ぎしぎしと豪華な寝台が悲鳴を上げる。その音は自分の心が軋む音と重なる。
「あっ…んぁあっ!藍染さまあっ…」
心とは反して鼻を抜ける甘い声に我ながら身の毛がよだつ。
自分を犯している相手は顔立ちこそ甘く整っているが、どんな時もその目は笑っていない。
自分を見る時も、常に物として上から見下している。
双眸は、人の型に収められた圧倒的な闇色の霊力が漏れ出る窓だ。
男の思うままに嬲られる間、少女はそんな事をぼんやりと思う。
織姫は泣きはしなかった。
突然に裸になれと命じられた最初の日でさえ、好きな男に操を立てることも叶わず、破瓜の痛みを知った時でさえ。
屈服したことを示し、相手を満足させるためには泣いた方が効果的だろう。
それでもこの男があまりにも恐ろしすぎて、自分の身に起こっている事の現実感がいまいち掴めなかった。
藍染は気が向くままに織姫を呼びつける。
ただお茶の相手をさせられることもあれば、今日のように慰み者にされることもある。
どちらにしろ、彼の霊力に当てられて解放される頃には織姫はくたくたになってしまう。
それでも自室に戻るまでは倒れることも出来ない。
重い身体を引きずりながら、ウルキオラの後を歩かねばならない。
(自転車欲しいなあ、でもいくら広くても宮殿の中で乗り回したら危ないだろうなあ。
それともスケボーかキックボードとかはどうかなあ。
昔、お兄ちゃんが買ってくれたローラーシューズとかでもいいから…。)
そんな埒も明かないことを考えて、ハアと溜息を吐く。
現世の事を思うのは止めようと思うのに。寂しくなるだけなのに。
かえりたい、なんて思っちゃうのはいけない事なのに。
「…な、おい、女、何を考えている」
はっと顔を上げるとすぐ目の前にウルキオラの白い顔があった。
部屋までもう少しのところでいつの間にか立ち止っていたらしい。
彼が苛立ってる所を見ると何度も呼び掛けていたのかもしれない。
「あっ、ごごごごめんなさい、ちょっとボーっとしちゃってて、すみませんです!」
ウルキオラは訝しげに眉根を寄せたが、
「…謝るのは一度でいい」
と言ったきり、背を向けてまた歩き出した。
今度は少し歩調を緩めて、足取りの重い織姫がそう苦労せず付いてこれる様に。
ありがとうございました。
部屋まで送ると少女は毎度頭を下げて礼を言う。
そんな物に何の意味があるのかと正直ウルキオラは辟易している。
だがこの娘は少々変わってこそいるが、身体は基本的に普通の人間で非常に傷みやすいものだとは心得ていた。
藍染から預からせて頂いた以上、配慮には最善を尽くさねばならない。
ウルキオラは藍染の元に送った織姫が何をしているのか知らない。
まず知りたいとも思わない。自分の使命以外に興味が無いのだ。
だから藍染の元に織姫を送り、いつも通り立ち去ろうとして呼び止められた時も、その部屋に藍染だけでなく市丸ギンがいて更にロリとメノリがいた事にも、その目の前で井上織姫を抱けと命ぜられた時にも、別段何も感じはしなかった。
重要なのはその命令が藍染の物であるということ。それだけだ。
破面は人を喰らい、虚を従え、死神を超えるもの。
