あなたの高みにはたどり着けないから。
だから、あたしのいるところまで堕ちてきて。
「あ…あんっ! たいちょう可愛いっ 隊長のちっちゃいオチンチン可愛いですぅ…!
あたしのおっぱいで気持ち良くなってっ…」
「は…あ……まつもと、まつもとっ…! イイ…! イクっイクっ 白いのでるっ」
卑猥な喘ぎ声とともに、パンパンパン、と肉同士が打ち付けられる音が部屋中に響く。
日番谷の幼い陰茎は乱菊の豊満な胸にすっぽりと収まっており、絶えず強烈な刺激を
与え続けられていた。擦られているというよりも、乳房を叩きつけられるように乱暴に
愛撫されている。
尿道からは既に先走りの液が垂れ流れ、乱菊の胸の谷間をぐちゃぐちゃに濡らしていた。
天童と呼ばれ、最年少で十番隊のトップに駆け上がった日番谷冬獅郎と
瀞霊廷でも屈指の美貌と妖艶さを誇り、死神としての実力も兼ね備えた副官の松本乱菊。
普段は他愛もないことでガーガー喧嘩をしたり、追いかけっこを演じたりするおちゃらけた
間柄だが、いざ有事となれば、阿吽の呼吸で隊をまとめ、息もつかせぬ速攻で敵を討つ。
瀞霊廷中の死神が憧れてやまない、十番隊の名物コンビ。
…そんなふたりが、夜な夜なこのような痴態を繰り広げているなどと誰が想像できただろう。
「ああ…イクっ!! イッちまう…!! はあああああーーーッッ!!!」
ひときわ大きな叫声をあげて日番谷が果てた。今日二度目の絶頂だ。
びゅるるるっと先端から勢い良く溢れ出た白い精液を乱菊は顔面で受け止めた。
陰茎を乳房で挟みながら亀頭を舐めようとしていたのだが、ちろりと赤い舌を覗かせた瞬間に
日番谷はその光景に興奮してイッてしまった。我慢がきかないところはまだ子供だ。
「…いっぱい出ましたね」と乱菊が精液まみれの顔でうっとりと微笑むと、日番谷はハアハアと
荒い呼吸を整えながらも、頬を染めて「す、すまない…」と小さく詫びた。
日番谷からこぼれたミルクを、乱菊はこれみよがしに丁寧に指ですくって、一滴も残すまいと
ぴちゃぴちゃと音を立てて舐める。
愛する男の種は、まだ若々しく青い味がした。
ふたりがこんな関係に陥ってしまったきっかけは乱菊の告白にある。
乱菊は日番谷が欲しかった。
才能も、人格も、自分よりも遥かな高みにある彼を引きずり堕としてみたい。
自分のもつ翼では彼のいる高みにはたどり着けないから。
だから、飛ぶ鳥を落とすように……清冽で高潔な日番谷をこの手で汚してみたかった。
彼がやがて雛森のものになるのは分かりきっていたから、今のうちにせめて童貞だけでも
頂けないかしらと虎視眈々と機会を窺っていたのだ。
心を手に入れることはできなくても、己の魅力を駆使すれば体だけは手に入るかもしれない。
そんな打算でもって、乱菊は日番谷に「好きです」と打ち明けた。
仕事が終わった後、夕闇に包まれた執務室で。
突然の部下の告白に、隊首羽織を橙色に染めた日番谷は驚いたように目を見開いたが…
…やがて視線を少しだけ逸らし、口の端に微かに笑みを浮かべて「…奇遇だな」と呟いた。
「松本、俺も……」
「は…?」
「だから、俺、も……」
日番谷の薄い唇がぎこちなく言葉を紡ごうとする。
自分から告白をしたというのに、微かに熱を帯びたその視線の意味を乱菊は推し量れずにいた。
「ふざけてんじゃねーよ」とか、「何を企んでんだテメェは」とか、そんな怒声を浴びせられる
ものだとばかり思っていたから。
そうしたらいつものようにふざけて「ねえたいちょ〜あたしとエッチなことしませんかぁ?」と
ガバッと胸でも見せて誘惑してやるつもりだったのだ。
それなのに。
「俺も、お前のことが……」
自分を見上げる小さな上司の頬は、夕陽よりも濃い色に染まっている。
