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淫魔召喚 プロローグ1

 古の時代、世界を支配する魔王に対抗するべく1つの魔術が生み出された。

その名も『召喚術』。

それは術者の魔力によって術者の思い描いた生物を具現化する魔術で、存
在を完全に把握している生き物であれば、たとえ人間であっても生み出す
ことの出来るものだ。術を生み出したマーリンはその術により聖獣と呼ば
れる生き物を具現化し、勇者と共に魔王を打ち倒した。
 平和が訪れ、マーリンは『白銀の賢者』と呼ばれ彼の元にたくさんの弟
子が集まったが、彼はその弟子の誰1人にも召喚術を教えなかった。なぜな
ら召喚術によって生み出された生物は自分に完全服従だからである。踊れ
といえば踊るし死ねといえば自ら命を絶つ。それは自らの魔力で生み出し
た命であっても許されることではないと思ったからである。結局マーリン
は死ぬまで誰にも召喚術を教えることは無く、幻の術として記録に残るだ
けの存在となった。
 その数世代後。とある田舎町にマーリンの研究ノートが発見された。そ
の町はマーリンが生まれ育った場所で、そのノートの中には召喚術に関す
るものと思われる物が大量に書き記されていた。しかしそこには厳密な術
の構成などは一切かかれておらず、類まれなる魔術士たちによって研究を
続けられたが術の復元にはまったくもっていたらなかった。
 そんな中、召喚術復元研究所に1人の青年が現れた。100人に1人と呼ばれ
る精鋭ばかりで構成された研究所の中でも彼の才能は群を抜いており、ま
さに万に1人と呼ばれる天才だった。彼の出現により滞っていた研究が急速
に加速した。そしてものの数ヶ月で現存生物の召喚まで可能としてしまっ
た。その後も研究は進みついに最終段階、空想の生物の召喚にまでいたり、
そこで事件は起こった。
 彼の魔力によって新たな命が生み出され、彼の思い描いたとおりの生物
が具現化されていく。そうして生み出されたのは一見ただの絶世と呼ばれ
る美貌を持っただけの女性だった。しかしその瞳は人間にはありえない妖
艶さをかもしだしている。彼が召喚したのはいわゆる「夢魔」と呼ばれる
空想の生き物だ。「夢魔」とは人にその人が持つ1番大きな欲望の叶う夢を
見せ、精気を吸い取る生き物だ。召喚術の工程のうち、生成まではうまく
いった。次の実験は命令通り行動するかである。彼は万が一の為に自分の
周りを囲む他の術者たちを見渡すと1人の男を指差し、
「行け」
と一声命じた。夢魔は頷くとゆっくりとした足取りでまっすぐその男のほ
うに歩みだした。男はまさか自分が実験材料にされると思っていなかった
のか「ひぃ」と情けない声を上げるも自分の中にある好奇心に勝てず、金
縛りにでもあったかのように動けずにいた。程なくして目の前までやって
きた夢魔はそれがさも当然のことのような自然な動きで男の口にくちづけ
をした。本来夢魔とはその瞳で相手を眠らせるということであったが、彼
の生み出した夢魔はキスによりその対象の記憶と経験を読み取る。そして
その対象の好み通りの体型と性格に自らを変化させる。そして自らの体を
屈指してその対象を骨抜きにし、その精液から精気を吸い出すのだ。ここ
まで言えば理解してもらえるだろう。彼の生み出したのは夢魔ではない。
彼の欲望と妄想から生み出された新たな生き物「淫魔」である。程なくし
てあっけなく男は射精させられた。それもモノに直接触られること無く、
キスのみである。
「クラース!き…貴様何を召喚した!?この女夢魔ではないな!?」
研究員の1人が彼に手を向けて尋ねる。魔術士である彼らの最大の武器は魔