で、あるにも拘らず、その中では人間の生殖活動に興味を示す者が少なくない。
異常だ、とウルキオラは思う。
人間がそれに溺れるのは、子孫を残したいという本能があるからだ。
それを持たない破面にとっては、束の間の快楽を貪りたいという浅ましい欲求だけだ。
そんな事に対してウルキオラはただ冷淡に軽蔑するだけだ。
くだらない。
我らの肉体が人間を模しているのは仕方が無い。その方が便利だと認めよう。
だが格下である人間の営みを真似するのは、まるでそこに憧れでも有るかのようで愚かしいことだ。
だが、藍染がそれをやれと言うのなら最善を尽くしやるまでだ。
藍染の寝台の上で既に織姫は速くも裸になって腰掛けている。
人前で服を脱ぐのにためらいが無いのがこの女だ。
それでも藍染の意図を知ってからはさすがに表情を硬くして自分を気まずそうに見つめている。
寝台を見下ろす玉座の上で、藍染は織姫とウルキオラを交互に見て大げさに肩を竦めて見せた。
「ロリとメノリがどうしても見たいと騒ぐんでね」
「そう、気張らんでもええよ。織姫ちゃんを気持ちよくしたり。」
ニヤニヤと嗤う市丸ギンに若干の不快を覚えたが、無視することにした。
「わかりました。」
「ちゃんと出来るのぉ?」「キャハハハ、マジ童貞なんて笑えるぅ!」
姦しい女二人の甲高い嗤い声に背を向けて、織姫の前に立つとウルキオラは衣を脱ぎだした。
「織姫、手伝わないのかい?」
からかうように藍染が声を投げると、織姫はびくりと身を震わせた。立ち上がって恐る恐る近づく。
既に上着を脱いで裸になっているウルキオラの上半身にそっと指を重ねる。
そっとウルキオラの首筋に口付ける。
少女の髪から昇る甘い匂いが嗅覚を刺激し、ウルキオラはほんの少し目を閉じた。
織姫は左胸の番号を指でなぞり、咽喉元の空虚な穴を覗き込む。
「…痛く、ないんですか?」
「別に。」
「ですよね。」
細い指を腰にかけ、袴をするりと降ろす。
自分は後ろ摺りに下がって、寝台に足がぶつかるとそのまま仰向けに倒れこんだ。
華奢なのに胸の盛り上がりが異様に大きい。
近づいて寝台に乗ると、形よく揺れるそれを手にとって見た。
柔らかい…。
女の身体に触れるのは初めてで、不可思議な感触にウルキオラは戸惑う。
両の乳房を確かめるようににぎにぎと揉んでみると大きなそれは手の中でたぷんと揺れる。
「ったあい…!」
織姫が顔を顰めか細い悲鳴を上げた。
「こらこらウルキオラ、爪を立てては駄目だよ。お前はどうにも攻撃的だなあ。」
力の加減が強すぎるようで、織姫の白い肌に細い赤い筋が浮いていた。
「もっと優しく扱うんだ、相手は壊しやすい人間なんだからね。」
「あん…こうやってやるのよう、坊や」
メノリが突き出すようにして上着から取り出した自分の乳を揉みしだいて見せ付ける。
「これは何ですか、藍染様?」
乳頭の頂を指してウルキオラが問う。薄い栗色のそれはほんのり赤く色づいてぷくりと立ち上がっている。
指先で摘むと織姫がびくりと咽喉元を震わせた。
「それは人間の雌が子に乳、まあ栄養だね、を与える器官だよ。
織姫はそこの感度もいいから試しに吸ってあげるといい。」
吸う、とは文字通り口で吸い付けばいいのだろうか?