汚れのない純粋な好意を返されて、乱菊の胸はズキンと痛んだ。
その日からふたりの関係は始まった。
奇しくも両想いであったことが分かったので、そこから先へ進むのは百戦錬磨の乱菊にとっては
赤子の手をひねるよりも簡単なことだった。
心に刺のように突き刺さっているものの存在は感じていたが、今は己の欲望のままに日番谷を
犯し、辱める。
初めて共寝に誘ったとき、当然のことながら日番谷は男としてイニシアチブを取ろうとした
のだが(そのために勤勉な彼は色々と勉強もしてきたらしいのだが…)、2倍の体重と圧倒的な
経験の差に押さえ付けられて、彼の男としてのプライドは粉々に打ち砕かれることとなった。
『馬鹿野郎、離せ!!俺は男だぞ!!』
『松本、逆だ!!逆!! お前女なんだからもっと大人しく慎ましやかに……ああっ!』
『やあ! はあ…ん…! 俺、男なのに… なんで…こんなことになってんだよ!?』
当初はギャーギャー騒いで抵抗していた日番谷も、乱菊に的確に快楽のポイントを攻められ、
次第に表情をとろけさせていった。
今まで培ってきた性技を駆使して、乱菊は巧みに日番谷の体を暴いていく。
小さな乳首を弄くりまわしながらちゅぱちゅぱ音を立てて亀頭を吸ってやると、日番谷は
『ああ…まつもと…。もっと、もっと…』とうわ言のように呟きながら自分で腰を揺する
ほどになった。女に犯されるという屈辱に歪んだ顔はもうそこにはない。
日番谷は堕ちたのだ。乱菊が望んだように。
しかし……
乱菊の顔に二度目の射精をしたばかりだというのに、日番谷の肉棒はもうすっかり回復して
怒膨しきっていた。幼い陰茎はサイズこそ小さいが、腹についてしまうほどの勢いで若々しく
反り返っている。
先端からは、早く決定的な刺激が欲しいと、切なそうに先走りの液がたらたらと滲み出ていた。
「うふふ……隊長ったらいやらしいですねぇ。もうこんなビンビンにして……。
沈着冷静で生真面目で、『ストイックなところが素敵〜』なんて女の子にモテモテの隊長が…。
部下に犯されて射精しまくって喜んでるなんてねえ……」
羞恥心を煽るためにわざと卑猥な言葉を囁きながら、乱菊はまだ陰毛も生えていない日番谷の
肉棒の付け根をやわやわと手で愛撫した。
時折精液の流れをせき止めるようにきゅっと指でしめつけてやると、日番谷はたまらないと
いった風に頬を紅潮させて「ああ…はあ…」と熱っぽい喘ぎ声を漏らした。
「隊長、今度はどうして欲しいですか? どんな風にイキたい?」
「ああ…松本… 俺……」
座らされていた体勢から身を乗り出すと、日番谷は乱菊の下半身に手を伸ばした。
日番谷は全裸だったが、乱菊のそこは未だに下着に覆われたままだ。
これまで何度も情交を繰り返してきたが、乱菊が日番谷に下半身を晒したことはなかった。
「濡れてる……」
日番谷は愛おしそうに下着の上から乱菊の局部を探るように撫でた。
たどたどしく動く指先に、布から染みた乱菊の愛液がまとわりつく。
指と舌と乳房で日番谷の体を犯しながら、乱菊はしとどに股間を濡らしていた。
「松本、ここ……。ここに挿れたい……」
「やあんっ駄目です…!そこはまだ駄目っていってるでしょ隊長」
「お前の中に入ってみたいんだ…。こんなに濡れてるのに、まだお預けなのか」
ぷっくりと膨らんだ陰核のあたりをクリクリ指で弄ってやると、乱菊は「ああ、そこ!!」と
叫声を上げて金髪を振り乱して悶えた。
「あん……そんな風に御機嫌をとったって駄目ですよ隊長。
隊長のまだちっちゃくて可愛いんですから……
もっと大きく凶悪に育つまで、楽しみはとっておきましょうよ、ね?」
「……ちっちゃくて可愛くて悪かったな」
