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背徳の薔薇 淫気喰い

「だいぶタフになってきたわね」
 ディアネイラは眼下で悶えている茶色い髪の少年へ、満足そうに声をかけた。
「あぅ……」
 レイは極大な快楽に見舞われていた。
 ディアネイラは大部屋に設置してあるキングサイズベッドでレイに馬乗りとなっており、ゆっくりと腰を前後させている。腰が動くたびにレイの射精感が増し、少年は淫魔の柳腰を掴んで顔をしかめながら、少しでも絶頂を先延ばしにしようと堪えていた。
 ディアネイラはレイの右脚を両腕で抱き込んでおり、さらに豊艶な乳房でふくらはぎを挟んで愛撫している。レイの右の爪先は、ふくらはぎを包む柔らかさによって痙攣していた。
「これで、全然……、本気じゃないんだもん、なぁ……」
 少年は泣き言を言いながらも、空色の瞳を潤ませて快楽に酔いしれた。すでに腰を突き上げる気力は萎え、風前の灯である。
 射精を我慢しているのには理由があった。ディアネイラはレイに乱れた姿を見せたことがないので、今度こそはと頑張っているのである。
 腹上の淫魔は緩やかな締め付けで遊んでいるだけだが、レイにとっては極上の責めとなっている。ぬるま湯の温かさは脳を痺れさせた。徐々に慣れてきているが、柔らかい締め付けと奥へと導こうとする吸引力は、相変わらず強烈な破壊力を有している。
 本気の締め付けで責められたら発狂するのではないかと思いながら、レイは自分を見下ろす艶美な淫魔を見上げた。
「イキたい?」
 悠然としているディアネイラは、抱えているレイの足首に口付けをした。
 レイは足首を襲う快感に右足を硬直させたが、ふくらはぎを挟んでいる乳房が簡単にほぐしてしまう。
「ま、まだまだ。あぁ、でもイキそう……」
 レイは切歯しながら、怒涛に押し寄せる射精感を抑え続けた。
 繋がっている部分を見ると、ディアネイラは意図的にレイの腹へ肉芽をこすりつけ、腰を動かしている。まったく感じていないはずはないと思うのだが、ディアネイラの顔を見ると、真紅の瞳は潤みひとつ見えなかった。
「今日は随分と頑張るのね。わたしはそろそろ、ご相伴にあずかりたいのだけれど」
「その余裕が、腹立つんだよ、なぁ……」
「いやねえ。女にそのような口を利くなんて。……お仕置きよ」
 ディアネイラは妖艶な笑みを浮かべると、抱えているレイの脚でバランスを取りながら腰を打ちつけてきた。
「揚げ足取りは……、ず、ずるい……」
 腰の動きは手加減されていると分かる。だが耐え切れずに射精した。
 レイは開放感によって脱力しながら、ディアネイラの膣中へと自分の粘液を吐き出していく。ディアネイラは少年の射精が終了するまで腰の動きを止めず、レイの開放感を手伝ってやった。
「芳醇かつ濃厚で、本当に美味しいわ」
 レイの精気は何度味わっても食傷しなかった。レイの精髄たる生命の原泉は、ディアネイラの下腹に濃密な存在感を示してくる。複雑な味は吟味するほどに新しい発見があり、力強い少年の生命力を感じ取れた。
 射精が終わるとディアネイラは腰の動きを止め、抱えていた少年の右脚を離した。レイの右脚はそのまま落下し、ベッドに弾む。
「うぅ、また簡単にやられた」
「さあ、悠長にはしていられないわよ? 意識を集中して、淫気の吸収に励みなさい」
 ディアネイラは白金色の髪の毛を掻き上げながらレイを促すと、レイは瞳を閉じて侵入してくる淫気の知覚に努めた。
 淫魔に絶頂させられると淫気の侵入を受ける。通常ならば淫気は人体にとって猛毒であり、様々な症状を引き起こす。だが淫人となったレイの心臓は淫核化しており、逆に淫気を喰らって自分の力に変換するようになっていた。
