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輪廻-起- 朽ちぬ体

 我が家の不穏な雰囲気に気付いて荘助は音を立てるように激しく戸を開いた。
「な…なんなんだこりゃ!」
中の光景に絶句する。見知らぬ全裸の女が信乃を全裸にさせて跨っているだけでも十分驚
くことだが女はその上さらに浜路をも全裸にさせ、その細く長い指を秘部と尻に突き刺し
ていた。
「ひぃ!ひいぃぃ!」
絶叫を上げて浜路は気を失い崩れた。そうしてようやく女は指を抜き、荘助に視線を向け
る。
「ほほ、また出してしまうのかえ?そんなに女の中にだすとお主の子を孕んでしまうぞ?」
うめき声を上げる信乃に視線を向けそう言うが、もうほとんど意識のない信乃には聞こえ
ていない様子だ。そして精液が吐き出されたのだろう。ゴポゴポ音を立てながら女の秘部
から収まりきらない精液があふれ出てくるのが荘助の目にも見える。一体どれだけ吐き出
させられたのだろうか。
「なるほど。貴様が庄屋の人間を皆殺しにした妖か。」
荘助は静まり返った庄屋の隅々を確認してきていた。使用人を含む屋敷内のすべての人間
が魂を抜かれて絶命していた。そして旦那のみ衣服を引き剥がされ、精も抜き取られてい
た。信乃に目をやる。首から下の部分がまったく動いていない。恐らく金縛りをかけられ
ているのだろう。そして女を見る。白く透き通るような肌には傷1つない。荘助自身が認め
るほどの実力を持っている信乃の力をもってしても解く事が出来ない金縛り。よっぽどの
強さなのがわかる。
「ふむ。中々落ち着いておるの。仲間がこうやって弄ばれているのをなんとも思わないの
かえ?」
「うひぃ!」
言いながら腰を揺さぶる女に合わせて信乃が喘ぎ声を上げる。またイってしまったらしい。
助けたいが自分の力でどうにかなるか不安になる。信乃と2人がかりならまだしも1人では
これほどの妖魔は相手したことがない。
「やめておけ。お主ら人間と妾では力の差は歴然じゃ。」
不安だが何もしないよりましだと攻撃を仕掛けようとする荘助を察し、女は抑止した。
「やってみないとわからないさ。」
自信はないがここで引き下がるわけも行かない。そう言いながら荘助は勺杖を構えた。
「わかるぞえ。何せお主ら人間が生まれる以前から妾は存在しているからの。」
戦う気の荘助に合わせて女は信乃を解放すると、立ち上がって荘助と向き合う。
「そもそもお主ら人間の言う妖魔の基準は何じゃ?姿か?」
女は荘助が勝ち目がないのを理解しながら立ち向かおうとしているのがわかっていた。そ
の屈しない精神に興味が引かれて尋ねる。しかし少しでも隙がないか探す荘助は答えない。
「人外の姿をした神も多数いるぞえ。犬を統べるもの等な。では行動かえ?人に害を為す
人外の存在が妖魔かえ?しかし禍を司る神もいるぞえ。」
けらけらと笑いながら女は続けるその姿は隙だらけだが、その隙が逆に危険だと荘助の本
能が告げている。
「一体何が言いたい。」
向き合っているだけだというのに荘助の手が汗でにじむ。
「お主らがしきりに妾が何者かを気にしていたようじゃからな。答えてやろうというのじゃ。」
そう言うと、女は駒のようにくるりと体を回転させた。そして正面を向くと同時に女の姿
は帝が身に纏うような着物姿に変わる。しかしその胸元は着崩され、妖艶さを演出してい
た。
「妾の名は『ヤマ』。太古より夜を統べるお主ら人間の言うところの神じゃ。」
ヤマと名乗る女の言葉の意味を荘助は一瞬理解できなかった。
「信じられぬという顔じゃな。しかし真のことじゃ。太古この大和には妾の名をとり、妾
を崇めた巫女によって統括された国があったぞよ。確かその国が今の帝の原点だったと思
うがの。」
ヤマの言うことが真実なら荘助はとんでもない存在を相手にしていることになる。しかも
それが真実だというかのように荘助は彼女から恐ろしいまでの実力差を感じていた。確か
にこれほどの力を持った存在は大妖魔か神しかありえない。そして彼女には大妖魔と言え
ない神々しさがあった。どちらが相手にしろかなう相手ではない。荘助は死を覚悟した。
妖魔ならまだしも神に殺されるのであればそれも天命であろう。そう思ったからだ。
「その目は死を覚悟したの?じゃが妾はまだお主らを殺すなどと言っておらんがな。」
荘助の意を読み取り、ヤマはやれやれと首を振った。
「確かに妾とお主らとは生きた年数が違う。それだけ魂の強さが違う。今妾とお主が戦っ
たところでお主の敗北は明らかじゃろう。しかしそのようなわかりきった勝負は妾も面白
くはない。」
荘助にはヤマの言いたいことがわからなかった。
「かといってお主ら人間の肉体はもって百数年が限度じゃ。しかももったところで肉体は
滅ぶ目前。さらにそれだけ持ったところで妾の生きた歳月の1割にも満たぬ。結局は差が歴
然じゃ。」
荘助の理解をお構いなしでヤマは話を続けた。
「じゃからお主ら2人に滅びぬ肉体を与えてやろう。」
言うやいなやヤマは荘助と浜路を指差し力の波動を叩き込む。一瞬痺れた感覚が襲うがそ
の後は何も起こらない。
「その肉体ならばお主らが老いを迎えることはない。魂を抜かれぬ限り死を迎えることも
ない。その肉体を持って精進し、妾と対等の強さになれば相手をしてやろう。さて、」
一方的に言い切るとヤマは信乃のほうに向き直った。
「これ以上信乃に何をする気だ!」
かなわぬことはわかっているが目の前で友を穢されるのを黙ってみたくはない。そんな荘
助にヤマは首だけ振り返らせる。
「この男はもう気を病んでしまっている。しかしこの男の魂は稀に見る一品じゃ。食せぬ
のは惜しいから今妾が頂いてやろうというのだが?」
気を病ませたのは自分のくせによく言うものだ。しかしたとえ結果が同じでも目の前でそ
んなことをさせるわけには行かない。
「ほほ、気を病んでいても友は友か。その怒りを煽って妾への復讐心で魂を強くさせるの
もよいが…ふふよいことを思いついた。」
含み笑いを浮かべてヤマは荘助にしたのと同じように信乃に力の波動を打ち込んだ。
「ふぐぅ!」
力の奔流にうめき声を上げると信乃はがくりと動かなくなった。
「貴様!何をした!」
目に見てわかるように信乃は絶命している。
「心配せずとも魂は食しておらぬ。これほどの魂をすぐに食いきるのは勿体からの。この
まま生き続けていてもこの男には辛いであろう。だから死を与えてやった。これからこの
男の魂は輪廻の輪に組み込まれて新たな生を迎える。妾の放った力で妾とこの男の魂は繋
がっている。この男の魂が妾をつれて転生するのだ。そして再び妾は成長したこの男の精
を頂かせてもらう。」
語られる信乃の無限地獄に荘助は激怒した。しかし昇天していく信乃の魂と共にヤマの姿
も消えていってしまう。
「この男の魂を救いたくばその朽ちぬ体で探すがよい。真なる繋がりがあるのであれば運
命がお主らをこの男の魂の元へ導くじゃろう。ほほほほほ…」
最後に笑い声を残してヤマは完全に姿を消した。
「畜生…ちくしょぉぉぉぉう!」
荘助の絶叫が長屋にこだまする。

