雨の中、寝巻き姿のまま裸足で僕は逃げ出していた。
敵からではなく、守られるしかない自分の運命から。
傷が痛む。疲労で眩暈がする。
僕は無様に雨の中地面に倒れ伏した。
そんな僕を見下ろす存在に気づく。
バウントの一人…芳野という、母に似た面影を持つ女性。
僕は彼女の隠れ家に連れ込まれた。
風邪をひく、と彼女はすぐに風呂の用意をしてくれた。脱衣所で濡れたパジャマを脱ぎ捨てる。
「…落ち着かないな。」
ここの風呂場には豪奢な百合の柄のバスタオルや薔薇の香りの石鹸などが置かれていて、
照明も花を模った雰囲気のある代物だった。
なんというか…ここには女性特有の空気があった。彼女そのものの空気ともいうべきか…
「……」
何となく下半身が疼いてきたので…タオルを巻いた。
早く身体を温めて用を済ませてしまおう…
藤色の湯船に浸かる。足が伸ばせる広さが心地よい。
「疲れた…」
意識が朦朧としてきた。
危うく寝入ってしまいそうな自分の意識を引き戻そうとする、が上手くいかない。
「こんなところで寝てはダメよ。」
「はい、スミマセン…」
「風邪をひいてしまう。」
僕の意識は覚醒した。
同じ浴室には…白いタオルを巻いた彼女が立っていた。
「ご一緒してよろしいかしら。私も…風邪をひいてしまうわ。」
「あ、あ、あの…」
自分が今、茹蛸のように真っ赤になっているのがわかる。金魚のように口をパクパクさせるが、まともな言葉にならない。
彼女は少し微笑んだ。
「その怪我じゃ、身体を洗うのも難儀でしょう。手伝うわ」
「け、結構だ!失礼する!」
だが、急いで出ようとすると足が縺れ、彼女に抱きとめられた。
僕の心臓が跳ね上がる。
「気をつけて」
タオル越しに互いの身体が密着する。彼女の豊かな胸が僕の胸板に直に当たり、くびれた腰が…
「………!」
「あら…」
僕は自分の下半身を勃起させていた。なお不味いことに、ソレを彼女の身体に押し当てている。
彼女の表情は見えない、が、苦笑したようだった。
「困ったコね」
そう言い、彼女は僕に口づけた。深く、…長く。
生まれてこの方味わったことの無いような甘美な接吻だった。
「いいわ…気持ち良くしてあげる」
彼女は勃起した僕のペニスをゆるゆると撫で、弄ぶ。
僕の身体は、いつの間にかすべての快楽に身を任せ、なすすべも無く椅子に座る。
「そう…いい子ね」
彼女の豊かな胸が顔に当たる。幼い頃、母に抱かれていた記憶が薄く重なった。
幼い頃と違うのは…お互いが裸体で絡み合っているところだ。
彼女は僕の腰に巻いていたタオルを取り払い、ペニスを露にした。
彼女はじっ…と僕のペニスを見る。僕は羞恥で顔を背ける。
だが、下半身は見られて興奮しているのが誰の目にも明らかであった。
「恥ずかしがらないで…。若くて健康な証拠よ。」
彼女はつん、と指で僕の分身を突いた。
「綺麗な色ね。」
暗に、僕が童貞であることを茶化されたような気がした。
彼女は僕の腰を撫で回し、豊満な胸を僕の脚に擦り寄せて来た。
「…こういうのは、好きかしら」
あっ、と僕がいう間もなく、彼女は僕のペニスをしゃぶりだした。
彼女の口の中で、僕の分身が硬さを増すのがわかる。彼女の舌が、僕の目くるめく快楽を呼び覚ます。
「ああっ…、んっ、はぁっ…」
気が狂いそうな快楽に身もだえ、官能的な彼女の姿に頬を赤らめる。
ぐちゅぐちゅと、彼女の口に出し入れされる自分のペニスを見ているだけで、気が変になりそうだった。
限界が近いと解り、彼女は射精を促してくる。
「あ、そんな、ソレは…」
僕は何とか抵抗しようとした、しかし…
彼女が尿道付近をちゅっ、と吸いあげると、僕は勢いよく精を噴出してしまった。
彼女は、ゴホッ、と少しむせた。口の端から僕の精液を少し出した。
…少しの間、互いに静寂が続いた。
その後僕を襲ってきたのは、どうしようもないほどの羞恥心だった。
「あ…僕、は…」
一体何をして…出会って幾日も経たない女性とこんな…
頭がくらくらしてきた。目の前が真っ暗になる…
目覚めると、僕は薄い黄色のバスローブを着て寝かされていた。
身体は綺麗にされていた。後始末も何もかも彼女にさせてしまったらしい…
「目が覚めたかしら」
彼女が湯気を立てたコーヒーを持ち、入ってきた。
何事も無かったかのように落ち着いている。
コーヒーを頂き口に含む。正直、味などわからなかった。
(終)
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