「胸は痛む?」
「大丈夫」
 日に何度も絶頂すると許容量を超過して心臓が痛むのだが、一度目の射精では、レイの胸は痛まずにすんだ。
 自分が淫人という存在になったと知らされたときは嗟嘆したが、淫気を喰らって力とすると、持久力が上がるのを知った。今まではディアネイラに責められると簡単に果てていたのだが、多少の責めには耐えられるようになっている。
 このまま実力をつけていけば、いつの日か両親の仇であるディアネイラを斃せると信じていた。ディアネイラを斃したあとは、呪われた自分の身体を解放する方法を探す旅に出ようと考えている。そして帰宅するのだ。それがレイを生き続けさせる原動力となっていた。
 心臓へと集約していく卑猥で生ぬるい感覚は、何度味わっても気分のいいものではない。疲れていても情欲が増していく破滅の力だ。だが、それにすがるしかないレイは、流入してくる淫気を素直に吸収していった。
 淫気の侵入が終了するとレイは大きく深呼吸して、自分に渦巻いている呪われた波動がより巨大になっているのを感じ取った。
「はい、お疲れ様。それと、ご馳走様」
「どうせ、まだ終わらせないくせに」
 レイは挿入状態を解除しないディアネイラを見上げると悪態をついた。せめてよがれと親指を陰裂に滑らせて肉芽を刺激した。だが淫魔は薄く笑っているだけだった。
「だあああ。なんだよ、もう!」
 レイは両腕を乱雑に投げ出すと大の字になり、唇を尖らせた。
「粗雑に扱っても無意味よ。わたしを感じさせたいのならば、もう少し、お上手になりなさいな」
 ディアネイラはレイの右手を取ると結合したままの股間へと導き、レイの親指の腹を肉芽にあてがってやった。
 レイが放出した精液は完全に吸収されており、跡形もなくなっている。
「適当に動かすのではなく、上下左右に動かしてみる、円を描く、突いてみる。強弱も使い分けてごらんなさい。自分が愉しむためだけに動かしているうちは、わたしには通用しないわよ?」
 レイは憮然としながらも、ディアネイラの教示に従って指の腹を動かした。柔らかな女芽は指の動きで形を変えてくるものの、芯のようなしこりがあり、触り心地がよかった。
 しこりを中心点に見立て、まずは上下左右に動かしてみる。次はしこりと一緒に円運動をおこない、次は突いてみた。これを繰り返しおこなってみる。
「そう、その調子。空いている手で包皮を剥いて、もっと露出させてごらんなさい」
 レイは言われたとおり左の親指を股間に差し入れると、陰裂の先端にある皮を上へ引き上げた。桜色の芽が露出すると、右の親指の腹ですかさず全体が当たるように調整し、愛撫を続行する。
 すると、ディアネイラの膣内が、僅かに熱くなった気がした。感じているのだろうかとレイはディアネイラを見上げてみると、彼女は薄目になって満足そうにしている。
「こんな感じ?」
「ええ、そのまま続けて。あなたは飽きっぽいのでしょう? すぐに責める場所を変えてしまうから、わたしは物足りなくて冷めてしまうのよ。少ししつこいかな? と思うくらいで、あなたには丁度よいのではないかしら」
「ふーん、そんなもんなのか」
 レイは指の動きが単調にならないよう気をつけながら愛撫した。全身はすでに火照っているので腰を動かしたい気持ちだったが、いま言われたばかりだと我慢した。
「なんで、自分が感じるようにぼくに指導するの? ディアネイラはイっちゃったら死ぬわけでしょ? 不利じゃん」
「前にも言ったわよ? 気持ちよく殺してね、と……。至上の悦楽を堪能しながら死ねるのならば、淫魔冥利よ」
「死ぬのが怖くないの?」
