リオンが去って程なく、スタンは目的のタペストリーを発見した。やはり上に立つもの
は高いところが好きなようだ。タペストリーの前に立つとスタンは気を引き締めて手を伸
ばした。以前と同じくタペストリーに触れた瞬間スタンの体は吸い込まれていった。
隠し部屋は生家と似たような間取りで形成されていた。生家と同じく様々な資料が床や
テーブルに散乱している。それらを片付けているうちにスタンは本に埋もれていた魔法陣
を見つけ出し、オーブを掴んだ。スタンに掴まれた瞬間オーブは白く輝き、スタンの脳内
に直接召喚術の知識の1部を刻み込んでいく。前回のものと順を追った内容ではないが、区
切りをつけて分けている知識をやはり説明出来そうにはないがスタンは理解した。
「けどこれって…」
しかし中途半端な知識にスタンは1つの矛盾を感じていた。
「なんですか〜?今の光は…」
突然の声にスタンは驚いて振り返ると、ベッドから1人の女が全裸で起き上がり、伸びをし
ているではないか。これだけ本が散乱している中ベッドの周りにだけ何もないのでおかし
いとは思ったのだが…
「あれ?男だ。こんなところに男がくるなんてめっずらし〜」
うれしそうな声を上げると、女はじりじりとスタンに近寄り始めた。黒いロングヘアーに
零れ落ちそうな大きくつぶらな瞳が印象的だ。幼い顔つきに猫のような耳がよく似合う。
しかし顔つきとは裏腹にスレンダーでバランスのいい大きな胸が大人の色っぽさもかもし
出している。
「なんでこんなところにいるんですか?外にはいっぱい仲間もクリス様もいたと思います
けど?」
質問しながら女は徐々に間合いをつめてくる。しかしその目はまったくスタンを甘く見て
いる様子ではない。
(迂闊だった…人間だろうと淫魔だろうとあれに触れば中に入ることが出来たのか…)
身構えながらスタンは隙を探すが、これといった隙が見つからない。
「黙ってないでぇ、お話しましょうよ〜」
口調は軽いが女はうまく逃げ道を塞ぎながらスタンを追い詰めていく。元々部屋の奥に魔
法陣があったせいもあってスタンは部屋の隅に追い込まれてしまっていた。
「あは、もう逃げ場はないですよ?諦めて私と楽しいことしましょうよ」
ここまで追い込まれればもう正面突破しかない。隙をついて自分のペースに持ち込むのが
戦いの常套手段だが、この状況で先手から自分のペースに持ち込むのは難しいだろう。
「この!」
覚悟を決め、スタンは女に飛び掛った。
「そんな攻めじゃ、駄目ですよ?」
スタンの突進を流すように横にかわすと、カウンターのボディブローをきれいに鳩尾に打
ち込んだ。
「ぐは!」
快感とは程遠い激痛に思わず蹲るスタンの顔の前に女はしゃがみこんだ。まだほとんど湿
っていない秘部が眼前に見える。
「戦いの基本は、相手をよく観察して隙を突くことでしょ?」
諭すような言い方で言う。恐らく彼女が今まで戦ってきた戦士の精液から得た知識なのだ
ろう。
「それに、誘ったのは私ですけど返事もしないで一言もしゃべらないまま始めようとする
なんてマナー違反じゃないですか?」
TPOがなってませんよと親が子供にお説教するような言い方をする。痛みは既に消え、痛が
る振りをしながら隙を探すスタンだが、油断しているように見えて彼女にはまったく隙が
ない。
「…スタンだ。」
隙を探すのを諦めたスタンは床に座り込んで体を起こすとそう答えた。
「ふぇ?」
突然の名乗りにまだ小言を言おうとしていた女は間抜けな声を上げる。しかしすぐ理解す
るとそのまま膝を突き、
「私はメリロです。不束者ですがどうぞよろしくお願いします。」
と、三つ指をついて頭を下げた。何か違う気もしたが、あまりにもの丁寧な挨拶に思わず
スタンも畏まり、
「こちらこそよろしくお願いします。」
とまるで嫁入りを受け入れるように正座に座りなおして頭を下げてしまっていた。もう完
全に相手のペースに落ちていることにスタンはまだ気づいていない。同時に、いやスタン
が顔を上げるのに合わせてメリロが顔を上げたのだが、偶然にあがったようにスタンは錯
覚してしまう。そしてさらに、
「えへ。」
目が合って見せたメリロのあどけない笑顔にスタンは一瞬我を忘れてメリロを押し倒した。
今度はメリロもかわそうとしなかったが、
「スタンさん痛い…ベッドで…ね?」
顔を少し上気させながら訴えるメリロに再びスタンの理性が崩れる。思えば今までスタン
が戦ってきた淫魔はすべてSにしろMにしろムードよりも快感を重視していた。こういう雰
