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院長のカプリチョーザ

みなさん、こんにちは

 8月は猛暑日の連続と、頻繁に来襲する台風、また北海道では過去最速の初雪など、猫の目のような気候変動に追われた一か月でした。本県では金足農業高等学校が夏の甲子園大会で103年ぶりとなる決勝戦進出という快挙を成し遂げました。この夏を起点として、高校野球でも秋田の勢いをこれからも見せてほしいと思います。

 さて先日、不愉快なニュースが流れました。それは某私立医科大学が、女子学生や多浪生の入学を抑えるよう、作為的に入学試験で調整していたという事件です。学校運営の多くが税金で賄えられている国公立大学と異なり、私立大学は学費収入に負うところが大きいため、その学校独自の校風や個性に即した人材を合格させるための選抜を行う自由はあってもおかしくないと思います。しかしながら、その合否採用基準を隠したまま学生の募集をかけるのは、「後出しじゃんけん」となんら変わりません。医学部受験では入学まで浪人期間を重ねる方が少なくなく、現に私も浪人を経て入学しました。受験生の人生設計を揺るがすこのような事件が、もう二度とないよう再発防止を含め徹底的な原因究明をしていただきたいものです。

 自分が経験した分、浪人の話が先に進んでしまいましたが、今回の事件では女子学生の作為的な入学抑制もされておりました。私は秋田大学の15期生として1984年に入学しましたが、入学時の女子学生の数は102名中21名で、それまでで最多の女子数でした。そして時代は進み42期生である娘の学年では男女比がほぼ1:1までになっていました。この間女性の社会進出もありますが、入試制度もいろいろ変化して、試験による「一発評価」と同等に、高校在学中の評価も重視されてきました。そうなると男子よりもコツコツ勤しむ女子学生に「分」があり、事実学生時代を振り返っても講義室の前方に占めるのは女子学生が多く、定期試験も国家試験もそつなくパスしていった感があります。女子医学生は「真面目で努力家」のイメージがありますが、皆さんが思われているほど「ガリ勉」というわけでもなく、今よりももっと何もなかった秋田市で(苦笑)、彼女達なりに学生生活をエンジョイ?していたんじゃないかと思っています。同期の女性医師の約3分の一は外科系に進んだ点からみても、進路でも男性医師とそう変わらなかったかなと思っています。
 
 同期の5人に一人は女性といっても、私の研修医の時は医者の世界はまだまだ「男社会」でしたので、更衣室や当直室などもほとんど女性に配慮されていないものでした。しかし数が増えるとこのような「最低限のハード」については当然ですが改善しています。でも労働者の視点では、まだまだ女性医師の労働環境は良くありません。一番の問題は医師として研鑽を積む時期と、女性として出産~子育てをする時期とが大きくオーバーラップしていることです。前者に比重を置くと晩婚・少子化に拍車をかけますし、後者に比重を置くと医師としてのキャリアを生かせないままリタイアということになりかねません。日本産婦人科学会のデータでは2006年から2013年にかけて男性は11,797→11,061人とほぼ不変であるのに、女性は3,742→5,032人とほぼ1.5倍に増加しております。私も含めこれらの医師すべてがお産に携わっているわけではないので、女性も男性も仕事と家庭のバランス=ワーク・ライフ・バランスの均衡が保たれなければ、我が国の分娩取り扱いが危機的状況に陥ることでしょう。

 そのためワーク・ライフ・バランスについて、産婦人科としてもいろいろ対応が試みられています。他業種では当たり前の交替勤務制もその一つですし、東北のある総合病院の産婦人科では女性医師のキャリアパスを見据えて、お互いでバランスをとるよう勤務医全員が女性医師であるところもあります。また産婦人科に限らず秋田県では「秋田医師総合支援センター」で女性医師への育児支援やキャリア支援等の情報を提供しています。

 時代の流れで女性医師はこれからも増加していくことでしょう。でも旧態依然の対応では女性医師が能力を発揮する前に医師としてリタイアすることになりかねません。そうなると残った医師の負担が大きくなり、そのツケは患者さんへの診療に回る恐れがあります。医学・医療が発達した現在、一人で全部請け負う「先発完投型の医療」は医療そのものを疲弊されるだけになってしまいます。だからと言って入試で作為的な調整をするのではなく、ワーク・ライフ・バランスを見直し「医師の働き方改革」を行うことが、医療資源を生かしつつ安心・安全な医療を提供することになると考えます(2018.9.1)。



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