「シュタインが解放されたぞ!」
「これでザーンの母さんに会いに行けるようになった」
「あの方が、たった一部隊で“北風”をやっつけたらしいぞ!」
「ミューゼル王子万歳!」
「淫魔どもを皆殺しにしてくれ!」
「無能な国王は退陣しろ!」
「まいったな、これは」
フードを被ったミューゼルが、声を潜めて苦笑した。
我々三人――ミューゼルと、その両脇を固めるフリッツとこの俺オスカーは、要塞都市シュタインから帰還早々、ハンター協会会長のリューニヒから指令を受けた。
内容は、王都を荒らす淫魔の退治。
王都ディンの一般人や警護を務めるハンターが、次々と行方不明になっているらしい。
協会は、一連の事件が王都に潜入した淫魔の仕業であるとして、ミューゼル隊に調査を命じたのだ。
とはいえ、ミューゼル隊のほとんどはシュタインと周辺地域に残り、事後処理に追われている。
ゆえに、隊長自らがこうして街中を歩き回る羽目になってしまった。
「民意にお応えになって、国王となり淫魔を粛正でもしますかな?」
「バカぬかせ」
俺のいささか過激な冗談に応えたのは、ミューゼルではなくその左隣を歩くフリッツだった。
ここはオルデン王国の王都ディン、その繁華街である。
日が落ちてなお人通りが激しい――というより、宵を迎えてからが本番といったところだろうか。
男をもてなす酒場の客引きは騒がしく喚き立て、路上に商品を並べる露店は朝昼と違っていかがわしい薬やら不可思議なデザインのアクセサリーやらを売りつけている。既に酔いの回った壮年の男たちが大声で歌いながら肩を組んで歩き、人前で寄り添いすぎの恋人たちは彼らを避けながら楽しげに語り合っていた。
王国でも随一の賑やかな場所であるが、今夜はそれでもいつもより喧噪が過ぎる。
それもそのはず、王国の北方を長い間支配してきた“北風”のベルが倒れ、要塞都市シュタインとその周辺地域、ならびに港湾都市ザーンへの道が再び開けたからだ。
――民衆はこれまで、淫魔の恐怖と王国への不満を抱えていた。
オルデン王国と、そこに所属するハンター協会は、淫魔の侵攻に対して常に後手に回っていたからだ。
淫魔に襲撃されて滅ぼされた集落も少なくなく、特に都市部から離れた辺境は淫魔の脅威に怯えていた。
そして一年半前、“北風”によって北方地帯が封鎖され、王国の経済と威信は地に墜ちる。
王国と協会が幾度となく奪還作戦を展開しても“北風”は破られず、民衆は我が身の不安と王国への不信をいっそう募らせていた。
王国と協会は、国民に信頼されない存在になりつつあったのだ。
そんな情勢の中にもたらされた、王弟でありながら淫魔ハンターでもあるミューゼルが“北風”を振り払ったという吉報は、王国中の人間に覆い被さっていた暗い影をも振り払ったのである。
無能な国王エルウィンと利権のみを追求するハンター協会会長リューニヒ、国王に疎まれながらも次々と辺境を解放し淫魔を退けていく王弟ミューゼル……民の心が誰に集まっているのかは、子供でも知っていることだ。
機は熟し始めている。王国が変わる時も近い、ということか……。
「隊長は、どうお考えになられますかな?」
「国王になるというのはさておいて、淫魔を全滅させるというのは本質的ではないな」
ミューゼル隊長殿下は、フードからはみ出そうになる金髪を押し込めながら口を開く。
いちいち顔を隠して歩かなければならぬとは……有名人、ましてや英雄だの救世主だのと呼ばれる人間は苦労が絶えないものだ。
「淫魔が恐ろしいのはつまるところ、自分や家族の命が危険にさらされるからだ。ならば、淫魔が脅威にならないようにしてやれば、別に全滅などさせなくとも民意に応えたことになるわけだな」
「出来ますかな? 淫魔が脅威にならない世、などというものは」
いささか挑発的に取れる俺の物言いに、フリッツが横目で睨み付ける。しかし隊長は意に介した様子もなく、フリッツも抗議をしようとはしなかった。
両者とも、俺がこういった態度を取らずにはいられない難儀な性格をしていることは、既に熟知しているからだ。
「出来なければ、人という種族が滅びるだけだ。今も淫界から次々と淫魔が人界に送られ、それに抵抗出来るのはハンターという一握りの戦士だけだ。人間側の戦力は、極めて少ない」
雑魚の淫魔にすら、性を生業にしていた男娼や娼婦が手も足も出なかったという史実が残っている。
ハンターがいかに選ばれた存在であるか……それゆえに希少であるか、自ずと理解出来るというものだ。
「淫魔という種族の性格上、今のところ戦略的な大規模侵攻というのは無いが……淫魔側の実力者に、ベルのような思考とあいつ以上の統率力を持った人物が出てくればどうなるか」
「そうでなくとも、散発的な襲撃でさえろくに防げぬ有様ですからな」
「そういうことだ。人間が生き延びるために淫魔を皆殺しにする――現実的では無い。不可能だ。それを行うには、人間側には数も質も思想も足りない」
「ゆえに、人と淫魔の共存する世界ですか?」
「長期的な目で見れば、人間という種が生き残るのは、それしか無い」
断言するその空色の瞳に、迷いは無い。
「受け入れられますかな? 人々は、淫魔を恐れ、憎んでいます」
「もちろん、大多数の人間は受け入れられんさ。だからこそ俺が立ち上がり、おまえたちが居る」
「力による押しつけも、辞さないと?」
「……恐ろしいか? 自分の意思に関係なく、無理やり淫魔を隣人にさせられることが」
ミューゼルは歩みを止めた。遅れて彼の数歩前で立ち止まる俺とフリッツに、両手を広げて見せる。
「ならば、俺を殺すがいい。なんなら国王やリューニヒ会長殿に売ってもいいぞ。ウォルフやハルトなどと違って、おまえたちにはしがらみなどあるまい」
無防備に、だが一片の恐れもない尊大さで、ミューゼルは笑った。
「俺は確実にこの世界を変える。止めるなら、今しか無いぞ?」
――雑踏が、惹き付けられた。酔っぱらいも、客引きも、露天商も、恋人たちも、一人の者も、仲間同士つるんでいた者たちも、まっとうな者も、ならず者も、周囲の人間は皆我々……否、ミューゼルを見ている。
太陽が、手の届く場所で輝いているのだ。目を奪われぬはずがない。
「へへ……」
フリッツが、嬉しそうに笑声を漏らした。その身はわずかだが震えている。おそらく、俺も同じだろう。
そうだ。これがミューゼルだ。
――かつて、処刑されそうになっても国王にすら頭を垂れなかった俺が、自ら跪いた人間。それこそが、この男なのだ……!
