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『第55期対淫魔戦士養成学校卒業検定・首席卒業者の顛末』・中編の1

 惨めな気持ちで対練場のシャワーを浴び、汚れ物を洗って帰宅したときには、もう日が
暮れていた。


 「お帰りなさい」


 アイナがエプロン姿で俺を出迎えてくれた。アイナの家は俺の家の隣だが、アイナの両
親が亡くなってからは、アイナの生活の場はほとんど俺の家に移っている。
 王城の警備兵をしている俺の親父と、そこのまかないをしている俺のおふくろは、滅多
に家には帰って来れない。俺とアイナ、二人きりでの生活がもう何年も続いている。
 家の中にはアイナが作ったシチューの美味そうな香りが漂っていた。


 「ただいま。」
 「リッちゃん。話ってなんだったの?」
 「あぁ、大したことじゃないんだ……」


 俺は慎重に言葉を選んだ。ユリアに晒したあの醜態を、アイナには、アイナにだけは知
られたくなかった。


 「えっとな、ユリア、俺のことを前から知ってたって」
 「あぁ、3年前の剣術大会のこと?」
 「え? お前知ってたの?」
 「リッちゃん、知らなかったの?」


 アイナがは、ユリアのことを知っている。まるで今日の出来事まで知られているような
気がして、俺はごくりと唾を飲んだ。


 「まぁ、髪も伸びてたし、ユリアちゃんもリッちゃんに話しかけなかったしね」
 「あ、ああ」
 「あんな負け方した後で、声かけにくかったのかな」


 あんな負け方。そのフレーズがまた俺に唾を飲ませた。


 「あ、ひょっとして、卒検の試合でその仕返しをするとか言われちゃったりして」
 「……!!」


 アイナは決して鈍感じゃない。特に親しい人間のことは良く見ている。


 「リッちゃん」


 アイナは硬直した俺の肩に手をかけて、


 「……特訓しよう!」


 力強くうなずいた。


******


 夕食の後、俺達はアイナの家に移動していた。ほとんど使われなくなったアイナの家の
居間に、大きなダブルベッドが置かれている。学校に入学してから、俺達が自主練習に励
めるように備え付けたものだ。
 このベッドの上で、俺達は毎晩のように修行を積み重ねた。ある時はキスの舌使いを復
習するために互いの唇を合わせ、ある時はアイナのフェラの特訓のため俺のチ○ポを貸し、
ある時は俺の持久力の向上のためにアイナのオマ○コを借り……
 ランプの灯りに、アイナの白い裸身がほの紅く色づいて照らし出される。俺もすでに全
裸で、アイナと向かい合ってベッドの上に座っていた。


 「いい? リッちゃん」


 アイナが神妙な面持ちで言う。


 「ユリアちゃんに弱点は無いわ。特に弱い性感帯も苦手な防御も無いの。凄く体がしな
やかで柔らかくて、どんな体位からでも確実に反撃できるんだよ」


 アイナの言葉を、俺は黙って聞いていた。


 「それから、得意技も必勝パターンも無いの。手コキもフェラもぱいずりも締め付けも、
素股や足コキまで全部必殺技なの」


 気が遠くなるような言葉だった。それでも、俺は黙って聞き続けた。


 「だから、ユリアちゃんに勝つにはお手軽な対策はないの。リッちゃんが全体的にレベ
ルアップするしか勝ち目は無いんだよ。いい?」


 アイナの真剣なまなざし。俺はうなずいた。


 「そのためには、実戦訓練あるのみだよっ! ……あたしは、ユリアちゃんほど凄くな
いけど、それでも一生懸命頑張るからね」
 「分かったよ。始めようぜ」


 アイナはうなずいて、枕元のノートを広げた。『アイナとリッちゃんのらぶらぶ対決
ノート No.10』と書いたそのノートには、今までの俺とアイナの戦いの記録が、戦いの勝
敗だけでなく、かかった時間や決まり手、試合の流れや反省点まで全て書きとめてある。
そのノートの中には、『王国暦120年8月6日 第101試合 勝者:あたし 試合時間:
(リッちゃんが書くなって言うから書かないけど、あたしは憶えてるもんねー)秒 決ま
り手:ぱいずり 備考:あんまり大きくなってたから、びっくりしちゃったのかな? う
ふふ、嬉しいっ♪ 通算:51勝50敗』などと書いてあるページもあって、破り捨ててしま
いたくなることもあったが、このノートに書かれた細かい分析があるからこそ、俺達は学
校でも上位の成績をおさめられているのだ。
 広げられたページの最初の一行に、アイナは『王国暦122年3月24日 第991試合』と書
いた。俺達はこの3年間ですでに990回も試合をしていた。その戦績は495勝495敗。
 アイナは時計のスイッチを叩いた。その瞬間、俺達の戦いが始まった。
卒業検定の試合は実戦さながらである。まず、お互いに全裸。淫魔は異性の肉でしか興奮
させることはできない。そして勝負はどちらかが性的な快感によって完全に失神するまで
続けられる。時間切れも無く、ギブアップも許されない。
 ……そう、ギブアップは許されないのだ。たとえ百回寸止めされようと。


