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『第55期対淫魔戦士養成学校卒業検定・首席卒業者の顛末』・中編の2

 ダブルベッドの上、アイナと俺は再び向かい合った。俺はさらに体勢を低くし、ガード
を下げてアイナの潜り込みを警戒する。これで足技もくらわない……と、いきなりアイナ
が仕掛けてきた。


 「あっ!?」


 と思った瞬間には、俺の視界は白く豊かな二つの球で塞がれていた。下に注意を向けさ
せておいて、今度は上。はめられたことに気がついたときには、もうアイナのバストが俺
の無防備な顔面を直撃していた。


 顔に弾ける瑞々しい弾力が俺を仰け反らせる。そのまま俺は自分より二回りも小さなア
イナに押し倒された。「むぐっ…」


 悲鳴は深い谷間に呑みこまれた。アイナの体は軽いのに、その乳房はみっしりと重かっ
た。鼻や口に吸いつくように、俺の呼吸を塞いでくる。
 相手を窒息させても勝ちにはならないが、窒息した相手に性的攻撃を加えることは有効
である。失神した無防備な状態で戦士のテクニックを受ければ無事ではすまない。


 「むぐぅっ!!」


 アイナのおっぱいを掴み、割り開こうと両手を顔まで引き上げる。まだ息苦しくなって
いない。窒息するまでに十分脱出が間に合うはずだ……と、思った瞬間、顔面の筋肉をほ
ぐすように包み込んでいたやわらかな感触が、俺の手を避けるように喉元へと滑り下りた。


 「ぷはっ!?」


 解放された口から、驚きの声が漏れる。やわらかな感触はなめらかに俺の体を滑り降り
ていった。尖った感触が二つ、俺の体を快感で切り裂くように筋を刻む。
 つん。俺の乳首とアイナの乳首がニアミスした。


 「はぅっ……」


 思わず硬直した俺の体を、アイナの乳房はさらに下へ下へと滑り降りていく。その時に
なって、俺はようやく、自分が何のために両手を股間まで下げていたのかを思い出した。


 (冷静に自分と相手の体位を確認して、次の相手の動きを読まなきゃダメだよ)


 アイナの言葉が頭をよぎった時、俺のチ○ポはアイナのおっぱいに挟み込まれていた。


 3年の間、男達に揉みしだかれ、精液を塗りたくられて磨きぬかれた女の子の乳房は、
漏れ無く対インキュバス用の必殺武器と化す。アイナの胸も例外ではなかった。
 いや、むしろ例外と言うべきか、「あんな童顔チビのクセして」とクラスの男子達がそ
ろって愚痴をこぼすほど、アイナの胸は恐ろしい凶器に成長していた。


 ぐにゅっ……。アイナが両手で自分の乳房ごと俺のチ○ポを挟み潰す。強く押しつけら
れた肉の弾力が、ペニスの芯まで響く強い刺激を伝えてくる。


 「うっ!」


 筋肉が硬直して、体が反りかえる。無防備になった俺の股間で、アイナは体全体を上下
させはじめた。


 「うあっ、あっ!」


 乳房の芯で、ペニスの芯を擦るような激しい愛撫。俺は為す術も無く身悶えた。信じら
れないほどの早さで射精感が突き上げてくる。


 イクッ!!


 と、俺が思った瞬間、アイナは胸の谷間の圧迫を緩めた。チ○ポを絞り上げるような強
い刺激が、波のように引き、代わりに柔らかな快感がペニスを包み込む。


「ああ……」


 俺は思わず緩んだ声を出した。硬直していた全身が脱力してベッドに沈み込む。アイナ
は乳圧を緩めたまま、優しく俺を擦り続ける。射精に誘う強い刺激が消え、暴発の危機は
過ぎ去った。しかし、肩透かしを食った射精感はペニスの芯にじくじくと残り、それはア
イナに優しく一擦りされるたびに燠火のような疼きとなって下半身をしびれさせた。
 あいも変わらず、凄まじい威力のおっぱいだった。このままではマズい。弛緩した体に
活を入れて、アイナの乳房に手を伸ばす。だが、体を起こそうとした瞬間、アイナはまた
乳房を俺のチ○ポごと挟み潰した。