何やら滑稽な気もするが、ウルキオラは藍染の言葉に従った。
冷たい唇が乳頭を含み吸いたてる。
「舌でね、捏ねて上げなさい。今度は強くしていい。」
こくりと頷いて突起をねぶる。声を殺し織姫は頭を振って乱れた。
長い髪がシーツの上に広がって揺れる。
「ほらね、織姫が悦んでいる。もっともっと可愛がって下さいってね。」
応用を利かせて、片の掌で片の乳房を、一つしかない唇で一つ残された乳首を責める。
温かさと柔らかさと、甘みと少しの酸味がウルキオラに流れ込む。
じんわりと染み込んで行くような新しい感覚に、ウルキオラは軽く眩暈を覚えた。
織姫の部屋で側に控える時に感じる心地よさはもっとほのぼのとしていたが、今のそれはぐんぐんと濃度を上げていくようだ。
「腰から下は最も重要なんだ。でも傷付けてはいけないよ。お前の指で確かめてごらん。爪には気をつけなさい。」
指が吸い付くような滑らかな肌をすべり、下腹部へと辿る。
繁みに行き当たったが、自分と違いそこには何も無い。
指を忍ばせると繁みの奥で濡れる物があった。
何だろう?と更に指を割り込ませ差し入れる。温かい。
が、肉の感触以外に何があるわけでもなく、ただ奥から止め処なく濡れている。
「何故、こんなにも濡れているのですか、藍染様?」
くくっと藍染は咽喉の奥で嗤う。
「それは織姫に直接聞いてごらん?」
「何故だ、女?」
涙でも、汗でもない。引き抜いた指に擦りついた物を舐めてみると青臭い匂いが鼻を擽った。
まるで少女が毎日部屋に置いている花瓶の水にも似ている。
「おい、答えろ、これは何だ?」
濡れて光る指を目の前にかざし、少女の耳元で低い声で囁く。
織姫が答えられないでいるのに苛々と舌打ちをし、再び指の腹でその箇所に触れてみる。
やはり濡れている。それに先ほどより強く。
苛立ちをこめて少し乱暴に潤いの中を指で掻くと、初めて少女が声を上げて啼いた。
「織姫?ちゃんと答えておあげ。いつも私に言ってるようにでいいから。」
藍染に教え込まれたことは数限りなく自分を内側から食い尽くした。
理性を壊し、淫乱な女として振る舞う事。
そして必ず藍染の意のままに動くこと。
逆らってはいけない、従わなくてはいけない。
どんなに嫌悪感が込み上げていたとしても。
顔を真っ赤にして目を硬く閉じたまま、織姫は観念して呟いた。
「…いから、です。」
「聞こえんかったよぉ、織姫ちゃん?」
消え入りそうな小さな声に容赦のない冷たい声が被さる。
目を開けると不思議そうに覗き込む翡翠の瞳とぶつかる。
何も映さない石の瞳を見て、ああ、せめてこの人でよかったのかもしれない、と織姫は思った。
「ウルキオラさんの、触っている所が、気持ちいいからです。」
ロリとメノリの偲び笑う声が織姫の羞恥に縮む心を貫く。
もう止めて欲しかった。
藍染に抱かれることは苦痛そのものだ。
その上、人前でそれを見せて喜ばせるなんて、ここは本当に狂っている。
でも、そんな事は口に出してはいけない。永遠に封じ込めておかなくてはいけない。
だが、今日は心を硬く閉じることが出来ない。
藍染との行為では何も感じない。
身体の反応を心得て的確に刺激を与えるし、身体もそれに反応はするのだが、心は恐怖以外何も感じない。
それに比べてウルキオラの指も舌も、動きがぎこちなく稚拙ですらある。
だが藍染が与えてくる愛撫よりも織姫をずっと優しく溶かしていく。
その指も唇もまるで氷のように冷たいのに、少しも恐ろしくはない。
まるで新しい生き物を弄る子供のように遠慮がなくても、少しも嫌ではない。
ウルキオラが触れているそこかしこが、肌の下の細胞一つ一つまで反応している。
求めているかのように。
どうして?
問いは絶頂の高波にもまれて消える。
ウルキオラの指が自分の中を掻き混ぜ、高みへと追い詰めて行く。
そこが唯一の逃げ場のように、織姫は駆けていく。
自分を包む世界の音が消えて安らぎの中で織姫は一瞬意識を手放した。
だがそれはほんの束の間だった。
「織姫、君の番だ。ウルキオラにお返しするんだよ。」
絶対に従わねばならない声は自分の手足に絡みついて、魂を引き摺り出され、身体を引き起こされる。
もう少し休んでいたいのにもかかわらず。まるで自分は操り人形だ。
白い肌を紅潮させて喘ぐ織姫の姿に、ウルキオラはいつになく高揚する自分を見つけた。
何だ、これは?