「なに言ってんですか隊長。あいつらのケツを舐めるぐらいなら、淫魔の奴隷になった方がマシってもんですよ」
地声が大きいフリッツの言葉は、周囲の人間にも聞こえたことであろう。
ただでさえ王国や協会に目をつけられているというのだから、今の時点であまり反動的なことは口にするべきではないのだがな……。
とはいえ、気持ちはわかる。この男の力になれること、それこそまさに男の本懐だ。
「そのような物言い、心外ですな。この俺が、変わりゆく歴史の流れを止めようとするほど、愚かだとでも?」
しかし、本心を表すのは俺の流儀ではない。不適な表情を作って、正面から太陽を見据えた。
そんな俺たちの態度に、ミューゼルもまた満足そうに唇を歪める。
と――
「あれ、ミューゼルじゃないか?」
「うん、そうだよ……俺、見たことある」
周囲からぼそぼそと聞こえる、民主の声。
……ちっ。さすがに気付く者も出るか。
「ミューゼル様! オルデンの救世主様!」
「シュタイン解放の英雄だ!」
わらわらと、あっという間に人だかりが出来た。
俺とフリッツを押しのけ、ミューゼルの周りに一般市民が集まっていく。
「シュタインだけじゃねぇぞ! 俺の故郷も救ってもらったんだ!」
「ミューゼル様、どうしてミューゼル様が国王にならないんですか!? 今の王国を救ってくれるのはあなた様しか居ません!」
狂ったように、周囲に熱が広がっていく。誰の目にも宿るのは、英雄への崇拝と依存だ。
くそっ、これではミューゼルを狙う暗殺者が混ざっていても、止められるものではない!
「オスカー、フリッツ! おまえたちは先に行け!」
狂騒の中でもなお通る声で、ミューゼルは俺たちに呼びかけた。
「しかし!」
「どうしようもあるまい! 任務はおまえたちに任せた! 俺は先に戻っているぞ!」
確かに、そうするしかないか……!
ミューゼルは人々の言葉に「今は任務中だ、また今度にしてくれ」と返すが、彼らは聞く耳を持たず、今にも押し潰さんばかりの勢いで迫っている。
「ちくしょう、これだから『善良な市民』って奴らはよ!」
俺はそれに応えなかったが、まったくの同意見だった。
……愚民どもが。無力を理由に、今まで王国や協会の専横を許してきたのは貴様ら自身ではないか。
その結果、権力者どもは私腹を肥やし、協会はそれらと結びついて、彼らに媚びぬ者たちは見捨てられたり排除されたりすることとなってしまった。
国王に満足な貢ぎ物を送れなかった領土や貧困にあえぐ辺境は、国王と結びついた協会によってハンターが派遣されず滅ぼされていった。
協会の会長に媚びへつらわなかったハンターたちは、ろくな支援も無く人数も確保出来ないままに激戦区へと送られ、帰らぬ身となった。
政治は腐敗し、王都から離れた場所では淫魔がはびこるようになっている。
このような国にしたのは、王を始めとする権力者だけの責任ではない。自ら血を流すことを厭い、自分が傷つかなければ他者がどうなろうと知ったことではないと目を背けた、民衆一人一人の罪なのだ。
……このような愚民ども、守ってやる価値など無い。
むしろアルフやブルーノのように、ミューゼルの国造りの礎となって散っていくのが、唯一有用な命の使い方であろう。
呑気に英雄へすがりついているのも今のうちだ。その怠惰と無責任の罪、いずれその身で購うがいい。
「フリッツ、行くぞ」
俺は苛立ちに全身を強張らせながらも、なんとかそれを押さえ込んで人の輪を押しのけた。
こんばんはー! アタシの名前はリンでーす!
王都ディンに潜入した、うでききびじんスパイなのだー!
お仕事はー、じょーほーしゅーしゅーと、撹乱と、ついでに行方不明のお友達のクフリちゃんのそーさく!
特技はー、変装とー、演技とー、あといっぱーい!
おっぱいがちっちゃいとか、背がちびっこいとか、みんな変装のせいだよ! ホントだよ!
これでも、ハンターの人をつまみ食い……じゃなかった、闇から闇へ始末してきたんだから!
うでききびじんスパイのリンちゃん、向かうところ敵無し!
……でもでも、最近ちょっと不安。ベル様が、ハンターの人にやられちゃったんだって。うにゅー。
ベル様って気まぐれちゃんだけど、実力はピカイチなんだよね。家柄は大したことないのに、グリューネ様の右腕になっちゃったぐらいだし。
アタシ、ベル様好きー! ぽやぽやしてるのに、くーるなのがいいよねー。こーまんちきのラーデだって従っちゃうぐらいだし、たいしたもんだよ。
左腕のレッサ様はおバカだから、ますますベル様のファンになっちゃう!
……なのに、やられちゃったなんて。くすん。
そのベル様を倒したハンターって、どんなんだろ? ミューゼルっていってたよね。
仇討ちしたいけど、本当にベル様やっつけちゃった相手なら、しんちょーにいかないとねー。
よーし、まずは部下の人からいっちゃおうか!
うーん、うーん……よし、あのバカっぽい人にしよっと!
「ったく、リンってのはどこに居やがるんだ……」
あの三人の中では割とちびっちゃ目な人……フリッツって呼ばれてたかなぁ、あの人が上手い具合に路地裏まで来てくれましたー。
ふっふっふ、ここは既にアタシのフィールドなのだー。ガラの悪い人とかふろーしゃさんとか、邪魔だったから消えてもらいましたー。天国ってところに行けるといいねー。
アタシは物陰に隠れて、観察してまーす。フリッツくんは、短く切った銅色の髪の毛をがしがし掻きながら、きょろきょろ首を回してアタシを探してるみたいでーす。
うーん、なんでアタシのことバレたんだろ? ま、いいや。フリッツくんを美味しく頂いた後に訊こっと。
「はーい! そこのバカっぽいお兄さーん!」
どばー! ってアタシが飛び出ると、
「うぁおっ!?」
裏声出してフリッツくんはびっくりしてくれましたー。あはは、いい反応―。
「び、びっくりさせんな! なんだってこんなガキがこんなところに……」
「ぶー。ガキじゃありませーん。ちょっと変装してるだけなのにー」
「あぁ?」
フリッツくんは怪訝そうにアタシをじろじろ見ます。うーん、この前ロリぃなハンターさん堕とした時のかっこー、そのまんまだからねー。
ゴスロリって言うのかなー。ひらひらの黒い服にガーターベルトって、すっごいマニアックな組み合わせー!
そんで見た目もさらさら銀髪の7,8歳の女の子ぐらいだし、変装が完璧すぎちゃってフリッツくんみたいなバカっぽい人には、見破れないかなぁ。
「…………?」
あれあれ? フリッツくん、なんだかいきなり目つきが鋭くなっちゃった。
「なんだこの匂い……それに、淫気が残って……?」
「あらあらー。おバカかと思ったら、意外とするどーい」
「だぁれがバカだ、このクソガキ!」
「ふっふー。人を見た目で判断する人はー、やっぱりおバカちゃんでーす!」
「なんだ――」
アタシはぶりぶり怒っているフリッツくんの足に、体当たりを仕掛けましたー。わーい、鋭いタックルー!
「――と!?」
咄嗟に避けようとしてるけどー、無駄無駄無駄ー。
アタシの中には体術の達人の動きもインストールされてるから、油断してたフリッツくんの足をウリィィィって払うぐらい簡単なのです。
ズボンの裾を掴んでー、瞬間的に筋力を強くしてー、ほりゃっ!
「ンなっ!?」
咄嗟に受け身を取って頭を打たなかったのはさっすがー。でもでも、仰向けに倒れちゃったのはマイナスポイントー。減点減点!
アタシはずばっとフリッツくんの太腿に座って、両足首に抱きつきまーす。
じゃじゃーん! リンのスペシャル必殺技その1−! ぶんりのーりょくー!
まずはー、人差し指を掴みまーす。引っ張りまーす。ずるずるずるずるー! 伸びる伸びーる伸び伸びーる!
