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【コン×織姫】

ちょっと前から、一護の様子が変わった。
ほのかにだが、肌からトロピカルフルーツみたいな香り。
明らかに黒崎家のものとは異なるシャンプーの香る髪。
誰かと『そういうこと』になったのがバレバレだ。
隠す気も無いのかもしれない。
おそらく、相手は井上サンだろう。
バカな一護。
バカ正直な一護。

奴が尸魂界から帰ってきてから。
奴の死神代行の仕事が増えた。
おかげでオレの出番も多い。
一護のふりをして生きる時間が増えたってことだ。
甘いあまい、誰かの匂いをさせる一護の体。

オレはいつまでこうしていればいいんだろう?
誰が単なる道具でも一護の代わりでもない、「オレ」として見てくれるんだろう?

その日も、一護の体にオレはいた。
今日は厄介な相手らしい。
中々帰ってこない。
放課後、帰ろうとしたオレの肩を叩く手があった。
「くっろさっきくん♪」
井上サンだった。
オレだと気付いてはいないようだ。
「あー……井上。何?」
「何って。今日ウチに来るんでしょ?」
さらりと流れる長い栗色の髪。
一護が最近させてるシャンプーの香りがふわりと漂う。
ちくしょうめ。
やっぱりそうかよ。
戸惑っているオレの態度を彼女は誤解したらしい。
「乱菊さんなら出かけてるよ」
ふいに、このまま一護のフリをしてみようかという気になった。
「あ……ああ。うん。行こう」

井上サンの家は散らかってもいなくて綺麗だった。
当たり前みたいにオレを……否、一護を上がらせる。
「何か飲む?」
「……いや、いいよ」
そして、当たり前のように来た先は――寝室だった。
2人、ベッドに腰掛ける。
何とはなしに、気まずい空気。
隣に――1センチも離れていない近くに、井上サンが座っている。
甘い、あまい香り。香水ではない。
熱帯の果物にも似た甘やかな体臭が、この距離だとわかった。
一護が最近漂わせる香りのひとつ。

ことん、と肩の重みが増した。
右側を見る。
そこに――預けられた井上サンの頭があった。
たまらなくなって、抱き締める。
未だ外れぬギプスの腕を気遣い、ゆるやかに、だが。
シャンプーの香りがする。

「黒崎くん……」
違う名を呼ばれて、夢から覚める。
これはオレに預けられた身体ではないのだと痛感させられる。
痛みを覚えながら、それでもオレは彼女を放さなかった。
与えられる確かな温もりに誰が抗える?
「井上……」
苦痛で仕方ないのに、それでもオレは一護のフリをするしかなかった。
制服に包まれた彼女の特盛に顔を埋める。
ずっと望んでいたことだったのに、悲しかった。
悲しかった。
忘れたくて、何も言わせないように彼女の唇をふさいだ。
最初は触れるだけ。徐々についばみ、そっと舌を忍ばせる。
「んっ……っ、ふ…………っ」
息もつかせぬくらい。
歯列をなぞり、彼女の舌に舌を絡め、吸う。
ぴちゃ、くちゅ……と淫猥な音がする。
手を回した彼女の背中が、徐々に熱を増してゆくことに満足を覚える。
力が抜けた彼女がオレにもたれかかってくると、唇を離す。
粘ついた糸が唇と唇をつないだ。
それから顔を赤くして彼女が目をそらそうとする。
逃げようとする彼女のおとがいを捕まえ、そこに唇を這わせ、舌で舐める。
そのまま舌を首筋、うなじへと滑らせると、彼女は身体を震わせた。
「っ……っ、あ、あ……………………っ」

ギプスが気になって、外すことは躊躇われた。
背中から服の中へ手を入れる。
それだけで震える彼女の身体。
下着のホックだけ外す。
ぷるりと、乳房の零れだす気配だけが伝わる。
服は着せたまま、ボタンだけを外していく。
脱げかけの服から覗く井上サンの身体は想像以上の迫力だった。
谷間に顔を埋める。
果実の香りが、強くなる。
この香りはどこからくるものなのだろう。
舌で胸のラインをなぞりながら、服の中に手を入れてやわやわと揉む。
「やぁあっ…………………いっ、ぁぁっ……………………っ…ゃ……」
彼女の声が切なさを増す。
もじもじと摺り合わされる脚には気付かぬ振りをして、ハイソックスだけを脱がせる。
そしてまた胸に口付ける。
指で先端をそろりそろりと撫で、むくむくと勃ってきたところを摘む。
「……っ、あぁぁ……ん」
彼女が上げる声に一層嗜虐心がそそられる。
柔らかな乳房に頬擦りし、先端を舐め、しゃぶる。思うさま嬲る。
あえてそこばかりを攻めた。
時計の長針が数字3つばかり移動した頃、耐えかねたような声で彼女が言った。
「もう……やぁ、胸以外もさわっ、て……?」
言わせたかったのだ。
言うや否やスカートの中に手を入れ、付け根をなぞった。
「っ!ぁぁんっ!」
そこはもう濡れていた。
溢れ出すほどに。
少し力を加えると滲み出してくるようだ。
1、2回前後させただけでびくっ、びくっ!と魚のように彼女の身体が震えた。
「もう、こんな……?」
「や、やだぁ、言わないで……」
ショーツも取ってしまう。
脱がすと、先程のキスのようにそこは糸を引いた。
指を忍ばせてみる。
その花はもう開ききっているようだった。
ひくひくと震えて「何か」を待っている。

