2458

【一護×織姫】

強くなったつもりでいたんだ。

でも、そんなものに意味なんて無かった。無様な自惚れ。

実際に俺は護れなかった。
いつも、名前の通りにはあれない自分が歯痒い。

そのくせ、許して貰いたがっている。
お前は良くやったのだ、と言って貰いたがっている。
ーー全くもって「最悪」だ。


体のあちこちに包帯を巻いた井上を目の前にして、無力感だけが心を満たす。
「すまない」とか「ごめん」とか、そんな言葉は意味を成さない。
単なる自己満足だ。
言えば、井上は俺を許してしまうだろう。
いともあっさりと、何でもないことのように。
あの、いつもの聖母みたいな微笑みを見せながら。

放課後、井上の家を訪ねた。
言う言葉などある筈も無いのにだ。
「黒崎くん!?」
井上は嬉しそうに笑う。
出てきた彼女はもう制服から柔らかそうな花柄の部屋着らしいワンピースに着替えていた。
「学校で言ってくれれば良かったのに。来るなんて思ってなかったから、何も用意してないよ?」
そう言ってとりあえず上がってと俺を促した。
居間に通される。
ちゃぶ台があった。座布団を敷いてくれる。
「飲み物、持って来るね」
そう言ってキッチンへ消えていった。
……ああそうか、見舞いなんだから手土産のひとつも持って来れば良かったな。
「ごめんねー。これぐらいしかないんだあ」
言いつつ井上はしるこドリンクの缶を2つ、ちゃぶ台に置いた。
「…………体、どうだ」
「平気だよぉ?あたしもともと頑丈だもん!」
明るく答える。言いながらぷしゅう、と缶を開けてマグカップに注いでくれる。
俺は口を付けない。

「黒崎くん?」
井上が無邪気な表情で近寄り、小首を傾げてうつむく俺の顔を覗き込む。
俺は何も言えずに彼女の体を抱き寄せた。

「く、黒崎くん!?」
井上が当惑した声を上げる。
「−−悪い。傷が、痛むか?」
「あ、ううん、それは平気、だけど……」
何かを感じたのか、井上はそう言ったきり抵抗どころか身じろぎひとつしなかった。

5分ほどそうしていただろうか。
今まで動かなかった井上がふいに首を傾けた。
やわらかで、かすかに湿った唇が俺の額に、次いで唇にかすかに触れた。
そうしてぎゅっと抱き返してきた。
井上の、包帯に包まれた華奢な手が俺の背を撫でさする。
まるでもういないおふくろのように。
井上はボケなようで肝心なところは敏感だ。
俺の気持ちも全部気付いた上で何も言わないんだろう。

「もう平気だよ」
あやすような声。
井上は少し身を引くとするりと包帯をほどいて見せた。
うっすらと痕こそ残っているが、綺麗に傷を残さず治る兆候が見えている。
「ね?」
俺はその腕を取って、静かに指先を傷跡に這わせる。
井上は初めてびくりと身じろぎをした。
次いで、指でなぞった跡を辿る様に、唇を這わせる。
「ぅん……」
彼女の口元から、押し殺した声が漏れた。
全ての包帯を解き、同じようにする。
井上の頬が、段々と朱に染まってゆく。
全ての傷跡にそうし終わった時、俺はもう一度井上を抱き寄せた。

お互いに何も、確かな言葉は口にしなかった。
いつの間にかそれは始まっていた。
井上が俺の額に、耳に、鼻に、頬に、手のひらに、そして唇にキスを降らせる。
なおも触れるだけのキスを続けようとする井上を右腕で抱えて止める。
左手を後頭部に添え、深く−−深く、口づけた。
最初はついばむように、徐々に、舌を忍び込ませる。
湿った音が、響く。
井上はうまく息が継げないのか、息が荒い。
体の熱が上がってゆき、背中に添えられた手が俺の拙い愛撫だけで力を失ってゆく。
俺の体の奥も熱を持ち、それが高まっていくのがわかった。
「くろ…さき、くん……ぅうん……っふ、ん……」
かすかに零れる声は、教室で聞く声音とは明らかに違う。
後頭部に添えた手を滑らせ、耳の裏をくすぐり、首筋をなぞる。
感じるのであろうか、それらの場所を辿る度に井上が身をよじる。
徐々に滑らせ、クラス男どもの間でも話題の的である見事な胸に手を置いた。
彼女の頬の色がより紅に近くなる。
抱き寄せたときから思ってはいたのだが……下着が、無い。
ダイレクトにふにふにとした感触が伝わってくる。
「井上、ブラしてねぇの?」
「部屋着に着替えたから……家にいる時はその方が楽なの」
その状態でクラスメートの男を家に上げるのは無防備というか何と言うか……
まあ、井上らしいと言えば、らしい。