「どうかしら。そうなってしまったら是非もないと思っているわ。ほら、指がおろそかになっているわよ?」
 ディアネイラに指摘されると、レイは止めてしまっていた指の動きを再開した。感じてきていると思うと、愛撫にも熱がこもる。少しずつだが、ディアネイラの中は熱を帯びてきていた。
 増大する自分の淫欲がはちきれるまでは責め続けるつもりだった。ディアネイラの赤い瞳が潤んできている。彼女は感度を高めようと、自分で乳房を揉みながら桜色の乳首をこねていた。
「うわ、すっごいエロい」
「ウフフ、淫魔だもの」
 凄艶に微笑するディアネイラを見て、レイは美しいと思った。この淫魔がよがり狂う姿とはどういうものだろうと考えると、股間の疼きが激しくなっていった。
「動きたい?」
「……うん」
「いいわよ。いらっしゃい」
 ディアネイラは胸の愛撫をやめると両腕を横へ広げた。レイは仰向けから上体を起こすとディアネイラへ自分の成長途上で脆弱な身体を預け、淫魔の腋の下に両腕をとおして後ろから彼女の華奢な肩を抱いた。
 ディアネイラは少年の腰へ腕を廻し、より密着できるよう肉体を前へ突き出してやる。
 レイは技術もなしに、感情の赴くまま腰を突き上げた。ディアネイラを感じさせる余裕は皆無となり、ただ必死に果てるためだけに腰を動かす。
 自分の胸にディアネイラの張りのある乳肉を感じた。自分が腰を上下させるとディアネイラの肉体が上下に揺れるのだが、重なっている乳房は固定されたまま、胸元が上下に動いていた。
「うぅ、気持ちいい……」
 ディアネイラの内部は搾りにこないが、レイは満足だった。自分が満足しているようでは駄目だと思ったが、絡みつく無数の肉の襞は熱く、快楽に恍惚としたいという欲求が、どうしても勝ってしまう。
 挿入時は円運動をする、強弱をつけるなど、浅く突く、深く突くなど、いろいろと教えられていたが、何もかもがディアネイラの魅力によって瓦解していった。
 そして、二度目の射精をした。
 射精中はディアネイラの肩にしがみつくばかりだった。
「あぁ、足りない……」
 射精が終わるや否や、レイはすぐに動き始めた。淫気の侵入を受けながら腰を突き上げ、ディアネイラの中を愉しんだ。胸の痛みはなく、レイはディアネイラの細い鎖骨にむしゃぶりついた。
 淫気喰いに意識を向ける余裕はなく、自分の敏塔をディアネイラの温水に浸らせたい一心となった。
「今日は別人ね」
 鎖骨に舌を這わすレイを眺めながら、ディアネイラは膣内に染み渡る精気を満喫していた。
 精気の濃度が高く、膣内や子宮が熱くなっていくのを感じながら、少年の成長に期待の視線を送る。
 晩餐目的として連れてきた少年は、家畜へと出世しただけでなく、偶然にも淫人となった。食材としての存在価値だけで充分すぎるほどの素材だけに、心躍る気分である。
「ねえ、ディアネイラ。気持ちよく、ないの……?」
「その問いはマナー違反よ? でも殿方は、気にするわよね。……気持ちいいわよ。自信をもって、突いていらっしゃい」
 感じていると宣言されて、レイは有頂天となった。遂にきたこの瞬間と、腰に込める力をよりいっそう強める。
 単純に突き引きしているだけなので技もなにもないのだが、その情熱は少年の希望として燦然と輝いた。
 挿入した瞬間に射精していた今までとは明らかに違っている。自分に巣食う淫気の影響なのだろうが、耐える時間が増えれば、それだけ挿入運動を堪能できるのである。
 性経験の豊富な同級生が、「奥に届くと最高だぜ」と休み時間に自慢話をしていたのを思い出したレイは、より秘奥への探索に雄途したくなった。
