晴れてスライムバスターとなった僕に、早速仕事の依頼が来た。
「試験あけで疲れているところすまないな、ウィルくん」
いつもお世話になっている村役場の人が、僕に依頼書を届けてくれた。
この付近の洞窟に住み着いた淫魔数匹を、戦士たち一行が討伐に向かった。
しかし旅立ちから一週間以上経つが戻ってこない。
そこで僕に洞窟の様子を見てきて欲しい・・・というのが依頼内容だった。
普通に考えて、パーティーは全滅している可能性が高い。
つまり、危険な仕事だ。
また、淫魔たちの構成もわからないのではスライムバスターの僕じゃなくてもいいような気がするが・・・
「すまんね、人手不足なんだ。報酬はいつものところに預けておくから、何とか引き受けてくれ」
彼から報酬額の書いてある紙を受け取ってみると、なんといつもの50倍くらいの金額だ!
スライムバスターになると仕事の料金体系も変わるものらしい。
「急な仕事依頼だから、出来る限り金額は弾ませてもらったよ。なあ、頼むよ。」
僕は金額に驚きつつも、この危険な仕事を引き受けることにした。
洞窟に近づくと、まず中が明るいことに驚かされた。
永久式のたいまつが壁にいくつも取り付けられている。僕は慎重に奥に進んだ。
中はけっこう曲がりくねっていて、歩きにくかった。
4つ目の角を曲がったところで、淫魔の死体を2体見つけた。
道を進むにしたがって、死体の数が増えていく。
中に入ったのは、かなりベテランのパーティーなのだろう。
もしかしたら今も戦っているのかもしれないな。
一時間ほど歩いたところで、急に視界が広がった。水の流れる音がする・・・
僕は大きな滝の裏側まで来てしまった。おかしいな? この辺には滝なんてないのに??
「あら、今度はまたかわいい男の子がきたこと!」
不思議に思う僕の耳に、透き通るような女性の声が響く。
声のする方向に目をやると、濃い青色の髪をした女性が僕を見て微笑んでいた。
「お、おまえはっ!」 僕はその容貌に見覚えがあった。
とたんに僕は養成学校の教本の1ページを思い出した。
水辺の妖精。その美しさで人を惑わし、水とともに人間を飲み込む。
スライムを作り出した元になっている古典的な存在。
ウンディーネ・・・人はその淫魔をそう呼ぶのだった。
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