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魔母(3)

一瞬何が起きたのか分からなかった。
脳が与えられた刺激を快楽だと理解するのに時間がかかったのだ。
柔らかい。
暖かい。
滑々している。
単純な感覚に思考が塗り潰された。

「ムァッ…」
快楽の津波に飲み込まれる。とても甘美な何かが俺の理性を締め上げる。反射的に息を吸ってしまった。
甘い、優しい匂い。濃厚なミルクの匂いが鼻を満たし包み込む。もう一度吸うと、更に良い匂いになった。

よしよし。安心して。あなたを守ってあげる。大好きよ。力を抜いて良いのよ。もっと奥にいらっしゃい。気持ち良い?
ほうら、可愛がってあげる。じっとしていなさい。良い匂いでしょ。何時までもここに居て良いのよ。良い子ね。

頭の中に声が流れ込んでくる。あの何時までも聞いていたくなる優しい優しい声。とくんとくんと聞こえてくる心音と
共にしみこんでくる。返事もせずに聞き惚れていたら頭まで気持ちよくなってきた。
つつつ…すりすり。頭に当てられた手が頭の表面を滑る。更に深く胸の中に押しつけられる。温もりに包まれる…
「ふふふ…どう、良いでしょ…ずっと坊やをこうやって抱っこしていてあげる…」
声が聞こえた。なんと心地良い声だろうか。愛されていると実感する。もっと話しかけて欲しい…

「〜〜〜〜〜ァアッ!!」
引っ張った。力を掻き集めて頭を一気に引き抜き、勢い余って仰向けに倒れる。
「あん、もう…乱暴ね。そんなに急に飛び退いたら危ないわよ?」
気遣いに満ちた声が聞こえる。しかし俺は返事など出来なかった。出来る訳が無かった。
なんて胸だ…こいつが底無し沼と言ったのはこの上なく的確な表現だった。
ぜいぜいと荒い息をついている今もあの胸に戻りたくて仕方が無い。今度こそ溺れてしまいたい。二度と
浮き上がりたくない。子守唄を聞かされて身を任せたい…
「あらあら、大丈夫?力が抜け切っちゃってるみたいね」
淫魔の言う通り、俺は仰向けになったまま起き上がる事が出来なかった。今も頭の中に入ってくる胸の暗示のせいか
ロクに力が入らない。力をもう一度掻き集めても、首と肩を少し上げて淫魔と向き直る事がやっとだ。
淫魔はすぐそこまで迫っていた。あの愛しい者を見る笑顔と重力によって一層重く大きく見える胸を引っさげて。
ゴクリ。唾を飲んで湧き上がる焦りと恐怖と期待感を押さえつける。だが自分でも分かる程顔が引きつっていた。

「坊やって本当に凄いわね。私の胸から自力で抜け出せた子なんてちょっと思い出せないわ。でも…もう一回して
あげたら、もうダメになりそうね」
俺の頬を撫でながら見下ろしてくる淫魔は明らかに勝利を確信していた。
考えろ。頭を回せ。目で探せ。隙をつくんだ。諦めと焦りを消すんだ。少しでも力を取り戻せ。勝機はまだある。
必死に己に言い聞かせながら淫魔を睨み返した。自分でも嫌になるくらい先程の嫌悪感や苛立ちが消えていたが、
やらないよりは遥かにマシだ。何よりあの桃源郷の胸を見なくて済む。
「強気な子ね…でも」
淫魔の腕が動く。ペニスを掴まれる…!分かっていても、止められない。

きゅっ。ぬち。

「ウゥッ…」
呻き声も止められなかった。もう我慢汁が出ている。冗談じゃない。さっきまでは勃起すらしていなかったのに。
「ここはもう、こんな事になっているわよ?」
淫魔の手が一つの生き物の様に蠢く。人差し指が亀頭の割れ目を塞ぎ、我慢汁をゆっくりと塗り広げる。休む間を
与えずに緩く握ってきたかと思うと、人差し指と親指で輪を作り縦に擦る。カリ首を弄くったら、今度は親指で裏筋を
抑えて軽く震わせてきた。
今度は呻き声を噛み殺す事が出来た。
「あらあ?そこまで我慢強いの?それとも気持ちよくない?傷ついちゃうわあ…」
淫魔は落胆を隠そうともせずに、指で俺のペニスを弄くり続ける。だが俺は耐え続けた。
確かに気持ち良い。流石上級淫魔と言った所だ。だが胸に比べればこいつの指はそれ程恐ろしくない。当たり前の
事だが、一つの分野に特化すればその分他の部分はおろそかになる。それにも関わらず指を使い続け、胸を
持ち出してこないのは油断しているのか、それとも罠を仕掛けるつもりなのか。
どちらにせよここで躊躇していては逆転は有り得ない。少し早いが切り札を出すしかない。相手の予想外の切り札を。

俺は目を閉じて両腕に力を込めた。よし、動く。
「あ、やっぱり胸の方が良かった?焦らしちゃってごめんね」
乳房に向かって突き出されてきた手を見て淫魔は嬉しそうに笑った。俺がもう胸の虜になったと判断したのだろう、
わざわざ自分から胸を寄せてきた。今だ!
手で覆いきれない巨大な胸を下からすくい上げる様に掴む。指が吸い込まれる様にめり込んでいった。
「……………!!」
「あぁんうっ!?」
二つ声が上がった。一つは俺の歯軋り越しの声ならぬ声。そしてもう一つは淫魔が感じている悲鳴だ。

ほら、柔らかいでしょ。もっと触って良いのよ。この胸は全部、あなただけの物なのよ。好きなだけ揉み解しなさい。

指と掌が独りでに乳房の誘いに乗り、快感に浸ろうとする。俺はそれに逆らわず、そして流されずに手の動きを
コントロールする。
すくい上げた乳房を外側から回り込む様にして持ち上げてから、乳房の上部を上から押さえる形に持ち替える。
指の間から零れた様に乳房が跳ねたら、谷間に手を滑り込ませて再びすくい上げる様に持つ。速度に緩急を
つけながら数回繰り返す。
なんと美しい乳房だろうか。触り心地が良すぎて手を離せない。俺の手によって踊り狂う姿を凝視する。
「ああっ…嘘…気持ち良いっ!!」
驚愕と混乱、そして歓喜が入り混じった表情で淫魔がよがる。脇の下から乳輪に向かって螺旋状に愛撫してやると、
息を詰めたまま震えだす。中心に辿り着いたらまず乳輪を何周か人差し指で擦ってから親指と人差し指で乳首を
摘み上げる。淫魔が全身をガクガクさせて火照らせた。瞳が潤み、呼吸が速くなり、涎が一筋垂れる。
俺は夢中になって乳首を完全に起つまで責めた。完全に乳房に魅了されていた。もう自分から揉むのを止める事は
出来ないだろう。だが作戦は成功だ。

「こ、こんなのって…どうして?」
やっと淫魔の表情に怯えと焦りが混じった。初めて自分が負けてイカされるかも知れない、と思い当たったのだろう。
「乳魔の胸をわざわざ責めようとするバカは居ない…普通ならな。自滅するだけだからだ。しかしその分他の所ばかり
責められて生き残ってきた位の高い乳魔の胸は何時しか快感への耐性が薄まる。相手への攻撃には使っているから
中途半端に開発された状態でな…最強の剣を磨き上げている間に盾も鎧も捨ててしまったんだよ。お前はな」
淫魔はますます怯え、慌て始めた。心底良い気味だ。様を見ろ。
スローテンポで中々どっちもイキません。バトルファックって言うよりむしろウォーファック?

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