あからさまに不機嫌そうな顔をした日番谷のおでこに、乱菊は「拗ねない、拗ねない」と
ちゅっと唇を寄せた。
「大きくなってからの方がお互いに絶対に気持ち良いですから……。ねっ」
常々言い聞かせているそれは、実は嘘も方便だったりする。
好きな男を受け入れるのに、大きいからイイとか、小さいから駄目なんてことはない。
例え幼いペニスでも、日番谷のものなら挿れた瞬間にイッってしまうかもしれないと
乱菊は思う。男と違って、女は精神的な繋がりから快楽を得る生き物だからだ。
乱菊が恐れているのは……挿れさせて、それで「はい、オシマイ」という風に急速に
熱が冷めてしまうこと。
今まで星の数ほどの男と付き合ってきたが、乱菊の体目当てに寄ってきた男たちは、
たいてい何度か乱菊を抱くと満足して、元々付き合っていた彼女や幼馴染みの元へ
戻っていった。逆に言えば、「もうこの男とは駄目ね」と思ったらさっさとセックスして
縁切りしてしまえばいいということでもある。乱菊は男たちの習性を良く理解していたし、
自分にはそんな刹那的な付き合い方しかできないだろうと割り切っていた。
日番谷とのことにしても、彼の心が雛森に向いている信じこんでいたから、さっさと
美味しいところだけを頂いてそれでオシマイにするつもりだったのだ。
それなのに……。
日番谷の翡翠の瞳のなかには確かに自分の姿だけが映っていて、それを覗きこむたびに
乱菊は胸が痛んだ。
……とにかく、こうなったら簡単に挿れさせては駄目だ。
もっともっと徹底的に焦らさなければ。
焦らして、汚して。心もカラダもあたしだけの男にしてしまいたい。
日番谷には、乱菊が裏でそんなことを考えているなど想像もできなかっただろう。
彼は乱菊の言葉を間に受けて、「ちっちゃくて可愛い」と称された自分のものを
恨めしそうに見下ろしていたのだが、やがて小さくため息をついて乱菊の顔を見上げた。
「………わかった。
お前のこと、ちゃんと気持ち良くしてやりたいし……しばらくは我慢する」
「あはっ隊長えらい!」
乱菊はなんだか嬉しくなって、そのまま勢いまかせに日番谷に飛びつくと、その小さな体を
ゆっくりと布団の上に押し倒した。
「……じゃあ、御・褒・美に……今日はこんなの試してみましょうか?」
そう言うやいなや、乱菊は膨らんだままのペニスを優しく愛撫しながら日番谷の上に
またがり、自分の下着のびちょびちょに濡れている場所にその先端を擦るようにあてて、
「はあん…」と甘くせつないため息を漏らした。
ああ…これ…挿りそうで挿らないのが……凄くイイ…。
円を描くようにクリトリスを刺激し、そのあと蜜を湛えた膣口のところへ先端をあてて
軽く腰を上下に揺する。クチュクチュと触れあったところからえもいわれぬ快楽が走り、
乱菊はさらなる蜜を溢れさせた。
疑似挿入体験。
濡れた女性器の感触と視覚攻めに、日番谷の体も興奮のあまりぶるりと震えた。
「ふあっ 松本っ…!!」
「うふふ……隊長、ちゃんと見えてますか…?
隊長のオチンチンのさきっぽ…あたしの大事なところにあたってますよ……。
ああ、このまま布ごとズボッて中に入っちゃいそう……
こうしてグリグリってすると……はあ…!きもちいい…きもちいいです…」
「まつもと…!まつもと…!!」
自分の上で艶かしく腰を揺らし始めた乱菊の痴態に、日番谷の理性が飛んだ。
女の腰を両手でガシッと掴むと、狂った獣のように腰を動かして下から突き上げる。
布に邪魔されて胎内には入れないのだが、それはまさに雄の本能そのままの行動だった。
日番谷に激しく揺さぶられ、乱菊の豊満な乳房がたぷんたぷんと音を立てて宙を跳ねた。
「ああ!!たいちょ、激し…!!はあはあ…イク……イッちゃう…!!
