3月 弥生です。
先月上旬までは強寒波の日々が続き、しばらくは4時台に起床して除雪をはじめ朝の準備をしないと余裕がありませんでしたが、でも結局は例年通り?小正月行事を迎える中旬には一気に気温が上がってアスファルトが見えるくらい融雪していきました。1月は開院以来過去一番の除雪費用を計上したことを考えると、毎年のことですが結局溶けてなくなるものに費用をもっていかれることに、やるせなくない思いでいっぱいです(でも除雪しないと仕事ができませんから・・・)。
さて1か月前の2月2日から、緊急避妊薬(モーニングアフターピル)が薬局・薬店で直接購入できるようになりました。緊急避妊薬とはUPSI(Unprotected
Sexual Intercourse)といって避妊なし、もしくは避妊が不十分だった性交が行われたとき、妊娠を回避したい場合に服薬する薬剤です。現在流通している薬剤は性交後72時間以内に服用することより、約85%で妊娠を回避することができます。あらゆる場面で私は何回も申し上げるのですが、この薬はあくまで妊娠を回避する「避妊薬」で、成立した妊娠を中断する「中絶薬」では決してありません。これまではクリニックでの対面受診やオンライン診療で医師の処方がなければ入手できませんでしたが、今後は薬局で購入することが可能になりました。しかし薬局・薬店で販売されるからと言って胃薬や湿布と同じような感覚で購入できるお薬ではありません。今回の緊急避妊薬は「要指導医薬品(スイッチOCT=本年1月の本稿を参照してください)」というカテゴリーに分類されます。
つまり「要指導医薬品」の「緊急避妊薬」を薬局・薬店で販売する場合、販売に携わる薬剤師は、専門の研修を受講し修了している必要があります。また薬局・薬店のスペックとしても購入者のプライバシーが確保されるような環境を整える必要があります。また代理購入は不可で、購入者が対面で購入し、購入後ただちに薬剤師の面前で服用しなければいけません。服用したら産婦人科への受診勧奨や妊娠検査薬での確認を求めておりますし、服用者の環境によっては産婦人科医やワンストップ支援センターへの連携が求められています。緊急避妊薬が販売可能な薬局・薬店は厚労省のHPに掲載され随時更新されています(「要指導医薬品である緊急避妊薬の販売が可能な薬局等の一覧」
https://www.mhlw.go.jp/stf/kinnkyuuhininnyaku_00005.html)。また薬局・薬店での緊急避妊薬購入の際は、スムーズに販売していただけるよう、事前にチェックリストをダウンロードして持参するのも良いでしょう(https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/content/norlevo_checksheet_jp.pdf)。
緊急避妊薬が薬局・薬店で販売されることを産婦人科医はどう思っているのでしょう?国際的な「性と生殖に関する自己決定権:Sexual Reproductive
Health & Rights」の裾野が広がると考える方もおりますし、経営面でのデメリットを訴える方もいらっしゃいます。でも薬局・薬店から見ると、今まで販売していた胃薬などがコンビニでも購入できるようになっており、同じ流れとみる向きも多いでしょう。私の個人的な思いとしては、非常に不躾な例えかもしれませんが「スマホをキャリアで買うか?家電量販店などキャリア以外の店舗で買うか?」というのに似ているのではないかと思っています。キャリアで購入する人はそこの電波を利用するので、スタッフも対応に熟知している。アフターもきめ細かい、そのキャリアに応じたオプションもある・・・でも人によっては料金が割高、対応が過剰等の理由で回避する人もいるでしょう。家電量販店で購入する人は、ポイントやオプション等の付加価値がついてより廉価で購入できた感があり、キャリアよりも短い時間で購入することも可能でしょう。でもキャリアと同等のオプションやサービスかどうか疑問を持つ人もいらっしゃると思います。薬局・薬店での緊急避妊薬の購入は確かに需要者にとってかなりの門戸が広がることになりました。でも薬剤師さんにとってはあまたある薬剤のうち、専門性の高い薬剤の1つですので、関連した相談をしても納得した解決が得られるかどうかはわかりません。医療機関での処方は時間もかかりますし薬局・薬店に比べると割高です。でもお薬に加え関連したお悩みも同時に解消できるかもしれません。選択肢が増えることによって、どの選択が自分に最善なのか?・・・今後は自分のライフスタイルに照らし合わせて選択することができるのです(2026.3.1)。