6月・・・水無月です
約10年前の本稿で、水無月についてお話ししました。水無月の「無」は「の」という意味で、「水の月」すなわち田んぼに水を入れる月という意味だそうです。この時期の景色は、日中は田んぼを囲む新緑が映え、また夜になると水を張った田んぼが鏡面のように景色に浮かび上がる・・・秋田に住んでいて、桜の時期もいいのですが、夜の冷え込みも収まり夏一歩手前のこの時期の景色が一番私的にはお気に入りです。
さて先日医療系の情報サイトを見ていましたら、「米国消化器病学会が痔の診断と治療に関するベストプラクティス(=最善の対処方法)を公表」とありました。私たちは「畳文化で和式便器」のため、日本人には痔で悩んでいる方が多いと漠然と思っているのではないでしょうか?確かに日本人の痔疾患の有病率は約3人に一人と言われており、虫歯に次いで多い疾患です。しかし世界を見ると、ドイツは70%、アメリカに至っては80%となっており、日本人より高率であるのは意外かもしれません。国内で見ると痔の罹患率は3:2で男性が多く、男女ともいぼ痔(痔核)が多く、次いで男性は痔瘻、女性は切れ痔(裂肛)が多いとのことです。でも最近は疾患のカミングアウトの傾向を考えると、女性の有病率は決して低くはないとも言われています。
海外の報告では妊娠初期から産後1か月の間に約44%が痔になっており妊娠中期~後期に限ってみると、85%の妊婦がいぼ痔(痔核)を発症したとのデータも出ています。このデータからもわかるように、妊婦さんは痔を発症するリスクが高いことが示されています。ではなぜ妊婦さんは痔になりやすいのでしょう?まずその原因として一番大きいのは便通異常、つまり便秘です。妊婦さんの便秘の原因について、2007年11月の本稿でお話ししたことを再掲します。①妊娠によるホルモンの変化・・・卵巣から分泌されるプロゲステロンという黄体ホルモンが腸管の動きを弱くさせ便通の悪さに拍車をかける。②妊娠子宮の増大が腸管の動きを妨げる。③妊娠する前に比べてからだを動かすことが少なくなる、ことが挙げられています。さらに前述したプロゲステロンは粘膜を充血する作用もあり、そこに静脈還流の停滞によるうっ血・・・つまり心臓から出た血液が心臓に戻る際(特に下半身)、大きくなった妊娠子宮が大血管を圧迫して血液の戻りを邪魔して滞る=うっ血が生じる・・・すると充血したデリケートな肛門粘膜にうっ血が生じると、容易にいぼ痔(痔核)を誘発するということが想定されます。
便通改善には十分な食物繊維の摂取が有用であることは、皆さんもご理解いただいていることと思います。前述した報告によると、たんぱく質摂取が重視されるあまり、牛・豚などの赤肉に偏ると、肉には食物繊維が含まれていないため食物繊維が不足して便秘を招き、さらにいきみによって痔の悪化を引き起こす可能性が危惧されています。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人男性で1日20g以上、女性では1日18g以上の食物繊維の摂取が目標量として設定されていますが、米国同様わが国でも目標量に到達していないようです。
この報告では食事と共に生活習慣の注意点を挙げていますが、その一つそして「トイレスクロール」を挙げています。耳慣れない言葉ですが、要は「トイレ利用時のスマホの使用」です。米国でもトイレを、メール確認やソーシャルメディア閲覧のための静かな空間として利用している。しかし便座に長時間座ることで、肛門周囲の血管に圧がかかるため、「トイレスクロール」は痔の大きなリスク因子となっている。緩和の1つとして「トイレの座席時間は5分以内とし、排便しきれない場合は一度立ち上がり再度試みる」と提案しています。
排便を促す姿勢というのもあり、背骨と大腿骨の角度が35度だと、良い排便姿勢と言われています。その角度をつけるためには足底の位置を高くするのですが、「トイレスツール」と言って専用の足台も販売されています。それを使用することにより、軽く足を抱え込むくらいの角度がついて、適度な排便を促す姿勢になるそうです。経験的に妊娠中にできた痔はほとんどが産後軽快しますが、妊娠を繰り返すことで再燃・悪化する例が多く、また妊娠していなくとも排便習慣が悪化することで、容易に再燃・悪化します。食事はもちろん、「トイレスクロールの回避」や「トイレスツールの利用」による排便環境の改善で、「大痔主にならない」配慮をなさってください(2026.6.1)。