オチンチン挿ってないのにイッちゃいますっ…!!」
「はあ、はあ、まつもと…!!挿れたい…!!俺、お前のなかに入りたい…!!」
ぢゅぷ、ぢゅぷ、ぢゅぷ、とペニスと下着に包まれた女性器がぶつかりあう卑猥な音が
部屋に響き渡る。
もう少しで下着が破れて、実際に挿入されてしまうのではないかという勢いだった。
「はあ、はあ、はあ…!!熱い…!!隊長のさきっぽから熱いのでて…ああ!!
イクッ!!イッちゃう!! ふあ…ッアアアアアアアーーーッ!!」
「まつもと…!!ああ…俺もイクッ……!! 出るッ!!凄え出てるッ!!」
乱菊が美しい肢体をしならせて達すると同時に、日番谷も大量の精液を乱菊の下着に
まき散らして果てた。
「はあはあ……。たいちょう……」
「松本、松本」
快楽に崩れ落ちた乱菊の体を、横たわっていた日番谷がそのまま受け止めてきつく
抱き締める。
ふたりはしばらくそのまま情交の余韻に浸っていた。
乱菊が着替えを済ませて部屋に戻ると、日番谷はまだ床についておらず、窓を開け放して
夜空に輝くまどらかな月を眺めていた。
「お月様に何かお願いですか、隊長」
からかうような口調でそう言って近寄ると、銀色の髪にきらきらと月光を遊ばせていた
日番谷は、愛する女を振り返って「…まあな」とやわらかな笑みを浮かべた。
乱菊は背後から黒衣をまとったその体をぎゅっと抱き締める。
こうしていると、先程までふたりを包んでいた淫靡な空気がスッと夜風に溶けて消えて
しまうような気がするから不思議だ。後に残るのは温かくて切ない気持ちだけ……。
「お願いって何です?」
「いや……。早くでかくなりてぇな、と」
乱菊の両腕にすっぽりと収まっている日番谷は、自分の身の小ささを噛み締めるように
そう告白した。身長も体重も、抱き締める腕の逞しさも今は何もかも乱菊に適わない。
「早くでかくなって……ちゃんとお前のことを抱きたい。男の意地だな」
「うふ、やっぱりそれですか〜」
乱菊はぱふっと日番谷の銀髪に顔を埋めた。
「隊長らしいけど……でもそんなに急がなくても良いのに。
放っておいてもあと50年もすれば嫌でも大人の体になるんだし……。
……セックスだって、挿入しなくても気持ち良くなれるでしょ?」
「いや、駄目だ。やっぱり最後はちゃんと挿れないと」
「…ぷっ!! ヤダ、隊長ったらそこにこだわりがあったんですねっ」
やっぱり男の子なんだなあ…。
乱菊は一抹の寂しさを感じ、目を閉じる。
あたしだって隊長のものを体の中に迎え入れて……細胞の壁も、粘膜の壁も
全てなくなってしまうぐらいぐちゃぐちゃに犯されて支配されてみたい。
でも、そんなことしたらお別れが近づくじゃないですか。
あたしの体を支配して、満足して、飽きて……
そうしたら、隊長もどこかに去って行ってしまうんでしょ…?
ぎゅっと日番谷を抱く腕に力がこもる。
そんな乱菊をよそに、日番谷は淡々と言葉を続けた。
「体を繋げなきゃセックスの本来の目的が果たせないし……」
「そうですよね〜。男って挿入することで支配欲を満たしたい生き物ですもんね」
「いや、そうじゃなくて……」
日番谷は何かを躊躇うように一度言葉を切ったが、すぐにまた口を開いた。
「ちゃんと挿れて中で出さないと赤ん坊ができないだろう」
「は?」
あか…?
その想像を遥かに超えた突拍子もない言葉に、さすがの乱菊も二の句を失った。
なに…? なんて言ったの隊長は…?
あ、赤ん坊?? 赤ちゃん??