普段なら全く起きないことだ。身体の中にこのような熱があることすら今まで知らなかった。
いや、うつされたのかもしれないな。
それほどまでに目の前の女の体温は上昇している。
自分が触れれば触れるほど、反応は大きくなり燃えるように火照っていく。
ついに腰を弓なりに反らせ痙攣したかと思うと、ぐったりと死んだようになった。
だが、主の言葉に再び魂を吹きこめられた様に起き上がる。
「ウルキオラさん…」
織姫が上体を起こしたので自分も離れた。
寝具の上に尻をつくと同じように座り込んだ織姫と向かい合う。
汗ばんだ肌に亜麻色の長い髪が張り付いている。
顔に掛かっている髪を何となしに払い除けてやる。
織姫の顔には疲労が浮ぶが、それ以上に熱を帯びた瞳が怪しく輝いている。
潤んではいるが、泣かせたわけではないようだ。
不思議だ。人間の身体を組織する水分が、触れられば外に出るということなのだろうか?
涙、汗、血液、涎、そしてこの体液もその類なのだろう。
「さあ、何度も教えただろう?大丈夫、君はとても上手だから。」
意を決した織姫が身を屈め、ウルキオラの股間に顔を埋める。
自分では気付かなかったが、そこにある器官はいつもと形状が変わっていた。
上に向かって高く屹立している。織姫は一度暖めるように掌で包み込むと、亀頭の先にキスをした。
ウルキオラの顔色同様に青白いそれは、藍染の物同様強く脈打っている。
(冷たいなあ。藍染さんのは熱いくらいなのに。)
どこまでもウルキオラはウルキオラのままで、少し可笑しくなる。
「あの、いいですか?」
「何がだ?」
じっと織姫の様子を見つめていたウルキオラは素で尋ねる。
「いいよ。」
代わりに答えたのは藍染だった。
その言葉を合図に織姫は口の中にウルキオラを頬張る。
一瞬、ウルキオラは息を詰まらせた。
他人と触れ合う経験のまるで無い彼にとって、この最も直接的な接触はあまりに刺激が大きかったのだ。
一方、織姫は舌を使い、顎を動かして口の中で膨れて行くウルキオラを精一杯暖めようとする。
(大きくなってるから、ちゃんと気持ちいいのかな。それならちょっと嬉しかったりして。)
ウルキオラの反応を確かめるように、裏の筋を下でなぞり、亀頭を吸い上げ、何度も口の中で往復させる。
はあっと頭上の息が荒くなっていくのがわかる。藍染に教え込まれたことを必死で繰り返す。
「お…んなぁっ…」
甘いほどに切なさを帯びたウルキオラの声に、織姫は腹の下がじんと熱くなるのを感じた。
「織姫ちゃん、よくやってますやん。ウルキオラのあんな顔拝めるとは思ってみませんでしたわ。」
絡み合うベッドの上の二人を見下ろしギンは嗤う。
「まあ、躾が好いんだろうね。二人とも本当にイイ子だ。」
「藍染さまぁ…私達もぉ…。」
しどけなく胸前を肌蹴て自慰に耽っていた二人の女が切なく啼くと、やっとその存在に気付いたように藍染はそちらを向いた。
「メノリ、いいよ。ロリ、お前はギンだ。」
メノリはにんまりと勝ち誇った笑みをロリに投げて、藍染の膝元に静々とかしずく。
しゅるりと帯を解いて取り出した藍染の一物を口に咥える。
一方恨みの篭った目でメノリとギンを交互に睨み付けた後、ロリもそれに倣う。
「二人ともつまらない小言を言うより、その可愛い口で楽しませてくれればいいのさ。」
暫くして室内には三組分の口淫の水音が響く。
その中で藍染は眉一つ動かさない。
「藍染さん、そろそろ織姫ちゃんもお口以外でもいいんとちゃいますの?」
「ん、そうだね。」
二人の傍観者はそれぞれの奉仕者を持ちながら涼しい顔で話している。
「市丸君はこう言ってるけれど、君はどうだい織姫?」
口に含んでいたウルキオラの陰茎を放して、困ったように織姫は藍染を窺う。唇を伝って唾液が糸を引く。
「あの、…顎が、痛いです。」
それを聞いて藍染は愉しげに笑い声を上げた。
ウルキオラは勃起こそしているが、中々射精に至らない。
