度を失わない肉棒を叩きつける。
「やぁんっ! だめ、いけないご主人様、無理をしたら、はぁんっ! 命に関わりっ……ああっ!」
「見え透いた、ことをっ! 本気で止める気があるなら、とっくに止められているだろうが!」
 私は取り憑かれたように、性欲の赴くまま力を振り絞る。
「こ、拒めるはずが、ありません、んんっ、わたしに、ふぁあっ!」
「ならば、誰にも止められんなぁ!」
 こみ上げる射精感に逆らわず、私は再び吐精した。
「んああぁっ!」
「ぬぐっ……!」
「やっ、またそんな、あん、硬いままなんて、いっ、はぁっ!」
「もっとだ! まだだ、もっと、もっと、もっと!」
 狂った熱は冷めることなく、ひたすらに私の命を燃やし続ける。
 私は、何も後悔などしていなかった。


 微睡みから目覚めると、まもなく会議が始まろうとしているところであった。
 もう、あれから十年になるのか……。
「…………」
 私は募る懐かしさを振り払い、今から始まる茶番に意識を向けた。
 ここはハンター協会の会長と幹部、合わせて十一人からなる委員によってが開かれる会議場だ。
 並ぶ面々は、ほとんどが壮年の男ばかり。かくいう私も例に漏れず、今年で四十を一つ過ぎる年齢である。
 半円の円卓に、それぞれ男たちが腰掛けている。彼らはほとんどが苦い表情であったが、多数の者と一部の者ではその心中は違っている。
 私は少数の部類であったから、それがよく理解出来た。
「それでは、会議を開きたいと思います」
 妙に自信に溢れた声で言ったのは、会議の進行役にしてハンター協会の会長を務める男、リューニヒであった。
 彼は私と同世代であるが、彼がハンターとして現役の頃はそれほど目立った戦果を上げていなかった。
 そんな男でも、幹部の間を上手く立ち回り、前任者に媚びを売り、国王の歓心を得られれば、こうしてハンターを支配する立場に立てるわけだ。
「さて、本日の議題はシュタインについてですが……」
 委員の多数派――リューニヒの下僕どもが、重い息を吐いた。
「解放されてしまいました、な」
「非常にめでたいことです。これで王国の交易は蘇り、経済も活性化することでしょう」
 白けた声で口々に言う。
「それで、どうなさいますかな。ミューゼル隊……っと、第八遊撃隊の処遇は」
 ――個々人で活動するハンターとは一線を画したエリート集団、遊撃隊。だが、そのほとんどは会長リューニヒの私兵である。
 その中でも、ミューゼルが隊長を務める第八遊撃隊は、リューニヒの意思に従わない冷や飯ぐらいたちの集まりであった。
 ゆえに、彼らは他の遊撃隊と区別され、ミューゼル隊と呼ばれている。
「誰もがなし得なかった難事を解決したのですから、いつも通りに報奨金のみ、というわけにも参りますまい」
「ハンターはおろか、民衆や貴族の一部からも委員に推す声が出ておりますが……」
「しかし、この前二十歳になったばかりの小僧……っと失礼、いや、まあ、若すぎやしませんかな」
「年齢の規定は特にありませんが……あまり功績に見合わない恩賞では納得しない者も多いでしょう」
「――別に、今まで通りで構わないでしょう」
 穏やかな微笑を浮かべ、リューニヒが口を開いた。
「少しばかり派手な成果を上げたからといって多大な報償や権限を与えては、他のハンターたちも後に続こうとして暴走しかねません。ただでさえ、第八遊撃隊のシュタイン攻略は独断で行われたのです。あまり彼らを過大評価しては、悪しき慣習を残すことになりますよ」
 よくも言ったものだ。
 ミューゼルが支援を依頼したのを、何かと理由をつけて却下したことを私は知っている。
 そのせいで、ミューゼル隊はたった一部隊での単独行動を余儀なくされたのだ。
「そうは言いますがね」
 少数派――つまり、リューニヒ派でない委員の一人、ウォルターが口を挟んだ。
 ハンターではなく事務屋あがりの委員だが、出身が大貴族の青年だ。私とは年齢が十五も違う。
「シュタイン解放は王国の悲願だったわけです。それを成し遂げたミューゼル隊長に相応の報いを与えなければ、世間の目は――」
「世間、とウォルター委員は仰いますが」
 リューニヒが、目つきをわずかに鋭くしてウォルターを睨め付ける。
「協会は人類を守る最後の砦として、不可侵にして神聖なる組織です。隣国のフリープ共和国でもあるまいし、民衆におもねることに気を取られ、その隙を淫魔に突かれてしまっては本末転倒というものです」
「だからっ――」