 ディアネイラとの密着度を高めようとして肩を抱く両腕に力を込め、鎖骨の窪みに自分の三角顎を乗せる。ディアネイラの白金色の髪の毛が肩越しに舞っているのが見え、妖艶さばかりが目立つディアネイラのなかに、優美の面を発見した。
 なんとか奥へ到達しようと突き上げるのだが、射精感が増大するばかりで、最奥への侵入は果たせなかった。だがそれでもいいと、すぐに思い直した。今でも最高なのである。
「う……ん」
 ディアネイラから切なげな吐息が漏れ聞こえた。初めて聞いたディアネイラの艶冶な歌声に感極まったレイは、腰に入れていた力を失ってしまった。どんなに刺激しても聞けなかった艶声である。
「なあに? 急に動きを止めて。イキたいのでしょう? なら──」
 ディアネイラは発言の途中でレイの口に塞がれた。稚拙な舌使いでディアネイラの口腔を掻き回し、思いの丈をぶつけてくる。
 ディアネイラは含み笑いをしながらレイの舌に自分の薄い舌を絡ませ、応じてやった。
 淫魔の白金色の横髪がレイの背中へ流れると、その刺激に少年は背筋を反らせる。
 ディアネイラは舌を絡ませながら腰振りを開始し、今までいっさい力を込めていなかった膣に締め付けを加える。
「──イクっ」
 レイは敏塔が膣口によって締められ、中は幾重にも締められた。何箇所締められているのかは分からない。同時に無数の肉の襞が吸いつき、奥へと吸引した。
 押し上がる快楽に、レイはディアネイラを力いっぱい抱き締める。ディアネイラは痛苦しくなったが、かまわず腰を振った。
 最大級の悦楽がレイの股間を急襲すると、少年は三度目の絶頂を迎え、大量の精液をディアネイラの中に解き放った。
 一度の律動で鈴口が痛くなるほど吐き散らし、それが何度も続く。
 レイは顔をしかめながら放出感を味わった。
「たくさん、出たわね」
 ディアネイラは、ただ夢中でしがみついているレイの頬にキスをすると、レイの両腕を丁寧に解き、おもむろに肉体を後ろへ倒してベッドに身を沈め、仰向けになった。
 横になる際、自分の髪の毛を踏まぬよう、横へと流している。
 レイは荒い呼吸を繰り返しながら自分の絶塔に手を添え、後ろへと膝行しながらディアネイラの中から出た。
 ベッドに坐ったまま、額に滲む汗を手の甲で拭う。仰臥するディアネイラを見下ろすと、彼女は真紅の瞳を潤ませながら微笑し、少年を凝視していた。
 白皙の肌は薄紅色に染まり、ベッドの横へ流れる髪の毛は黄金の川となっている。
 淫気の侵入が始まると、心臓に痛みが走ったが、呼吸が困難になるほどではなかった。レイは痛みを無視してディアネイラの婀娜な姿に見蕩れた。
 弾力の強い彼女の乳房は横になっても形が崩れず、円錐形を保っている。桜色の乳首が突起し、上を向いていた。縦長の細く小さな臍には、汗が溜まっている。
「ふぅ。ブランデー君だけあって、濃いわね。精気酔いしてしまったわ」
 短時間で何杯も原酒をあおったディアネイラは、微醺に彩られていた。
 レイはそこに、ディアネイラの攻略法を見出した気がした。
 精気を大量に受けると、飲酒したように彼女は酔っ払う。今のディアネイラはまだ余裕たっぷりに見えるが、沈酔させれば好機が訪れるのではないかと思った。もっとも、自分の体力がそこまで続くわけがないので、現在では空論にすぎない。だが可能性として閃いただけでも収穫であった。

背徳の薔薇 淫気喰い 了
第四話です。
 サーバーエラーでずっと投稿できなかったのですが、やっと投稿できたようでほっとしました。
 名前にスペースを入れていたのが原因なのでしょうか? これからはスペースなしの名前でいきますので、皆様よろしくお願いいたします。

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