「ザエルアポロ」
その声は遥か高みから降りてくる。
呼ばれた男、第九刀ザエルアポロ・グランツは自らに言い渡されたその命令に対し、
優雅な一礼で答えてみせた。そう、「Si」と。
「藍染様も面白い注文をされる方だ。アイコラの意味は分かったがいい被写体がいない」
ザエルアポロは眼鏡に手を遣り考え込んだ。
彼が受けた命令はこうだった。
「やー、何か最近暇でしょ?何か面白いことないかなぁって思ってさ。ホラ!ザエルアポロって器用じゃん?
アイコラ頼みたいんだよね〜アイコラ!ほら、こういうヤツ!」
と言って上から紙飛行機で飛来した「こういうヤツ」を見てみる。
何のことはない、女の裸だ。
「ヌード写真というワケでしょうか?」
「ヌードとは厳密に言うと違うんだよ。その写真、頭の持ち主と体の持ち主は別々なんだ」
そこまで聞いて、彼は藍染をなかなか高尚な趣味の持ち主だと理解した。
ようは自分の理想の人間を作る為に、パーツをバラバラに分解して繋ぎ合わせろという話なのだ。
彼は興奮を抑えきれずに一礼した。「はい」の答えをもってして。
「藍染隊長さん?」
「なんだい、ギン?」
「絶対あのコ勘違いしてると思うんですわ」
「勘違い?何をだい?」
「あのコ、アイコラが写真同士の継ぎ接ぎって理解してないですわ、きっと」
「…まさか?」
「根っからのマッドサイエンティストですもんな、その辺のコ切り刻んで繋げて持って来はると思います」
「大変だぁああああああ」
「やぁ、売女」
最初に声を掛けたのはメノリだった。こいつは売女であるからか、なかなかいい素材を持っている。
こいつの体は何かに使えそうだ。
「藍染様が君を必要としていらっしゃる。どうだい、君もアイコラにならないか?」
「はぁ?」
相変わらず頭にくる喋り方の女だ。こんなのを買う男の気が知れない。
まてよ?この女は『ツンデレ』というやつなのかも知れない。
藍染様の現世語講座で聞いている。普段はツンツンしているが、恋人同士二人きりになると急にデレデレし出すと言う
人格障害の一つらしい。
「だから!アイコラだよアイコラ!」
「何よ、アイコラって」
そこでザエルアポロは彼なりの解釈を加えたアイコラ論を彼女に聞かせてみせた。
「ゲ、冗談じゃないわ。藍染様もご乱心なのかしら」
「だが僕は藍染様にアイコラを作れと言う指令を受けたんだ。今更断るわけにはいかない」
「でも私はバラバラになるのは御免よ。…そうだわ」
「何だ?」
「あの井上織姫とかいう女なら、現世の人間だったっていうし、アイコラの詳しい話を知っているんじゃない?」
彼は珍しくこの女の意見に同意を示した。
いくらカスとは言え、彼等の同胞たる虚の女どもを惨殺して縫い合わせることを藍染様は望むだろうか?
ザエルアポロは女が住まうウルキオラの離宮まで向かっていった。
離宮に着くと、ウルキオラが不快な面持ちで立っていた。こいつの存在自体が不快なのは今は置いておく。
「やぁ、ウルキオラ。藍染様に頼まれごとがあってね。それで君のペット君にお話が聞きたいんだ」
最初彼は「帰れ」だけを壊れた玩具のように繰り返していたが、藍染様の命令の件を聞くと、「付いて来い」とだけ言い、
女の所で案内しだした。
井上織姫は少し病的に痩せていたが、こちらを見て怪訝な表情を作ることは出来たようで、僕を見るなり眉をしかめた。
「君に聞きたいことがあるんだ。単刀直入に言おう。アイコラってなんだい?」
「アイコラ…ですか?」
その後、井上織姫はアイコラについて自身が持つ知識を全て話してくれた。
どうやら僕は大きな間違いをしていたらしい。
アイコラというのは現実に生物をぶった切って繋ぐのでは無く、写真という媒体を通して行うものらしい。
研究者として一皮向けた僕は大急ぎで研究室に篭り、一枚のアイコラを完成させた。
遥か高みの椅子に腰掛ける我らが神、神が所望したそれを、ザエルアポロはこの日、献上した。
「藍染様、こちらが望まれたアイコラです。虚の穴を大量に増やしてみたのですか…如何でしょう?」
数秒後、ザエルアポロの眼鏡はグシャリという鈍い音と共に彼の顔面へめり込んだ。
先日の茶会で癒えない鼻の骨をもう一度骨折したのを自身の薄れ行く意識の中確認し、そして、殴られている理不尽さに疑問を感じながら。
「うわーエグっ!エグいわぁ〜」
彼の腹心の部下がニヤニヤと笑いながら見る写真、藍染は部下と写真を交互に睨みつけた。
「技術はあると思ったから彼にしたんだ。でも性癖は異常極まりなかったようだ」
「一時期流行ましたね、蓮画像www」
それは一時ネットを賑わせたグロ画像の一種、「蓮」と酷似していた。
とある女の虚の全身が、虚の穴だらけになっているものだったのだ。
それを見せながらザエルアポロは言ったものだった。
「これだけ穴あきなのですから、何処にだって挿れ放題ですよ!正直僕も…興奮しています」と。
以上。
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