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【弓親×やちる】

「男の人の悦ばせ方を教えて欲しい…ですか?」
「うんっ!」
元気良く頷いてお返事した可愛い副隊長に、思わず弓親は眉を寄せ、やちるをじっと見詰めた。
「で、それでどうして僕の所にいらっしゃるんです?」
「あたしも最初はつるりんに聞きに行ったんだよ〜…
でも、そういうのは俺より弓親の方がよ〜く知ってるから教えてもらえ、って追い出されちゃった」
だから来たの、と寝巻きのまま無邪気な瞳で見上げられ、
寄せていた眉が戻り困ったような笑みを浮かべ、そうですか、とあきれ混じりに答えた。
そのあきれは、言われたからと実際に夜中に寝所まで来たやちるに半分と、
もう半分は聞かれて困ったからと、さっさと追い出してしまった一角へ半分、だが。
もちろん、言うまでもなく目の前の少女の指す『男の人』が誰で、
どうして『悦ばせ』たいのかはよく知っている。
「…あたし、剣ちゃんが好きだよ」
「えぇ、存じ上げていますよ」
「でねっ、剣ちゃんもあたしのことが好きなの」
「それも良く、存じ上げています」
「だからあたし…剣ちゃんに気持ちよくなって欲しいの…あたしが出来る範囲でいいから…」
普段の元気さは何処へやら、しゅんとうな垂れてしまったやちるの姿に、つられて眉が下がった。
恋する乙女は何にも勝る、と言うが、恋する乙女は何より脆い…そんな言葉を思い出して、
弓親は腕を伸ばすと、やちるを優しく抱き上げ、膝の上に乗せて、優しく声を掛けた。
「…解りました。僕で宜しければ」
「ほんとっ?ありがとーちかりん!…でも何で膝の上にあたし乗せるの?」
ぱっと表情を輝かせ…しかしふと不思議そうに首をかしげるやちるを膝に乗せたまま、
弓親は右手の人差し指をやちるの口元に差し出し、告げた。

「今から口で男の方を悦ばせる方法をお教えします…この指を、男の方のモノだと思ってください」
そう言われるとやちるは益々首をかしげ、じっと目線をあわせ見上げた。
「剣ちゃんのそんなにちっちゃくないよー」
「それはそうでしょう。だけど重要なのは練習に用いるものの大きさではなく、その内容ですよ」
「じゃ、なんでちかりんのモノ使わないのー?」
「僕は女性に舐めていただく趣向はありませんし…それに」
「…それに?」
「もしそんな練習をしてばれたら、僕は隊長に一瞬で肉塊にされますので、それはご容赦を」
いつもの楽しげな笑みを浮かべ、目線を合わせて優しく言い聞かせる。
ふぅん、と解ったようにやちるが軽く頷くのを見て、ちょん、と其の唇に指先を当てた。
「さ、先ずはこれを…優しく、唇だけで咥えて下さい」
ぱくっ。
やちるの小さな唇が、弓親の指先に、まるで子猫のように甘く噛み付いた。
柔らかな唇に挟まれるのを指先で感じ、つ、と僅かに、口内に侵入する。
「唇の力を抜いて…次は指の先を…爪先から指の腹をなぞるように、舌を這わせて…」
爪の付け根までを唇より中に入れると、ちろちろ、と舌先で舐められる。
伽の講習、というよりはまだ小動物の仕草に近いそれに少し笑みを浮かべながら、
弓親は指を更に進めた…もちろん、やちるの様子をつぶさに伺いながら。
「いい子ですね、副隊長」
「ふぇ?ふぉんほ?」
「本当です…あ、喋るのはいいですけど、決して歯を強く当てては駄目ですよ?」
進入してくる指をじっと見詰め集中していたやちるの視線が、上がった。
大人しく従順に教えを受ける様に、まるで女郎が新造を躾けているようだと、小さく笑う。

