「…出ない」
例えるならそう、この世の終わりのような表情で、彼女は一言、震えた声で呟いた。その声は個室に虚しく反響し、彼女の鼓膜を叩いてそのまま消えてしまった。
元々彼女、りりんの体は作り物である。彼女の本来の精神は小さな玉に宿っており、少女のような体は入れ物にすぎない。
それでも食事はするし喉も乾く。よってそれを排泄する器官も存在している。
人間のように不定期ではなく、定期的にそれは起こる。
だからりりんは時間通りにトイレに入ったのだ。
「出ない、よぉ」
今度は涙の混じった声。けれど出したいのは涙ではない。
「どうしようっ…出なかったら浦原さんに調べられちゃうよぉ…」
浦原さん、とは彼女の造り主である。体に不調があればどんなことでも彼に相談しなくてはならない。
道具である彼等は正常に機能しなくてはいけないからだ。しかし彼等には余計と思われるオプションまで追加されていた。理性である。
「う、浦原さんにお尻を見られるなんて嫌だよぉ」
少女のような外見の彼女にも、羞恥心はあるのだ。まるで子供の仕草で顔を覆い、薄い金髪を揺らす。
「どう、どうしようっ…」
「りりーん!」
その時、ドア越しに空気を読まない声が響き渡った。直後、ドアがノックされる。まるで彼女の鼓動が早鐘を打つように。
「いるんでしょう?りりん!何をじっと閉じ籠っているんです?さっき貴女が桃鉄をやりたいなんて言うから私はー…」
「もっ、もうやらないっ!」
「へ?だってもうテレビも…」
「蔵人が用意するの遅いからっ、もうやりたくなくなっちゃったの!」
今は桃太郎電鉄どころではない。
「全くりりんのワガママには振り回されっぱなしですよ」
容易に想像出来る。彼は今は大袈裟な仕草で両手をあげて頭を左右に振り、ため息をついているのだ。
「でもりりん?貴女、何処か調子でも悪いのでは?」
バカっぽそうに見えても其処はやはり大人の姿をしているだけあるのだろう。勘ぐったような声で聞かれ、りりんは小さくうめいた。
「べ…つに」
「私の推理では〜そう、貴女ずっとトイレに篭っていますね?まさか…出ない、のでは?」
紳士のようなナリをして、何てデリカシーがない。りりんは恥ずかしさで頬を染め、うつ向いた。
「大丈夫りりん。この私に任せておきなさい」
そう言われたから任せたのだ。こんな狭い個室に二人。りりんは洋式便座に四つん這いになりながら便座の蓋にしがみつくという何とも情けない姿を晒している。
彼女のピンクのスカートは捲られ、白いソックスはクシャクシャに丸まって膝頭のあたりに引っかかっている。
「うーん、見た目に問題は見られませんから、やはり中なのかもしれませんね?」
嫌に冷静な声が背後から聞こえ、りりんは喚いた。
「もっ…早くしてよっ!」
「力を抜いて下さいよ?」
そっと頭を撫でられた次の瞬間、肛門に違和感を感じる。
「は…ぐっ」
滑った、異物が色素が薄く定着した皺をなぞっている。具合を確かめるように中心を何度も圧され、りりんは歯を食い縛る。
「う…ぁ」
辛さを紛らわすように大きな手が彼女の頭や頬を優しく撫でて、目尻の涙も拭い去る。
力が抜けていく。足に力が入らず腰が落ちた瞬間、異物が内部に入りこんできた。
「ひゃ…ぁあ!やっ、やだぁあ!何か変なのっ、入ってる…っ」
「私の指ですよ。しっかり解してあげますからね?」
個室には、少女の幼く淫らな吐息と、肛門をいじる水音が響く。
「どうです?りりん…出そうですか?」
「わかんな…分かんないよぉお!熱くて…何かっ…」
何度も指が根本まで沈み、先端が内部をかき混ぜる。入口を拡張するようにこね回されてたまらず悲鳴をあげた。
「ひっ…あ!だ…め!もうっ…らめぇ…」
呂律が回らない少女から指を引き抜き、蔵人は困ったように言う。
「もっと大きな物で刺激しないと出ないのですかねぇ…」
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