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院長のカプリチョーザ

 3月になりました。

 先月はバレンタインデーというイベントがありました。この年になりましても、義理とはいえ近しい方からチョコレートをいただくのはうれしいものです。近年はバレンタインよりハロウィンの方が、市場規模が大きくなっているとも言われており、この現象も少子化とリンクしていると分析している方もおられます。
 50代も半ばを過ぎても、チョコレートは好きなものです。チョコレートはもちろん、洋菓子すべてが好きなのですが、40歳を超えるようになって和菓子の魅力にも取りつかれまして・・・桜はまだまだなのですが、最近は店頭に桜餅も並びだし、垂涎のまなざしで眺めております(苦笑。菓子はもちろん料理も和食が好きなので、たまにある東京の学会出張では、「江戸前」の店々を食べ歩くのも楽しみにしています(もちろん勉強もしてきます・・・)。

 ある時無性に甘味が欲しくなることが、皆さんにはありませんか?洋生菓子の甘さに包まれたい・・・でも洋生がない時、和菓子では代償が利くかもしれませんが、なんぼ好きだといってもその気分の時にお寿司なんかで替えは利きませんよね?むしろ輪をかけてさらに甘味が欲しくなったりしかねません。

 さて・・・近日中に子宮筋腫の新しい治療薬が販売されるとのインフォメーションがありました。ご存知のように子宮筋腫は子宮にできる「こぶ」で、それがあるために経血が増量する「過多月経」から「貧血」をきたしたり、筋腫自体が増大すると周囲を圧迫するため頻尿や腰痛などの症状を引き起こしたりします。月経が来ている間、女性ホルモンのエストロゲンを「えさ」として筋腫は増加・増大していきますので、症状が重くなってくるようであれば治療しないといけません。平成に入る少し前までは子宮筋腫の治療イコール手術療法でしたが、それ以降子宮筋腫に対する薬物療法が導入され、はじめは1日3回の点鼻薬でしたが、今は月1回の注射が主流となっています。手術と異なり、できてしまった筋腫をなくすることにはできませんが、「えさ」となるエストロゲンの分泌を抑えることによって筋腫の体積を縮小し、過多月経や筋腫による圧迫症状を改善することができます。

 薬剤が効果を発揮するには、その薬剤が効果を示すための「スイッチを押す」必要があります。この「スイッチ」を「受容体(レセプター)」といいます。筋腫発育を助長する卵巣からのエストロゲンは上流をたどっていくと、脳の視床下部から出るGnRH(精腺刺激ホルモン放出ホルモン)が、下垂体にあるGnRH受容体に結合して(=スイッチを押して)分泌が増加します。従来の点鼻薬や注射といった筋腫の治療薬は「GnRHアゴニスト」といってGnRHに代わってGnRH受容体に結合しエストロゲン分泌のシグナルを送るのですが、その指令が長続きしすぎると受容体が減少して、結果的にエストロゲン分泌は減少し、月経が停止し筋腫の発育も抑制されるという仕組みです。「結果的に」と書きましたが、その「結果に」至るまでに一時的にエストロゲン分泌量が上昇する(フレアアップといいます)ために性器出血が増量するなど子宮筋腫の症状が一時的に増悪することがありました。「洋生が食べたいのに好物のお寿司を出されても気持ちはげんなりして(=受容体の減少)、甘味を欲する気持ちはさらに強まる(=フレアアップ)」という感じでしょうか?

 一方新しく発売される治療薬は「GnRHアンタゴニスト」といってGnRHと競ってGnRH受容体に結合するのですが、結合してもエストロゲン分泌のシグナルは発しないので、フレアアップすることなく速やかにエストロゲン濃度が低下し治療効果を発揮します。「洋菓子食べたいけど、手近な和菓子で満足した」という感じでしょう。

「「GnRHアゴニスト」やら「GnRHアンタゴニスト」やら似た言葉だし、結局はエストロゲン分泌を下げ筋腫に効果があるから、似たり寄ったりでしょ?」と思われるかもしれません。でも日常臨床では非常に重い過多月経をきたす粘膜下筋腫には、フレアアップを恐れ「GnRHアゴニスト」による治療をためらう場面も少なからずありました。それゆえフレアアップのない新薬は粘膜下筋腫の患者さんには朗報ですし、治療戦略上、戦う「武器」は数が多いことに越したことはありませんしね(2019.3.1)。

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