きりのいいところで引きちぎりまーす。そしてー、ぐるぐるフリッツくんの両足を縛ってー、かんせーい!
「げっ……!」
倒れたショックから立ち直ったフリッツくんが気が付いた時には、もう遅いのでーす。しっかり縛っちゃったもんね。
これがスライムの特性が半分入ったアタシの能力、メタモルー!
自由自在に体を変形させて、分離させることも出来ちゃうの。もちろん、他人にも変身出来るしー、それどころか物にだって化けられちゃう! すごいでしょ!
「フリッツくーん、お楽しみはこれからですよー」
「こ、このガキ……っ!」
ぶりぶり怒っちゃってるけどー、無駄無駄無駄ー。
さてと、フリッツくんが上半身を起こして掴みにかかる前に、やることやっちゃいましょー!
指先を刃物に変えてー、ちょっきんちょっきんちょっきんなー。
「あ、こらてめっ! 高かったんだぞ、それ!」
「後で買ってあげるから、心配ごむよー」
あっという間に、フリッツくんの素足が出てきちゃった。アタシって、器用だねー。
「では、いただきまーす」
蒸れ蒸れの右の足指を三本ぐらいまとめてくわえちゃいましたー。
ぺろぺろって舐めて、じゅぼじゅぼって頭を動かして、じゅるじゅるって唾をまぶしてすすりまーす。
「ぬぅっ……」
んっふっふー。息が荒くなってきましたねー。自分の汚いところをいっぱいしゃぶられると、男の人ってすっごい興奮するんだよねー。
「おいひいでふよー」
っとと、味わいながらじゃ上手にお喋り出来ないや。ちゅーって親指吸ってから、ぽんって離しちゃいます。
「臭くってー、汗まみれでー、ねっとりしててー。んふー、ちゃんと洗ってますー? きったなーい」
「ぐっ」
悔しそうにしちゃって、
「なさけなーい」
「ンのガキゃ――」
怒って無理やりアタシを引っ張ろうと足を掴んできましたー。でも駄目―。
まずはー、足の裏を舐め舐めしちゃーう。ツボ刺激しながらだから、こちょばいっていうより気持ちよくて力が抜けちゃうんだよ。
「はっ……」
案の定、フリッツくんは手の力が弱くなっちゃいましたー。まだまだこれから本番なのにね。
リンのスペシャル必殺技その2ー! ぶんしんのーりょくー!
ベロを二本に増やしましたー!
それで、足の指の間をねっとりじっくりほりほり抉るように舐めるべし! ってしちゃいまーす。
「く、そっ……」
おフェラとダブルベロ攻撃で、フリッツくんの右足もうメロメロー。うん、これなら逃げられないね。
フリッツくんの足首を縛ってた指紐を解いて、左手と合体させまーす。
そんでそんで、ちょっと大きくなった手の平にー、リンのスペシャル必殺技その3ー! へんけいのうりょくー!
「あー、そだそだ。今回はフリッツくんにも説明しましょー」
「…………?」
「アタシは、体の一部を好きなように変形することが出来ちゃうの。例えば、指先を刃物に変えたりとかー、手の平を女の子のエッチな穴にしちゃうとか!」
「うげっ!?」
「ひっひっひー。そーぞーしちゃった? フリッツくんってば、どすけべー。ではご期待にお応えしまして、いっつぁしょーたーいむ♪」
アタシの手の平に、ちっちゃな穴が一つ出来ちゃった。んで、これをフリッツくんの左足の親指に、れっついんさーと!
ぬぷぷっ!
「ふあぁっ!?」
「かわいーけど、なさけなーい。指を弄られちゃってるだけなのに、女の子みたいな声出して恥ずかしくないのー?」
でも仕方ないか。じゅぷじゅぷって音がして、ぬるぬるってフリッツくんの親指にまとわりついちゃってるんだもんね。
「まだまだいくよー! 今度は二つめー!」
「げぇっ!?」
手の平の穴を増やしてー、今度は人差し指をずぶっ!
「ぬうぅぅっ……!」
「フリッツくん、聞こえるー? ぬちゃぬちゃって、すっごい音するよ? あはっ、指がぴくぴくしてますねー。もっと可愛がって欲しいのー?」
「クソ、がっ……!」
「もうめんどーになっちゃったので、全部いっぺんにいきまーす!」
手の平を大きく変形させて、フリッツくんの足の指五本、全部入るように穴を作りましたー!
そしてー、ねじ込む!
「んっふっふ、どうですかー? 一言感想お願いしまーす」
「だぁれが……こんなまどろっこしいのでイクかよ……!」
「むー。素直じゃないんだからー。声が上擦ってるのに、説得力ないよ?」
手穴の中をぐちゅぐちゅに動かすと、フリッツくんの足の裏が仰け反っちゃった。
「ほら、やっぱり気持ちいーくせにー」
「へ、へっ、この程度でほざけよ!」
「むむむー。そんなこと言う人には、こうでーす!」
思いっきり、上下に手を動かしちゃうもんね!
穴の中の肉襞が、フリッツくんの指を弄ってしゃぶって、ぬるぬるにして、揉みほぐして、
「な、なんだこの感触……!?」
やわらかーく擦りつけてぇ、いっぱーいやわやわってしてぇ、きゅっきゅって締めつけちゃう!
「やめっ、あっ……頭がおかしくなるっ……!」
「だいぶ素直になりましたねー。んじゃ、ご褒美あげちゃいまーす」
アタシは腰の部分を変形させて、黒い尻尾を生やしちゃいましたー。そんでそんでー、フリッツくんのズボンの前を器用に開けてー……って、
「うわぁ、すっごぉ……」
いっぱい使い込んだって感じの黒ーいおちんちんが出てきたんだけど、これがおっきーの!
びくんびくんって元気に跳ね回っててー、なんかあちこち出っ張っててー、かったーい!
「でもでもぉ、いっぱい濡れ濡れぇ……そんなに気持ちよかったんだ?」
「へっ……ハンデだよ」
「むむっ。まーだ生意気言っちゃって!」
尻尾を伸ばして、亀さんにキスっ。
「っ……」
「こーんなにねばーってしてるのに、強がりはいけませーん」
「先走りを出させたぐらいで、いい気になってんじゃねぇぞ……っ……!?」
お喋りの途中で、足指をじゅるじゅるって啜ってあげちゃうもんねー。ほら、声が上擦って気持ちよさそーなのに。
「せっかくすっきり出させてあげよーと思ってたのにー、そーゆー態度はいけないなぁ」
「調子こいてんじゃねぇぞテメェ……!」
「でもでもぉ、フリッツくんさっきからやられっぱなしだし? どうせ出しちゃうんだから、素直になりましょー」
尻尾を伸ばして、たまたま袋に巻き付けちゃいまーす。さらにさらにー、お尻の穴にもずぽっ!
「ふがぁっ!?」
「あはは、変な声ー!」
「くそ、がっ……!」
袋をゆさゆさして転がしてー、お尻の穴の中は尻尾をゆっくーり出し入れしてあげるの。そんで、左足の指は手のひらのエッチ穴をいっぱいずぼずぼ激しくして、大サービスで右足の指はぱっくりお口で食べちゃうー!
「っっっっ!?」
ベロを一気に四本まで増やしちゃって、指のお股をていねーいに味わってあげるとー、フリッツくん悶絶ー!