織姫は彼の喘ぐ息を聴きながら、正直いつまで続けていればいいのかしらと考えていたのだ。
「じゃあ口はもういいよ、男を咥えられるもう一つの口にしなさい。」
こくんと頷いて後ろに倒れると、ギンがひゃーアカンーと大袈裟な声を上げた。
「どうせなら織姫ちゃん、経験者やし自分がここはリードせんと!」
「え?でも…」
「この前一緒にやったアレ、使えるんじゃないかな?」
戸惑う織姫に藍染は頬肘を突いてクスクスと嗤う。
「君が存分に乱れる姿を、私ももう一度見たいね。」
少し考えていた織姫は、遅れてぼっと顔を赤らめた。
アレとは、翌日まで腰が痛くてしょうがなかったアレだろう。
それは自分の全身を曝け出す体位で、こんな人前では正直やりたくない。
でも、最初から有無を問うてなどいないのだ。
情けない思いで俯くと、ウルキオラに向き直った。
「ウルキオラさん、すみませんが、そのまま後ろに寝て頂けますか?」
「何をする?」
荒い息を整えながら訝しげに尋ねるウルキオラをオロオロと宥める。
「あの、何も、心配しなくていいです。」
「大丈夫だよ、ウルキオラ。織姫に任せなさい。」
藍染の声にはウルキオラはすぐ従う。
「痛くないですから」
普通この台詞って、逆なんじゃないかなあ。
そんな事を考えながら仰向けに寝そべったウルキオラに跨ると、意外とこの男の顔があどけない事に気付く。
自分の迫り出した胸の下にちょうど見える顔。
厭らしく笑うでもなく、恐ろしく睨み付けるでもなく、ただこれから起こることを見てやろうと開かれる瞳。
ほんと、子供みたい。
「じゃ…失礼します。」
硬直したまま天を指すウルキオラの陰茎に、そろそろと自分の性器をあてがう。
入り口を擦り付けると、自分が濡れそぼっていた事に気付く。
(もうヤダ、恥ずかしいよう…)
きゅっと目を瞑り、つぷりと亀頭を埋める。途端に織姫の身体を電撃が走る。
一番飢え求めていた物がやっと掴める悦びと期待に身を震わせる。
(ウルキオラさんが、入っていく…)
腰を下ろすにつれ、途方もない圧迫感が自分を埋めていく。
だが藍染の巨根を捻じ込まれるのと違って、ウルキオラのそれはするすると自分に割り入って来る心地良さがあった。
「ぁあっ…あんっ、あーっ!」
堪らずに織姫は高く声を上げる。
根元まで密着させると、ほうっと息を吐いた。
紛れもなく、自分で全て飲み込んでしまった。
「っく…!」
下に敷かれたウルキオラの顔をぼんやりと眺める。
感じてるのかなあ、私みたいに。
頭では何も考えられなくなっていた。
繋がったまま腰を屈めてウルキオラの唇にキスする。
舌を入れると彼の冷たい口内に這わせる。
口を離すと、咽喉元の穴の淵をべろりと舐めてみた。
唇同様、何の味もしなかった。
織姫の長い髪が肌を擽る。
口付けで流れ込む彼女の暖かい息に窒息しそうになる。
このままなら、この女は自分を殺すことができる。
だが、抗う力は沸いて来ない。
自分を突き動かす茫漠とした怒りも憎しみも敵意も今は何の意味も為さない事を悟る。
少女に楔のように打ち込んだ箇所が、己の全てを飲み込んでいく。
「動きますね」
艶色の声が遠慮がちに漏れる。わけもわからず頷くと、女が腰を使い揺れ始めた。
ぎちぎちと鳴る結合部が、擦れ合う肉同士が、かつてない快感を生み出す。
軋むうちに女の方がじゅぷじゅぷと音を立てる。
眉根を寄せ、頬を紅潮させて玉の汗を落とす。
大きく揺れる乳房がうっとおしく思えて、手を伸ばすとウルキオラは一つ掴んだ。
爆ぜる肌に指を食い込ませ、乳首を苛むと織姫が一層仰け反った。
「やぁ…んっ!」
やはりここが急所なのだ。
身体の中心から熔かされていくようにトロトロと蜜を溢れさせる。
二人の立てる水音と嬌声に対抗するように、ロリとメノリも忙しく舌を動かす。
二人こそ早くから藍染との結合を望んでいるのだが、今日の主は新参の玩具に夢中で中々許可をくれない。
このままじゃ、日干しじゃない!
