カウセンの町に着いたのが夜
そして宿を取り、明朝
僕と先輩は船に乗っていた
目指すは、南西大陸の港町コートルーク
「ここまではいい感じで進んでいるな…」
船室の一室、先輩と僕は互いに向き合いこれからの作戦会議をしていた
「南西大陸は口淫魔の支配が強いです、今まで以上に気をつけないと」
先輩は頷く
「手淫魔は先の作戦でほぼ壊滅したとはいえ…油断はできないな」
「イージス島は本拠地ですしね」
「実際、こっちの大陸でも口淫魔が出てきた…大分支配が強まっているようだ」
「でも、今回の作戦は…」
「わかってる、アキを助けることが最優先だ」
そう、作戦内容はあくまでアキの救出
たった二人で口淫魔の全軍を相手にするのは自殺に近い
だが…
「(ファントム…あの悪魔もイージス島にいるのか?)」
あの悪魔は全ての淫魔を作りし存在
いわば淫魔の神と言っても問題ない
五勢力を影で操っている可能性はある
だが…
「(なら、何故淫魔は争っているんだ?)」
淫魔達も一枚岩ではない…その可能性はありそうだ
五勢力の淫魔は悪魔の存在を知らずに争っているのか…?
そして、自分達が淫魔の頂点に達しようとしている
何故悪魔は生み出した淫魔達を放置したんだ?
あの悪魔は人類を滅ぼそうとしている、なら全ての淫魔を統率して攻めればいい
それができない…ということは
「(何か、淫魔を操る別のものがあるのか?)」
争うように仕向けた悪魔も予想しなかったイレギュラーの存在
それが、いるということか?
いずれにしろ、あの悪魔が現れたことで淫魔が何処から来たのかということはわかった
それがわかっただけでもかなりの収穫だろう
つまりはあの悪魔を倒せば淫魔は消えるということだ
「(待っていろ、悪魔…アキを助け出し、お前を必ず倒す)」
「スーク」
思考にふけっていたせいか、先輩の言葉に少し反応が遅れた
「はい…?」
「お前一人ですべてを背負い込むなよ、お前にはたくさんの仲間がいるからな」
「……はい」
先輩の存在は、一人旅をしようとしていた僕にとってかなり支えになっていた
やがて夜になり、船は静かな眠りの時間となっていた
コートルークには明日の明朝着く予定だ
先輩ももう寝たようだが、僕は一人物思いにふけっていた
今回の一連…何処かにひっかかりを感じる
悪魔はアキをさらった…それは恐らく僕を誘い出すことでレジスタンスを壊滅に追いやることが目的だろう
何故、悪魔はこんなにも唐突に現れた?
淫魔時代が始まって10年以上経ったが、今まで淫魔の根源を掴むことなどできなかった
そして現れた淫魔を作り出した悪魔という存在……
(……わからないな)
考えても答えのでないことだ、僕も寝ようと床に入ろうとした、が
「うわぁぁぁあああっ!?」
「キャ―――――ッ!!」
「!!」
悲鳴、これは――船上からか
「スーク!」
ラムト先輩が素早く起き出す、僕は頷き、扉を開け、船上に続く階段を上った
「……これは」
船上に上がった僕は思わず絶句した
数人の船乗りと思われる男がバタバタと倒れている
そして立っているのは――淫魔
船上をざっと見回す――5体
だが、これは5大勢力の淫魔ではない
5勢力の淫魔は海上では生きる能力を持たないのだ
ということは
「…特殊淫魔だ」
「特殊…」
淫魔時代が始まった当初は5勢力の他にも少数の淫魔勢力がたくさんあった
それらは皆、特殊淫魔と呼ばれレジスタンスでは扱われてきた
ほぼ壊滅できたはずだが…
まだ残っていたとは
「海の淫魔…マーメイドだな」
先輩の言葉を聞きながら、僕は記憶を手繰り寄せる
書物で読んだことがある、マーメイド…歌声で相手を魅了、骨抜きになったところをじっくりと食べる…
淫魔の中でも特殊のカテゴリーに入る、かなり厄介な相手だ
「5対2か…俺がなんとか3匹相手をする、お前は…」
「先輩、それは先輩が危険では」
僕は先輩の作戦に抗議しようとしたが、先輩の言葉は力強い
「それを言うならお前に3体任せる方がもっと危険だよ」