乳房を持ち上げるようにする。
まろみのあるラインを触れるか触れないかという強さで触れると、
「……っ、あ……ん、んっ…………」
焦れたような声を上げるのが色っぽい。
それを繰り返しながら、時折かすめるように中央部へ触れる。
段々と、布が持ち上がってくる部分があった。
突如、その部分をきゅっと摘む。
「ひぁんっ」
跳ね上がるようなその反応に軽い満足を覚える。
両の胸に対する布越しの愛撫を繰り返す。
怪我した脇腹には触れないように注意する。
衣服越しに腹や腿、ふくらはぎなどを撫でていった。
「あぁ……あぁ……」
時折、性感帯らしい場所に触れて井上がびくりと体を震わせる。
反応のあった場所は注意深く記憶した。
二度目以降はそこを重点的に愛撫する。

「くろさき、くん……もう、ちからはいんないよぉ……」
蕩けきった甘いちいさな声でそう言うと、足元から崩れる井上。
座布団の上に彼女を横たえる。
井上は熱い腕を俺の首に回し、口付ける。
先ほどのような触れるだけのものではなく、ついばむようなキス。
彼女の部屋着はてっぺんから裾までボタンのあるワンピース。
脱がせてくださいと言わんばかりだ。
第一ボタンに手を掛けると恥ずかしそうに顔を横に向けたが、何も言わなかった。
ぷちん……ぷちん……
カウントダウンのようなかすかな音。
全てはずしてしまうと、真っ白な身体があらわれる。
思わず見入ってしまう。
「井上ってカラダ綺麗なのな」
井上は寝そべったままくすりと笑う。
「黒崎くんが言うとエッチに聞こえないからおかしいね」
袖だけはまだ通ったままだ。
「井上、脱がすから後ろ向いて」
井上は半身を起こすと背中を向けた。
脱がせると思っていた以上に細く華奢な背中。そこにうっすらと赤い傷跡が走っている。
豊満な胸に惑わされがちだが、背中はこんなにも薄く頼りない。
そのまま背中から抱き締める。
長い髪をひとまとめに前へと回す。
うなじから肩甲骨と肩甲骨の間へと唇を滑らせた。
「ひっ……っ、ぁあんっ……」
今までになく激しい反応。もっと啼かせたい、と思った。

最も反応した場所をくすぐるように指を遊ばせる。
「っ……っ、んん……ん……」
「声、我慢するなよ」
強く吸うと、
「いぃっ……ん、ぁ、ぁ……んっ、っふぅん……」
悲鳴にも似た声を出した。
しばらく背中を嬲り、再び横たえた頃には井上は息も絶え絶えだった。
ふるり、と胸の果実が揺れる。
歯を立て、味わいたいような衝動を抑えねばならなかった。
うっすらと汗の珠が浮く雪白の桃に舌を這わせる。螺旋を描くように。
尖りたった部分まで到達する。
そこを舌でざらりとひと舐めすると、
「ひぃぁんっ」
小動物のような啼き声。
しばらく舐め、吸う。
「うん……んっ…………」
快楽を越えた安心感。ガキの頃の記憶がそうさせるのだろうか。

ようやく、という感じでするりと井上の足の付け根に触れる。
一際激しく、彼女が身体を震わせる。
オレンジ色の、花で飾られたその下着。
既に蜜が染み出してきているのが見ただけでわかる。
指を脚と脚の間に這わせると井上は反射的に脚を閉じた。
でも、遅い。
既に手のひらは侵入している。
クロッチ部分に這わせると、外側までびしょびしょに濡れていた。
そのまま布の上から愛撫する。
「ん……んん……っゃっ……ぁぁあっ…………」
正面から彼女を見る。
目は快楽にとろりととろけ、目線は合わされようとしては指の動きに合わせ揺らぐ。
濡れそぼったショーツを脱がせる。
井上は無意識なのかどうなのか、少し腰を浮かせ、それを助けた。
身体にやわやわと指を這わせながら俺はベルトをかちゃかちゃと外す。
ジャンパーは上がりこんだ時に既に脱いでいた。
Tシャツも脱ぎ、トランクスだけになる。
自覚はあまりしていなかったが、俺も体中に汗をかいていた。
裸の胸に、彼女をいだく。
井上は両目を閉じる。
「黒崎くん……からだ、あつい……」
しばらくそうしていた。