焦りと苛立ちが嫉妬に拍車を駆ける。
「あー、歯ぁ立てたらアカンよ。思わず斬ってまうやもしれん」
自分の頭を無造作に掴み白々と言うギンに、ロリはぐっと怒りを押さえ込む。
本当は噛み千切ってやりたいが、実力の差は歴然としている。
他にどうしようもないことを悟り、大人しく自分の指で下着の上から慰める。
途端に耽溺が支配していく。
織姫は悲しかった。
腰を抱かれ突き上げられる度に、幾度も幾筋も涙が零れ落ちる。
僅かに出来た心のヒビから感情の雫が零れるように。
繋がり合っていても、ウルキオラの目はガラス玉のままだった。
藍染の決して笑う事の無い目も恐ろしいが、
ウルキオラの感情を持つことの無い瞳は織姫をどこまでも悲しくさせる。
「何故、泣く?痛いのか?」「いいえ」
理由は分かっていたが、伝えることは出来ない。
本当は自分でも気付かないままでいられれば良かったのに。
ウルキオラの事を最初はとても恐ろしいと思っていた、残忍で冷たい男だと。
でも今は、この男の優しさを信じたいと思っている。不思議なことに。
この虚園で実質ウルキオラに頼りきっている間に、少しずつ近づいていくうちに、織姫の中にあった感情は形を変えていたらしい。
ああ、私はこの人が好きなんだ。
それは黒崎一護に向けるものとも、兄に向けるものとも、
現世の友人や死神である仲間に向けるものとも少し違ったけれど。
自分がとてつもないお人好しと言われるのはこういうところかもしれない。
でも、人は優しいのだと信じることを止めたくはなかった。
そして今は、この人が慎重に隠し持つ小さな柔らかい部分に近くで触れてみたかったんだ。
そのほのかな期待は今、断ち切られた。
身体を溶け合うほどに近づきながら、この人はあまりにも遠すぎる。
黒崎君とは対極にいる人。
まるで闇の中に置かれた小さな白い小石。
今も月である主の意思を受けてそのままに動いているに過ぎない。
可哀相な、人。
伸ばした腕で彼の頭を掻き抱いた。
目の下から伸びる線に沿って舌を這わせる。
首筋に吸い付いても痕はうっすらとしか残らない。
まるで何事もないかのように。
この睦みあいも淡いものだと知らされる。
私達は影だから。
あなたは月の下に生まれて、私は太陽の下に生まれた。
だから闇の前では溶けて消えるしかないのかもしれない。
もう一度、背筋を駆け抜けていく白い光の中で、二人で溶けてしまえばいいと思った。
織姫は一度昇り詰めたが、ウルキオラはまだ彼女を解放しようとはしなかった。
痙攣する身体を押し倒し、彼女の覚醒を待たずに突き込む。
何故だ、何故、こんなにも暖かい?
