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エッチバトル戦争第12話「拒絶」

翌日、気づいたら僕はベットの上に寝かされていた
窓から見えるのは、コートルークの町並み…
朝焼けが綺麗だ
だが、僕は昨日、手淫魔の隠し砦に行って、そこで極淫魔のテオナと話し、戦い…
……その後の記憶が曖昧だ
何故僕はここで普通に寝ているんだ?僕が気を失っている間に誰かが運んだのか?
隣のベットにいる筈の先輩を見てみる
いない…
ベットはもぬけのからだ
と、僕の手に何か紙のようなものが握られているのに気づく
紙を見てみる、何か書かれているようだ


“作戦決行は明日の夜6時、クラウ湖の休憩所に来てください
    よろしくお願いしますね”
                      テオナ



「………」
あれは夢ではなかったらしい
明日の夜、か……
と、追伸が書かれている


“あなたの実力、まだまだですけど…
   素質はあると思いますね”


「……」
いつか誰かに似たようなことを言われた気がする
あれは…イートルさんだったか
素質…
「淫魔と戦える素質があったって、嬉しくないさ」
僕は、あの時と同じ言葉を呟いた





先輩は5分程したら戻ってきた
どうやら僕の昨日の行動については何も知らないらしい、いつも通りの豪快な先輩だ
「スーク、ちょっといいか?」
食事中、先輩が聞いてくる
「はい?」
「今さっき、本部と連絡を取ってみたんだが…俺達の独立的な行動は許してくれるみたいだ」
「そうですか…よかった」
恐らく、カーリッジ隊長が事を丸めてくれたんだろう…感謝だ
「だが、イージス島に潜入する方法がわかったら、もう一度連絡をくれ、だそうだ」
「総攻撃を仕掛けるわけですか……」
「ああ、いずれにしろ決着はつけないとな…」
先輩の言葉を聞きながら、僕は全く違うことを考えていた
なら、先輩に余計に手淫魔のことを吹き込んではならない
僕達人間が総攻撃をすれば、手淫魔も間違いなく僕達のことを敵対視してくるだろう、それだけは避けなければならない
……避けなければならない?
(何故だ、手淫魔と口淫魔、両方を倒せるチャンスじゃないか…)
だが、何故かその時、僕は手淫魔のことを先輩に話すことができなかった
テオナ…淫魔とは思えない、むしろ人間に近い女だった
………まるで、淫魔の極致が、人間のような
(バカな…)
一体何を考えてるんだ、僕は
人間と淫魔が同類だと?
(どうかしてる……)





結局その日の自由行動も、収穫はつかめなかった
再び夕方、町並みを歩きながら僕は考える
(これ以上、先輩と一緒にはいられないな…)
明日、手淫魔の作戦は決行される
僕はアキを救うため、それに参加しなければならない
だが、先輩とは恐らく…相容れない
そもそもここまで、先輩に迷惑をかけすぎたんだ
(…………)

「うわあああああああああっ!!」
悲鳴、はっとする
騒動は町の奥からだ…何だ?
「い、淫魔だああああ!!」
「キャーーーーッ!!」
「………!」
淫魔……町まで攻めてきたのか!!
僕は戦いに出ようと悲鳴と喧騒が交じり合う方向へ行こうとする
だが、僕の足は無意識に止まる
「…………………………」
その考えは許されないことだった、レジスタンスの一員として
だが、一度その考えをしてしまった以上、僕は先へ進むことができなくなった
(この騒ぎにまぎれて、この町から出れば、時間稼ぎができる…?)
少なくとも、普通に町に出るよりは先輩をかく乱することができるだろう
その間にアキを救って戻ってくれば、すべて丸く収まる……
「…………僕は…………」
ゆっくり、ゆっくりと
僕の足は、喧騒の反対側へと向いていく
そして
僕は



逃げ出した、のか――?





続く
ストーリーは暗黒路線を辿る一方(ぇ

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