******


 俺はまず低く身構えた。アイナは小柄だ。俺より頭一つ低いユリアよりもさらに頭一つ
低い。その体格を生かし、上背を利して押し倒そうとする男の下へ潜りこんで逆に攻め返
すのが、アイナの得意技だった。それを防ぐために体をかがめて、じりじりと近づく。正
面から組み合ってしまえば腕力でも体重でも劣るアイナを有利な体位にねじ伏せるのはあ
まりにも簡単なことだ。
 当然アイナもそれは分かっている。この前の勝負で、俺はそうやって勝ったのだから。
アイナは前に出てくる。それを捕まえればいい。俺は油断無くじりじりと間合いを詰めた。
 アイナが出た。ベッドすれすれの、俺よりさらに低い体勢で、俺の股間に滑り込んでき
た。その動きは舌を巻くほど速かった。読んでいなければ確実に潜りこまれ、無防備な股
間を好きなように蹂躙されていただろう。俺は落ちついて、突っ込んできたアイナの上体
を捕まえた。そのまま押し潰してバックを取ろうとする。
 その瞬間、アイナのお尻が消えた。そして、


 「うっ!?」


 俺の股間に刺激が走った。それほどの刺激ではない。しかし、完全に不意を突かれた俺
には刺激以上のダメージがあった。動きを止めた俺の手を振り払って、アイナが身を起こ
す。俺の股間に絡みついているものが見えた。


 (足で……!)


 アイナは上体を抑えられた瞬間に、その長い脚を俺の股間に滑り込ませたのだ。そして、
作戦が成功したと思って油断していた俺の、無防備なチ○ポを足の指で捕らえた。やられ
た。アイナの方が一枚上手だった。しかし、アイナがこれほど足の指を器用に使えるとは
知らなかった。きっとこの前の敗戦から、この作戦を考えて、そのために特訓していたの
だろう。アイナは熱心な研究家で、勤勉な努力家だった。
 アイナの動きは速い。俺が一瞬動きを止めたスキに、その小柄な体を完全に俺の間合い
の内側へ収めていた。身を起こしながら、足から手、手からお尻へ俺のチ○ポをパス。足
は俺の足に絡められ、手は俺の腰を抱きかかえるようにしてケツの穴を狙い、乳首に唇が
吸いついて舌で舐めまわされる。おっぱいは俺の腹に押し付けられ、尖った感触が二筋、
腹筋をえぐった。


 「くっ……」


 このままではいいようにやられる。俺は自分の体でフリーな部分を探し、反撃を試みよ
うとした。しかし、小柄なアイナには、この体勢では口による攻撃が届かない。耳を噛む
こともできないのだ。そして、俺の両手はアナルを狙うアイナの両手を封じるために、体
の後ろへ回さなければならなかった。


 ちゅぅぅぅぅぅぅ…… ちゅぽん


 イヤらしい音を立てて、アイナの唇が右の乳首を離れる。そして、


 「いくよ、リッちゃん」


 そう言うと、アイナは左の乳首を含み、体全体を上下させ始めた。


 「うぁっ!」


 思わず俺の口から声が上がった。アイナのヒップが俺のチ○ポを淫らに擦り立てる。押
し付けられた乳は俺の腹を内臓まで溶かしてしまいそうだ。そして、ねぶられ放題の乳首。
 たまらず、体の力を弱めると、アイナの手が俺の手をすり抜けて、アナルを突き刺しそ
うになる。俺は歯を食いしばってアイナの手を掴みなおした。
 するとアイナはまた乳首から唇を離して、


 「まだまだ、ここからだよっ!」


 そう言うと、腰をくねらせて俺のチ○ポをオマ○コで咥え込んだ!