組み敷いた少女の身体をつぶさに観察しようとする。
だが今の感覚の中では全てが取り止めもなくて曖昧で、集中することが出来ない。
「…る、キオラさあん、も…ぅ、らめえっ」
意識を取り戻した織姫が哀願する。が、その願いには頭を振って拒否する。
「俺は、まだだ」
もっと深く入り込もうと細い脚を肩に担ぎ上げる。
「いやぁ、らめですからぁーっ!」
高く啼いて再び気を失う少女の身体を暫く突き上げ続けて、漸くウルキオラは自身の熱を放出した。
「うっ…」
結合部をどろりと流れる濁液に彼は戸惑う。
虚にも、精があったのか。
無意識に抱きしめていた織姫を放すと、力なくぐったりと転がる。
体中にウルキオラが付けた吸い痕や引掻き傷が色も鮮やかに浮いている。
長い睫を震わせて、織姫が薄く目を開いた。
ぱちぱちぱちと乾いた拍手が響く。
「おめでとう、二人とも上手に出来たね。やあ、どうだいウルキオラ。織姫は名器だろう?」
「はい、存外…」
息を整えた男はいつもと全く変わらない調子で答える。
存外、何なのだ。少し悔しくなる。
「ウルキオラ、これからはお前も使っていいよ。」
藍染はそう言った。まるで玩具の貸し出しだ、とぼんやりと織姫は思う。
私はどこまで行っても道具なんだ。でもそれで守れる命があるなら、甘んじて道具でいよう。
…ごめん、黒崎君。
「さて、代わろうか。」
膝の上のメノリを払い落として藍染が玉座を離れた。反射的にウルキオラは寝台から下がる。
残された織姫は狼狽して縋るようにウルキオラを見やったが、彼はその目線を受け取ろうとはしなかった。
手早く脱いだままだった死破装束を身につける。
「あ…藍染様!?」
織姫の声を遮る様にその白い裸体に藍染が覆いかぶさる。
「私がまだ、楽しみ足りないのでね。」
不満を溜めに溜めた顔のロリとメノリが無言で部屋を出て行く。
ウルキオラも後に続くギンに引かれるように二人を残し下がった。
織姫のか細い嬌声から、助けを求め伸ばす白い小さな手から、ウルキオラは擦り抜けて扉を閉めた。
「クソッタレ、あの雌豚!調子こいてンじゃないわよ!後で絶対、締め上げてやンわ!」
「ロリ、そういう事は誰も聞いてないとこで言うモンよ!」
糞カマトトだの化け乳女だのと散々にぶちぶち言いながらロリとメノリが去っていく。
「女の嫉妬は怖いなあ」
ニコニコしながら見送ったギンがふとウルキオラを見た。
「女の子ちゅうんはな、独りにしといたらアカンねん。大事にせんで放っとくとおっかな〜い化けモンになってまうでな。藍染さんの言葉、聞いたやろ?ちゃんと可愛がってやりぃ。」
にいっと口角を上げる。次にその笑みを消すとウルキオラの瞳を指差した。
「はよう壊してしまいやそんなモン。自分、独りで持つには重過ぎやろ。」
ギンも立ち去り、誰もいなくなった廊下でウルキオラは立ち尽くす。
特別、何があったわけでもない。これから一刻もすればまたいつも通り織姫を迎えにいかねばなるまい。
全ては藍染様の意思に沿って動き、何の不足もなく流れていく。
それなのに自分の芯を捩る様なこの感覚は何だろう。
取り返しのつかない事をしたような後ろめたさは何故来るのか。ウルキオラはもう一度自分が来た方向を振り返った。
井上、織姫。
もう一度あの扉が開かれるまでの時間が無限にすら感じられる。
抉り出した眼球を掌中で砕くまでの刹那にそんな事を思った。
翡翠の玉が粉々に砕け散った後も、ウルキオラは握り締めた拳を暫く開くことが出来なかった。
完です。
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