 それから数百年。これまで平和であった京の都が新たに現れた武士の存在により崩壊。
都よりはるか東の鎌倉から新たな時代の幕があけた。荘助と浜路はあの後土人形を術で己
らに見せかけ死んだことにし、町を出て行った。今は導かれるように別の小さな町へと旅
を続けている。荘助が浜路に経緯を説明した時、一時は驚いたような顔を見せた彼女であ
ったが、すぐに立ち直り荘助と共に歩むことを求めた。
「本当によかったのか?浜路ちゃんまで俺の復讐に付き合うことはないんだぜ?」
山道の木陰で休憩しながら何度となく繰り返した質問を投げかける。
「荘助さん、何度も言いますけど私だって信乃さんの敵を討ちたいんです。」
初めて質問したときと浜路の答えは変わっていない。更に指を立てて小さな波動を放ち、
風で落ちてきていた木の葉に穴を開ける。だから私もこうして力を扱うすべを身につけた
のですと目で語っている。
「死ねないってのはきついぜ?」
説得を諦め皮肉を込めていった。
「覚悟の上です。いつまでも若いままでいられるのは少し嬉しいかな。」
等と冗談を言うものだから荘助は銜えた握り飯を噴出してしまった。
 覚悟を決めた2人の笑い声がこだまする。
ハイペースで書いた輪廻のプロローグもこれで終わりです。
今回もエッチな部分がなく申し訳ない。
もともとここまで長く書くつもりがなかったのですが、
まとまりませんでした。
話の雰囲気からエロエロにはしにくいですが、
本編からはもっとそういう場面を増やして書いていきます。

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