「それじゃあ、もっと咥えてみましょうか…あーん、として下さい」
「ん…あーん…」
桜色の唇が、やちるなりに大きく開かれる。
指先に感じていた唇のぬくもりが離れたのを確認して、弓親はゆるゆると指を奥に進めた。
「いいですか?決して無理はしないで…お口いっぱいだと思ったら、さっきみたいに咥えて下さいね」
「ふぁい……んっ」
指の第二関節まで埋まったとこだろうか、かぷ、と軽く噛み付くように、やちるは口を閉じた。
「では…噛まないように気をつけながら、舌全体を使って舐めたり、ちゅうっと吸ったりしてみてください」
最初は好きにして構いませんよ、と加え、弓親はゆっくりと、指を出し入れし始めた。
やちるは、慣れないながらも口いっぱいに頬張り、たどたどしく舌を絡め、吸い上げようとする。
ちゅ…ちゅる…ぺろ……ちゅ、ぱ…
指を舐め啜る、何処か淫靡な音だけが、静かな部屋に僅かに響き始めた。

たどたどしい舌の動きは、遊戯であれど児戯にあらず。
伽を習おうとする気持ちからか、稚拙ながらも何処か艶かしささえ感じる。
小さな舌先で指の節を確かめるようになぞり上げ、指先へたどり着けばまた根元へと戻る。
ぺろ…ぴちゃ……ちゅ、ちゅう……
時折、赤子のように吸い付いて…従順に、口に頬張る。
…と。

がぷりっ

「痛っ…ちょ、副隊長っ?!」
「……あきたぁ」
がじがじ、と歯を立てて文字通り指に『噛み付く』やちるに、
弓親は思わず抗議の声を上げ、慌てて其の口から濡れた指を引き出した。
「…お願いですから、飽きたからって噛み付かないで下さい。痛かったですよ?」
じわりと赤く噛み痕の残った己の指を舐める弓親。
一瞬相手に漂う、妙な艶かしさ。それを見てやちるは、はい、と自分の手を差し出した。
「じゃ、ちかりんお手本やって?」
「……は?」
「だって言われるだけじゃあたしわかんないし…これは命令っ」
差し出した手でぴっと相手を指差すやちるに、弓親は頭を垂れて眉を寄せた。
「こういう時に副隊長命令なんて言わないで下さい…
 …やりますけど、今度は嫌だって言っても止めませんからね?」
はぁ、とひとつだけ溜息をついて、差し出された手にちゅ、と軽くまずく口付けた。
お、と小さく声を上げるやちるに構わず、彼女の小さな指を唇で優しく食み、
人差し指と中指を一緒に咥え、ちゅる、と軽く啜った。

指の間を舌先で突付き、かと思えば舌全体を使って、指先までゆっくり舐めあげる。
目の前の席官のまるで知らない一面に、やちるは思わずきょとんと目を開いていた。
…だが、自分の小さな指を舐められる度、くすぐったいような何かが、背中をぞくぞくさせる。
優しく、だけど厭らしく指を這う舌に、これが大人たちの言う愛撫なのかな、とぼんやり思った。
(なんだか…ぞくぞくしてどきどきする…しちゃいけないこと、あたし今、してる…
 こんな、剣ちゃん以外の人…しかも一応男に、指を好きにされちゃって…)
指の間から執拗に、血管の近い指の腹を舐め上げられ、吸い付けば唇で刺激を与えられる。
どうしてそうなるのか解らないのに、ほっぺが何だか熱くなって、心臓の音が大きくなる。
「…今、どきどきしてるでしょう?」
「ふぇっ!?」
もういいよ、やめて、と言おうとした刹那、己の心の中を読まれたようで、
思わずやちるは間の抜けた声を出し、ちょっと泣きそうな目で弓親を見上げた。
「男も女も同じです…刺激を与えられればどきどきして、”きもちいい”んですよ」
「…きもちいい…?」
しゃべる唇が刺激になり、指をまた攻め立てる。あぅ、と困ったように見るやちるに、弓親は続けた。
「えぇ…相手に”きもちいい”と思ってもらうこと…それが、悦ばせ方、です」
逃げたくなるようなむず痒い刺激と、自分の知りたい悦ばせ方、という二つのものが、
やちるの頭の中で、時計の短針と長針が重なるように、かち、と音を立てて一致した。
(あたしの、知りたかったこと…なんだ、ちかりんは意地悪してたわけじゃないんだ…)
もしかして、自分が歯を立てたから仕置きでもされてるんだろうか。
そんな風に思っていた思考は、何処かじんわりと知的好奇心と興味と微かな感謝に変わり、
泣きそうだった表情がにぱ、と何時ものような無邪気な笑みに変わった。
と、自分の空いている手で先ほどまで咥えていた相手の手を取ると、
今相手が自分にしているのと同じように、やちるもまた弓親の指を、ぱく、と再び咥えた。
そのまま、自分の感じたむず痒い刺激を返すように、舌を這わせる。
今度は無秩序でも滅茶苦茶にでもなく、自分の指を通じて”教えられた”ように、
指の腹を根元から指先にちろり、と舐め、指先にたどり着けばちゅう、と唇で吸い付く。
真夜中の静かな部屋に、互いの指を舐めあう濡れた音だけが、共鳴のように響き合う。