ついでにお尻の中の尻尾も優しくうねらせちゃうとー、
「くぁっ……わ、ワケわかんねぇっ!」
もう泣き言漏らしまくりー。んっふっふー。
フリッツくんは腰をばったんばったんって、上下がくがく動かしてるけどー、おちんちんには触ってあげないもんねー。お仕置きでーす。
ついでにー、尻尾の先っちょと胴体を変形させてー、ベロを作りまーす。そんでもって、あちこちをペロペロペロ!
「んひぃぃぃっ!?」
んっふっふー。フリッツくんは両手で頭を抱えて、のたうち回るぐらいしか出来ることが無くなってますねー。
仕方ないよね。足指を徹底的に弄られるなんて普通じゃなかなか無い体験をさせられている上に、お尻の中をぐにゃぐにゃに舐められまくりなんて、絶対に出来ない体験もさせられてるもんね。
もう、頭の中はぐっちゃぐちゃって感じかなー? 足指おフェラをやめて、見てみよっか。
「ぷっ。あはは! フリッツくん、すっごいぶさいくー!」
お顔くしゃくしゃになってて、もう最初のえらそーな態度とか欠片も残ってなーい!
「あれだけ大口叩いてたのに、恥ずかしいねー」
「んぐぐ……っ」
「ねー、おちんちん、触って欲しい?」
「た、頼むっ……!」
「んー……でも、さっき生意気な態度だったしー……うん、もうちょっと遊んでからね!」
「っ……!!」
悲しそーな目をしても、ダメダメよ?
エッチ穴で遊んであげてた足指を解放してあげてー、フリッツくんのお腹の上に座り込んで、と。
「じゃじゃーん」
ドレスの上半身をはだけて、幼女おっぱいを見せてあげる! ……けど、反応いまいちー。フリッツくん、ロリコンさんじゃないんだね。
「つまんないなー、もう」
仕方ないから、さっさとフリッツくんの服を破いちゃいましたー。んでね、アタシの上半身を倒して、自分の乳首とフリッツくんの乳首をちゅーさせるの。
最初はツンツン。そこそこのハンターさんだと、これぐらいじゃあんまり感じないんだよねー。
でもでもー、乳首を変形させてー、エッチ穴を作っちゃいましたー!
「っ……!?」
フリッツくんが、ぎょっとした顔になりまーす。ちっちゃい穴なのに、よく見てたねー。
それでは、普通じゃ絶対に体験できないシリーズ第2弾! 乳首挿入ー!
「えいっ♪」
にゅぷっ、って音がしてフリッツくんの両乳首をくわえこんじゃった!
「あ……っ!?」
うにゅうにゅっ! エッチ汁たっぷり乳首に塗ってー、はむはむって挟むの!
「はあぁぁぁっ!!」
んふふー、もちろんお尻を弄るのもやめないよー。
さっきよりも、もうちょっと早く抜いたり出したり抜いたり出したり、そのたびに尻尾ベロがお尻の道のあちこちをぬるぬる舐め舐めー。
「くぁっ、なっ、きっ、ああっ!?」
「お尻と乳首を弄られて感じてるなんて、女の子みたいだねー」
アタシの肌とフリッツくんの肌が、すりすり触れ合うのー。つるつるの女の子のと、汗まみれの男くさいのが、ねちゃっねちゃってくっついて離れてくっついて離れて。
フリッツくん、お口が半開きになってよだれまみれ。お目々も充血してて、今にも泣きそー。
「も、もう……」
「んー?」
「頼む、お願いします、入れさせてっ……!」
「アタシの幼女おまんこにー、いっぱいじゅぼじゅぼしたい? きつきつの穴がきゅってフリッツくんの締め付けるの、すっごい気持ちよさそうだもんねー?」
「うん、うんっ!」
「でもでもぉ、フリッツくんのおっきーから、おなかいっぱいになっちゃいそー。アタシ、壊れちゃうかも」
アタシが迷う振りすると、フリッツくん泣きそうなお顔になっちゃった。
「あはは! 嘘だよ! おバカで弱っちくてなさけなーいフリッツくんのお願い、聞いてあげるから、ね?」
フリッツくん、今度はうれしそーにしちゃって。もうホントに駄目な人だねー。
「ほら、フリッツくん見て見てー。今から、フリッツくんのだらしないおちんちん、食べちゃうの」
お名残惜しいけど乳首セックスは中止してー、フリッツくんのおちんちんの上に跨ってあげて、と。
「それじゃ、いただきまーす」
一気に腰をじゅぼって下ろして……っ!?
「くぅっ……!」
「ああぁん!?」
なにこれ、おっき……すごっ!
「ふとっ、硬いぃ……」
鉄みたいにかちんかちんで、火傷しそーなぐらい熱くって、膨らんだ雁がエッチ穴のひだひだに引っ掛かって、ごつごつ出っ張りがあちこちぐりぐりって押しのけてぇ!
しかも、おちんちんに垂れてた亀さん汁が、美味しいの! すっごく美味しいの!
「やぁん! これっ、はあぁっ! やっ、やぁぁ!」
溺れ、ちゃいそっ……あああっ! 頭のてっぺんまで串刺しにされてるみたい!
そのうえ、お腹の中から体が無理やり開かれてるみたいで、んんっ! 精気、美味しっ! たまんないぃっ!
「危なかったぜ……」
「…………?」
夢中になってるアタシの耳に、フリッツくんの心底安心したような声――
「けど、なんとかなったか。くそっ、あんな演技させられてるようじゃ、オスカーやウォルフにゃまだ追いつけねぇってわけだよな」
「そん、な、今までのみんな……!?」
「いーや、結構やばかったのはマジだぜ。入れてもらうまで何も出来ねぇ、ってのはさすがに初めてだったからな。けどよ……」
今までろくに動いてなかったフリッツくんの手が、アタシの腰をしっかりと掴んで、
「屈辱に耐えた甲斐があった、ってもんだぜ!」
ずん! って腰をぶつけてきたのぉ!
「ひゃああぁぁぁんっっ!!」
「ほれ、今まで可愛がってくれやがった礼だ! たっぷりよがれや!」
ぱっちんぱっちん音が響くほど激しく打ち付けて、アタシの奥をごつんごつんって、ああぁん! やっ、わっ、なにこれっ!? こんなおちんちん、聞いたこともないよぉぉぉ!
「や、やめっ、お願いっ、おねがっ――んんんんんんっっっっっっ!!!!」
「てめぇの穴が気持ちいいからよ! 俺のだらしないチンポが耐えらんねぇんだ! 悪ぃな!」
さっきまでのだらしないお顔が、今は人が悪いにやにや笑いを浮かべて……うぅ〜! 悔しい……はぁん!
どう、しよっ、こんな、強いっ、何も、何も考えられなっ、お尻、壊れちゃっ――お尻、そだっ!
「っっ!?」
ぎゅーって、フリッツくんのお尻に入れてた尻尾をさらに差し込んであげちゃう!
「てめっ、悪あがきをっ!」
さらにっ、べろべろって舐め舐めもいっぱいいっぱい……んっ、やあっ、腰ぐりぐりって、フリッツくんすごすぎっ!
「にゃあっ!」
「つぅっ!」
ちょっと動きが鈍った! この隙に、リンのスペシャル必殺技その……いくつだっけ、とにかく、技ー!
エッチ穴の性感帯を、移動ー! これでっ、エッチ穴をいくら責められても気持ちよく無くなるもんねー!
「!? 感触が……」
うー、バレちゃったか。感度が悪くなる分、エッチ穴の攻撃力も落ちちゃうんだよね。
でもそこはリンちゃん、ぬかりありませーん! エッチ穴のひだひだに、ベロを生やして、舐め舐め舐め舐めー!
