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【弓親×やちる】

深夜、寝静まった十一番隊隊舎。
自室で本を読んでいた弓親は、外ががやがやと騒がしいのに気づいた。
おやすみー、というやちるの声が聞こえる。
やちるは今日女性死神協会の集会に出かけていた。
随分遅い帰還だ。
大方、松本あたりに飲みに行こうとでも誘われ、ついていったのだろう。
きっと伊勢がついているから、酒は飲んでいないと思う。
子供とは言えあの実力であるから大して心配はしていないが、流石に時間が時間だ。
一応、明日釘を刺しておくべきだろう。
そう思いながら、弓親は本を閉じる。
眠りにつこうと行灯の火を消そうとしたその時。

「ゆーみーちゃんっ!」

大きな音を立てて、部屋の障子が開かれた。

「ふっ副隊長!!」

突然の来訪者は、先程帰ってきたばかりのやちる。
足音は一切立てず近付く霊圧も感じさせず、見事な瞬歩だ。
流石は隊長格……と、感心する場面ではない。
やちるが何故こんな夜中に、何故自分の部屋に来ているのか。
普段昼間に遊びに来ることはあるが、この時間なら大抵更木の布団に潜り込んでいる筈なのに。

「どうしたんですか、こんな夜中に」

今更ながら裾を正しつつ、弓親は訊く。
やちるは律儀に障子を閉めると、無邪気にえへへと笑った。

「なんでかっていうとねぇ〜……」

意味なく来たわけでもないらしい。
だが弓親の質問に素直に答えるかと思いきや、やちるはそう言いかけて口を噤む。

「……恥ずかしーから、ちょっと待ってて」

と言うのだ。
恥ずかしいという理由もよくわからないが、無理やり聞き出すのも無粋である。
温かい茶でも淹れてやり、それでやちるが落ち着いて寝てしまえば結構。
深夜の来訪の本意を話し始めたら聞いてやればよいわけで。
粉茶を溶いたものを出すと、やちるはまだ熱いそれを一気に飲み干した。
そして畳が沈みそうな勢いで湯飲みを叩きつけるように置く。
それで覚悟が決まったのか、やちるは真っ直ぐに弓親の顔を見た。

「ゆみちゃん、あのねっ!」
「はい?」

真剣な顔はしているが、やちるのことだ。
どうせ何かまた集会で美味しい甘味処の話でも聞き、連れて行ってほしいとでも言うのだろう。
そう思って、弓親は湯呑に口をつけながら暢気に先を促した……のだが。

「あたしと《えっち》しよッ!!」
「ぶふッ!!」

やちるの口から飛び出したとんでもない言葉に、弓親は口に含んだ茶を盛大に噴き出した。

「ふふふ副隊長、いい今なんて」

慌てて口許を懐紙で拭いながら、弓親は思わず訊き返す。
願わくば自分の聞き間違いであってくれればと思いつつ。
しかし残念なことに、弓親の耳はけして悪くはなかった。

「だからぁ、《えっち》しよ、って」

復唱までされては、自分の耳を疑う術はない。
だがやちるの言葉を素直に受け止めることもできなかった。

「……副隊長、酔ってるんでしょう」

そうだ、そうに決まっている。
心なしかやちるの顔は赤い。
きっと松本あたりに飲まされたのだろう。
伊勢は何をしているのか、松本のストッパーの癖に。
――その伊勢は早々に潰されたことを、弓親が知る由もないが。
兎に角、やちるは酔っ払った勢いでこんなことを言い出したのだ。
大方、女性同士の猥談を引きずっているのであろうが。
そうでなければ、うちの可愛い副隊長がこんなことを言い出す筈がない。
しかし、弓親の希望と理想は塵と消えた。

「別に酔ってなんかないもん。あれっぽっちのお酒、どうってことないよ」

やちるははっきりとした口調でそう言い放つ。
視線はしっかりと弓親に据えて。
言われてみれば、先程の見事な瞬歩、あれは酔っ払いにできるものではない。
というか、これは今までにも何度か酒を飲んでいるということだ。
この可愛い娘に一体誰が酒など飲ませたのか、否それはあの松本しかいまい。
十三隊きっての遊び人に復讐を固く誓う弓親だったが、今はそれどころではない。

「……ど、どちらにしろ、副隊長には未だ早いことです」

できるだけ落ち着いた口調で、弓親はやちるを宥めようとする。
しかしやちるは弓親の言葉を聞き入れようとはせず、逆に喰ってかかってきた。

「子供扱いしないでよ! 確かにあたしはちっちゃいままでおっきくなんないけど、もう何十年も生きてるんだよ!?」

そう言われると、弓親に返す言葉はない。
自分が十一番隊に配属されて数十年が経つ。
そのときのやちるは今より幼くとも、既に副隊長の地位を得ていた。
外見は変わらずとも、内面が成長していないほうがおかしいのだ。
それでも、はいそうですかと簡単に納得はできない。