 「あぐぁっ!!」


 俺の口から出たのは、すでに悲鳴と呼んで良かった。アイナのオマ○コはキツい。かな
りキツい。小柄なせいで狭いのか、クラスの女子と比べてもトップクラスにキツい。この
キツさのせいか、アイナのミミズはチ○ポの皮を食い破って肉に潜り込み、直接神経を刺
激しているように感じられる。
 激しい快感が俺を貫いた。しかし、これは逆に突破口でもあった。確かに、アイナが与
えてくる快感は強くなった。しかし、オマ○コがチ○ポを咥え込んだと言うことは、チ○
ポもオマ○コをかきまわすことができると言うことだ。
 俺は直ちに腰を突き上げ、アイナを責めた。……責めようとした。だが、それはかなわ
なかった。それをするためには、アイナの行動を事前に読んで、挿入に備えておかなけれ
ばならなかった。挿入の瞬間、増大した快感に体を硬直させてしまった俺にはできなかっ
た。全てはアイナの掌の上……。俺が腰を突き上げるより早く、硬直した俺の手をすり抜
けたアイナの指が俺のアナルを貫いた。


******


 「……ちゃん。リッちゃん」


 俺を呼ぶ声が聞こえる。体が優しく揺すられる。……もう朝か? もう少し寝かせてく
れよ。体がだるいんだ……


 「リッちゃん。起きて。ほらぁ」


 うるさいな。体がだるいんだよ。お前のせいだろ? お前が俺をあんなに……


 「ああっ!」


 俺は全てを思い出して目を開けた。今は朝、布団で遅刻寸前まで惰眠を貪っている時じ
ゃない。アイナと実戦練習をしているところだった。


 「リッちゃん、気がついた? だいじょうぶ?」


 アイナは俺に膝枕をして、タオルで俺の汗を拭きとりながら顔を覗きこんでいた。


 「……ああ……」


 もう496回目になるが、やっぱり慣れることがない。この情けなさ、この屈辱感。つい
アイナから目を反らしてしまう。


 「リッちゃん、だいじょうぶ? これ何本?」
 「3本」


 アイナが反らした視線の前に突き出した指の数を数える。戦士の繰り出す強烈な快感は
容易に人間の心身を崩壊させる。どうやら俺はアイナを心配させるほど豪快に失神したら
しい。まぁそうだろう。何せ、気持ち良すぎてその辺の記憶が無い。


 「起きれる?」
 「うるせぇなぁ。起きれるよ」


 つい悪態をついてしまい、そんな自分にさらに情けない気持ちになりながら、アイナの
フトモモから頭を起こした。少しくらっときた。アイナの手が支えてくれる。乱暴に振り
払って、俺は起き上がった。


 「だいじょうぶみたいだね」


 ほっとした様子でアイナが言う。負けたときの俺はいつもこんな態度を取るので、もう
慣れているのだ。心の底から安心した笑顔を見せるアイナに、さらに情けなさがこみ上げ
てきた。
 アイナは俺にドリンク剤を手渡すと、ノートに向かってペンを取った。


 『王国暦122年3月24日 第991試合』


 その文章の後に、


 『勝者:あたし』


 と書きこまれる。


 『試合時間:4分33秒』


 たった4分33秒!? 俺はそれ以上見ていることができず、横を向いてドリンク剤を
あおった。


 「よし! さ、次だよ、リッちゃん」


 書き終えたアイナがノートの新しいページを開いて言った。


 「え? まだやるのか?」


 思わず聞き返してしまう俺。


 「……リッちゃん、もうダメ?」


 アイナが心配そうに聞いてくる。俺のことを心底心配しているその表情に、


 「バカ、ダメなわけがあるかっ!」


 アイナのおでこをぺちん、と叩いて怒鳴った。


 「あぅ、良かった」


 アイナはおでこをさすりながら、ページの一行目に『王国暦122年3月24日 第992試
合』と書いた。


 「いい、リッちゃん? さっきの敗因は最初の読み合いに負けたこと……」
 「分かってるよ」
 「それから、その後自分を立て直せなかったことだよ」


 ふてくされたような俺の物言いが、ぴしゃりと封じられた。


 「どんなに気持ち良くても、冷静に自分と相手の体位を確認して、次の相手の動きを読
まなきゃダメだよ」


 ……アイナの指摘はあまりにも正しく、厳しかった。読み合いに負けた思慮の浅さだけ
でなく、快感に負けた俺の心の弱さまで見通している。


 「……分かってるよ」
 


 答えながら、俺は違和感を感じていた。アイナは、今までこんなに鋭いことを言って来
ただろうか? いや、そもそも、アイナはこんなに……


 「じゃ、次の勝負、いくよ」


 俺の思考を中断するように、アイナが時計を叩いた。

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