くぷ……ちゅむっ…ぺろ、ぺちゃ……ぺろぉ…
ちゅ、ちゅ……ぴちゃ……ちゅっ…

…悪戯、なんて言葉で済まされない、乱れた姿。
唇と指で繋がりあう自分たちのことを、弓親は朧げにそう思った。
既に互いの指は涎で濡れきっており、ともすれば掌や手首にまで、垂れてきている。
倒錯的だ、と思った。だけど其の一方で…目の前で稚拙な愛撫に耽るやちるを、美しい、とも思った。
やちるの口戯は、先ほどまでとまるで違う。否、その技的なものそのものにはさして急上達はない。
だが、指を舐め耽る姿には…快楽を与えようとする意思が、はっきりと見て取れた。
頬を染め、己が与えた快楽をトレースして此方に与えようとする。
恋愛のような感情は一切ないが、愛しいと、可愛らしいと…そう思った。
指を舐め続けるやちるを膝の上に置いたまま、空いてる己の左手をそっと自分の後ろへ回す。
漆塗りの盆の上に揃えられた茶の道具の中から、異彩を放つ小さな硝子の瓶を手に取った。
「副隊長…良く出来ていらっしゃるから、ご褒美です…ちゃんと、舐めてくださいね?」
「ふぇ……?」
かりゅ、と硝子同士の擦れる冷たい音がした。
咥えていたやちるの指を離すと、蓋を開けた硝子の瓶から、柔らかな黄金色をした
とろ、とした粘度の在る液体を、やちるが咥えたままの右手の指に落とし、伝わせる。
「ん、んぅ……ちゅ………ふぁ…」
唇に冷たい其れが触れた瞬間、やちるは一瞬身を引きそうになった。
が、唇についた其れを舌先で一度ちろ、と舐めると、舌を伸ばし、むしゃぶりつく。
欲しがるように舐め、零さぬように啜り、小さな喉を鳴らして飲み込む。
指を伝いきりやちるの唇に全て流れ込んでからも、やちるはその味を惜しむように、
まだ僅かに黄金色の残る弓親の指を舐め、しゃぶりついていた。

「んー…あまぁい。ちかりん、これ蜂蜜?」
ぷは、とようやっと唇を離したやちるが、ご満悦、と例えたくなるような満面の笑みで聞いた。
僅かに顎に零れた蜜を指先で拭って遣りながら、弓親も淑やかな笑みを浮かべ答える。
「えぇ、紅茶用の茶蜜です」
「…お茶に蜂蜜入れるの…?」
「普段飲んでいる煎茶とはまた違って美味しいですよ。今度淹れて差し上げますね」
そう言って弓親は、濡れた手を拭くための手拭を取りに立ち上がった。
その背を見遣りつつやちるはぼんやりと、自分の教わったむず痒い快楽を思い出しながら、
うつらうつらと…この真夜中の時間であれば当然かも知れぬが…緩やかに、眠りに落ちて行った。

この日以来、剣八の目を盗んではやちるが弓親の元に伽を習いに来たとか、
それに意味も解らぬ激怒をしては剣八が怒鳴り込んだとか、
はたまたこの事を親しい副隊長に言ったやちるの言葉で他の副隊長の少女も相談に来たとか、
あまつさえ弓親が『死神一女心を知る男』だの『男のことを一番知る乙女』だのと
名誉なのだか不名誉なのだか図りかねる二つ名を女性死神協会から貰ったとか言うのは…また、別の話。

END
口と指だけでどれだけ書けるかやってみましたが…
この後実践で一角の所に行っちゃうやちるとか考えましたが、とりあえず今回はここまでで。
あと皆さん、女の子にハァハァするスレなので、嬉しいんだけど弓親に萌えないで下さいw
それと自分は男女か女女の組み合わせしか書けないので、あしからず。

やちる以外でも書いてみたい娘とか居るので、また書きあがったら投下します。では。

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