みなさん、こんにちは
先月末には高市早苗さんが新しい総理大臣が選出されました。日本初の女性総理ですが、私自身そういう受け取りが薄い感があります。報道で見る高市さんの外見はチャーミングですが、女性が前面に出ていない印象を受けます。それは彼女の発言や行動力といった政治家としての姿勢もあるでしょうが、夫の連れ子さん3人の子育てをして4人のお孫さんを持ち、また現在病気で後遺症を持つ夫の介護も行っている一人の職業婦人としての「人間力」もあるのではと思っています。このような背景で二世議員でもない政治資金パーティーも行わないで男社会である政治の世界で初の女性総理になった高市さん・・・多くの国民が彼女に期待するのは至極当然かもしれません。
そんな自民党総裁選・内閣総理大臣指名選挙でメディアがにぎわっていた10月・・・ここ鹿角は連日クマの出没に明け暮れて11月を迎えています。秋田県ではクマの出没情報を提供するアプリ「クマダス」というのがあるのですが、これと別に鹿角市では市内のクマの出没情報がリアルタイムでメール配信されています。その数が先月では日に10件を超えることも珍しくなく、過去に経験のない1日に3件の人身事故の報告もありました。今年は全国的にも熊の目撃情報は増加し、一昨年と比べ今年は1万5千件余と倍以上に増えています。その背景としてはご存じでしょうが、常食の木の実の慢性的な不足に加え、里山の整備不足から人里に降りて餌をあさる「アーバンベア」の増加が背景にあります。非常に気になるのは、当市からの出没情報を見ると今年の特徴として「成獣1頭・子2頭」など、単独から親子での出没が多いことです。子熊が成長しアーバンベアとして人里に当たり前に降りてくるようになれば、さらに被害が増加することが危惧されます。
クマ被害のニュースでは「けがを負いましたが、命に別状はありませんでした」とよく聞きます。確かに「命に別状はない」ですが、その怪我は想像を絶するもので、一説には交通外傷に匹敵するエネルギー外傷ともいわれています。秋田大の報告によるとクマ外傷の受傷部位としては顔面が90%と最も多く、表層では眼球・鼻・耳がえぐられ、深部では顔面の粉砕骨折など多大な損傷を引き起こします。私も大学勤務時代に救急部へクマ外傷がヘリ搬送されてきたことがあり、つい先月も中核病院での休日応援にお邪魔した際にもクマ外傷が搬送されていましたが、両症例とも爪による外傷がとにかく汚く、ヘリ搬送例ではおよそ人間だと絶対にしないであろう顔面への外傷を今でも記憶しています。
突然クマに遭遇したら、どうすればいいのでしょう?秋田大学整形外科の研究で頭部を保護した受傷者に重症例はないことから、「うつ伏せになって両腕で頭部を抱える姿勢」が大怪我を回避するのに重要であることが示されました。先に述べたようにアーバンベアが増加している今、咄嗟にこのような適切な姿勢を取れるよう心掛けていることが大切です。
英語でクマは「bear」ですが、辞書を見ると動詞で「産む・運ぶ」という意味もあります。ネットでググってみますと、産む方の bear はゲルマン祖語の
beranan (運ぶ、産む)に由来しているそうです、一方、熊の bear はゲルマン祖語の bero (茶色)に由来しているという説や、小熊を運ぶ様子から「熊」って意味が追加されたという説もあります。
産婦人科的にみるとクマの妊娠は謎が多いものです。クマの発情期は5~6月の初夏で、人間は受精から着床まで約1週間ほどですが、クマは発情期に交尾しても受精卵が子宮の中を漂い、着床して妊娠が成立するのは秋になってからです。これを「着床遅延」といい体脂肪が20%を切ると着床できず、また出産数も雌熊の体脂肪に依存して1~4頭と変わるとのことです。そして寒中の冬眠の最中に400gほどの子熊を出産するのですが、小さく産むことで冬眠中の代謝の低下した状態において少ないミルク量で育てることができ、さらには小さいと外敵から守りやすいということが考えられています。
発情期に折角受精が成立しても、体脂肪が増えないと着床せず、また妊娠できたとしても十分体脂肪を蓄えないと寒中の冬眠時期に自分も子熊も生きていくことができません。秋の雌の体脂肪を増やす食行動は、「種の存続」のためには絶対条件と言えましょう。しかしながらこれ以上人里で行動されると今後の被害も図り知れないものになります。アーバンベアともなると、熊鈴を鳴らしても逃げるどころか近づいてくるという話もあります。生息地から里山の整備は当然として、人間目線にはなりますが生息地での個体数の適正な管理が求められると考えます(2025.11.1)。