いつも静まり返った部屋に明かりもつけずに座り込んでいる少女がいた。
仕事のために外へ出ても、俯いた瞳は暗く沈んでいて、さながら沼地の底だった。
そんな少女をいつも影ながら見つめている、同じように沈んだ瞳の青年がいた。
縫い付けた副官章を外すこともできず、痛々しいまでの名残と空虚な依存を抱いた青年だった。
隊首会に集まった寂しげな少女・雛森桃と、やはりそれを見つめる眉を寄せた青年・吉良イヅルは
皆が意見を出し合っているにも関わらず、俯いたまま話だけ聞いていた。
少女は或いは聞いていなかったのか、皆の心配げな視線にも微動だにしなかった。
(藍染隊長…)
隊首会が続く中、雛森は一人の男のことだけを考えていた。誰よりも信頼し、その信頼を愛へと
変えていった元五番隊隊長、藍染惣右介のことだ。
(…市丸隊長)
左袖に縫いつけた副官章を押さえ、青年もまたただ一人だけに心を捕らわれていた。雛森の
想う藍染と同じようにして姿を消した、元三番隊隊長・市丸ギンだ。
二人はいついかなる時も数を背負った隊長を忘れることはなく、他の事をしている時でも
その思いは頭の中の半分以上を占めている。特に少女はそれが酷かった。
終わった隊首会の、起立の号令にも気づけぬほど。
「雛森くん」
月明かりが襖に影を作っていた。聞き覚えのある声に雛森が顔を上げると、襖には細身の
男の影が映っていた。パチン、と明かりをつける。
「吉良くん?…いいよ」
夜分すまない、そう小さく言いながらゆっくりと襖が開く。就寝前に思いついたことなので
自分は白の寝巻き姿だ。そして少女も寝巻きであることを理解してきたのだが。
「吉良くん…?」
湯冷めしていないのか、ほんのりと赤みを帯びた頬と下ろした髪、それに薄紅色の寝巻きは
思っていた以上に色っぽく、昔から興味が無いと切り捨てていた感情が高まるのがわかった。
「あ、ああ、ごめん」
血色の良くない肌をほんの少しだけ朱に染めていたが、背中から吹いた風に冷やされて消えた。
雛森も寒いだろうと襖を閉め、部屋の真ん中に敷いた布団の上に座る彼女の前に腰を下ろした。
石鹸だろうか、心地よい香りがイヅルの鼻腔をくすぐった。
泥のような瞳をしている雛森だが、同じ場に置かれ似通った感情を持ったイヅルには心を許し、
表情を少しだけ見せていた。
「丁度良かった。私も話があったの…」
「何?」
イヅルが聞くと、吉良くんから、と微笑みながら言った。イヅルだけが知る笑顔だった。
「僕の用は…」
言いかけ、部屋の片隅に吊られた羽織が目の端を掠め、言葉を飲み込んだ。
「……様子を見に来ただけだよ。隊首会のとき、体調が悪そうに見えたから」
声をかけてやっと立ち上がった少女を思い出し、必死に冷静を装いながら言葉を紡いだ。
「ありがとう。大丈夫、ちょっと考え事してただけだから…」
一度笑い、そして表情を暗くしていった。つられるようにイヅルの表情も暗くなる。
沈黙が辺りを支配した。
「ところで、雛森くんの話って?」
思い出したようにイヅルが聞くと、俯いたまま右手でイヅルの袖を少しだけ引っ張るように掴んだ。
肌が触れ合いそうな距離にイヅルの頬が赤に染まっていく。
「ひ、雛森くん?」
「…私ね」
ドギマギしながら名前を呼ぶと、雛森はそのまま小さな声で話し始めた。
小さく、でも確かな決意のこもった声だった。
「藍染隊長のこと…いつまでも引きずってちゃ駄目だ……って、思うの」
すっとイヅルの左手を持ち上げ、自らの右頬に添えた。ドキンとイヅルの心臓が跳ね上がる。
「だから…」
右手をイヅルの手に添えたまま、左手を寝巻きの胸元へ持っていった。一枚しか着ておらず、
下げ始めたそこからは既に小さな膨らみが見えかかっている。
「ひ、雛森くん!」
たまらずイヅルが右手で目を隠し、腰を捻って顔を後ろへ向けた。だが、温かく柔らかい頬に
触れる左手は、何故だか振り切ることができなかった。
「吉良くん。吉良くんで、忘れさせて…」
手から温かみが離れ、代わりに全身に柔らかいものが触れた。その感触に、名を呼ぶ声に、
全身に熱さが灯った。
肩から回された腕は片方が既に素肌で、きめ細やかな肌と石鹸の香りに眩暈がした。
胸に当たる双璧は、考えずとも少女の膨らみである。
「…本当に、いいんだね…?」
こくんと頷くのを確認してから、イヅルは雛森を仰向けに寝かせた。
帯を解きゆっくり寝巻きをはだけさせていくと、ほんのりと赤らんでいる肌が露出した。
女性らしい丸みを帯びた体つきに、それを初めて直視したイヅルは思わず両腕が少し震えた。
自分の双璧を、恥じらいながら片腕で隠す彼女はなんともいじらしいではないか。
「じゃあ、始めるよ…」
大きく脈打つ心臓を理性で押さえ込み、髪の隙間の額に口付けをした。
恥じらいからか恐怖からか、雛森は驚いたように目を瞑った。
