8372

『第55期対淫魔戦士養成学校卒業検定・首席卒業者の顛末』後編の5

少女はたくましい胸板に子猫のように頬を擦り付けて目を細めた。

がんばった自分へのごほうび。

素直に甘えられる体のあるところ、つい意地を張ってしまう言葉の無いところ。

この瞬間のためになら、どんな苦痛にも、どんな快楽にも耐えられる。

少女は反対側の頬も、眠る彼の胸板に擦り付けた。



*********************************



「おかえりなさい、リッちゃん♪」

アイナの笑顔と、温かさを伴うシチューの香り。
俺の帰った時間の遅さについては一言も言わず、
アイナはエプロンをほどきながら食卓にオレを誘った。

(ノーカウントでいいですよ♪)

オレはどんな顔でメシを食っていたのだろう。

(アイナさんにやられた後の、ハンデキャップマッチだったわけですし♪)

アイナに悪いと思いながらも、オレは美味そうに料理を食うことができなかった。
思い浮かぶのは、生意気な後輩の、勝者の余裕全開の笑顔ばかり。

「……ごちそうさま」

「おそまつさまでした♪」。

 それでも、アイナは笑顔を絶やさなかった。
今までは、鈍感なヤツだと思っていたが。
きっと、鈍感なフリをしているだけなのだ。

「食後の修行はどうする?」

「……今日はいい。疲れた」

 アイナに到底歯が立つ気がしなかった。
修行になるような勝負ができる気がしなかった。
オレにトドメを刺した、後輩のオッパイの感触を思い出す。
アイナの半分ほどの威力しかないその乳で、オレは無様に果ててしまったのだ。

「そっか、じゃ、あたし、洗い物かたづけてるから」

本番の卒業試合まであと3日しかないことに関しても、アイナは何も言わなかった。
ふと、ユリアに塗りこめられた、ヒップの感触が蘇る。

「……」

オレは前かがみになりながら、寝室に向かった。
ベッドの上に転がって、深いため息をつく。
一体何がいけないんだろう。
女性の性感帯、その責め方は完璧なはずなのだ。
女の急所に向けて放つ、速く、正確な、複雑な連続攻撃。
しかし、オレは敗れた。
コレットが、ただ無造作に押し付けただけの乳房の一撃で。

オレが快感に弱すぎるのだろうか。
完璧なはずの愛撫は、快感に惑わされてその手元が知らず知らず狂っているのだろうか。

それとも、

(相手が今責めて欲しいところ、責めて欲しくないところをね、肌と肌を触れ合わせて直
に感じるの)

それが、コレットにはできるのだろうか。
あの瞬間、オレのペニスが、コレットのオッパイの弾力を恐れていたと、
オレ自身も分からなかったことが、コレットには分かっていたのだろうか。

全ては想像にすぎない、思考の迷宮。

剣の修行をしているときには、こんなことはなかった。
何万何十万と素振りを繰り返し、師匠と剣を打ち合わせる。
それだけで、オレの体に自然と剣理が刷り込まれて行った。

天は二物を与えずという。

やはり、オレは……

「リッちゃん」

 逃げ出しそうになる心を、アイナの顔を思い浮かべて奮い立たせる。

「リッちゃん? 考え事してる?」

 ……ホンモノだった。

「いや、今終わった。アイナ、やっぱ修行しよう」

「うんっ♪」

アイナがにっこりと微笑んだ。
その笑顔は、今まで浮かべていた笑顔とは、比べ物にならないほど愛らしかった。





アイナの手料理を食べ、アイナのハダカを見たオレのペニスは、
現金なほどギンギンに回復していた。

そのペニスを見せ付けるように、ベッドの上で大きく構える。

対するアイナは、やはり低い姿勢に構える。オレの股間を狙って今にも滑り込んできそう
だ。

アイナが出た。

一直線にペニスをめがけて突っ込んできた。

オレは難なくアイナの肩を受け止める。
そのまま、肩を軽く下に押してアイナをつんのめらせる。

上から潰して、乳をもんでやる!

オレはアイナの胸に手を滑り込ませるべく、身をかがめようとした。

その瞬間、

「むふっ!!??」

オレの顔面に、何か柔らかいものが炸裂した。

一瞬、視界を失う。
この柔らかくも、爆発的な弾力を持つ物体。
オレに思い当たるその正体は、二つしかなかった。

女の乳か、女の尻。

アイナが前転してのピーチアタックをオレの顔面に決めたのだと、
気がついた時にはオレはアイナに組み敷かれていた。



軟打は脳震盪を起こしやすい。オレでなければ失神していたのではないだろうか。
まさか、アイナがこんなアクロバティックな技まで使えようとは。
しかし、驚いている場合ではなかった。アイナはもうオレのペニスを捕まえてしまってい
た。

オレの下腹にくっつくほど反り返ったペニスを、先端から包み込もうと可愛い唇を広げる。
 オレは賢明にずり下がって、その唇から逃れようとした。
が、ずり下がったその先で、オレのタマが軟らかいものに包まれる。

(乳だ!)