術だ。手はいつでも放つことが出来るという牽制を意味している。
「おや、私を殺すつもりですか?今この術を扱えるのは私だけなのに…こ
こまで進んだ研究が振り出しに戻ってしまいますよ?」
クラースの言葉に彼の動きが躊躇する。その隙にクラースは淫魔を自分の
傍に呼び戻す。
「お前にマリアという名を授ける。マリア、今度はそこの彼がお前に相手
をしてほしいそうだ。…いけ。」
彼のほうを見て妖艶に微笑むと、
「かしこまりました、マスター。」
と答えて先ほどと同じゆっくりとした足取りで彼に向かっていく。
「驚いたかい?彼女は吸い取った精気から対象の知識も吸収する。試しに
相手させたクレス殿から言語の知識を得たようだね。」
「う…うわぁ!」
ゆっくりと近づいてくるマリアに恐怖を覚えた彼は思わずマリアに術を放
つ。それによって足を止めたマリアだが、一糸纏わぬ彼女に傷1つついてい
ない。
「無駄だよ。彼女には彼女自身を傷つける攻撃は通用しない。しかしせっ
かく完成して生み出されたばかりの彼女にその仕打ちは酷いね。マリア、
今回は遠慮しないで思いっきりやってあげなさい。」
「かしこまりました、マスター。」
クラースの命令に答えたところでマリアは彼の前にたどり着いた。そして
さきほどクレスにしたのと同様にキスをして自らの体を変化させていく。
「うわぁぁぁ!!」
彼の絶叫が室内に響き渡る。
「やめろ、やめさせるんだクラース!」
別の男が彼と同じように手をクラースに向けて制止する。しかしクラース
の態度は変わらないままだ。
「先ほども言いましたけど私が死ぬと今までの研究が無駄になりますよ?
それに彼はあんなに気持ちよさそうなのにやめさせるのはかわいそうじゃ
ないですか」
嘲笑するクラースに男は覚悟を決めた。
「確かに今までの苦労を考えればつらいが、これ以上お前を好きにさせる
わけにはいかない。」
男の口からものすごいスピードで呪文詠唱が刻まれる。
「おい…冗談だろ?いいのかよ本当に!?」
驚愕の表情を見せるクラース。残りの研究員も男と同じくクラースに手を
向けてスペルを刻む。
「冗談はよせって!おい!」
慌ててクラースが制止するが聞こうともしない。一流の彼らの詠唱にさほ
ど時間は必要としない。瞬く間に全員が詠唱を完了し、クラースに向けて
術を放った。
「やめろーーーーーーーーーー!…なんてな」
着弾の寸前までおびえた表情を見せていたクラースだがその寸前にそう言
うと指を弾いた。その瞬間クラースの足元に魔法陣が浮かび上がり、彼に
向かって飛んできた魔術の弾丸をすべてかき消した。
「な…アンヴァリアブルフィールドだと…馬鹿な!召喚中は動けず魔術も
使えないはず!?」
召喚術には欠点があった。召喚中の生物には常に魔力を消費している。そ
のため常に術者と見えない魔力供給のラインを結び、常に補充してやらな
いといけない。
「確かに従来の召喚術なら動けなかったし術も使えなかったさ。けどこの
術は特別なんだ。もともと魔力を一定量だけ与えてラインを切り離すこと
は可能だった。しかしそれじゃすぐに枯渇して消滅してしまうよね。」
よほど自分の術に自信があるのかクラースは説明しながら再び指を弾いた。
「ぐぅ!」
すると攻撃してきた全員の体が麻痺し、その場から動けなくなってしまっ
た。
「普通の直接攻撃するようなタイプの生物では駄目だったろうね。しかし
彼女のような対象から精気などのエネルギーを吸収するタイプなら、その
エネルギーを魔力に変換する能力を与えるだけで召喚後半永久に生き続け
ることが出来るようになるんだ。これぞマーリンも成し得なかった完全な
る召喚術さ。」
自分に陶酔するかのようにクラースは天井を仰ぎ、大きく高笑いをした。