「な、なんだ……!?」
フリッツくん、驚いてる驚いてる! よーし、これでアタシの勝ちは決まったもどーぜん――
「ひゃあっ!?」
ずずん! って激しく突いてきた! 全身にフリッツくんの感触が響いちゃうっ……!
「よくわかんねぇが、この程度で俺をどうこう出来るつもりか!? あぁン!?」
なんてむちゃくちゃなおちんちん……! でもでもっ、さっきよりはだいじょーぶなんだから!
おちんちん、たまたま袋、お尻の穴の三つを、増やしたベロで、てってーてきにいじくっちゃう!
「っく……らぁ!」
自分でずんずん腰を動かしてるけど、時々びくんっびくんって弱い時がある。うん、効いてるね!
でもぉ、
「やぁんっ! くるっ、喉まできちゃうのぉっ!」
ずっぎゅんずっぎゅん、フリッツくんのおちんちん、勢いが激しすぎて、んんんっ!
たまたまを押し上げて転がして、お尻の穴を何度も何度もずぼずぼしながら奥まで舐めて、おちんちんなんて竿ちゃんも亀さんもお口も全部ぺろぺろってしてあげてるのに、
「くぅぅっ、くそっ、敏感なとこばっか、尿道までかよ、ヤベっ……!」
弱音吐いてるのに、アタシの方が、
「駄目、飛んじゃう、飛んじゃうよぉぉぉ!」
どうしよ、どうしよ、このままじゃ――駄目っ、限界っ!
「やぁぁぁん!」
「なっ!?」
アタシは足を突っ張って、イッちゃう直前でフリッツくんのおちんちんから逃げ出した!
ちゅぽん! っておっきな音がして、アタシのお股からアタシとフリッツくんのエッチ汁がねばーってひっついて、垂れ落ちちゃってる……
「んのっ!」
フリッツくんはアタシの太股を掴んだ手に力を込めて、もう一度挿入させようとするんだけど、
「駄目ーっ!」
筋力増加、振り払っちゃう!
「げっ……」
どうしよ、フリッツくんっておちんちん以外責めても墜ちてくれそうにないし、けどおちんちん入れるのは危ないしお口で舐めちゃうのだって怖いし――そだっ!
アタシはフリッツくんの太股にお尻をついて座って、変身で作ってたブーツだけ解除して、ストッキングに包まれた足でおちんちん挟んじゃう!
「テメェっ!?」
「どーしたの? もしかしてフリッツくん、足でされるの大好きなんだー?」
「ふざけ――」
さすさすって、擦っちゃう!
「な、うっ……」
「気持ちいー? ストッキングの感触で、こすこすされるの、どう? 淫魔の肌じゃないんだよー、これ、ただの布地なんだよー?」
アタシの着てる衣装って全部、ホントは変身で作ったんだけどー、言わないとわかんないよね。
「こーんなちっちゃな女の子に足でされて、あんあん言うんだ?」
「ナメてんじゃねぇ……!」
フリッツくんは手を伸ばしてアタシを引き寄せようとするけどー、
「ああぁっ!」
お尻の穴とたまたま袋には、まだベロ尻尾がくっついてるんだもんね! ペロペロってしたら体に力が入んないよ。
鍛えたハンターさんだから、ピストンぐらいは出来るかもだけど、いまおちんちんは足で挟まれてるから無駄無駄無駄ー!
「ほら、ほら見てフリッツくん!」
しゅっしゅってさすって、べとべとの亀さん汁を足の裏にまぶして、おちんちん前後左右にぐにぐに動かしちゃう!
「クソったれがっ……!」
すっごい悔しそうな顔してるけど、でもすっごい気持ちよさそーにしてるねー。
「やっぱこういうの好きなんですねー。フリッツちゃん、リンがいい子いい子してあげるー」
爪先で亀さんの頭を撫で撫でして、お口をくぱって無理やり開いちゃう!
「っっっっ!!!!」
気持ちいーどころか痛いんだけど、お尻の穴をぐにゃぐにゃって抉って舐めちゃうから、おちんちんの痛いのも気持ちいーって勘違いしちゃうの!
フリッツくん、脂汗流して苦しそうなのに、体から力が抜けちゃってるねー。
「ん、のっ……!」
おおっ!? フリッツくん、腰をがくがく動かし始めたよ?
気持ちよすぎて……じゃないよね。もしかして、アタシを感じさせようとしてるの?
「あははー! フリッツくん、足って気持ちよくならないんだよ? あ! もしかして、もっと虐めて欲しいのかなー?」
「さあ、な!」
フリッツくん、めげずにアタシの足裏に自分からこすこすしてまーす! 無駄なあがきー!
「はっ、はっ、はっ、はっ……」
「んっ、必死、だねー? ふつーなら手を出すと犯罪な女の子に、足で出させて欲しくて頑張ってるのかなー?」
「んくっ、クソっ、クソっ!」
なんか……だんだん変な感じになってきちゃった。足の裏に、ごつごつって硬いのが擦りつけられて、熱いのが何度も何度も通り過ぎてって、さっきのフリッツくんに貫かれた時の感触を体中で思い出しちゃって……
「あン、やっ……」
か、感じちゃってる……嘘っ、アタシ、足で感じちゃってる!
「んふっ、あっ」
「くぅっ、このっ」
ううっ、足なのにこんなっ……イッちゃいそ……!
むむむっ……こーなったら、テクニック以外で責めちゃうしか!
「あーあー、はずかしーねーフリッツくんってば。自分からしこしこしちゃってー」
「うっ、くっ」
「あれー? 亀さんの涙が止まらないねー? 恥ずかしいのが気持ちいーの? フリッツくんって、へんたーい」
びくんびくん、おちんちんが跳ねてる! もう少しでイキそう!
足でおちんちん全体を、むちゃくちゃにぐにゃぐにゃ擦っちゃう! 亀さんも、竿も、根本も、みんなぐちゃぐちゃー!
「フリッツくん、よかったねー。呪縛したら、死んじゃうまで足でしてあげるからね!」
おちんちん虐めてた足の力を緩めてー、さわさわって表面だけかるーく撫でるだけに切り替え!
「っ……!?」
フリッツくん、戸惑いながらアタシの足におちんちんくっつけようとしてるー。でも引いちゃうの。
ふふー。ピストン攻撃も、おちんちんが触れなきゃ意味ないもんねー。
「フリッツくん、今、自分から足を探してたよねー。そんなに、足コキお気に入り?」
「なっ……!?」
「アタシは見逃しませんでしたー。フリッツくんってば、やっぱり足でされるのが大好きな変態なんだー!」
「ちっ、ちがっ!」
「違わないよーだ。だってだって、こんなにおちんちん震えてるもん! 気持ちいいから、こうなってるんだよね?」
「……!」
フリッツくんの腰の動きが止まったー! やっぱりおバカー!
「そーんな、ハンターどころか人間失格のフリッツくん……」
「…………」
「イッちゃえー!」
がしっ! ってきつーく足でおちんちん挟んで、しこしこしこしこ!
「ぐあぁぁっ!」
「あれー? 腰、動いてますよー? 足好きの変態さん?」
「くっ……!?」
フリッツくん、もはや為すがままー!
「ほらっ、ほらっ、イッちゃって、イッていいんだよ! 変態でも、アタシがイカせてあげるから!」
「あっ、あっ、ううっ」
あっ、出てきた、もう少し、出るっ、出ちゃえっ!
