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院長のカプリチョーザ

暑い日が続いています。。。

 先月7月5日には、国内で大災害が起こるという「うわさ」が出ておりましたが、学生時代に「ノストラダムスの大予言」を刷り込まれ、何事もなく1999年7月を迎えた者としては、「あっ、そういう噂があったのね」程度で終わってしまいました。しかしトカラ列島を中心とした度重なる地震や一昨日の太平洋岸の津波警報に、言い難い不気味さや不安感が増しています。この不安感を十分踏まえ、常日頃から発災時に適切な行動がとれるよう「脳内シミュレーション」を行っておきましょう。

 先月中旬のニュースに2024年の人口動態統計が挙げられていました。それによると出生数について以前の本稿でもお話ししましたように68万6061人と1899年(明治32年)以降で過去最少を記録したのですが、その内訳を見ますと年齢別出生数において、20-24歳出生数4万2754人に対し、40-44歳が4万3463人で、40代前半の出生数が20代前半の出生数を初めて逆転しました。数字だけ見ると非常にショッキングなデータですが、少し頭をクーリングしてみてみましょう。

 そもそも年々少子化が進行していますので、20代前半と40代前半女性の母集団の数が全く異なります。2024年の総務省の報告書では、20-24歳の女性人口が277万人に対し、40-44歳の女性人口は362万人と1.3倍です。一方出生率を見ると20-24歳が0.0764に対し、40-44歳は0.0021と、やはり20-24歳の方が出生率は高いのです。でも女性人口と「掛け算」すると、人口の多い40歳代前半の出生数が多い結果となってしまいます。

 上で「20-24歳の方が出生率は高い」と書きましたが、これは40-44歳との比較であり、現在最も高い出生率の年代は30-34歳です。以前は25-29歳が出生率のピークでしたが、2005年からは30-34歳となっています。妊娠が好ましい身体的ピークは27歳と言われていますが、2005年というのはリーマンショックの数年前ですので、安定した妊娠・育児環境を考え妊娠を「先送り」しているのが反映され、それが今もなお続いているものと考えられます。

 先の参議院選挙では、少子化問題も取り上げている政党や候補者がおられました。生殖補助医療への補助・妊娠から出産までのより手厚い経済的支援といった「入口での支援」を謳っているところもあれば、若年妊娠・出産後の安定したキャリアパスの提示・育児への経済的支援など妊娠や育児といった「出口での支援」を謳っているところもありました。これらの施策が功を奏し、「赤ちゃん欲しいな」「もう一人(二人)いてもいいな」といった想いを多くの女性~願わくはより多くの若年女性~に持っていただくことになるといいなと私も思います。

 でも産婦人科医師として一つ危惧することがあります。それは「もし出生率や出生率が奇跡的に急峻にV字回復した時に、適切な産科医療を受けれるか?」ということです。少子高齢の流れで産婦人科医・小児科医のなり手が増えません。また出生数減少で分娩取り止めを行う医療施設が後を絶ちません。私が以前勤務していた病院も7年前に分娩取り扱いを止めました。私が赴任した時、スタッフの助産師はほとんど私より年上でしたので、多くの助産師が退職しています。分娩を休止すると病院でも欠員となった助産師の新規採用は行いません。お産について産科医は分娩に立ち合い、異常経過があれば速やかに対応するのが役目で、産気づいた妊婦さんが入院して、陣痛の間お世話して、分娩介助して、分娩後お部屋に戻るまでの一連に対処するのが助産師さんです。だから少子化が改善し分娩を休止した病院が再度分娩を再開するとなった時、単に産科医を招聘すれば済むという問題ではなく、分娩数に見合う十分な助産師さんが必要になります。いつの日か来るベビーラッシュ・・・ただその日のために昨今の「働き方改革」を踏まえ一定数の助産師や産婦人科医師を確保する・・・そんな「体力」は今の医療現場には全く残っていません。少子化を考える際、「産む人」を想うことはもちろん重要ですが、「産む環境」のこともセットにして是非とも考えて頂きたいものです(2025.8.1)。

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