囲気を重視する戦いにスタンはあまり免疫がなかったのだ。攻める攻められるの格闘技的
な戦いではないお互いがお互いを求め合うような戦いなど、育成学校でも教えられていな
い。メリロの言いなりに彼女を優しく抱きかかえベッドにおろして覆いかぶさってから冷
静さを取り戻したスタンは、
(こりゃこういう戦いのやり方に関する教義を増やすようにフィリアに言ったほうがいい
な…)
同級生で学年首席だった今は育成学校の教師を思い浮かべた。しかし、
「途中に他の事を考えて意識をとられる事もいけませんしマナー違反ですよ?」
上半身を起こし抱きつくと、メリロはそう言いながらスタンの首筋に下を這わせた。意識
を飛ばし無防備な状態にやってきた快感に思わず体をびくつかせてしまったスタンは、そ
のまま流れるように横に寝転がされ、上下の立ち位置を反転させられる。
「今は私だけを見て私だけのことを考えてくれなきゃ嫌です!」
と馬乗りになったまま頬を膨らませるメリロをかわいいと一瞬本気で思ってしまう。しか
しそんなことをしながらも彼女にはまったく隙が見つからない。どうやら相当のてだれな
ようだ。
「また他の事を考えてる…もう!」
拗ねるような口調でそう言うとメリロは出来着いてスタンの唇を唇で塞いだ。
「ん…はむ…」
一心に舌を絡めてくるメリロにスタンは自分でも驚くほど自然に自分からそれを受け入れ、
答えるように絡める。
(何か術をかけられた?しかしスペルを刻んだ様子はないぞ。ノンスペルの可能性もある
が…)
しかし徐々に激しくなる舌の動きに思考がそこで停止させられる。手持ち無沙汰の両手は
メリロを求めるように尻を撫で、もみ始めた。それに合わせてキスをしている途中のメリ
ロの口から快感の吐息が漏れる。それほど耐久力はないのだろうか。
「ん…はぅ……ふふ、お尻、好きなんですか?」
キスをやめて体を起こし、スタンの両肩に手を突くと見下ろしながらメリロは尋ねた。そ
の間も動くスタンの両手の動きに合わせて、腰をくねらせている。スタンの尻の愛撫をメ
リロは本気で感じているようだ。腹にこすり付けられる秘部の湿った感触が伝わる。
「ん?」
その伝わり方に疑問を感じたスタンは改めて自分の体をよく見た。服を着ていない。いつ
の間に全裸にされたのであろう。脱がされた覚えはまったくない。そしてよく思い返して
みる。彼女に覆いかぶさったとき……既に服は着ていなかった気がする。スタンは彼女の
魅力に我を忘れた瞬間に自ら服を脱ぎ捨ててしまっていたのだった。そして更に、
「ふふ、そろそろ効いてきますよ?」
既にスタンの手は止まっているにもかかわらず腰をくねらせながらメリロは微笑んだ。ま
さか彼女の体液もヒカリと同じように催淫効果があったのだろうか?迂闊だった。しかし
いっこうに快感の波のようなものが押し寄せてくる気配はなかった。ヒカリで耐性がつい
たのだろうと納得し、攻めを再開しようとした瞬間、
「誰がお尻を触っていいなんていったかしら?」
突然メリロの視線が冷たく鋭さを増し、口調にも冷たさが含まれた。しかしこれは戦いだ。
Sタイプはよくそう言うものだと無視しようとするが、考えに反して手がまったく動かなく
なる。それどころか意思に反するように尻から離れ、まるで操られるように頭の上で交差
して動かなくなった。
「何をした!」
思わず尋ねる。
「あら、聞きたいの?なら教えてあげるけどどうなっても知らないわよ?」
そう言って腰を浮かせるとメリロは下半身のほうへと下がっていった。
「私の唾液には男を意のままに操る効果があるのよ。そう強い効果がなくてそうやって抵
抗できなくする程度なんだけどね。けど、この能力には追加効果があるの。相手の意思で
効果を尋ねられ答えた場合、あなたは素直になる。」
メリロの答えを聞いた瞬間体に電流のようなものが走る。
「ふふ、これでスタンさんは私の思うがままです。」
冷たい表情が再び柔らかいものに変わる。どちらが本当のメリロなのだろうか。
「今からスタンさんをいっぱい舐めてあげますね。どこを舐められたいですか?舐められ
たいところを私の顔の前に突き出してください。」
メリロの言葉に「誰が」と意思は反発する。しかし体はもっとも刺激を求めるそそり立っ
ているモノを寝たまま腰を突き出してメリロの顔の前に出してしまっていた。
「うふふ、素直ないい子ですね。」
そんなスタンにメリロはそう答えると一気に根元まで咥えこんだ。
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