「で、ですが」
「……ゆみちゃんは、やっぱりらんちゃんみたいにおっぱいおっきいほうがいいの?」

弓親が言いかけたのを遮り、やちるはぽつりと呟いた。
しょんぼりと肩を落として。
否弓親としては、触れたら弾かれそうな豊満な肢体よりは、華奢な娘のほうが好みではあったが。
「そ、そんなことは」と否定すると、やちるはぱっと顔を輝かせる。

「おっぱいちっちゃくてもいい?」
「むしろ僕は小さいほうが……って違ッ! そういう問題じゃありません!」

やちるが性的なことに関心を持ち始めたことは、成長の一環として喜ばしいこととも考えられる。
――気持ちは複雑だが。
だがこうも簡単に処女を捨ててしまおうとするのは、とても望ましくない。
まずはそこから教育せねば。
可愛い娘を、自分も含め得体の知れぬ男共の餌食にするわけにはいかない。
理想や夢も混じってはいるが、やちるにはそう気安く男に身体を開く女にはなってほしくはない。

「……副隊長、きっと好奇心で仰ってるんでしょうが、こういうことは」
「本当に好きになった人とするもの、でしょ?」

言おうとした言葉をやちるに先を越され、弓親は驚いた。

「らんちゃんも卯ノ花さんも言ってたよ。初めてだけは、絶対好きな人としなさいって」

よくわかっているではないか。
松本は兎も角、卯ノ花は確かな性教育をしてくれていそうだ。
弓親はほっと安堵するが、それは一瞬のことで、まだ安堵できる状況ではないことに気がつく。

「だったら何故僕とだなんて言い出すんですか。矛盾してません?」

そう言うと、やちるは言葉に詰まったように、きゅっと口を引き結んだ。
矛盾という言葉が効いたようだ。
柄は悪くとも筋だけは通す十一番隊、女子供であろうともやちるにも当然その気質は備わっている。
よしこのまま言いくるめて寝かせてしまおう、と心の中でぐっと拳を握った弓親だったが。

「……なんで」

か細い声に、弓親はぎょっとしてやちるを見た。
やちるは泣きそうな顔をしている。
泣くほどのことだったのかと弓親は慌てるが、やちるは泣きはせず、きっと弓親を睨み上げた。

「なんでゆみちゃん気づいてくれないの!?」

何を、と聞き返す隙はなかった。
それよりも、次のやちるの言葉には弓親が声を失う番で。

「あたしが好きなのはゆみちゃんなんだよ!」

驚きのあまり、弓親は大きな目を更に見開いた。
そんなまさか、有り得ない――
自分で美しくないとは自覚しつつ、混乱した頭は一言の言葉すら紡げない。
対して、やちるは言葉を続ける。

「剣ちゃんもつるりんもおんなじくらい好きだけど、ゆみちゃんはそういう好きじゃないの。ゆみちゃんといるとどきどきが止まんないの。でね、卯ノ花さんに訊いてみたらそれは恋じゃないかって。それであたしわかったの。あたしはゆみちゃんに恋してるんだって」

やちるは頬を赤らめて、目を伏せる。

「だからね、あたしの初めてはゆみちゃんにもらってほしいの」

――例えば、惚れた女に言われたとしたら、これほど悩殺される決め科白はないだろう。
それでなくとも、このやちるの言葉は、弓親の男心をぐらつかせるほどの破壊力を持っていた。
だが弓親にとってやちるは敬愛する上司であり可愛い妹であり愛する娘であり。
そしてロリコンになった覚えもないのに。
頭の中で本能と理性が交錯しぶつかり合い、――辛うじて理性が勝った。

「……お、お気持ちは嬉しいんですが、やはり」
「……ゆみちゃんはあたしのこと好きじゃない?」

震える声に、逸らしていた視線をやちるに向けると、やちるは目に涙を浮かべていた。
慌てて弓親は首を振る。

「そっそんなことあるわけないでしょう! 好きですよ、大好きですから!」
「……ほんと?」
「本当ですよ、この世の誰よりも貴方が好きです」

それは事実だが――
そこまで言って、弓親は言葉の選択を誤ったことを悟った。
一瞬でやちるに押し倒されたからだ。

「じゃあ問題ないよね! しよ!」
「うわ、ちょ、副隊長ッ、待ってくださッ……!!」

腰に馬乗りになって帯を解こうとするやちるを、弓親は必死に押し止める。
無理やり脱がされるかとも思ったが、やちるは意外にも素直に退いた。
可愛らしい唇を尖らせてはいたが。