「終わりました、マスター。」
高笑いをしている真横にいつの間にかマリアが立っていた。クラースが男
のほうに目をやると、精液と精気を完全に吸い取られ、ミイラのようにな
っていた。
「ご苦労。まだ足りないだろう?全員を動けないようにしてあるから満足
するまで好きなだけ吸い取ってきていいぞ。」
完全に支配者のような気分になったクラースは彼らを完全にえさのように
扱っていた。
「貴様…こんなことをしてただで済むと思っているのか?魔術士協会が黙
っていないぞ!」
動けない男の1人が言う。
「ならまず魔術士協会を壊滅させるかな。ほら、遠慮せず誰でも好きな男
にいってこい。」
動かないマリアに催促をする。しかしこの言葉が彼にとって思わぬ事態を
招いた。
「かしこまりましたマスター。では遠慮なくいかせてもらいます。」
クラースの指令にそう答えると、マリアはそのままクラースの唇をふさい
だ。誰でも好きな男という言葉に自分が含まれていることを忘れていたの
だ。自分の妄想を具現化しただけあって彼女のキスは彼にとって最高のも
のだった。キスを終えても恍惚とした表情のまま硬直してしまう。その間
にも彼女の体は見る見る彼の理想の女性に変化していく。さすがに変化し
終える頃ようやく彼も意識を取り戻した。
「お前何をむぐぅ!」
叱咤と命令変更をしようとする彼の口を再び彼女はキスでふさいだ。融け
るようなディープキスにクラースの腰が砕け尻餅をつく。そのまま彼の上
に覆いかぶさると彼女はそのまま彼の腕を彼の頭上に持ち上げ、手首の周
りで円を描く。円は彼の手首の中に吸い込まれていきそのまま彼の手首は
動かなくなった。彼が淫魔に備え付けた能力の1つ『禁欲の鎖』だ。縛られ
たものは縛った者の指示無く縛られた部分を動作することが出来なくなる。
そして、完全に輪が吸い込まれてから彼女は唇を離して彼を見つめた。
「はぁ…はぁ…俺ではなく他の男の相手をして来い」
そんな彼女に息を荒らしながら彼は言った。
「わかりました。」
十分に見つめた後に彼女はそう言うと彼をそのままにして立ち上がった。
「あ…」
そんな彼女の行動に命令をしたはずの彼が声を出す。
「どうかしましたか?マスター?」
そんな彼に彼女は振り向くともう一度彼の目を見つめた。
「い…いや…」
しどろもどろする彼をじっと見つめて彼女は答えを待つ。
「その…あの…」
しかし思うように言葉を出せない。彼女に見つめられるだけで彼女の瞳に
吸い込まれ、うまく話せなくなってしまうのだ。
「今うかがっている指示はマスター以外の男を相手して来いということで
す。行動に移ってよろしいでしょうか?」
彼を見つめたまま今度は彼女が尋ねる。自分以外の他の男という言葉に苛
立ちを覚える。彼は気付いていない。彼は彼女の瞳に見つめられることに
より彼女に魅了され、その状態で他の男を相手されることに嫉妬している
ということに。
「駄目だ…他の男ではない…」
思わず指令を取り消してしまう。彼の理性がそれを止めようとするが、そ
れ以上に彼女への恋心が見つめられるたびに肥大していく。それどころか
彼の頭の中は彼女とセックスしたい言う気持ちであふれそうになる。キス
しただけ。それもされてからしばらく時間が経っているというのに彼の股
間は収まるどころかどんどんたぎっている。理性が警笛を鳴らすがもう彼
の耳には届いていなかった。
「まず俺の相手をしろ。他の相手は俺が終わってからだ。」
彼の命令に彼女は妖艶に微笑むと、
「わかりました、マスター。」
エロ部分はこれからですが、投稿させていただきました。

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