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ネタ【三番隊執務室】

「イヅル〜、なんやお前んとこから写真落ちたで」

ああ、どうしてこんな時に限って親切なんですか!?市丸隊長
部下が落としたもの拾わなくてもいいじゃないですか
それ、僕が渾身を入れて作った雛森君のアイコラ
つぎはぎしたとこなんかスムーズでアイコラとは思えない力作なんです
そんなしげしげと見ないでください!
なんだか市丸隊長に雛森君の裸見られてる気がして嫌なんです
本物じゃないけど……

「ふ〜ん、返すわ」

は、案外簡単に返してくださった。
ちょっと一安心…。
市丸隊長は机に座って仕事再開、よかった。

「イヅルはああいうのんが好きなの?」

「い、いえ、あの……」

市丸隊長が例のにた〜という笑いをうかべて僕を見た。

「イヅル君、君まだ女知らんやろ?
 こんなんオカズにしてねえ…」

と、いきなり黒白の網!二十二の橋梁って
何、縛道の七十七「天梃空羅」はじまってんですか!?

「三番隊副隊長吉良イヅルはんは童貞なんですってぇ〜」

市丸隊長の強力な術は尸魂界全土に響き渡った。

僕のあだ名はしばらくの間「童貞君」になってしまった
率先して呼ぶのは市丸隊長だけど
雛森君まで僕の顔を見ると真っ赤な顔をして逃げて行く様になった……。










僕のあだ名を世間が、というか尸魂界が忘れはじめた頃だった。
それまで散々酷い目にあった。
阿散井君だって女性経験は同じ様なものなのに公衆の面前で
「成績だけよくても女のこと知らねえんじゃ半人前だ」と言ったり
各隊の隊長達が相談にのると好奇心全開で寄ってきたり……。
女の子だって酷かった。
「やだー栗の花くさ〜い」ってそれ僕の事ですか?
冷静に考えれば清純な女の子がそんな事いう筈ないんですよね……。
そんな針のムシロの日々がやっと過ぎようとしていた時だった。

「イヅル〜、イヅル〜、おるんやろ?戸ぉ開けてえ
 僕今両手ふさがってん、大荷物なんや、はよ開けえて」

「はいはい、今すぐ開けます!」

ああ、今日も市丸隊長との一日が始まる。何故か胃が痛い様な気がする。
戸を開けると市丸隊長は両手で抱えきれない程本を抱えて
三番隊執務室へ入ってきた。ちょおどきなはれ、前がよう見えんのや
そう言いつつ市丸隊長は部屋に入ってくるなりその本の山を
僕の机にどんと置いた。

「これ、なんですか?」

「これ?これな、いつものイヅル働きへの感謝のつもりや。
 今日の仕事はぜ〜んぶ僕が引き受けたる!
 イヅルは今日一日これ読んで人生勉強せえ」

嫌な予感がした。

「この本の山ってまさか…」

「そや、イヅルが好きそうな本ぎょ〜さん買うてきたんやで
 エロ本ってけっこう種類あんねんね
 いろいろ買うてきたでえ、イヅルの好きそうなつるぺた清純系とか
 アイコラにも使えるやろ?一石二鳥や」

今日の仕事はぜんぶまかしとき!市丸隊長は得意げに胸をはった。
その横で僕は足下から力が抜けていきそうになった。 



僕はその日、上官命令で仕事中に堂々とエロ本を読んでもいいという事になった。
市丸隊長はとても楽しそうに仕事をしている。
上機嫌でさっさと書類の山を減らしていった。
やれば出来るんじゃないですか!
時々、僕の方を見て、僕がちゃんと市丸隊長の買ってきた本を
きちんと読んでいるかどうかチェックを入れている。
そして雑誌の刺激的な写真に青くなったり赤くなったりしている僕をみて
爆笑しそうになるのを必死に堪えている……。

「お、十時や、お茶入れよ」

「あ、あの僕が…」

「今日は特別や、座ってなはれ。隊長直々にお茶入れたる。
 イヅルはん、いつもの緑茶がええの?珈琲紅茶、好きなの入れたるで」

「緑茶でいいです……」

なんでそんなに上機嫌なんですか!?
ふんふんと鼻歌を歌いながら僕の机にお煎餅お茶を運んできた
市丸隊長は、僕も一冊みせてもらうわと適当なエロ本を手にとった。

「僕なあ、こういう本って買うたことないねん。
 へぇ〜女の人のおそそってこうなってんねや」

嫌味ですか?市丸隊長。隊長だったら星の数程見てるんじゃないですか?
女子の局部なんか


「あほ言いな!だいたいやってる時はこっちかて真剣やから
 そんなんまじまじ見てる暇あるかい。
 それに明るくするの嫌、言われて無理矢理見るほど僕は
 爺さんでもドSでもないわ。それよりまず乳に眼がいくお人やからな
 ……いや、これはなんでもない、忘れ。
 最中に顔見せてえなんて甘い声出されたら見せなあかんやろ……」

市丸隊長は何やら上の空でぶつぶつ言っている。
僕はなんだか暗い気分になってきた。

「……じゃあ院生時代にはお世話にならなかったんですか?こういうの」

「イヅルのあほ、ぼけ。こんな本置いとったら乱…
 いや、女子が部屋に遊びにきてくれななるやろ!?
 見つかったらえらいこつ怒られて、殴られた上に本ほかされるわ!
 それより院生時代はなあ、どう告白しようか悶々悩んどったなあ。
 一緒に寝たりとか…」

「ええーっ!?」

「…軽〜いちゅうくらいはしとったんやが
 やっぱなあもう一歩関係すすめたい、男やったら思うやろ?
 乱…いや、僕が拾うたんやけど、あっちに好きな男おるんやったら
 あっちの気持優先せなあかんゆうんと、なんせええ女やからなあ
 他の男にやれるかあ悶々悩んどったからエロ本買おう気いもおこらなんだわ」

「…はあ」


「腹くくって学舎の裏に呼び出した時や、
 ええ?って聞いたら下向いてなあ、いいよって返事もらえたんよ。
 そんときやってん、ぎぅ〜っと抱きしめて初めて……」

「ヤッちゃったんですか?あそこでっ」

「やるか、アホ。大人の口づけの入り口立てたんえ?
 初めて言うたらなあ、あれは僕の部屋やったなあ。
 寝間着着て湯上がりの髪まとめとってな、うつむいとるんよ。
 夕方の西日が差し込んで、うなじがしなしなと白おく見えとった。
 肩抱いたら、ビクッと震えてなあもう可愛ゆうて可愛ゆうて…」

…僕はエロ本を前にして市丸隊長の体験談を小一時間程聞かされた。
そしてまた上機嫌で仕事に戻り、せっせと執務に励んでいた。
夕方、定時までにきっちり仕事を終わらせた市丸隊長は
その本、全部イヅルにあげる。お代は心配せえへんでええよ
ほな、お先に上がるでぇと殊の外上機嫌で帰っていった。

僕は市丸隊長の話の前に、すっかり色あせてしまったエロ本を見て
ぼーっとしているしか無かった。

数日後「三番隊部下教育費」として市丸隊長からあがってきた
あのエロ本代の請求書を僕は会計に回した。

小ネタだから読み飛ばしてね〜

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