「もー! ゆみちゃんってば、まだあたしのこと子供扱いしてるでしょー!」

弓親は、違う、と言い掛けて、また更にやちるがとんでもない行為に出たことに驚愕した。

「仕方ないなーもう。あたしが子供じゃないって証拠見せてあげる!」

やちるの行動に慌てて身を起こすも、遅かった。
弓親の足許に移動したやちるは、今度は帯を解くまでもなく無遠慮に襦袢の裾を割る。

「ふッ副隊長……ッ!!」

止める間もなく、やちるは弓親の下帯を取り払ってしまった。
弓親の焦りなど気にも留めず、露になるまだ熱のないそれを、小さな手でそっと包み込む。

「おくちでしてあげるね」

上目遣いにそう言うと、やちるは屈みこみ、肉茎にちゅっと口付けた。

先端をぺろりと舐め、ぱくりと亀頭を咥えてしまう。

「っ副隊長、やめてください!」
「んふ? ひゃらぉー」

咥えたまま喋るものだから何を言っているかはわからないが、少なくとも弓親の制止を拒否したのだけは解った。
無理やり引き剥がしてもいいが、そうするのも忍びない。
というか、そうすると歯を立てられそうで怖いというのが本音だが。
ならどうやって止めさせようかと思案している間にも、やちるはたどたどしい舌使いで弓親を責めてくる。
けして上手いとは言えない――上手かったらそれはそれで問題だ。
しかし狭くて温かい口内は正直気持ちよく、こんな幼女に口淫をさせているという背徳感も同時に、弓親の欲望を煽った。
止めさせなくてはという意識とは裏腹に、やちるの口内で弓親のものは肥大する。

「んぷぁっ」

小さな口には収まりきらなくなったか、やちるが苦しそうにそれから口を離した。

「ゆみちゃんのおっきいからもうムリぃ」

やちるは口の端から垂れた涎を拭い、へらっと笑う。
それを好機とばかり、弓親は急いで裾を掻き合わせた。
間抜けにも膨らんだ股間は手で隠して。

「ほら、ね! 解ったでしょう、まだ早いって! だからもう……」
「大丈夫だよぉ。おくちには入らないけど、なめなめはできるから!」

ぐっ★ と親指を立ててやちるは笑うが、弓親はそれどころではない。
額に冷や汗を滲ませ後ずさるが、やちるに捕まるのはそう難儀なことではなかった。

「逃げちゃだめー。最後までしてあげるってばぁ」

必死で覆っていた手は軽々と除けられ、まだ萎えていないそれを掴まれる。
その手を上下に扱きながら、やちるは再び腰を屈めた。

「副隊長っ……」
「もー! ゆみちゃんさっきからうるさい!」
「……」

一喝され、弓親は黙るしかない。
飴と同じように見ているのか、やちるは肉茎を味わうようにゆっくりと舌を這わす。
グロテスクな男の性器に小さな赤い舌が纏わり付くその様は、ある種不気味な光景でもある。
弓親はもう半ば諦めかけて、やちるの好きにさせようかとも思った……が。

「! 副隊長、何してんですかッ!!」
「ふぇ? 何が?」

弓親が焦ったのには訳がある。
やちるの手が確実な意思を持って、根元の双球を揉みしだいたからだ。
やちる程度の性知識なら口淫そのものは知っているにしろ、そんなところまで愛撫することを知っていたとは思えない。

「どこで覚えてきたんですかそんなこと!」
「らんちゃんが教えてくれたよ? あとここもきもちいーでしょ?」

悪びれずそう言って、やちるは更に会陰までもを指の腹で押してきた。
思わぬ刺激に、弓親は息を吐く。
松本はどこまで教えたのか、この見た目は年端も行かぬ幼女に。
あの女には常識というものがないのかと、弓親は眉を寄せた。
が、やちるが続けた言葉に再び驚くことになる。

「あ、でもここ、《ありのとわたり》? は卯ノ花さんが教えてくれたんだけど」

あの護廷隊の聖母が、やちるに性教育どころか要らぬ性知識を植え付けたと。
卯ノ花までもがそうであるなら、松本に常識を求めるのは酷なことかもしれない。

「それにね、二人とも言ってたの」

そうやちるが教えてくれたのは――

『やちるちゃんみたいな可愛い女の子がおくちでしてあげたら、綾瀬川くんだってイチコロでしょうね』
『弓親如きちょぉっとしゃぶってやりゃすぐにオチるわよぉー』

という、女二人の科白だった。
――あの女ども!
やちるをけしかけたのは、そもそもこの二人だったらしい。
明日の予定は決まった、四番隊と十番隊に殴りこみだ。
一言言ってやらねば気が治まらない。