おちんちんが、もう限界なのが伝わってくるー! まだ本格的じゃないけど、ちょっとずつせーえき漏れちゃってるー!
「あんなに威勢が良かった顔が泣きそーだね! あはは! もう終わり! 白いのちょろちょろって出てきてんだもんね! びゅるびゅるって吹き出しちゃえ! イッちゃえー!」
「あああっ!」
どびゅどびゅどびゅ!
ねばーって濃いせーえきがすっごい勢いで飛び出て、足とか胸とかにいっぱーいかかっちゃった!
「あはっ、フリッツくんってば――」
――横から誰かに頭を掴まれて、無理やりお口の中に……おちんちん!?
喉の奥までちゅーちょなく突っ込まれて、えっ、ええっ!? なになに!? 何が起こってるの!? 他のハンターさん!? いつの間に――
「ちっ、使えんな。さっさと舌を動かせ」
「んー!?」
「グズが……」
ひっ、酷いっ! いきなりこんなことしてー!
お口を離そうと頭を引く――
「何を勝手なことをしている」
とっても怖くて低い声が聞こえたかと思うと、髪の毛を鷲掴みにされてまた喉の奥までっ……!
「話にならんな。もういい。俺が命令してやる。その通りにしろ」
「んー! むーっ!」
やだよー! こんな、噛みちぎって――んんんっ!?
「まずは唾を溜めろ」
出来ないよっ……全然、こっちの思う通りなんてならないっ! 何かしようと思った瞬間に頭を動かされて、何もかもこの人のペース……!
「早くしろ、屑淫魔。この程度、そこらの商売女でも出来るぞ。性に特化した生き物がこの程度とは、貴様は淫魔の中でも最低のゴミだな」
「んんーっ!!」
アタシ強いもん! 人間なんて、全然へっちゃら――
「口が休んでいる」
やあぁっ! お口の中、おちんちん突っ込んでむちゃくちゃにしないでっ!
「唾を溜めただけで済むと思っていたのか? 頭を使え、無能が。ろくに性技も身についていない、脳もまともに働かないでは、生物として救いがないな」
「んんっ! んんんっ!」
アタシ凄いもん! 腕利きスパイで、メタモル能力で、フリッツくんだってやっつけたもん!
「目が反抗的だな、虫けら以下の分際で」
虫けらって、虫けらって違うよ……
「仕方ない、俺が仕込んでやる。良かったな、これで存在するだけ無駄だった貴様の価値が、性処理道具ぐらいに上がるぞ」
せーしょりどーぐじゃないもん……アタシ、腕利きスパイの淫魔だもん……
「ほれ、さっさと舌を動かせ」
髪の毛を掴んだまま、さらに耳も思いっきり引っ張る! 痛い、痛いよ! 淫魔は傷つかないけど、これぐらいの暴力なら痛みだってあるんだよ!?
「ちゅっ、んちゅっ……」
こーなったら、よがらせてやる! そんでもって、呪縛してやるもん!
ベロも増やして、ねっとり、かと思えば激しくこちょこちょって、先っちょも、竿も、みーんな舐め舐めー!
お口の中で、この人のおちんちんがちょっとずつおっきくなっていってるー! ほら、気持ちいーんだ!
「ん……なかなか……」
へへーん、強がっちゃって! どんな顔してるか見てや――
「だが下手クソには違いない」
乱暴に髪の毛ごと、頭を前後させてっ……!?
「ふん、すぐに舌が止まったか。何本あろうが、こんな技術では童貞の子供すら相手にせんぞ」
喉奥、ほっぺた、歯、ベロの表と裏、硬いおちんちんがアタシの気持ちなんておかまいなしに、ぐしゃぐしゃにしていく……
「誰が休めと言った」
「っっ!!??」
踵でアタシの太股を踏みつけっ……痛い、やめてごめんなさいっ!
「されながら、するんだ。これだからカスというのは度し難い。向上心の無い奴は、存在する意味こそ無いと知れ」
「っ……」
「くわえたままでいいから、返事をするんだ!」
突然、怒鳴り声! 怖いよっ、早くお返事しなきゃっ……!
「ふぁいっ! ふぁいぃぃっ!」
「そうだ、それでいい。貴様のような路上に転がる排泄物にも劣る存在を、俺がわざわざ引き上げてやろうとしているんだ。心の底から喜び、尽くせ。俺に仕えることを至福と思え」
「ふぁい……」
涙がぽろぽろ出てきちゃった……見てるものが霞んで、もうぐちゃぐちゃ……
「気持ちいいか? いや、聞くまでもないな。貴様は今、気持ちいいんだ。それでいい、そうでなければならない。それこそが、貴様が存在するための理由なのだからな」
「ふぁい……」
もうわけわかんないよ……でも、この人の声だけははっきり聞こえる……
うん、幸せだよ、アタシ……おちんちん美味しいし、この人がゴミみたいなアタシを助けてくれるんだし……
「よし、許す。飛べ。イッてしまえ」
「ふぁい、わかりまひふぁ……」
頭がくらくらして、ふわふわして、幸せで、心なんて無くなって、この人のおちんちんをしゃぶれるのが気持ちよくて――
「んんんんんっっっっっっ!!!!!!!!!!」
お股からいっぱいいっぱいお汁吹き出しちゃう、イッちゃう、飛んじゃうの、飛んじゃうのぉぉぉぉ!
「褒美だ。たっぷりくれてやる」
そんでそんで、お口の中いっぱいに、ザーメンがたっぷり注ぎ込まれて、またイッちゃう、幸せ、幸せですっ、幸せですぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!
……遠くから、声が聞こえる……
「フリッツを呪縛した淫魔を、俺が呪縛したというわけだ。なあ“黒槍”?」
「……一生の不覚だ」
「そう腐るな。おまえとは相性が悪かっただけだ。それに、おまえが後一歩のところまで追いつめてくれたから、こうも簡単にことが済んだ」
「すまん、オスカー。そう言ってもらえると助かる……」
「が、助けてやった礼は欲しいものだな?」
「何が望みだ?」
「シュタイン解放のパーティを、内々でやると隊長は仰っていた。その費用、おまえが全額負担しろ」
「はぁ!? おまっ、それどんだけ金がかかんだよ!? それに、俺はテメェより給料少ないんだぞ!」
「ご主人様に逆らうのか、フリッツ?」
「ぐっ……」
「パーティの内容は俺が計画してやろう。せいぜい豪勢にするさ。楽しみだな?」
「こ、この野郎! 覚えてろ!」
「ふっ。忘れるはずがなかろう。せっかく握った弱味なのだぞ」
「ぐぐぐっ……!」
「……ん? 目覚めたようだな。起きろ、リン」
ご主人様が呼んでる……お返事、お返事しないと!
「は、はいっ」
まだぼーっとするのを振り払って、アタシは顔を上げた。
月の光を受けてもなお薄暗い、灰色の髪をした男の人……一切の温度がない、冷たさすら感じない瞳……
「舐めて清めろ」
「……はい」
道具を見るような目をしたまま下した命令を、アタシは躊躇いなく受け入れちゃった。
……だって、この人がアタシのご主人様だもん。アタシは、ご主人様の道具になるしか価値がない淫魔だもん。
言われた通り、精液がこびりついたご主人様のおちんちんを、丁寧にベロで舐めて綺麗にしていく。
「リン、変身能力があるそうだな?」
「ふぁい……」
「なるほど。仕込めば、使えるな。ミューゼルの盾ぐらいにはなるか……」
「……?」
上目遣いに疑問を投げかけるけど、ご主人様は応えてくれません。当然だよね、道具なんかに何も教えてくれないよね。
「さて、これで任務完了だ。ミューゼル殿下、次の舞台への布石は整いました……」
その声には、静かなマグマみたいな熱がこもってた。
ミューゼル……噂だと確か、ハンターの部隊を率いる隊長の一人で、王様の弟だよね。
ご主人様がこんなに入れ込むなんて、いったいどんな人間なんだろ……?