5分ほどして、また再開する。
指をわずかに肉芽に触れさせると、いやいやをするように身じろぎした。
わずかに力を込めて押さえつけ、なおも触れる。
秘所からは際限が無いかのようにとろりとした蜜が溢れてくる。
人差し指を、ほんの少しだけ入れてみる。
「っ、くろさきく……!」
「痛いか、井上?」
井上はほわり、とした笑みを浮かべ首を横に振った。
「……ううん、いたくない。ちょっとびっくりしちゃった」
徐々に指を進める。時間を掛けて触れていたせいか、抵抗はほとんど無い。
やわやわとした内壁が、指を締め付ける。
侵入を続けながら反対の手の指に蜜をなすりつけ、肉芽を優しくくすぐった。
「ひわっ、ぁ、ぁ、ん、やぁぁん…………っ」
途端に、甘い声。
眉間に僅かに寄った皺が苦痛を感じさせるが、
そればかりではないのが声音で判る。
指が付け根まで飲み込まれる。
しばらく動かさない。
口付けたり、唇と舌で胸を嬲る。
眉間の皺が薄れたのを見計らい、なかの指を振動させる。
「っひぃんっ、っやぁ、ぁ、んんっ…………」
嬌声が激しくなってきた頃合を見計らって指を増やす。
静かに抜き差しを始めると、くちゅ、ぷちゅん、と湿った音がした。
「っや、くろさきく…………」

井上の中はもう、とろとろに熱く蕩けていた。
俺自身はもう限界まで張りつめている。
実は、コンドームも有ったりする。
つい先日、保健の授業で大らかな教師が
『一人ひとつ!一個くらい手元に置いて持ち歩け!』
と言って配ったものだ。
不精な俺はジャンパーのポケットに入れたままにしていた。
だが、ここまできて俺は迷っていた。

本当にいいのか?と。

「黒崎くん……」

はっと我に返った。
しっとりと汗に濡れた井上が横たわったまま、まっすぐな眼差しで俺を見ていた。

「抱き締めて。あたしも黒崎くんのこと抱き締めたい。
 −−カラダの奥まで」

井上は震えていた。
「……いいのか?」
こくりと頷く。
俺は包みの封を切った。

「痛かったら、ごめんな」
痛くないわけは無いのだが、言わずにはいられなかった。
井上が微笑む。
俺の腰の辺りを掴む彼女の手にきゅっと力が入った。
長い長い愛撫でほぐされた内部は思っていたよりもスムーズに俺を受け入れた。
井上は何も言わない。
眉間に刻まれた皺は、しかし先ほどよりも深かった。
必死に受け止めようとしてくれているのが判る。
引っかかる場所があった。
「……行くぞ」
ぐいと突く。
「ひっ…………」
井上が小さく呻き、目尻から涙を一滴零した。
身体と身体を密着させ、しばらく動かずにそのままでいる。
「あぁ……黒崎くんが、あたしの……なかに、いる……」
裸の胸に押し当てられたふたつの白桃の感触。
俺自身をとろとろと、やわやわと包み込みうごめく感触。
それらは目茶目茶に突き、自身の快楽を求めたい衝動を起こさせた。
その一方で、ただこうして身体をぴたりとくっつけていることだけでも充足感があった。
井上の身体から徐々に緊張が抜けてゆく。
それを見計らって抜き差しを始める。
「あっ……あっ……あっ……あっ……あっ……あっ……」
それに合わせて漏れる井上の色気たっぷりの声が耳元で。
その声に段々我を忘れてゆく。
気遣いよりも快楽が俺の胸のうちを染めあげる。
やわらかい中を掻き混ぜ、角度を変えながら貫こうと動いてしまう。
井上の腰が、時々応えようとしたものか、うごめくのが少しいやらしい。
「あっ…あっ…あっ…あっ…あっ…あっ…ぁっ!?、あっあっあっあっ………っぁあぁっっ!」
俺が果てるのと同時に、井上が悲鳴のような嬌声を上げた。

その後。
俺も井上も何も言わなかった。
「好きだ」とも、「愛してる」とも。
一緒に風呂に入って汗を流した。
乾いた布団を敷いて裸のままで、改めて抱き締めあった。
そして、井上の包帯を巻き直した。
沈黙のまま。

交わしたのは一言ずつ。
「じゃあ、また学校でね」
「ああ、学校でな」

俺の心を占めていた罪悪感や自己嫌悪はかなり薄れていた。
無くなった訳ではない。
ただ、それよりも割合を増したものがあったのだ。
それはただ純粋に井上を護りたいという気持ち。
この気持ちが何と呼ぶのか、それを俺はまだ、知らない。

以上です。
照れが勝っちゃってあんまりエロくないです。
本誌の展開に沿ったつもりですが立ち読み派なので、
異なる部分も多いかと。
その点御了承ください。

自分の中のイメージで、この2人は
「好き」とか「愛してる」とか
言いそうにないな〜
と思い、そういうシーンは入れませんでした。

[mente]

作品の感想を投稿、閲覧する -> [reply]