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魔母(6)

白い。熱い。溶けていく。
ここは何処だろう。上も下も何処までも白い。柔らかい何かに包まれて浮かんでいる。
全然力が入らない。何処かに流されていく。とても安心している。どうしてだろう。
ああ、頭が考えてくれない。一体何時ここに来たんだろう。なんでここに要るんだろう。
どうでもいいや…
あれ、何処かに引っ張られていく。白い白い光がどんどん近付いてくる。大きい…飲み込まれる…

「おはよう、ボク。もうおねんねは終わり?」
それが俺に向けられた声だと気付くのに時間がかかった。
徐々に視界が晴れていき、真っ白な世界が色と形を取り戻す。顎を持ち上げられて上を向かされていると
気付いたのは淫魔と目を合わせた時だった。
大きな緑の瞳が慈しみを込めて細くなっていた。緩やかなウェーブを描く紫の長髪が海流の様に波打っている様に
見えたのは反射された光による錯覚だろうか、それとも淫気の影響で本当に動いているのだろうか。綺麗な形の
鼻は造り物に見える程整いすぎている。艶やかで瑞々しい唇は機嫌の良さを表して僅かに両端が上がっていた。
綺麗だ。とても綺麗だ。見れば見る程見惚れていく。
「ふふふ…」
微笑みが広がり、親しみを込めてからかう様な笑い声を漏らす淫魔。どきりと胸が高鳴る。すると視界からあの
美しい顔が消えて、代わりに何かとてつもなく柔らかそうな物が目の前に迫ってきた。

むにょっ。ぷにぷに。

「わぷっ」
「ほら、いなーい、いなーい」
何かが顔に押し付けられる。すぐに途方もなく気持ちよくなる。何だろう、これは?大きな暖かい物の中に挟まれて
いる様だが、何故こんなに落ち着く匂いがする?それに誰かが何か囁いてきているみたいだ。とても安心する。
「ばぁー」
突然気持ち良い物の中から頭が引っ張り出される。なんでこんな事を、もっとあの中に居たいのに…
目に入ったのは淫魔の綺麗な顔。ニコニコ微笑んでいる。また胸が高鳴り始める。今度はどきどきして止まらない。
「ママとにらめっこしたいの?ボクもとっても素直な良い子になったわね。さっきまであんなにあまのじゃくだったのに」
さっきまで?何の事だろう。さっきまで俺がしていた事は…!!!

頭上から氷水をぶちまけられた気になる。何をしているんだ、俺は!
目が回りそうな程頭が急回転し、意識が鮮明になっていく。俺はさっきイカされたんだ。子供になって。なんであんな
事に。あの母乳だ。とても良い事などと言っていた。まさか若返ったと言うのか。媚薬封じの薬では防げなくて当然だ。
一体今の俺は何歳なんだ。くそ、こんなのありか。待てよ、前に未確認情報として相手を子供にして無効化する
淫魔の話を聞いた事がある様な。今そんな事を考えてどうする。混乱するな。今やるべき事を早く正確に結論にしろ。

黙りこくった俺を見ている淫魔は相変わらず穏やかな表情だ。言い換えれば無防備とも言える。現に今はベッドの
端に重ねた枕にもたれかかりながら俺を軽く抱いているだけで、胸に押し付けてもいないし、性器も繋がっていない。
観察が終わった瞬間に俺の体が動いていた。長年の経験が最適解を思いつくと同時に実践させてくれる。
「まっ。元気ね、ボク。またママを気持ちよくしてくれるの?」
くすくすと降りかかる嘲笑と呼ぶには余りに優しすぎる声を聞きながら俺は無言で頭を下げていく。胸に触れない様
注意しながら前のめりに体勢を崩し、下半身を後方に追いやって顔面を淫魔の脚の間に割り込ませる。
ぷぅんと不思議な匂いが鼻を擽る。乳魔らしいミルクの匂いと女性器の匂いが混じりあい甘酸っぱい匂いはなんとも
形容し難かったが、不快から程遠い事だけは確かだった。
「お乳程じゃないけど、お汁も美味しいわよ。好きなだけ飲みなさい」
淫魔がわざわざ俺の頭を股間に押し付けてくる。まだその油断をチャンスだと思う事は出来た。しかし俺の心が憤りや
軽蔑を感じていないのも分かってしまった。俺は既にある程度魅了されかけている。早くしなければ。