首筋にもう一度優しく口付けをしてから、双璧を隠す腕を放させた。小さいながらも確かな膨らみに、
イヅルの膨らみも恐いくらいに脈を打った。
『――少女を傷つけたら、どうなるだろうか。』
自分でもぞっとするような考えが脳裏を掠め、イヅルは手を止めた。信頼していた市丸に
裏切られた痛みと思いをそのまま少女にぶつけてしまえば、少しはすっきりとするだろうか、と。
バクバクと心臓が鳴り響く。怒りのままに彼女を壊してしまおうかとさえ思う。
「吉良くん…?」
名前を呼ばれ、はっとする。考えを消すように頭を振ると「何でもないよ」と彼女の瞳を見て答えた。
何を考えていたのだろうと恥じ、下半身を覆い隠す寝巻きを避けた。自分で外しておきながら、
イヅルは耳まで真っ赤に染めた。
「その……僕、したことないから…痛かったらすまない」
断ってから、うっすらと毛の生えたそれの中央にある突起に舌を這わせた。ビクンと雛森の
体が反応した。驚いてイヅルが顔を上げると、雛森は口元に両手を当て顔を真っ赤にしていた。
薄っすら、涙が見えた。
「だ、大丈夫かい?」
痛みがあったのかと焦ると、雛森はううんと首を振って微笑んだ。
「何だかよく分からないんだけど…変な感じがして。大丈夫だから、続けて?」
言われ、眉を寄せながら雛森のそれへもう一度口をつけた。舌を這わせ、あるいは少し甘噛み
してやると、甘い声を出しながら雛森の腰が動く。
少し続けていると、その下からねっとりとした透明の液体が流れてきた。舌ですくい、それの
出てきたところを押すように舐めた。独特の味に頭がぼうっとした。
「…ん……ぅ…!」
異物に雛森の顔が歪んだ。だが理性を失いつつあったイヅルは気づかず、それを重点的に責めた。
狭いそれを周囲を舐めながら、段々と奥へ舌を進めていく。痛がっていた雛森の声が、
徐々に小さく甘くなっていく。
「吉良…く……もう…」
涙目の甘い声に誘われて、イヅルは自分の帯を解いた。我慢に我慢を重ね、はちきれそうな
それを目の当たりにした雛森は思わず固まってしまった。男性のそれを直視したのは始めてだった。
恐がる雛森に、自らを抑えて涙を拭うように頬を撫でた。そして雛森が見なくて良い様に、
彼女の上に覆いかぶさった。
「足…開いて、くれる?」
耳元で優しい声が聞こえ、恐る恐る足を開いた。
「ちょっと痛いけど…」
ゆっくりするから。そう言い、イヅルは自らの先を雛森の秘部にあてがった。そしてゆっくりと、
差し込んでいく。
「…っ……!!」
苦痛に雛森の表情が歪んだ。思わずイヅルが体を止めた。大丈夫かと声をかけようとした、瞬間だった。
「藍、ぜん…たいちょ…う……!」
イヅルの中で、何かが壊れた。それは操り人形の糸が切れるように静かに、悪魔を抑える錠前が
外れたように盛大な炎をあげて。
「きゃあ!」
仰向けだった雛森の体を持ち上げ、抱きかかえるようにして後ろに尻をついた。重力に誘われて
雛森の体はイヅルのそれを飲み込んでいく。声にならない叫びが上がり、目を裂けんばかりに見開いた。
目の前の彼に一体何が起こったのか、どうしてもわからなく信じられなかった。
どうしたの吉良くん。痛いよ。―言いたいことは沢山あったが、何度も腰を打ち付けられる痛みに
声など出なかった。
「か……は……っ…!」
枯れたような声が喉を通った。どうしようもない痛みに涙が幾度も流れた。驚きに少し麻痺していた
感覚が段々戻り、より痛みが鮮明になってきた。痛みから逃れるのに大きく力を使いたかった。
――がむしゃらにイヅルをきつく抱きしめた。
「くっ…!」
抱きしめられた驚きと絶頂が同時に迫り、圧されるようにイヅルは雛森の中で迸った。
がくんと、イヅルの肩の上に雛森が頭をうな垂れた。少女のそれと混ざったイヅルの白濁が、どろりと
少女の中から溢れ出た。
ぜえぜえと息をしながら、ふとイヅルは我に返った。涙の後と、強く唇を噛んだのだろう血の跡がついた少女を見て、
がくがくと全身が震えた。両腕にも力が込められ、雛森を強く抱きしめてしまう。
「あ…ぼ……僕は………!」
気を失いそうになったが、このままではまずいと無理やり精神を保った。そして少女を布団へ寝かし、
自らを少女から抜いた。抜くときの感覚にまた理性を崩されそうになったが、ズボンを上げてぎゅっと帯を締めた。
雛森にもきちんと寝巻きを着せてやり、冷え切った布団をかけた。
「すまない…」
呻くように呟くと、青年は静かに部屋を出た。そして飛んで隊舎へ帰り、強く壁を殴った。机をなぎ倒し、
狂ったように自らを痛め続けた。
疲れ果て、倒れこむように眠る頃には、部屋の物に元の面影は無かった。
青年と少女のお話は、ひとまずお終い。
以上です。お粗末さまでした。
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