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『第55期対淫魔戦士養成学校卒業検定・首席卒業者の顛末』中編の4

 ユリアの裸身は美しかった。
女性の骨格では筋肉をつけすぎるとかえって動きの邪魔になる。その限界まで鍛えられたしなやかな肢体。
ひきしまった筋肉が、たっぷりとのった女の脂に、わずかなたるみも型崩れも無い瑞々しい張りを与えている。
月明かりの元、わずかな翳りも無く白く輝くその裸身は、完成されたひとつの芸術品のようだった。

「ふふ……」

 声もなく見惚れる俺の前で、その芸術品が妖しく体をくねらせる。
胸から腰、脚が織り成す曲線から、月光を桃色に染め上げるような強烈な色気が放たれた。

「うっ…!」

 息苦しくなった。俺はたまらず前かがみに地に膝をつき、股間を両手で押さえた。
 指の隙間から一滴の我慢汁が滲み出す。
 ユリアは膝をついた俺を見下ろすように笑みを浮かべ、ゆっくりと近づいてきた。
その一歩ごとに豊かな乳房が弾むように揺れ、その一揺れごとに俺のペニスがドクンと脈を打った。

 俺のすぐ傍まで来ると、ユリアは俺に目線を合わせるように屈んだ。
胸の谷間が否応無しに俺の視線をひきつける。ペニスがもうひとつの心臓のようにバクバクと動悸していた。

「アイナさんと、どっちが綺麗ですか?」

 甘い息の香りに頭がクラクラした。
俺はあらん限りの意志力を振り絞って目眩を跳ね除けると、言った。

「アイナの方がキレイだよ。毛も生えて無いお子様なんかよりずっとな」

 ユリアの頬が高潮した。
そう、ユリアはパイパンだった。月明かりに白く輝く裸身には、文字通り一点の翳りも無かった。
 それがユリアの美しさを損なっているとは思えないが、文句をつけられる可能性が残っているとすればそこしかなかった。

「……」
 ユリアはうつむいて唇をかむ。
ざまぁ見ろ、と思ったのも束の間、ユリアの繊手が俺の肩に音も無く添えられた。

「言ってくれますね」

 視界が回り、胸の谷間に吸いつけられていた視線が強制的に引き剥がされる。
簡単な投げ技で、俺は仰向けに地面に転がされた。

「うわっ!?」

 俺が自分の体勢を把握した時には、ユリアはとっくに俺の腰をまたいで動きを封じていた。

「まぁいいですけど。その強がり、いつまで持つかしら」

 ユリアが笑う。
凄艶というのは、こういうものなのだろう。
俺は口の中でアイナの名を呟き、恐怖を揉み消すとユリアの乳房に手を伸ばした。
 が、しかし、

「あああああああ……!」

 次の瞬間には、俺は魂消るような悲鳴を上げていた。
先ほどと同じように、ユリアのヒップが俺のペニスに落ちてきたのだ。
先ほどと違って、布一枚の緩衝すら無く。

「ほら、どうしました? 強がりのひとつでもおっしゃってくださいな」

 ユリアはからかうようにそう言うと、軽く腰を前後に振って俺のペニスを擦った。

「ひぃぃぃぃ!」

 自分でも何と叫んでいるのか分からなかった。
ユリアの生尻はとんでもない威力だった。
さきほど擦り付けられたショーツの、最高級の絹の感触さえとるに足りないものだった。
たった一往復で、俺のペニスは限界に達し、信じられない量の我慢汁を噴出させられたのである。

「あ、あ、あ、あ、あ、あ」

 腰から伝わる異常な快感に、俺の全身は不規則に痙攣した。
睾丸からぐるぐると奇妙な音が響いて来たように思った。

「ふふ、そろそろ聞かせていただきましょうか。ちゃんと答えられます?」

 ユリアが腰の動きを止めて、俺の目をのぞきこんできた。
ぼやけていた目の焦点が、ユリアの瞳に合わさる。
長い睫毛の下、落ち着いた光を湛える瞳。それでいて、どこか幼げな悪戯っぽさを漂わせる瞳。

