そんなこんなで。
オレは呆然としているうちに、入部届けに署名をさせられ、
BF部員として活動することになったのである。
「こーうーくーん!」
ガキの頃は、毎日のようにこの声で起きていた。
手をつないで登校することを冷やかされるようになったのは… いつからだっただろう?
目を開けると茜がいた。
時刻は6時30分。
「朝練の時間よ♪」
その言葉が、昨日の出来事が悪夢じゃないことを告げていた。
「まぁまぁ、朝帰りばっかりしてたあの子が部活の朝練に……」
着替えて階段を降りると、お袋が目頭を拭っていた。
「茜ちゃん。うちのバカ息子のこと、よろしくね」
「はい、任せてください♪」
……オレの世界は、あの勝負を境に、確実に忌々しい方向へ向かい始めたらしい。
仲の良さそうな女二人の姿を背中に、オレは朝日に照らされたさわやかな空を仰いだ。
朝練の内容は、主に体力トレーニング。
準備体操なんぞさせられた後、朝っぱらから30分もランニング。
運動部に入ってしまったことを実感する。
「いち! に!! いち! に!!」
部長と名乗った男が、気を吐きながらオレのはるか前を疾走していく。
長身というか巨体。ジャージの上に盛り上がった背筋が、この距離でも分かる。
3年A組、山吹金太郎(ヤマブキ キンタロウ)。
先ほど握手と笑顔でオレを歓迎してくれた、暑苦しい男だ。
「……ふぅん。それじゃお先」
薄ら笑いを浮かべながらオレの隣を走っていた男が、鼻を一つ鳴らすと加速した。
長身の、こちらは線の細い優男。
キューティクルなロンゲがみるみる遠ざかっていく。
いけ好かないその男は、2年B組の藤茶(フジ チャ)と名乗った。
……マジか?
そんなことを考えて痛み始めた横っ腹をごまかしていると、
オレの隣をカモシカのような足が駆け抜けていく。
「……」
その女は抜きざまにオレに一瞥をくれると、そのまま走り去っていった。
1年A組、蘇芳橙子(スオウ トウコ)。
さっきの自己紹介のとき、その女は無表情に無愛想に、短くそれだけ言った。
ムシの好かない女。
抜き返すべく脚を早めようとしたが、ズキズキ痛む横っ腹がどうにも言うことをきかない。
「運動不足ねー」
ぽん。
後ろから肩をたたかれる。
「がんばがんば♪」
にこーっと笑って、茜がオレを追い越していく。
ちょっと、待て。
茜が、オレを、抜いていっちまったって、なんだ、それ。
「最初から無理しなくていいですよ」
後ろから紫先輩の声がした。
オレに追いつき、隣に並ぶ。
汗ひとつかいていない笑顔、息一つ乱れていない声。
ジャージの上に盛り上がったオッパイが、ド迫力で揺れていた。
「すぐに慣れますから」
紫先輩は笑顔のまま、オレを引き離していく。
リズミカルに揺れるヒップも、なかなかの迫力だった。
女どものケツがだんだん遠ざかっていく。
男二人はもう、影も形も見えなかった。
汗が目に入って、ブルマの紺色が滲んだ。
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