「やれやれ……」
俺は薄暗い路地を歩きながら、一息ついた。
周囲には気力の欠片も見えない浮浪者や、逆に俺を襲おうかどうしようか迷っているならず者が何人か座り込んでいる。
本当なら、俺もリンという淫魔を探しに行きたいところだが……先ほどの狂騒を思い出すと、今は気軽に歩き回らない方がよさそうだな。
ベルから聞いた情報によると、ラーデと同レベルの強さを持ち変身能力もある強敵だそうだが、オスカーとフリッツなら何とかするだろう。
互いの位置を確認出来る魔具――魔法の力を有するアイテムを持たせてあるから、万が一に各個撃破されることもないだろうしな。
俺は金髪を押し込めたフードを被り直し、足早に歩を進めた。
と――
「やめて、やめてください……」
弱々しい、女の抵抗の声が耳に届く。
場所をいちいち確認するまでもなく、前方には長い銀の髪の少女と、彼女に迫る青年……チンピラ二人が、往来の隅に固まっていた。
男二人は、女を遊びに誘おうといろいろ語りかけている。とはいえ相手の気持ちを尊重するような素振りなど無く、嫌がる女を見ることを楽しんでいるようだ。
しかし、あの女……微妙な魔力の流れ、ほんのわずかに薄い影、独特の気配……淫魔だな。
淫気を上手く隠しているが、俺の目は誤魔化せない。
……愚物が淫魔に吸い殺されるのは勝手だが、見てしまった以上は放っておくわけにもいかんか。
「おい、助けてやるぞ」
俺は少々投げやりな気持ちでそう言うと、男二人と淫魔がそろってこっちを見た。
男どもは、まあ語るべきところも無いような連中だ。酒と薬に溺れ、暴力で弱者から搾取し強者に媚びへつらう類の、そこらに転がっているタイプの人間である。
淫魔の方は……まあ、淫魔なだけあって、やはり美しい。
流れる銀髪は糸のように細く、月の光を吸い込んで自ら輝いているかのように艶やかだ。
長い睫毛が覆う瞳は愁いを帯び、男の保護欲を自然にくすぐる。
ベルがしなやかな猫なら、こいつは脆いガラス細工のような儚さといったところか。
こいつが、リンという淫魔か? ……いや、男を拒否している態度から考えると、それは無いか。
しかし、不思議な淫魔だ。弱々しい印象しか無いのに、侮れない何かを秘めているような気がする。いったいこいつは――
「ああン? なんだテメェ?」
「顔隠して、正義の味方っすかぁ?」
と、男の一人が不機嫌そうに眉をしかめ、もう一人が小馬鹿にした笑いを浮かべた。
「正義の味方ではないが、いちおうおまえたちを助けてやるつもりなのだがな」
俺は銀髪の淫魔に目をやりながら、ぞんざいに答えてやる。
淫魔は、びくっ、と怯えるように肩を震わせた。……なんだ、妙な反応をするな。
「消えろテメェ」
「おまえたちこそ、さっさとねぐらに帰れ」
「ああ、そう。もういいテメェ――」
男は手慣れた動作で懐からナイフを引き抜き、振りかざした。
「死ねや!」
格闘訓練も必修の淫魔ハンターからすれば、なんということはない児戯だ。
軽く身を引いて避けようと――
「危ないっ!」
淫魔が飛び出して、刃の軌道に飛び出した!? 二の腕を切りつけられるが、淫魔に物理ダメージは通用しない……
「なんだと……!?」
はずなのだが、皮膚が浅く裂けて血が噴き出している。
いったいこれは、どういう――ええい、疑問は後回しか!
「こ、このバカアマが!」
男は苛立たしげに叫んで、ナイフを引いて俺目がけて繰り出した。
「駄目っ!」
淫魔がまたもや俺を庇おうと――何を考えている、こいつは!
俺は眼前に立つ淫魔の腰を抱いて位置を入れ替えると、男のナイフを持った腕を右手で受け流しながら、左手の平で顎先を打ち上げる。
「がっ……!?」
男の首から上は衝撃に揺さぶられて、一瞬で昏倒し石畳の地面に倒れ込んだ。
「げっ!?」
驚くもう一人が、怯えた目を向けながら逃げようと後ずさる。
「待て」
「ひっ……」
睨み付けて言うと、男の足が竦んで止まった。
「こいつを連れて消えろ。手早くな」
意志を込めて命令する。それだけで男はかくかくと首を縦に振って、倒れたもう一人を引きずりながら逃げていった。
「……おい、大丈夫か?」
「あ、ありがとうございま……!?」
淫魔が礼を言いながら俺の顔を見、驚愕に目蓋を広げる。
「もしかして、ミューゼル様……!?」
立ち回っている時に、フードがめくれたか。いささか伸び気味のこの金髪は、目立つのが難点だな。
「淫魔に名を知られているとは、光栄だな」
「あっ……わ、わたしが淫魔だって、わかるんですか?」
「オルデン最強のハンターを侮るなよ。それよりおまえ、何者だ? 怪我をする淫魔など、聞いたこともない」
正確に言えば、淫魔といえどもまったく痛みを感じず傷を負わないということはない。
だがそれは、ほんのわずかだ。性行為、とりわけSMプレイなどでは痛みや傷も刺激となるため、プレイの範囲内程度の物理ダメージは与えられないこともない。
しかし、この淫魔が受けた傷は、明らかに殺傷を目的とした攻撃によってつけられたのだ。
淫魔はそういう攻撃に対しては無敵であり、少なくとも俺が知っている中では例外は無い。
無かった、はずだった……。
「わ、わたしは、そのっ……」
「なんだ? はっきり喋れ」
俺は自分の服の袖を破き、淫魔の腕を取って傷口に巻き付ける。
「え、えっ、そのっ、どうして手当てを……」
「出血多量で死ぬ淫魔が居るかどうかは知らんが、放っておけるものでもないだろう。それとも、問題なかったのか?」
「い、いえ、多分、良くないと思います。死んだことないから、わかりませんけど」
「なるほど、それはそうだな。……手当てと言っても、この場では大したことは出来ない。俺についてこい」
「え? えぇ?」
困惑する淫魔の肩を抱き、彼女の意思を無視して俺は歩き出した。
……いくらなんでも、さすがに宿舎へ帰るわけにはいかんな。隠れ家の方に行くか。
「あ、あのっ、えーと」
「別に焦らなくていい。ゆっくり、落ち着いて、言いたことを整理するんだ」
歩みは遅めに、彼女の気分を解きほぐすように。
周囲の浮浪者やチンピラたちは、遠巻きにこちらを見ている。しかし手出しをしてくる気配は無い。
俺たちは何者にも邪魔されることなく、しばらく亀のような速度で歩いていた。
「……ミューゼル様は、淫魔を殺して回る方だ、ってお聞きしました」
やがて彼女が口にしたのは、何とも淫魔の視点な質問だった。
「そういう仕事だからな」
「そ、そういう方が、どうしてわたしに優しくしてくださるんでしょうか……?」
怯え混じりの赤い瞳で、頭一つ分は高い俺の顔を見上げる。
「少なくとも、今のおまえは人間を殺すつもりはないからだ」
「えっ……?」
「さっきのことで大体わかる。人間を殺すにしろ家畜にするにしろ、そういう目的がある奴は、さっきの二人組を巧みに誘ってどこかに連れ込むだろう。だが、おまえはあの二人を拒否していた。駆け引きではなく、本気で」
つまりこいつは、王都に住む男やハンターを連れ去る淫魔・リンでは無いということだ。
「それに、俺を庇ってくれた。誰かが傷つくのを見るのが嫌なんだろう?」
こくりと、無言で首を縦に振る。
「そういう優しい奴なら、多少は面倒を見てやる気にもなれる。ましてや、我が身を省みず誰かを助けようとするような奴は、人間、淫魔を問わず俺は好きだ」
「す、好き……」
ガラス細工のような淫魔は、顔を赤くしてうつむいた。……やれやれ、本当に変わっているな。
「次は、俺の質問だ。おまえ、淫魔なのにナイフでダメージを受けたな。あれは、どういうことだ?」
紅潮していた頬が、元の白さに戻る。表情には影が落ち、触れるだけで砕けそうな脆さを感じさせた。
「わたしは、出来損ないなんです。そのせいで母様にも迷惑をかけてしまうし」
出来損ない、ね。突然変異というところか?