「アイナさんと、どっちが気持ちいいですか?」

 その瞳に吸い込まれそうになった俺の意識を、アイナ、という三音の響きが呼び戻す。
 俺は甘く痺れて動かない全身から、ありったけの意志力をかき集めて叫んだ。

「アイ、アイっ、あ、あぁ、あ、いぃーっ!!」

 俺の台詞の途中で、ユリアは無情にも腰のゆらめきを再開させた。

「お気の済むまで強がっていただいて結構ですわ。まだ夜は長いですし」

 ユリアのヒップは、すっかり敏感になって赤く発色している俺の先端に、羽のように軽く触れて、滑らかに前後している。
その柔肌の感触はとんでもなかった。きめ細かい肌は俺の剥き出しの亀頭の上を少しの淀みもなくスムーズに動き、それでいて俺の敏感な部分に吸い付いて強い摩擦感を与えてくる。
その刺激は決して絶頂には達し得ないほどソフトで、しかし気が遠くなるほど濃厚で粘着質だった。

「そろそろ、もう一度強がりを聞かせていただこうかしら」

 ユリアがまた口を開いた。ユリアの腰はあれからまだ十往復もしていなかった。

「アイナさんとどっちが気持ちいいですか?」

 虚ろな目をしてユリアの為すがままに操られながら、それでもアイナの名は俺に意志を呼び起こす。

「あいっ、あいっ、あいっ、あひぃっ…」

「はい? なんですの? 分かりませんわ」

 そう言いながらユリアの顔は意地悪く微笑んでいる。
ユリアの腰の動きが止まらないせいで、俺の舌も喉も震え上がってしまっているのだ。
 もう限界だ。
 イきたい。
 キンタマの中でドロドロと渦を巻くこの精液を、虚しい収縮を繰り返すチンポの中を駆け上らせ、ぱくぱくと喘ぐ鈴口から心行くまで迸らせたい。
 だが、俺のものであるはずの俺の体はまったく俺の自由にならない。
さっきショーツ越しに責められた時のように、腰を突き上げて刺激を求めることすら適わない。
 俺の享受する快感は全てユリアに支配され、微塵も俺の意志が介入する余地はなかった。
 戦士として、男として、最大の屈辱だった。
しかも、その屈辱を与えているのは、技巧を尽くしたフェラチオでも、女の意地をかけた名器攻撃でもない。
汗ひとつかくこともなく、笑いながらやっている、他愛もない尻責めである。