「もう、いい……?」
「う、うん」
その前に、と彼女は立って机の引き出しを開けた。
コンドームを出してきたのだ。
その行為から、そこにそれがあるという事実から、2人の関係の深さが知れた。
ちくりと、胸の奥が痛むのが分かった。

準備を整えて。
ギプスを外さないために、井上サンの服は脱がせていなかったが。
それがかえってエロティックに見えた。
脱げかけのシャツから見える裸身。
オレも服は脱がなかった。片方だけ裸になるのも間抜けだ。
ズボンをずらし、パンパンに張りつめたモノだけを出す。
ベッドに横たわり、その上に井上サンを――「乗せ」た。
制服のスカートの中にモノが消えていく姿は何ともいえずいやらしかった。
全て収めてしまうと、彼女は満足げとも苦しげともつかぬ甘いため息をつく。
――信じられないほど、気持ち良かった。
ひとつ、突き上げる。
「あっ……」
零れる、あまい声。
オレの上から、彼女の眼がまっすぐオレを見る。
目尻から一筋、涙が零れる。
「これで良かったの……?コン、くん」

――今、彼女は何と言った?

「これが、コンくんが望んでいたこと……?」
「……気付いてたの?」
彼女の中に、まだ、オレはいる。
「最初は、違和感だった。
 確信を持ったのはうちに着いてから。
 黒崎くんとは…………触れ方が、違ったから」
オレは身体を起こす。その刺激のためか、彼女は小さな呻きを漏らす。
「じゃあ、何で抱かれたの?」
「黒崎くんの顔で、でも辛そうな顔してて、放っておけなかったの」

喜びと悲しみが同時に襲ってくる。
「オレ」を「オレ」とわかっていてくれるという喜び。
「一護」として向けられるやさしさに対する悲しみ。

「いやじゃなかったの?」
「黒崎くんの身体だから嫌じゃない。
 でも――黒崎くんじゃないから、嬉しくない」

複雑だ。
いや……悲しいのだろうか。
彼女はオレの背中に傷ついていない腕とギプスの腕を回す。

「ねえ、コンくんの望みは何?」

この温もりは今、確かにオレに与えられている。

「――『オレ』を見てくれて、
 他の誰でもない『オレ』を抱き締めてくれる人と出会うこと」

誰の代わりでもない、コン――「オレ」を。
そして、井上サンはその相手じゃない。
オレは確かに――間違えたのだ。

「あたしはコンくんを好きじゃない。
 今、あたしはコンくんに抱いて欲しいわけじゃない。
 それでも――コンくんを知ってる。
 コンくんだって知ってる。
 それでもいいなら――しよう」

オレはうなずいた。
子供みたいに。
彼女の腰に手を添えて、揺さぶる。
はじめはゆっくり、徐々に激しく。
「あっ……………………あっ……………………あっ…………
 あっ…………あっ…………あっ…………」
ぬちゅ、くちゅ、くちゃ……
粘りのある水音が響く。
彼女が涙を流す。
俺も流す。
段々訳がわからなくなる。
気持ちいい。
熱い。
悲しい。
乳房に吸い付く。赤ん坊みたいに。
「ひぃぁっ、ぃぁあっ、あんっ、あんっ、あっ……っ、いやぁぁっ……」
オレが腰を突き上げるたびに彼女の身体が揺れる。
ふたつの胸がいやらしく揺れる。
ねばつく液体が腰を流れて、シーツにしみを作る。
「ん……あぁ……………………ん、ぁっ……コン……くん……」
名前を呼ばれて。
完全に、箍が外れた。
「井上サンっ、井上サンっ……!」
「やぁっ!?あっ、あっ、あっあっあっあっあっ…………っっ!」
頭の中が真っ白になって、オレはそのまま気を失った。

気がつくと、オレはズボン半脱ぎの間抜けな格好で寝ていた。
どうやら、果てた瞬間失神してしまっていたらしい。
井上サンはいつの間にか部屋着に着替えていた。
オレはその井上サンに膝枕されて、頭を撫でられていた。
とりあえず、その体勢のままズボンだけ直す。
「虚しかった?」
井上サンが聞く。
「……悲しかったけど……最後は『オレ』でいられただけ寂しくは、なかったよ」
オレは答える。
「ありがとう……」
色々なことに対して。オレは言う。

オレはこれから探そう。
「オレ」を好きになってくれる「誰か」。
「オレ」を抱き締めてくれる「誰か」。
そして――「オレ」が「オレ」のまま、抱き締められる「誰か」を。

「おい、コン!」
死神姿の一護がガツンとオレの頭を殴った。
「お前、何膝枕されてやがる!」
そして身体を奪い返した。
オレは義魂丸の姿に戻って弾き出される。
「あー疲れた。わり、井上トイレ貸して」
「う、うん、いいよ」
……もう少し帰ってくるのが遅かったら危ないところだったな。
一護が出て行くと、井上サンがオレを拾ってくれた。
そして、ちゅっと軽くキスをした。
「これはコンくんだけに、ね」
そう言って、今日一番の晴れやかな笑顔を見せた。

【終】

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