「淫魔としては出来損ないかもしれんが、おまえの心根は価値がある。自分を捨てられる優しさというのは、誰もが持てるものではないぞ?」
俺がそう言って頭を撫でてやると、
「あ、う……」
淫魔は俺の服の裾を掴んで、再び顔を真っ赤に染めた。
やれやれ。これでは、人間の初心な少女と何も変わらないな。
もっとも、人間と淫魔、両者のメンタルや思考は根本的な部分でかなり似通っているから、そう不思議でも無いのだが。
「…………」
「…………」
何となく黙り込んだまま、俺たちは繁華街の大通りを目指して歩き続ける。
この裏通りはお世辞にも綺麗とは言えない場所だが、今のところ大声で騒ぎ立てる者もなく、比較的穏やかな時の中に身を任せているようだ。
上弦の月は淡い光を地上へ投げかけ、灯る明かりの少ないこの路地には確かな標となっている。
どこか不確かに映る景色は、それゆえに幻想的な趣を作り出していた。
「……ミューゼル様」
やがて、柔らかい沈黙を淫魔が終わらせた。
「ミューゼル様は、淫魔が憎いですか? すべて殺して、この世界から無くしてしまいたいですか?」
絞り出した声は、恐怖と、それ以外の何か……わずかな期待のようなものによって震えている。
「憎いかどうかで言えば憎いが、それは人間も同様だ。俺は、人間も淫魔も等しく憎んでいる」
「…………」
「人間も淫魔も等しく思える俺だからこそ、両者が共存する国を作るなどと考えるのだろうな」
「っ!?」
淫魔が息を呑んで、俺の顔を見つめた。
「…………」
驚愕に見開かれていた瞳が、次第に眩しいものを見るように細められる。
そして、その眼に――月が雫を落とした。
「……なぜ泣く?」
俺の疑問に答えず、淫魔は涙を一筋流す。そして、無言のまま俺に抱きついてきた。
「やれやれ、わけがわからん――」
「わたしは」
淫魔が、俺の胸に顔を埋めたまま喋り始める。
「出来損ないの淫魔だから、疎まれていました。だから、母様にもいっぱい迷惑をかけてしまって、心苦しくなって、一人で人界に逃げてきたんです」
「…………」
「それでいろいろあったけど、人間の中に混ざって生きていく方法を覚えました。そうして、人間の生きている姿を見ました」
声に、少し楽しそうな色が混じった。
「辛そうだけど、辛いだけじゃない。活気に満ちていて、笑顔で、苦しいことも歯を食いしばって耐えて、強くて明るい生き物……うん、でもそれは人間だけじゃないんですよね」
俺の体を掴む手に、ぎゅっと力を込める。まるで、己の中の何かから逃げるように、俺にしがみついた。
「淫魔だって、そうなんです。わたしは、自分がその中に加われなかったから、そのことが見えてなかったんです。淫魔は、ちょっと能力の低い者、ちょっと他とは違う者、そういうのを出来損ないってすぐに排除する汚い生き物だって思ってたけど、ラーデさんとかリンさん……わたしの知っている人たちだって、いがみ合ってても仲が良かったんだし……」
「人間だって、そうだ。邪魔者、異物は見境なく潰そうとする。品性のない連中は、どこにだって居るものだ」
胸の奥で、消えない炎がくすぶる。
……かつて、幼い俺を殺そうとした連中。母上を陥れた連中。そうして頂点に立った、薄汚い豚以下の現国王と、その取り巻きども。
「でも、だから……」
湧き上がる憎しみを、出来損ないと呼ばれた淫魔の声が吹き消した。
……不思議な気分だ。俺は、こいつに興味以外の感情を抱いている。これは?
「いいところも悪いところも含めて、同じ気持ちになれるわたしたちなら、手を取り合えると思うんです。ずっとそうだったらいいな、って考えてました。夢、見てました」
淫魔は、顔を上げた。その赤い瞳の先には、俺しか映っていない。真っ直ぐに、ただ俺だけしか映っていない。
「でも、ミューゼル様は違うんですね。夢を見るだけじゃない、わたしと同じことを考えて、でもずっと力強く想って、それを叶えようとして」
――ああ、そうか。この感情が理解出来た。
みんなはよく、俺を太陽に例える。
ならばこの淫魔は、月だ。
太陽ほどに力強くなく、けれど人の目を灼くほどに眩しくはない、柔らかな光を放つ月。
人間と淫魔の共存――俺がそれを目指す原動力は、憎悪だ。
けれどこいつは違う。彼女の中に根差すのは優しさ。
それが、憎しみなどという感情に囚われた俺を恥じ入らせる。
俺が彼女に抱く気持ち、それは憧れに似た劣等感なのだ。
「クフリ」
「……?」
「それが、わたしの名前です」
「クフリ……」
俺は淫魔……クフリの頬に、手を伸ばした。彼女は微動だにせずそれを受け入れ、ただ真摯に眼差しを俺に注ぎ続けている。
「わたしの命、わたしのすべて……取るに足らないものですけど、ミューゼル様に捧げます。だからどうか、あなたの望む世界を」
――胸に、鈍い痛みが疼いた。
同じような言葉なら、ウォルフやハルトなどにも言われたことがある。彼らの言葉に込められた重さは、クフリのものとなんら変わるところはない。
けれど……なぜ今回に限って、これほど後ろめたい気持ちになるのだろう。
「…………」
俺は苦い気持ちを噛み砕き、クフリの細い体を抱きしめた。
彼女はなすがままに――いや、俺の背に両腕を回して、応える。
俺は、彼女の想いを捧げられるのに相応しい……いや、駄目だ。迷うな。
「ならば受け取ろう、おまえのすべてを。おまえはもう、俺のものだ」
「はい、ミューゼル様……」
既に走り出した。この身には、多くの命と魂を背負っている。今さら、止まれるものか。
太陽は昇る定め。燃え尽きるまで、燃え続けるしかない。。
俺は天を仰ぎ見た。
星々が輝く闇の中、半分に欠けた銀色の月が無言で俺に光を投げかけていた。
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