ウルキオラ・シファーは珍しく戸惑っている。
背後では監視下に置いている少女、井上織姫が何やら奇怪な動きを一生懸命繰り返している。
織姫にしてみれば、虚園でも体が鈍らないようにしなきゃ!と運動することを思いついたところで手軽に出来るのがラジオ体操なので、小学校の思い出を頼りにえっちらおっちら身体を動かしているところなのだが。
(う〜ん、やっぱりこの格好ってちょっと動きずらいよねえ〜)
身体にフィットする上着だけでも脱いでしまおうかと思ったが、目の前での脱衣ショーに流石に焦ったウルキオラに全力で止められた。
破面の中でも無感動&無感情で通してきたウルキオラだが、なぜかこの少女には妙に乱されてしまう。悪意や敵意を向けられるのには慣れているし、対処の仕方も心得ている。だが、この娘の場合は無邪気で今までこんな者は破面は勿論、人間でも死神でも出会った事が無い。
「あのー、ウルキオラさんも一緒にいかがですかー?」
背中に掛けられる声からは警戒心も怯えも微塵も感じられない。
自分はそこまで舐められてるのかと思えば腹も立つ。
むすっと黙っていると、とてとてと織姫が近づいてきてウルキオラの腕を取った。くいくいと引き上げ、立たせようとする。
「少しだけでいいですから、試しにやってみません?」
にっこり笑った顔は何の影も無い。額にうっすらと汗が光っている。
なんとなく毒気を抜かれるままに織姫と向かい合わせで立たされる。
「簡単ですよーまずは脚を開いて、腕をこうやって上げてね、」
ラジオたいそー第一ーと、織姫は先生にでもなったつもりで一生懸命にウルキオラにラジオ体操の動きを教える。ウルキオラはやっぱりなんとなく従って動きを真似してみる。何で人間はこんなことをするのだろうと頭の中はハテナでいっぱいなのだが、
「そうそう、上手上手♪」
こうも晴れやかに微笑まれるとそう邪険にすることも出来ないのだ。
(それにしても、)
一生懸命に飛んだり跳ねたり身体を伸ばす織姫を横目にこっそりとウルキオラは嘆息する。まともに見ていることがどうしても出来ない。本当は一心にまじめそのものでほんのり上気した表情や、息を切らす唇や、ぱらぱらと散らばる長い髪を見つめていたい。
だが、運動のついでにゆさゆさ揺れる大きな胸が気になって直視をためらってしまうのだ。
(やっぱり…変な女だ)
自分の中で持て余す不可思議な感情は、何も持たず生まれたウルキオラの中でぐるぐると渦巻いている。だが少女の存在も含めてそれは決して不快ではない。
なにやら口ずさむ織姫の声を心地よく聞きながら、ウルキオラはそっと目を閉じた。
一方、宮殿の奥で藍染惣右介がでかい声を上げていた。
「あーーーバカ、ウルキオラ!しっかり織姫ちゃんのおっぱい映してくれなきゃあ!」
「藍染さん、あんたやっぱおもろいおひとやわあ♪」
扉越しにロリとメノリがそれを聞いて嫉妬心にガソリン注いでいたとさ。
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