「ふふ、失礼。これで口がきけますか?」

 ユリアは腰の動きを止めて、悠然と俺を見下ろす。

「アイナさんと」
「ずりぃよ」

 ユリアの声を遮って、俺は叫んでいた。

「……はい? 私が何か卑怯な手でも?」
「お前、強すぎる」

 ユリアは一瞬きょとん、と目を丸くして、その後鈴が転がるような声を立てた。

「笑い事じゃねぇよ!」

 俺は半泣きで叫んでいた。

「俺とお前は同い年じゃねーか! 戦士の修行をしたのだっておんなじ三年だろ!
なんでこんなに実力に差ができんだよ! ずりぃだろちくしょうっ!!」

「……その言葉、そっくりそのままお返ししますわ」

 ユリアの笑い声が止まって、冷えた声が降ってきた。

「私は物心ついた時にはすでに剣を握っていたのですけどね。
その半分の年月も修行せずに私を公衆の面前で嬲ってくれたのはどこのどなたでしたかしら?」

「……」

 俺は言い返すこともできなかった。
元より冷静なら口から飛び出すこともない難癖である。

「さて、そろそろおしまいにしましょうか。私の方がアイナさんよりイイとおっしゃってくださいな」

「……誰が言うかあぁっ、あ、あぁぅ!」

 ユリアが腰を動かしたので、俺の台詞は悲鳴に変わった。

「リッツさんが、言うんです。すぐに言わせて差し上げますからね」

 その腰の動きは先ほどまでの比ではなかった。倍の速度、倍のストローク、倍の圧力。それでいて、やはり俺のペニスには射精に必要な刺激が与えられないのだ。

「うぉおっ、アイナ、アイナ、あいなぁ!」

「無駄ですよ。想いだけで強く慣れたら誰も苦労はしません」

 ユリアは眉ひとつ動かさず、腰の動きを続けた。

「想いは修行で昇華してはじめて強さに変わる……父の口癖でしたが、それさえ貴方は忘れてしまったのかしら」

 情け容赦ない腰の動き。俺のペニスはユリアのヒップにすりおろされているようだった。ユリアの尻が俺の亀頭を撫でる度に、亀頭が皮一枚づつ溶かされていく感じ。
 溶かされたチンポは神経をむき出しにされ、その神経に直に快感を流されるのだ。

「うわぁぁぁぁぁぁっ!」

 俺は最後の力を振り絞った。腰を突き上げてユリアの尻を串刺しにし、手を伸ばしてユリアのオッパイを揉みしだかんと全身の筋肉を脈動させた。
 が、俺の全身の筋肉は完全に弛緩しており、俺の最後の力は手足をわずかに痙攣させたにすぎなかった。

「はい、それでおしまいですね。では仕上げを」

 ユリアは柔尻に亀頭を埋め、ゆるゆると腰を捻りはじめた。
その動きにペニスも捻られ、内部まで刺激される。
今まで表面をたゆたうだけだった快感がペニスの軸にねじり込まれ、俺の精神力を決壊させた。

「イっ、イかせて、イかせてくれぇ!」

 俺は、またも涙をながさんばかりに哀願していた。
恐怖に負け、快感に負け、敵であるはずの女に恥ずかしげも無くイかせてくれとねだっていた。

「アイナさんと私と、どっちが好きですか」

 ユリアの目がすぅっと細められた。
アイナ。その名前が俺の崩壊させられた意志力を拾い集めようとする。
 しかし、ユリアの腰がもう一ひねりされると、俺の割れ砕けた意志の欠片は粉となって散っていった。

「ユリア、あぁっ、ユリアの方が好きだぁ!!」

 絶叫。
その瞬間、途方も無い開放感が俺の全身を満たした。

「やっと、言った」

 ユリアは満足そうに微笑んだ。その微笑みが天使に見えた。

「すぐ、イかせて差し上げますからね」

 優しい声でそう言うと、ユリアは俺のペニスからヒップを離した。
そんな、と思ったのも束の間、ユリアはすばやい動きで俺の股間に口を寄せた。
 上目使いに俺の顔を見上げてにこ、と微笑むと、ユリアは俺のペニスをちゅるっと一気に吸い込んだ。

「ああーーー!!!」

 俺はこの上ない喜びの声を上げた。
ユリアの舌はカリ首の裏のペニス小帯を強めに押し、射精に必要十分な刺激を与えてくれた。
 その舌にうながされるまま、溜まりに溜まった快感が爆発し、煮えたぎる精液が尿道を駆け上がる。
 最高、だった。

「ああっ、ユリア、ゆりあぁーっ!!」

 射精。
俺の精液が、ユリアの口の中へ解き放たれようとしたとき、

「リッちゃん!?」

 駆けてくる小さな足音とともに、聞きなれた声が響いた。

「!?」

 ユリアが思わず唇を離し、声のした方を見る。
俺は、もうどうにもならなかった。

 びゅっ、びゅびゅっ、びゅううううっ!

 アイナの目の前で、俺のペニスは精液を吹き上げ、ユリアの髪に、顔に、胸に、降り注がせていった……

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