「ゆみちゃん、何ぼーっとしてんの?」
「っ!」

考えに耽っていたところに突然竿を握られ、弓親は肩を跳ねさせた。
やちるは亀頭を指の腹で擦りながら、双球を片方ずつ口に含み、飴玉のように舌で転がす。
流石に経験豊富な女二人から教え込まれた性技は、稚拙ながらツボを心得ていて、徐々に弓親を追い詰めた。

「副隊長、……もう」
「え、なぁに? 出ちゃう?」

無邪気に訊かれ、弓親は小さく頷いた。
このまま果ててしまうとやちるの顔を汚してしまうことになる。
だからそうなる前に離れてもらいたかったのだが。

「じゃあおくちで受け止めてあげるね!」

は? と訊き返す前に、やちるは先端をはむっと咥えた。

「いーっぱい出していーよ」

そう言ってにぱっと笑うと、再び愛撫を再開する。
双球の間を指でなぞりながら、ちゅぱちゅぱと音を立てて鈴口を吸う。
先程と同じく、引き剥がすことが出来るはずもなく。
小さな唇に締め付けられ同時に鈴口を舌で抉られて、弓親はやちるの口内で精を弾けさせた。

「んくぅっ……!」

自分でいいと言ったくせにやはり苦しかったのか、やちるは眉を寄せる。
それでも全て口で受け止め、漸く顔を上げた。
その口許に白濁の糸が垂れているのを見とめ、弓親は固まる。
更にやちるの喉が上下したのが見えて、事もあろうに自分の出したものを飲み下したのだと悟ると、顔面は蒼白になた。
もし、もしこれが更木に知られでもしたら――考えたくもない。

「ふ……副、隊長……?」
「ぇふぅ……、ん? なあに?」

弓親の心中も知らず、やちるは何事もなかったかのように訊き返してくる。
何事もなかったでは済まされない、弓親にとっては大問題だ。

「もッ申し訳ありませんッ!」

漸く硬直が解けると、弓親は必死に頭を下げた。
本人が許可したとは言え、普通なら斬り捨てられてもいいような無礼を働いたのだ。
しかしやちるは、きょとんと首を傾げる。

「なんでゆみちゃんが謝るの?」
「な、何故って……その、……」
「おくちに出しちゃったから? 気にしなくていいのにー」
「……し、しかし……」

やちるはそう言うが、自分のしたことが頭の中で反芻され、情けないやら恥ずかしいやらで弓親は肩を落とす。
もういっそ斬り捨ててくれと願ってしまうほど――

「ゆみちゃんの味だぁって思ったから、美味しかったよ?」

――本当お願いですから殺してください。
後にも先にも、弓親が本気でこう望むことはなかった。
この娘は何を言うのか。
蒼白だった顔色は、きっと今は恥ずかしさで真っ赤になっているだろう。
全く以って美しくない。

「……わかりました。もう貴方の好きにしてください」

ここまで来てしまえば、もうどうなろうと知ったことか。
弓親はとうとう折れた。
途端に、やちるはぱっと顔を輝かせる。

「やっと素直になってくれたー! じゃああたしの好きにさせてもらいまーす」

そう言うとやちるは自らの死覇装を脱ぎ始めた。
最中の綻ぶような笑顔は、これから為されるであろう行為に相応しくない。
小さく溜息をついて、弓親は行灯を消しに立った。
とてもではないが、やちるの裸体を明るい中で直接目にするのは居た堪れない。

行灯の代わりに燭台の蝋燭に火を点すと、薄闇にやちるがわぁと歓声を上げた。

「なんか大人の雰囲気って感じぃ」

嬉しそうだが、紛れもなく子供である。
否、子供だからこそ、大人に憧れるのだろう。
遥か昔のことだが、弓親自身同じように大人に憧れた時代はある。
やちるはその外見から、誰からも子供扱いをされてきたのだから。
大人として扱われることを、大人と同じ行為をすることを、きっとずっと望んでいたのだろう。

「ゆみちゃん?」

衣擦れの音が止んだ。
背けていた目をやちるに向けると、腰布まで脱ぎ捨て畳に散らかしている。
当然やちるは全裸で、上も下も隠してはいない。

「……もう少し恥じらいってものを……」
「え? 何か言った?」
「……いえなんでも」
「? まぁいいや。早くしよっ?」

遊んでと急かす子供のようなやちるが、大人の雰囲気とはよくも言ったものである。
まあ、らしいと言えばやちるらしいと、弓親は苦笑を溢した。
しかし今夜は憧れの大人として扱って差し上げましょう。
一晩くらいはやちるの望むとおりにしてやっても罰は当たるまい。多分。


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