「我々が第一とするのは、人間という種族の守護者としての自覚を持ち、大義の下に意思と力を一つに集結させることです。ただでさえミューゼル隊長は王族であることを笠に着て、態度も横暴で越権行為もたびたび行う問題人物……委員となって協会を運営し、ハンターたちを指導していくには未熟に過ぎるかと」
 よくもまあ、そんな白々しいことが次から次へと言えるものだ。
「それに……」
 ここで、リューニヒが会心の笑みを浮かべる。腐臭が漂う、下卑た笑みを。
「彼は、呪縛法などという忌まわしき外道の術を使います。そのような人間が、ハンターであること自体が少し問題ではないかと……」
「ああ……あれは確かに、よろしくありませんな」
 リューニヒ派の委員が、媚びではない本心から頷いた。
 呪縛法――王国の魔術開発局が作り出した、不完全な魔法。淫魔を呪縛する技で、非常に強力な戦法である。
 ただ、これはあくまで『不完全』であり、さらに使用条件も厳しいという問題点を抱えていて、使うのはミューゼル隊や極少数の一般ハンターぐらいなものあった。
 問題点の一つは、精液を媒介に用いなければならないこと。
 射精するとはつまり絶頂を迎えるということなので、一つタイミングを間違えれば淫魔を呪縛する前に自分が呪縛されかねなという、大変高いリスクを背負うことになる。
 そしてもう一つの問題点――それは、淫魔を殺せなくなってしまうことである。
 淫魔は絶頂することによって肉体を構成する淫気が拡散してしまい、体が分解・消滅してしまう。
 ところが呪縛法を用いることにより、人間の精気と魔力によって淫気を繋ぎ止めるのだ。
 つまり、一度呪縛法を受けた淫魔は、他者から昇天させられても消滅しない。もとより物理的な攻撃も受け付けないので、基本的に淫魔を殺すことは出来なくなるのである。
 もっとも、他のハンターたちが呪縛法を使わない理由はそれらのことだけではない。
 単純に、リューニヒ会長が呪縛法を嫌っているからだ。
「汚らわしい淫魔を従えるばかりか、殺せないようにする邪法などに頼る第八遊撃隊は、むしろ何らかの罰則を科すべきではないでしょうか」
「なっ、何を言ってるんですか! 第八遊撃隊は実際に多数の淫魔を駆逐し、辺境の集落はいくつも救われているんですよ! 第一、呪縛法は特に禁じられているものでは――」
「なら、次の議題は呪縛法使用の是非についてですね」
「なっ……!?」
 ウォルターは絶句する。その間に他の議員が口を挟み、呪縛法禁止についての議論が展開されていく。
「そもそも、どんな理由があろうとも淫魔などという存在を即座に殺さないというのが……」
「淫魔を従えるなどと、おぞましい。あれで人類を守護するハンターだというのだから……」
 完全に場の空気はリューニヒの支配下にあった。
 ウォルターが私に視線を向ける。
「…………」
 そこに込められているのは、私に対する期待と懇願。かつて“オルデンの魔狼”と呼ばれた英雄に立ち上がって欲しいと、その瞳は語りかけてくる。
 だが、だが私は……
「…………」
 腹の底から突き上げる感情を押し殺し、私はウォルターから目を逸らした。
「っ……!」
 彼の息を呑む声が、聞き取れてしまう。
 ……目立ってはいけない。もしリューニヒが私を敵と見なせば、奴は私の弱点を探ろうと徹底的に身辺を調べることだろう。
 万が一、あれが露見するようなことがあっては……。
「…………」
 私はただ、卓の下で拳を握り締め、内外からのあらゆる衝動に耐えるのみであった。


 私は柔らかいソファに身を沈めると、重い溜息を吐いた。
 ここは、委員に与えられている執務室だ。来客用の小さなテーブルと一対のソファ、執務用のデスクが設置されている。
 彩りと呼べるのは簡素な観葉植物ぐらいなもので、基本的には質素で愛想のない部屋であった。
「…………」
 自己嫌悪の渦が、体内を回り続ける。それを忌々しいと思いながら、何も出来ない臆病な自分が呪わしい。
 守るべきものが出来た時、人はこうも弱くなるものか……。
 言い訳じみた思考にまた溜息。情けないものだ。
 と、こんこん、と部屋の扉をノックする音が響いた。
 来客の予定は無かったが、だからといって来客が無いわけでもない。
「……どうぞ」
 私がソファから立ち上がったところで、鮮やかな金髪の青年――ミューゼルが扉を開けた。
 わけもなく圧迫されるような威圧感……いや、わけが無くもないか。
 先ほどの会議で、謂われのない責めを受けさせられようとしている彼を擁護しなかった罪の意識が働いているのだろう、
「お久しぶりですカッツ先生。少しお話、よろしいですか?」
 相変わらずの、自信に満ちた堂々とした声が、私の後ろ暗さを刺激してくれる。
「ああ、入りたまえ」