「…………」
「心配するな、こんなところでやられるつもりはない」
「……わかりました」
僕も覚悟を決めなくてはならない、初めて戦う相手だ
「よし、行くぞ!」
丁度僕と先輩の見やる先に2:3と淫魔が別れている、これはラッキーだろう
僕は先輩の合図と共に戦いを開始する
相手は全裸体、どちらも澄んだ青く長い髪が特徴的だ
「……」
僕は片方のマーメイドの胸を掴み、揉む
「うふふふふ………」
マーメイドの方は感じてはいるようだが、何処となく余裕が感じられる
僕は構わずマーメイドの胸を愛撫し続ける
だがそれに集中していた僕は、もう片方のマーメイドの行動に注意を払ってなかった
「くっ!?」
「甘いわ」
2対1ということを一瞬忘れてしまった僕の不覚だった
後ろから羽交い絞めにされてしまった
後ろから感じる全身の感触がぷるんとしていて気持ちいい…
「くっそ…」
なんとか脱出しようとするが、その前に胸を揉んでいた方のマーメイドが行動に出る
素早く僕の顔を両手で優しく掴むと、その頬を愛しそうに撫でながら、キスをしてくる
「んっ……」
妖しく、海の波のように流れるマーメイドの舌の動きが、僕の舌に絡まり、唾液を生む
僕は顔が紅潮していき、すっかりキスに酔わされてしまっていた
マーメイド達の巧みなサンドイッチ攻撃に、僕は脱出する術を見失った
「ふふふ、動けなくなっちゃった…?」
「もっともっと気持ちよくしてあげる、逃げる気力も失せるぐらいにね」
キスからは解放されたが、相変わらずサンドイッチの状態で、抜け出せない
精力だけがどんどんと吸い取られていく…
そして僕と向き合っていた方の淫魔がその柔らかな水色の手でペニスを愛撫してきた
「く、あ……」
サワサワと指先で包み込むような攻撃を僕はダイレクトで受けてしまう
ダメだ…防御しようにもこうも密着されては…
最初は片手だけだったが、やがて両の指先で攻撃してくる
サワサワと弄るような愛撫
そして亀頭をひとさし指で軽く撫でられた瞬間、我慢は果てた
ドピュピュピュピュピュピュピュピュッ!!
吐き出した液は前のマーメイドの体にかかる
が、それらの白い液は全てそのままマーメイドの体の中に吸収されていく
「美味しい…」
マーメイドはうっとりとしたような表情で取り込んでいく
そしてお礼とばかりに再び激しく僕の唇を塞ぐ
後ろからも首筋に舌を這わせ、僕の力を抜こうとしてくるマーメイド
いい……このまま、溺れて……
「スーク、しっかりしろ!」
はっと我に返る、見ると、先輩の姿
マーメイドは1体、どうやら2体は倒したようだ
「お前の力はそんなものじゃないはずだ…溺れるな!意志をしっかり持て」
「………っく!」
目が覚める、一気に集中力を高め、マーメイドたちを吹き飛ばす
「くうっ!?」
「ああっ!!」
突然見えない力に吹き飛ばされたかのようにマーメイド達が転がる
「な、何……この力は……」
「まさか……この子…私たちを精神力だけで薙ぎ払ったというの?」
ふらついた体を立て直す
「僕はこんなところで負けるわけにはいかない…アキを救うまでは」
目を見開く
「消えろ、淫魔達!」
「きゃあああああああああっ!!」
マーメイド達はそのままスークの力に耐えられず、光となり、消えていく……
「精神力による力…だな」
「?」
なんとかマーメイド達を撃退した後、僕と先輩は再び船室に戻っていた
「淫魔には気合による力も有効だそうだ…お前がやったような」
「……」
「お前もなかなか、成長してるな、俺の相手をしていたマーメイドまで倒すとは」
「……いえ」
僕は軽く照れながら、窓から見える海原を見る
「(淫魔の誘惑に耐え切れば、精神力による力を出すことができるか…)」
戦いは何も技術だけではない、ということか
この調子で、アキも救い出せればいいが…
コートルークまで、後少しと迫ったところであった
続く
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