「なあ、松本」
日番谷は乱菊の腕を振りほどくと、身を翻して真剣な眼差しで乱菊に向き直った。
ぎゅっと腕を掴まれる。その勢いは呆然とした乱菊が気押されるのに十分だった。
「赤ん坊ができたら、さすがのお前も観念して俺と結婚するよな?」
「けっこんっ!?」
乱菊の頭はパニック状態に陥った。
「ちょ…ちょっと待って下さいよ隊長!
け…ケッコンって…いきなりどうしちゃったんですか!? 本気ですか!?」
「本気に決まってる」
そう言い放った日番谷は、少々不機嫌そうにも見えたが至極真面目な表情をしていた。
「お前の周りには市丸やら檜佐木やら目障りな奴らがウロウロしてるからな……
早く正式にお披露目して、お前は俺のもんだって瀞霊廷中に知らしめてやりたい」
「エエッ!? ちょっと…それは……」
「俺と結婚は嫌か? ずっと一緒にいるのは嫌なのか…?」
「いや、そんなことはないですけど…!」
日番谷がまさか密かに出来ちゃった結婚を狙っていたとは思わず、乱菊はらしくなく
オロオロしてしまった。あまりのことになにやら目に涙までにじんでくる。
だって、結婚って…。しかも出来ちゃった結婚ですって?
今まで「妊娠しないように」って気をつけてセックスする男はごまんといたけど、
妊娠狙いでセックスする男なんてひとりもいなかったし、そんな話も聞いたことない。
それに、「出来ちゃった結婚」って、普通は女が煮えきらない男に迫るもんじゃないの?
隊長はどこかズレているのかもしれない……と乱菊はため息とともに天を仰いだ。
「ねえ、隊長」
「なんだ?」
「隊長は……結婚のなんたるかを分かってないと思います」
「……」
「120年とちょっとしか生きていないのに、軽々しくひとりの女に誓いを立てる
なんておっしゃらないで下さいよう……」
「松本」
「それも相手に選ぶのがあたしみたいな淫乱な年増女だなんて……
そんなの聞いたら雛森も浮竹隊長もビックリして泣いちゃいますよ。
瀞霊廷にはもっと若くて気立ての良いお嬢さんがいっぱいいるんですから…!」
「オイ、松本」
「だから早まらないでもっと色んな女の子と付き合ってみて……ひゃっ!!」
突然両手で口を塞ぐように頬を挟まれ、乱菊はその冷たい感触に思わず首をすくめた。
恐る恐る目を開けてみると、日番谷は、怒ったような、困ったような……
でも、慈しみの色を滲ませた表情をして、至近距離から乱菊の顔を覗き込んでいた。
コツン、と、おでことおでこがぶつかる。
「馬鹿……なに泣いてやがる」
「泣いてなんか……」
しかし、言葉とは裏腹に涙は次から次へとぽろぽろとこぼれて日番谷の手を濡らした。
ふいに日番谷の吐息が近づき、そのままちゅっと口付けられる。
角度を変えて2度、3度。ふたりは互いの唇を優しく吸いあった。
馬鹿、馬鹿、馬鹿……。隊長の馬鹿。
結婚なんて言葉を男から聞いたの、初めてだったのよ。
ずっと一緒にいたいなんて……そんなこと言われたのも初めてだったんだから。
……そう訴えながら涙を流す乱菊の体を、日番谷はぎゅっと優しく抱き締め、
涙が止まるまでずっとその頬に口づけの雨を降らせ続けた。
結局、隊長を堕とすことなんてできなかったんだわ……と乱菊は思う。
犯して、辱めて、どんなに卑猥な言葉を吐かせても、日番谷の高潔さは変わらない。
愛した女と添い遂げることができると純粋に信じ、いつの間にか快楽の先にある結婚、
出産にまで考えが及んでいる。刹那的な恋愛を繰り返してきた乱菊とは別次元の思考だ。
自分には手の届かない、高い高いところにいる……たったひとりの愛する人。
汚そうとすればするほど、己の醜さを曝け出すばかり……か。
乱菊がそんなことをぽつりと語ると、日番谷は驚いたように目を丸くして、笑った。
「俺が手の届かない高いところにいるって? 馬鹿言うな。
お前こそ俺にとっては手の届かない高嶺の花なんだ。
初めて出逢ったときから……。こういう関係になった今でもずっと、そう思ってる」
おしまい。
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