 感情を微笑で覆い隠し、私は対面のソファに腰掛けることを勧めた。
 ミューゼルは一礼すると、見慣れない黒のコートを翻して私の言う通りに座る。
「先ほどウォルター委員と廊下ですれ違いましたが、荒れていましたよ」
「会議で少々あってな。君は、彼と仲が良かったのだったかな?」
「兄のような……というほどではありませんが、小さい頃は良く遊んでもらいました」
 二十歳と二十五歳、年齢が近い二人だ。王弟と大貴族の二男坊という立場なら、そういうこともあるか。
「しかし、今はそういう機会もなかなか取れないだろう。休ませる暇も与えられなくて、済まないと思っている」
「休めないのは、カッツ先生のせいではなくリューニヒ会長の意向でしょう。カッツ先生のお立場は理解していますよ」
 特に憤った様子も無く、さらりと言う。
 だから私は、心構えをしないままに、
「なにせ、奥様が淫魔なのですから」
 ――致命的な言葉を突きつけられ、思考を殺されてしまった。
「っ……」
 まるで、氷のナイフで心臓を撫でられているような、恐ろしくも指先一つ動かせない感覚。何をしようにも、何かすればその瞬間にすべてが終わる絶望感が、私の全身を縛り上げる。
「下手にリューニヒ会長の機嫌を損ねて、探りを入れられてはたまったものではありませんからね」
 ミューゼルは私の顔を見て、首を傾げた。
「どうしました、先生? ずいぶん、顔色が悪いようですが」
 お、落ち着け。落ち着くんだ。まずは、相手にいろいろ話させて情報を探る一方、冷静さを取り戻して考えをまとめなければ……。
「な、わ、私は……君は、なぜ……」
 ふっ、と目前のハンターが笑う。
「なぜか、は問題ではないでしょう。言っておきますが、これ以上の無駄話をするつもりはありませんので」
「…………」
 喋らせている間に、対策を練ることすら許されんのか……!
「考える時間は与えません。牙が抜けたとはいえ、かつて“オルデンの魔狼”と呼ばれた男であり、俺のハンターとしての師でもあるあなたを侮りはしない」
「……何が望みだ」
 暴れそうになる呼吸を整え、何とか言葉を紡ぐ。
「リューニヒを蹴落とし、あなたが会長になってください。俺も、そろそろ休養が欲しいので、話のわかる人がトップだと助かるんですよ」
「いくら遊撃隊の隊長とはいえ、越権行為だぞ。ましてや君は王族、協会が王族の私物に――」
「寝言は聞きたくありませんね。言っておきますが、あなたに否は無いんですよ」
 強圧的な口調に、怯みそうになる。しかし、ここで押されたままでいるわけにはいかない。
 何とか、主導権を奪い取らねば……。
「そうして私を会長にして、いずれは自分が協会の頂点に立つ足がかりとするつもりか? それとも、意のままにハンターたちを操り、オルデンから淫魔を駆逐した英雄として名を残したいとでも?」
「そんな安い人間に見られていたわけですか、俺は」
 やれやれ、と肩を竦めて苦笑した。そして立ち上がり、傲然と私を見下す。
 有無を言わさぬプレッシャーが、私の両肩を押さえ込む――倍も歳が離れた青年に私は気圧され、見上げるのが精一杯だ。
「俺が目指すのはただ一つ、人間と淫魔が共存する王国」
「な――」
 思考が真っ白になる。あまりに大きな津波を目の前にして立ち竦むように、私は何も出来ないでいた。
「あなたにとっても悪い話ではない。何に怯えることもなく、心の赴くままに行動出来る。……“オルデンの魔狼”とは、協会の意向に背き続けて、孤立しながらも誇り高き狩人であることを貫き通した英雄への尊称であったのだろう?」
「い、いや、しかし……」
 私は私の信念に従って戦い、愛する妻が何者にも脅かされない国を守る……この上なく魅力的な誘いだ。
 だが……
「……出来るはずがない。そんな危険な賭けに乗って、すべてを失うわけにはいかない」
「なるほど。カッツ先生といえども、守るべき者が出来た上に、今の体制に組み込まれてしまえば牙も抜けるということなのか……」
 失望混じりの呟き。そして、私を貫く視線は、刃の鋭さと北風の無情さを帯びた。
「ならば、牙を取り戻させてあげましょう」
「……?」
「あなたは戦うしか無いんですよ。逃げることすらせずに流されるだけの者は、必ずそのツケを支払う時がくる。――レオ!」
 ミューゼルが呼びかけると、ノックもせずに扉が開く。
 現れたのは、いかにも気弱げで小柄な少年と――我が最愛の妻、ナイダだった。
これでも充分長いですが、後編はもっと長いです。
せっかく、ご指摘を頂いたのになぁ……。

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