バナー
院長のカプリチョーザ

みなさん こんにちは

 先月も半ばを過ぎると、一気に夏が来た感じとなりました。しかしながら前半の寒暖差のせいでしょうか、稲の生育が例年に比べ遅れがちとのことです。「令和の米騒動」のなか、あまり耳あたりの良い情報ではありません。このようななか、当地では熊の出没が活発化して、市役所からの注意報も日に5件は当たり前になってきています。人里に降りてくるメリットを知ってしまったんでしょうか・・・言葉も通じないので、こちらが気を付けるしかありませんね。

 さて一気に暑くなるとてきめんに睡眠や食欲へ反映され、その結果体調にも大きな影響を及ぼします。こと睡眠に関しますと、日本の多湿という気候風土は、気温が上昇してもそれに発汗が伴わないという悪い意味での「特徴」があります。人口の多い地域では「ヒートアイランド現象」と言って日中の日射熱が建物や舗装に蓄熱され、夜間でも高めの気温が続きます。従いまして十分な睡眠を確保するために適度にエアコンを使用し、睡眠環境を整える必要があります。また十分な水分補給が裏目に出て「水っ腹」になりかねませんし暑気負けして食が進まないと、どうしてもあっさりしたもので済ます事になりがちです。

 どこも病気ではない、検査をしても異常もない・・・でもだるい・疲れやすい・頭がぼーっとする・お腹が張る・動悸・息切れする・・・などなど対応する疾患がない漠然とした症状の訴えを「不定愁訴」といいます。従来までの研究で、不定愁訴は心理社会的ストレスや不健康な精神状態が原因となるのに加え、生活リズムの崩れ、睡眠の質の低下、朝食などの欠食、偏食など、不健康なライフスタイルに関連する様々な背景要因とも関連が指摘されています。

 先日国内の20代女性における食品や栄養素の摂取と不定愁訴に関し、20代女性においては「魚食(魚介類の摂取)が多いものは不定愁訴が低い」という報告がありました。栄養素で見ても食品での結果と同じく、魚介類に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、ビタミンD、ビタミンB12の摂取量が多いものは不定愁訴が低いという結果でした。
具体的な数値をみていきましょう。DHAでみますと理想的な1日摂取量は1~1.5gと言われています。焼きさんまであれば1尾、赤身のマグロの刺身であれば5切(約50g)くらいの量です。20代女性の1日の魚介類摂取量の平均は41.6gと目標量を下回っており、不定愁訴スコアが低い群では平均摂取量が53.8gに対して、スコアが高い群では35.9gと有意に摂取量が少ない結果となりました。さらにこの「魚介類摂取が多いと不定愁訴が少ない」という傾向は、うつ病評価スケール用いた調査でも同じであり、「魚介類摂取が多いとうつ病が少ない」結果となっています。この2つの調査のデータを組み合わせて評価した結果、「不定愁訴もうつ病評価スコアも共に低い群」では1日魚介摂取量が53.8gに対して、「不定愁訴もうつ病評価スコアも共に高い群」では12.8gと約4分の1と有意に少ない魚介摂取量となってました。

 お分かりのよう日本は「島国」ですので、古来より海の幸には恵まれてまいりました。しかしこの様な結果を見るまで若年女性の魚介類摂取量がこれほど低値とは思いませんでした。今では栄養を補うため数多くのサプリメントが販売され、またメンタルなトラブルに対しても良い薬が数多く出てきています。一方報道では「獲れる魚が獲れない」「獲れない魚が獲れる」「漁業に携わる人員の減少に歯止めがきかない」など「日本の漁業の危機」が叫ばれています。日本の漁業に対し私たちがまずできることは消費量をあげることですが、それはそのまま「若年女性のメンタル・ステータスを改善させる」事に直結するといえましょう。本稿をお読みいただいて今一度「魚食」について考えて頂けると幸いです。(今回のカプリの参考文献はこちら:日本の若い女性における原因不明の愁訴とうつ病の程度は魚介類の摂取量と逆相関しているhttps://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11990306/)(2025.7.1)。


直線上に配置
|戻る|