今回の依頼はただの下級淫魔一匹。
すぐに済む依頼だ。
コールはこれから臨む依頼のことよりも、昨日出会った女のことを考えていた。
巨乳は嫌いだった。
子供に乳をやるだけなら乳首があればいい。
押し付けがましく盛り上がった実用性の無い脂肪の塊に、何の意味も見出すことができなかった。
そんなものが、自分と同じ男と言う生き物の目をひきつけていると思うだけで気分が悪かった。
ともに技を磨いて来た学友が、あの肉の谷間に自慢のペニスを埋もれさせ、呆けた顔で喘ぎながらついにイってしまう姿を見ると耐え難いほどの悔しさに襲われた。
あんなものでどうしてイってしまうのか。
オレは絶対にイったりしない。
事実、今まで一度も乳房で果てたことはなかった。
挟まれたことは何度かある。
だが、柔らかい肉がペニスを溺れさせるように包み込んでも、
激しい弾力がペニスを押しつぶさんばかりに押し寄せても、
あの無意味で醜怪な肉塊にはさまれていると思うだけで、興奮が冷めていった。
それが、昨日は…
生意気な女だった。
大淫魔がいかにあっけなかったかをけらけら笑いながら吹聴していた。
自分が大淫魔と戦った時を思い出す。
本当に強かった。
何重にもしつこくしつこく底なしにからみついてくる膣の肉襞に、何度も意識を飛ばされた。
養成学校で植えつけられた戦士の本能だけが、射精を拒み、腰を動かし続けた。
体に染み付いた教官達の教えが、絶望を乗り越えた勝利を与えてくれた。
それを、あの女は…! 気がついたら声が出ていた。
すばらしい腰つきだった。
たっぷりと脂がのっているのに少しも型崩れしていない。
しなやかに鍛えあげられた筋肉が織り成す曲線の美しさときたら!
頭がくらくらした。
自分の股間を責めているのは、あの生意気な女のくだらない乳だと必死に言い聞かせた。
だが、どうにもならなかった。
火照った白いヒップの艶かしいダンスに、目も心も奪われた。
自分でも、よく引き分けたものだとおもう。
あの至高の舞を、ほんの少しでも長くこの目にとどめておきたいと、心の底から想い、
もてる全ての力を尽くし、必死に最後の瞬間を引き伸ばした。
ただそれだけが導いた引き分けだった。
(……言い過ぎたことはあやまる…… ごめん)
消え入りそうに小さな、でも素直な言葉を思い出す。
知らずと、口元が緩んだ。
(帰ってきたらまた一緒に飲もう?)
そうだ。帰ったらまたあいつに会える。
報酬で上等の酒を奢りながら、自慢話を聞かせてやろう。
あいつはきっと、下級淫魔を嬲ったくらいで調子にのるなとつっかかってくるに違いない。
そしたら、昨日の決着をつけよう。
今度は思い切り、あいつの中にオレのペニスを突っ込んでやる。
あいつはオレのペニスをくわえこんだまま、あのサイコーの腰つきでエロいダンスを踊るのだ。
「……」
コールは不覚にもその場で前かがみになった。
ヤバい、今度こそ負けちまうかも。
学校が違ったからはっきりとは分からないけど、確かオレより一学年下だったはず。
参ったな… あいつはなんて言ってオレをからかうだろう。
「ああ、約束だ…」
コールはもう一度、口の中でこっそりと呟いた。
避難勧告で、静まり返った小さな村の片隅。
それは、湖のほとりに腰掛けていた。
最初に見えたのは、白いうなじ。
そのすぐ上のあたりで、水色のリボンにまとめられた長い黒髪は、
湖の水を浴びたのか、それとも自らの艶を誇っているのか、太陽にきらきらと輝いていた。
鼻歌を歌いながら、そのリズムに合わせるでもなく足をぱちゃぱちゃさせている。
少女だった。
身長は140にも満たないだろう。
かざりっけの無い、白いワンピースが良く似合っていた。
鼻歌が止んだ。
「ん? なんだか美味しそうな匂いがしますねー」
少女はぴょん、と立ち上がった。
裸足だった。
傷ひとつない白い踵をくるりと返して、少女が振り向いた。
「あは、人間だー」
ふるん。
ゆさっ、ゆさっ。
小さなワンピースが、張り裂けんばかりに揺れた。
「こんにちはーですお兄さん。わたしとえっちなことしませんか?」
少女ではありえない、あまりにも深すぎる谷間を胸元から覗かせながら、少女はまるで湖の妖精のように笑った。
「だまれ淫魔」
コールは即答した。
「あれ、分かります?」
「分からいでか」
「え、どーしてです?」
少女は笑顔のまま、もう一度胸を揺らした。
ふるん、ふるん、ふるん。
「どうしてだっていい。悪いがさっさと帰りたいんでな」
「…あー、そっか、お兄さん淫魔ハンターなんですね?」
ふるるんっ
少女は一歩、コールに近づいた。
「そっかそっかそっかー。はじめてみたやー。ついにわたしのところにも来たんですねー」
少女は無邪気に微笑んだ。
気に入らない。
コールは思った。
淫魔にとって淫魔ハンターと言う言葉は、死神の名でなくてはならないはずだ。
笑顔で歓迎されるなど言語道断。気に入らないこと極まりない。
それに、
さっきから…
ぷるん
目のやり場に、困る。
なんて、気に入らない。
「珍獣扱いされてまで長話する気は無ぇ。さっきも言ったが用がある。すぐに終わらせてやるよ!」
コールは上着を脱ぎ捨てた。
少女より頭二つは悠に高い上背。
見事に鍛え上げられた、逆三角形の体が太陽の光を照り返した。
「きゃ♪」
それを見て、少女も上着を脱ぎ捨てた。
ワンピースの少女は、下着をつけていなかった。
ふぁさり、と白い布がひるがえると、少女は全裸になっていた。
ゆさり。
ずくん。
コールの股間が疼いた。
そんなはずは無い。
コールは目を疑った。
こいつはとるにたらない下級淫魔で、
アレは無意味で無価値な脂肪の塊のはず。
はずなのに。
「いいですよー、お兄さん。わたしとバトルファックしましょ♪」
コールは疑った目を閉じられなかった。
近づいてくるそれを、じっと見つめ続けていた。
ゆさり、
ゆさり、ふるっ、ぷるる、るんっ
なんて、
なんて、イヤらしい。
「それじゃー、れでぃ・ごぉー!!」
身も股間も棒立ちのまま、
コールは草の上に押し倒された。
はっ、と我に返った時にはもう遅かった。
たぷん
豊満すぎるエロスの塊が、コールの股間の上で揺れていた。
揺れているだけ。なのに、身動きひとつままならない、圧倒的な重量感。
コールの脳裏に、かって耳にした話が蘇った。
その種族に属する淫魔は、
下級クラスの身であってさえ、極淫魔クラスの乳を持つと……!!
「どもども。自己紹介が遅れました」
少女が淫蕩な笑みを浮かべて言った。
ネズミを見つけた子猫の目だった。
「わたしは乳魔。今後ともよろしくです♪」
コールは身をよじって逃げようとした。
何もかも遅かった。
「うはあああああああああああああああああああああああ!?」
静かな湖畔の森の陰に、男の叫びが木霊した。
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