 「うああっ!」


 股間で爆弾が爆発したかのような錯覚。熟成された疼きが一気に噴出し、快感となって
俺の全身を駆け抜ける。俺は瞬時に体の自由を奪われ、反りかえって悶絶した。目の前が
真っ白になる。射精感はたちまちのうちに、前の数倍の波となって押し寄せた。


 イク。


しかし、その寸前にまたも乳房による拘束は緩められ、痙攣するチ○ポをなだめるように
もどかしい愛撫が襲い来る。
 たまらない。早く溜まったものを吐き出して楽にならないと、頭がおかしくなりそうだ。
脱力していく腰に力を込めて、自分からチ○ポを乳房に押し付けて射精しようとする。し
かし、柔らかな乳房はチ○ポを優しく受けとめるばかりで、射精に必要な刺激は一向に得
られない。


 これがパイズリの恐ろしさである。乳房の弾力を生かし、ペニスに強烈な刺激を与えて、
即座に射精に導く激しい愛撫。乳房の柔らかさを生かし、ペニスに優しい快感を与えてじ
っくりと負い込む緩やかな愛撫。2種類の快感に翻弄されたペニスは、射精もままならず、
嫌が応にも快感を高められていく。この快感が限界を突破した時、男は白目を剥いて泡を
吹きながら精液を撒き散らすことになる。


 俺が緩んだ乳圧から逃れようと、腰を引く。アイナは素早く乳圧を強め、チ○ポを逃が
さない。俺はチ○ポを乳房に押し付けて、射精しようと腰を突き出す。アイナは素早く乳
圧を弱め、射精を許さない。
 アイナの乳使いは完璧だった。今まで、一度も味わったことが無いほど、完璧なコント
ロールだった。俺はみるみるうちに戦闘力を奪われ、ただベッドに大の字になり、アイナ
の為すがままになりながら、上から下から汁を垂れ流すだけの存在になった。
 アイナの舌が俺の下から出た汁を舐め取っていく。アイナほどの美肌の持ち主になると、
潤滑剤など無い方が男に与えるダメージが大きいのだ。


 「ねぇ、リッちゃん」


 アイナが話しかけてくる。フェラと違って口が自由になるため、言葉攻めがし放題なの
もパイズリの特徴だ。


 「もうダメかな?」


 俺は応えることも出来ず、息を荒げていた。


 「ユリアちゃんのおっぱいは、もっと凄いんだよ?」


 なんだか絶望的なことを言われたような気がする。が、もう頭も働かなかった。


 「ん……やっぱり急にはムリだよね」


 アイナが勝手に俺の心を代弁する。ムリだ、と言う部分に俺は心の中でうなずいた。


 「おつかれさま、リッちゃん。よくがんばったね。今楽にしてあげるからね」


 アイナが一際強く乳房を俺のチ○ポに押しつけると、乳房を互い違いに動かすようにし
て手早くしごき立てた。


 「……!」


 俺は声も出せず絶頂に達した。望みに望んでいた射精の時が訪れ、パクパクと喘ぐ鈴口
から大量の白濁が迸った。一緒に内臓まで全部迸ってしまいそうだった。ぶちまけられた
精液はどうなったのだろう。アイナの胸に受けとめられたのだろうか。アイナの口に吸い
込まれたのだろうか。それともアイナは身をかわし、虚空に撒き散らされているのだろう
か。分からない。もう全身の感覚が快感だけしか感じていない。俺は無重力の中をさまよ
いながら、その意識の光までチ○ポの先から撃ち出していった。



************



 「だいじょうぶ?」


 俺はまたもアイナの膝枕で目を覚ました。


 「……」

 2連敗。俺はひどい仏頂面をしていたに違いない。


 「リッちゃん、この指何本?」
 「大丈夫だっつてるだろ」


 俺はアイナの手を押しのけて身を起こした。


 「つってないよぉ」


 アイナは口を尖らせならがらも、目に安心の色を浮かべて、枕もとのノートを広げに行
く。そこに『勝者:あたし』と書き込む姿を見ながら、俺はある一つのことを考えていた。