舌を目一杯伸ばしてピンク色の陰唇を外側から舐め始める。複雑な舌触りと味わいに果物を思い出す。
雑念を振り払い徐々に内側に向かって唾液の円を狭めていく。時折息を吹きかけて慣れない様にする。
さっきの情事で淫魔の膣は十分に濡れそぼっていたが、今一度刺激してやれば少なからず効果がある筈だ。
「ん…やっぱり上手ね、ボク。もっと舐めて。ママ、幸せよ」
頭を撫でられて一瞬動きが止まった。慌ててクンニのペースを上げる。すぐに効果が出るとは思っていなかったが、
予想以上に効いていない。もっと直接的に責めるしかない。
犬の様に音を立て、愛液が滴る膣に舐め上げる。3回に1回程クリトリスにも舌を擦りつかせる。段々口中が
甘酸っぱくなってきたが、無理やり無視して膣内に舌を突きいれて啜り上げる。
「ああ、良い…お利口さんね、ボク。どうすればママが気持ち良くなれるか、ちゃんと分かっているんだ」
淫魔がまた頭を撫でてきた。2度3度と繰り返される内に頭が重くなってきた気がする。口と舌が休みを求め始めた。
ダメだ、このままじゃ…!危機感に駆られ、もっと後に弄くろうと思っていたGスポットに向けて舌を伸ばす。
鼻が塞がれる程顔を押し付け、舌が痛くなるまで伸ばして、ようやく先端が届いた。
「あん。無理しなくても良いのよ。そこはボクのお口じゃ届きにくいでしょ?それにもう疲れてきたんじゃなあい?」
労いの言葉が心地よく頭の中に圧し掛かる。考えが上手くまとまらない。もう休んでしまいたい…
震え始めた舌を必死に引き戻し、まだ力が入る唇でクリトリスに皮ごとむしゃぶりつく。
「ふぁんっ!」
やっと淫魔が歓声を上げた。だが俺はもうそれ以上の事が出来なかった。

口の中に何かが差し込まれている。ただそれだけの事なのにたまらなく嬉しい。頭の中心がぼやけた様で奇妙に
落ち着く。こうしていてはいけないと分かっているのに、他の何かをしようと言う気になれない。
しばらくクリトリスを咥えたままぼーっとしているとそっと抱き上げられた。口の中が寂しい。何か口に入れて欲しい。
「えらいえらい。くたくたになるまでママの為に頑張ってくれたのね。ご褒美をあげるわ…」
俺の頬を両手で持って、淫魔が唇を近づけてくる。かわさないと、なんとかしないと…
湿った唇を押し付けられる。独りでに溜息が漏れて口が開く。ぬるぬるの長い舌が入り込んできた。
舐められる。舐められる。舐められる。舌も歯も歯茎も唇も頬の内側も。喉まで舐められている気がする。
舐められた所が増えていく程満ち足りて爽やかな気分になってくる。まぶたが重い。
ちゅぽんと音を立てて舌が抜かれて解放された。体中の内側全部が舐められた様な気がする。

何の前触れも無くペニスを握られて体が震えた。何時の間に勃起していたんだろう?
「おしっこしたくなっちゃったのね。あんなにお汁飲んだものね。良いわ、ママがしーしーしてあげる」
肩を押されて体を反転させられる。まるで人形みたいだと思った。力が何処にも入らない。
後頭部が快感を訴える。胸によりかかっているからだな、と頭の隅っこで納得する。吸い込まれる感覚と共に頬や耳も
脳に居心地の良さを伝えてくる。かすかに聞こえる心臓の鼓動が意識に染みこんで行く。

「ほら、見てごらん。これからおちんちんから白いおしっこ、ぴゅっぴゅってするのよ」
淫魔に言われて初めて正面に化粧台の鏡がある事に気付いた。二回り以上大きい美女に後ろから抱かれている
俺の姿が見える。幸せそうに呆けた顔をしている。とろんと半分下がったまぶたと少しだけ開いた口が印象的だ。
淫魔が俺のペニスをゆっくりとしごき始める。たちまち鏡の中の俺が泣きそうな顔になった。
皮かむりの白いペニスが細長い手に良い様にされる。くすぐったい程度に擦り上げられ、壊れ物を扱う様に握られる。
「ちょっとだけ我慢していてね、ボク。絶対痛くしないから。気持ち良いだけよ」
包皮がもどかしい程慎重に剥かれた後は、亀頭がこの上無く丁寧に優しく触れられる。
前戯にすらならない筈の弱弱しい愛撫に酔いしれる。頼りない小さなペニスの中に温もりが湧き上がってきた。
「それじゃ、いっせーのーせ、でお漏らししましょ。いっせーのーせで、しー…」

ぴゅるるっ。とぷっ。ぽたぽたぽた…

弱弱しい音と共に、まさに“お漏らし”が始まった。
「はーい、ちゃんとママと一緒に出せたわねー。とっても良い子よ、私のかわいいかわいい赤ちゃん…」
また頭が撫でられた。鏡の中の俺が目を潤ませて心底嬉しそうな笑顔になっていた。
勝ちパターンを期待していた人たちには申し訳ないですが、このシリーズは最初から負けを前提としているので
勝ちパターンは書けません。どうしても見たい!と言う人は自力で書いて下さい。私も見たいです(笑)
その代わりと言っては何ですが、ここからしばらく濃厚なお楽しみタイムが続きます。

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