一人の将軍がいた。
その将軍は、戦乱の中にあった国々を戦い抜き勝利し、治めた。
そして、平静の時代が訪れ将軍は一人の子を授かった。
それは、元気な男の子で、その名を「天(あまつ)」と名付けられた。
国中が世継ぎの誕生と盛り上がった。
しかし、ある者の手により幸せは理不尽にも奪い去られる。
戦により敗れ去った「月羽(つきは)家」の末裔、月下姫が生まれたばかりの天殿下に呪いをかけた。
「その者一度の射精のごとに魂が欠け、十度の射精の後にその魂失われん」
さらに、殿下が呪いをうけた数日後、将軍は事故に遭い死亡する。
よって、正式な跡継ぎは呪いをうけた天殿下一人となった。
月日は流れ、天殿下が元服を迎えた日の夜、
天殿下は母に自身にかけられた呪いについて聞かされる。
「それは・・・・本当ですか母上」
「信じがたいかも知れぬが、本当のことです」
母上は、真っ直ぐにこちらを見たまま告げる。
「このままでは、貴方の代でこの国は滅びましょう」
「しかし、どうすることにも・・・・・」
「どうすることにも出来ないこともありません。呪いを解けばよいのです」
僕の言葉を遮る様に母上が言葉を発する。
「火鉢」
「ここに・・・・」
母上が告げると同時に後ろから声が聞こえる。
振り返るとそこには、燃えるような紅い髪の女の人が座っていた。
燃えるような髪とは対照的な冷たい目と、体の線がはっきりとわかる服に、
申し訳程度の鎧がついていた。
そして、そのあまりの美貌に僕は声も出せずにただ唾を飲むだけだった。
「火鉢よ貴方はこれより、天の供として一緒に阿門法師の許へと向かってもらいます。恐らくは、刺客が送られてくる事でしょう。頼みましたよ」
「御意に」
「その人のところまで行けば・・・・・呪いは解けるのですね」
「阿門ならば・・・・可能でしょう。気をつけて参るのですよ」
「はいっ!!」
こうして、天と火鉢の旅は始まった。
その光景を見つめる一匹の鴉羽が月光に照らされ飛び立った。
「天殿下はとうとう呪いを解きに阿門の許へと向かったか・・・・。月刃衆」
玉座に座る女の呼びかけに応じて、暗闇の中、十の影が浮かび上がる。
七人の女と三人の男の影、
「天の後を追い、阿門の許へたどり着く前に・・・・・・殺せ」
声も出さずに、頷き影は散っていった。
「わらわの呪いの前に朽ち果てるがいいわ・・・・」
月明かりに照らされて、再び鴉羽が闇夜に舞う・・・・・
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