 今まで、俺はアイナと何度も試合をしてきた。文字通り、アイナの力量を肌で知ってい
る……はずだった。
 しかし、今日のアイナは違う。俺の動きを完全に読みきっている。俺を一度の射精で確
実に失神させている。手も足も出ない。勝てる気がしない。今日のアイナは、昨日までの
アイナに比べて、あまりにも強すぎた。


 「おまたせ、リッちゃん。もう一回できる?」


 ノートを書き終えて、戻ってきたアイナに、俺は疑問をぶつけた。


 「アイナ。お前、こんなに強かったっけ?」


 アイナの動きが止まった。


 「……そ、そりゃ、気合が入ってるもん。ユリアちゃんに少しでも近づかないと……」


 アイナは、嘘がつけない。隠し事さえまともにできない娘だ。


 「今までは、気合入れてなかったのかよ」


 アイナの目が泳いだ。問い詰めている方が、気の毒になってしまうようなうろたえ方だ
った。


 「そ……」


 そんなことないよ、と言おうとしたのだろう。けれど、その言葉は途中で止まってしま
った。アイナは本当に嘘をつくことが苦手なのだ。


 「そうか……」


 バカだった。自分のバカさ加減に気が狂いそうになった。


 「お前、ずっと手加減してたのか」


 首を横に振ろうとして、アイナは硬直した。その程度の嘘さえつけない少女を、俺はひ
どく愛しく思い……そして、ひどく悲しくなった。


 気がついたら、部屋を飛び出していた。



************



 何が495勝497敗だ。全部、アイナが俺のプライドを思いやっていてくれただけじゃない
か。
 ずっと、俺の側にいてくれたアイナ。何の予備知識も無しに入学した俺に、丁寧に学校
のことを説明してくれたアイナ。剣士の修行とあまりに違う戦士の修行に戸惑う俺の、遅
れがちな勉強に根気良く付き合ってくれたアイナ。他の生徒に抱かれるアイナの姿に不機
嫌になり、アイナに当たっていた、そんな俺の側からも離れずにいてくれ、そして誰に体
を抱かれても、その心は俺のものだと言うことを信じさせてくれたアイナ。
 俺はそんなアイナに答えようとがんばってきた。アイナを一番気持ち良くさせてあげた
いと願って、ずっと戦士の修行を続けてきた。
 それなのに……。お笑い種だ。
 涙がこぼれて、視界が滲む。


 ドスン!


 木にぶつかった。


 「いつっ……」


 痛みが、ようやく俺の正気を取り戻させた。俺はシーツを掴んだまま、素っ裸で走って
いたらしい。夜風が俺の汗に濡れた素肌を撫でた。
 俺はぶるっと震えると、握り締めていたシーツで身を覆った。ここはどこなのだろう。
林の中のようだけど……


 カンっ!


 その時、ひどく懐かしい音が、木立ちの向こうから聞こえてきた。


 カンっ! カンっ! カカカカカっ! カンっ!


 木と木がぶつかり合う音。思い出した。


 ここは、俺がまだ剣士を目指していた頃……


 音に誘われるように、歩いていく。子供の頃、アイナの両親が亡くなった時、みなしご、
とアイナをからかったいじめっ子達に、返り討ちにあった時、俺は情けなさに泣きながら、
夜の町をあても無く走り……
 そして、ここで一人の剣士と出会った。


 木立ちを抜けると、開けた場所に、一際大きい木が立っている。その大木の枝からは、
いくつもの木の棒が吊るされている。


 カカンっ! カカっ! カカンっ! カンっ!


 木の棒を揺らし、揺れる木の棒を木刀で打つ音。強烈な既視感を憶えて、俺は揺れる木
の棒の中に佇む人影に目を凝らした。そして、そのまま固まった。


 月光の元、一人の少女が舞っていた。その手に握られた木刀は、速く鋭く鮮やかに襲い
来る木の棒を弾き散らす。その度に長い黒髪がつややかになびき、月光を弾いて白く輝く
肌の上を艶かしく踊る。


 「ユ……リア?」


 少女の動きが止まった。声がした方……俺の方に振り向く。揺れる木の棒が彼女を襲う。
慌てて剣で弾くと、少女は木の棒の間をすり抜けてこちらへ歩いてきた。


 「リッツ……さん?」


 ユリアの目が見開かれた。視線が絡まる。


 夜風がそっと、少女の汗の香りを運んできた。

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