お暑うございます・・・
本稿に取り組んでいる現在、北東北はまだ梅雨明けしておらず、だらだらと雨日が続いています。すでに梅雨明けした関東以西では猛暑が襲い掛かり、中部地方を中心に酷暑日となっております。酷暑日とは最高気温が40度以上の日で今年の4月から運用が始まりましたが、日本気象協会では4年前から運用していたそうです。昭和の時代は夏日(最高気温が25度以上)・真夏日(最高気温が30度以上)、また病的な「暑気あたり」を日射病・熱射病と言っておりましたが、2000年からは熱中症という病態が定義され、また2007年には猛暑日(最高気温が35度以上)の区分ができました。1967年より使用された真夏日から猛暑日の登場までは40年要しましたが、猛暑日から酷暑日まではおよそ20年と猛暑日の区分新設までのおよそ半分しか経っていません。こう見ると半世紀余りで急速に気候変動が進んでいることがわかります。梅雨明けしていない今でも、外来で患者さん方が口々に「今年の暑さは尋常じゃない・・・」とおっしゃっております。慣例で朝の涼しいうちに一仕事・・・ってしているうちに、自覚なく熱中症に至っていることも少なくありません。私たちが心掛けるのは「暑さから自分の身を守る」・・・そのためには①こまめな水分摂取、②エアコン使用を躊躇しない、と少なくともこの2点は行うようしてください。
さて年度も替わり三分の一が過ぎましたが、子宮頸がんワクチンについて、昨年度まではキャッチアップ接種もあり駆け込み需要?のためか、それ以前と比べ多くの方が接種に来院されました。当市では昨年度の卒業生にワクチン接種勧奨のパンフレット等を配布するなど、接種率向上に努めていましたが、当院に限って言いますと新年度に入って接種に来院された方は1名しかおりません。ワクチン接種の重要性や定期接種の経済的な利点等をキャッチアップ接種の時期には多くのメディアに取り上げられておりましたが、それが過ぎればまた「平常運転」になってしまいました。祭りが過ぎればそんなもんか・・・でも祭りのままにしておくわけにはいけません、だって健康や命に関することですからね。
先日私たち産婦人科医が待ち望んでいたデータが、非常にネームバリューのあるLancetという雑誌に掲載されました。それは英国の子宮頸がんワクチン接種プログラムにおいて子宮頸がん死亡ゼロ世代を認めたという報告です。それまで子宮頸がんワクチンの効果については、子宮頸がんの発症率の低下に関して種々の報告はありましたが、死亡率との関連についての報告は初めてで、それも結果として死亡数ゼロという刮目すべき結果でした。
詳しく見ますと英国では2008年から12~13歳を対象にした定期接種プログラムが導入され、2010年までは接種機会を逃した14~18歳を対象とするキャッチアップ接種も実施されています。その結果、2020~2024年の5年間で20~24歳(接種プログラムから約90%が少なくとも1回は接種を受けていると想定される世代)の子宮頸がんによる死亡は全くありませんでした。過去の死亡率を基に予想される死亡数23.1人と比べると、死亡率が100%低下した計算になります。一方、接種率が平均24%と低かった世代では、20~24歳の時期に27人、25~29歳に73人、30~34歳には131人が子宮頸がんで死亡していました。報告者は「接種率の高さが死亡率の大幅な低下と関連することを示す証拠であり、世界中の若い世代で接種率向上に努めるべき」と締めていますが、正直私自身これほど明確なデータが出るとは想定しておりませんでした。だからこそこれからの子宮頸がんワクチン接種の勧奨に勇気づけられましたし、お読みいただいている皆さまもご納得していただけるのではないでしょうか?
同時期に発表された別の論文では、2歳未満の基礎疾患のない乳児でも、RSウイルス感染があると、ICU入室リスクが3倍に増加し、人工呼吸器装着率も高く、重症の臨床経過を示す率も高いと報告されていました。乳幼児のRSウイルス感染症は基礎疾患があれば重症化するとは言われていましたが、今回健常児でも重症化することが改めて示されました。子宮頸がんワクチンも、妊婦に接種するRSウイルスワクチンも一部のSNSなどにおいて漠然として明らかな理由もなく否定しているものがありますが、皆様には正確な情報を得たうえで冷静に判断し、適切に対応していただくことを希望します(2026.8.1)。