女の唇の下の方には乳があるのだ。
オレの脳裏に、おそろしい破壊力を持ったアイナのパイズリの感触がよぎる。
反射的に、オレの腰は上へずり上がって逃げようとした。
先ほど、なぜずり下がったのかも忘れて。

「ちゅぽっ」

可愛い音を立てて、オレの先端がアイナの唇に吸い込まれた。
次の瞬間には、舌が鈴口に突き刺さっていた。

「うおっ!」

どうしても声をこらえることができない。
オレが叫び声を上げている間に、アイナは舌を鈴口から抜くと、雁首を舐めまわしながら
一気に尿道を吸い上げていた。

「ぐぅ!」

またも悲鳴を上げるオレ。
その間に、アイナは舌で裏筋を舐めおろし、亀頭を喉の奥へ飲み込んで激しいストローク
を開始する。

めくるめく早業。オレは反り返った。
コレに比べれば、コレットの滑舌などまだ可愛いものだ。
そんな可愛い後輩の舌に翻弄されるオレが、どうしてこの舌技に耐えられるだろう。
オレは早くも腰を震わせていた。

絶頂へ向けて白む意識を賢明に引き戻す。

射精するならするでかまわない。一度や二度の射精で戦闘不能になるほどヤワな鍛え方は
していない。
しかし、単に射精するだけでは、自分のスタミナを奪われ、その後の展開が圧倒的に不利
になってしまう。それどころか、射精した後のスキを突かれて再び攻撃を受け、二度三度
と連続で精を搾り取られてしまうだろう。
射精してなお勝利を目指すならば、その熱い迸りを女性の急所に浴びせかけ、多大なダ
メージを与えなければならないのだ。

どこにかけられるだろう。どこにかけるべきだろう。

理想は当然、女の最大の急所、Gスポットだ。膣内に残存した精液は、愛液で洗い流され
るまで女にダメージを与え続ける。
しかし、上の口に深く咥えこまれた現状では、下の口はあまりにも遠すぎた。

一番かけやすい場所は、やはり喉の奥だろう。熱い粘液が喉を通り、胃の腑に落ちる感触
は、女を内側から燃え上がらせる。

が、この体勢では、オレの精液がアイナの喉奥に迸るのは自明の理。アイナもそれは十分
に覚悟して、快感に対しての心構えを作っているはずだ。大きなダメ−ジは望めない。

ならば……

やはり乳だろう。先ほどタマが触れたほど口の近くにある女性特有の器官。あのデタラメ
な破壊力を持つアイナ最大の武器の脅威を、少しでも減じておかなければ、勝利はままな
らない。

いかにして、アイナの乳にオレの咆哮を浴びせるべきか……

が、オレがその結論に至った瞬間、

アイナは、口からちゅぽん、とペニスを抜き取ると、そのペニスを自らの乳房に押し当て
た。

にこ、と微笑む。

(何年一緒にいると思ってるの?)

ずぶり、と、オレのペニスが、アイナの乳に埋まっていく。

(リッちゃんの考えることなんて、みんなお見通しだよ)

オレを上目使いに見るアイナの視線が、そう言っているようだった。

オレは軽い絶望感と、そして幸福感さえ感じながら、
アイナの乳房の中へ精液を撃ち放たされていた。

どくん、どくん。

どくん、どくん。

アイナの乳房は、オレの精液を一滴もこぼさず全て受け止めてしまった。

これでは、アイナがオレの射精で受けたダメージは、ほぼゼロだろう。

対して、射精している間中、敏感になっている先端をオッパイで擦られたオレが受けたダ
メージは、はかりしれないものだった。

失神しないのがやっとだったと言っていい。

当然、体を動かすことなどできなかった。

アイナは悠々と、射精の終わったオレのペニスを、そのまま乳房の谷間に挟みなおした。
どろり、と、オレの熱い生命の残滓がオレの下腹に滴った。

アイナの乳房が寄せられ、俺のペニスがその深い谷間に沈んでいくのを、オレは為す術も
なく、しかし目をそらすこともできず、見つめるしかなかった。

が、アイナはその乳房をそれ以上弾ませることなく、ペニスを解放して身を起こした。

「もっかい最初から行こっか、リッちゃん」

仰向けになって荒い息を吐き、今だアイナの乳房から目を話せずにいるオレに向かって、
アイナは言った。

その声色の優しさが、情けなかった。

「分かった。ワンポイントアドバイスは?」

「えーと…… ごめん、リッちゃん早すぎ」

「ぬごっ……」

ミもふたも無いアイナの言葉に、オレはさすがに傷心をあらわにしてしまった。

「ごご、ごめんっ! でも、ホントに早いんだもんっ。イっちゃうのも、あきらめちゃう
のもっ」

アイナはわたわたと慌てながら、懸命に言葉を紡ごうとする。
言い返す気力がオレになかったので、それはなんとか成し遂げられた。

「ほんとだったら、私がリッちゃんのお○んちんをお口から出しておっぱいに押し付けた、
あそこが駆け引きの始まりだよ? なのにリッちゃん、私がスマっただけで終わっちゃう
んだもんっ」

スマる、というのは養成学校で使われる俗語のひとつだ。
語源はスマタ、じゃなくてスマイル。
相手に対して自分が優位にあると印象付けるために
微笑みかける演技をすることを指す。

「……悪ぃ」

アイナのスマイルはつとに凶悪だと男子学生たちは声をそろえて嘆いているが、
そんなことを言ってもなんのいいわけにもならない。オレはバツが悪そうに頭を下げるし
かなかった。

「うーっ、早く言葉責めの段階まで入りたいのにぃ。こんなんでやったらリッちゃん壊れ
ちゃうよぉ……」

慌てて言葉を紡いだ反動か、アイナはおそらく心の声でとどめておくつもりだったであろ
うセリフを、気付かぬうちにぽつりと唇から漏らした。

(アイナの言葉責め……?)

…………

「ぶほぉっ!!!!」

想像しただけで壊れそうになった。

「わ、リッちゃん!? 急にどうしたのリッちゃんっ!?
ひょ、ひょっとして早すぎって言ったのそんなに傷ついたっ!?
ごめんね、ごめんね。どんなに早くてもわたしリッちゃんのこと大好きだよっ!!!」

卒倒しかけたオレを抱きとめるアイナ。

……こんな調子で、本当にユリアに太刀打ちできるのだろうか。

卒業試験まで、あと2日…………

[mente]

作品の感想を投稿、閲覧する -> [reply]