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院長のカプリチョーザ

未だ暑い日が続いています。。。

 海の町で生まれ育った私は、幼いころ「お盆過ぎたら危ないから海には入らないように・・・」と言われたものでした。「お盆」というスピリチュアルなイベントもあるのでしょうが、昔はお盆を過ぎると明らかに海水温が低くなるため、盛夏のつもりで海水浴すると、健康被害を与えかねませんでした。でも近年今年のように梅雨明けが遅れるようになると、お盆が過ぎても真夏日というのは珍しくありません。また今年は台風の発生がやけに早く、また多い印象があります。熊本地震直後、一時は台風の進路が被災地にかかるとの予報もでてましたが、良い意味で進路がずれて安堵しました。しかし一方で千葉県では豪雨のため死傷者が出る甚大な被害となりました。未だ地震の傷跡や浸水の被害の爪痕が残ったままであり、両県の皆様方には衷心よりお見舞い申しあげ、一日でも早い復興を願ってやみません。

 先月はお盆休みを頂き「山の日」の祝日もあったため、雨だれ状態でカレンダー通り診療を行っても1週間くらいのお休みを頂いた感覚でした。それだけでもないでしょうが、本稿をフルに埋めるテーマを見つけることができなかったため、産科関連で目についたトピックを2つほど紹介したいと思います。

 1. 座位時間の長い妊婦では産科疾患の発症リスクが増える(Adverse Pregnancy Outcomes and Sedentary Behavior, Light-Intensity Physical Activity, and Daily Steps.JAMA. 2026 Jul 14;336(2);135-143.)
 本邦では昔より、「妊娠したんだから無理するんじゃない」とか「妊娠中だからおとなしくしていなさい」と言われていました、でも一方で、マタニティービクスやマタニティー・スイミングといった妊娠中の運動の効用も言われています。もう20年近く前の本稿(2007.7.1)でも妊娠中の運動は体力の維持・向上に役立つだけでなく、ストレスからの解放等の精神面へのメリットもあるとお話ししました。今回紹介するアメリカからの報告では、座位という安静の姿勢が長くなると産科疾患のリスクが増大するという病的な面まで踏み込んでいるものでした。評価した産科疾患は妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病・切迫早産・子宮内胎児発育不全(傾向)の4疾患です。妊婦470人の1日平均の座位時間は10.1時間、軽度の身体活動の平均時間は4.6時間、1日歩数は6,783歩でした。前述した産科疾患の発生率は1日の座位時間が約7時間を下回るものでは19%でしたが、約10時間以上となると40%以上と2倍以上となっていました。また反対に1日当たりの軽度の身体活動の平均時間が7.3時間と長いものは、3時間以下と短いものに比べて上記4疾患の発生率は半減していました。1日の歩数を検討したところ、8,500歩以上歩いてる妊婦さんでは4,000歩も歩かない妊婦さんに比べ、上記4産科疾患の発症リスクが3分の2程度にまで低下していました。個人的には上記4疾患のうち、切迫早産では過剰の労作が、また子宮内胎児発育不全では母体の安静が必要と考えていました。しかしあくまでもこれらの疾患を予防する段階では長い座位時間はむしろリスクを上げる~それも倍ほど~ということは、刮目する結果でした。歩数に関しては、1日歩数の多い群の平均値は11,863歩であり、多い群での発症リスクは4割減でした。この報告から特にリスクのない妊婦では妊娠中でも一般の健康指標である1日1万歩歩行を実践することは、悪影響を及ぼすものではないと認識しました。

 2. 妊婦における陰核の潜在的な鎮痛機能(Potential analgesic function of the clitoris in pregnant women: A feasibility study. PloS one 20250101 Vol. 20)

 女性において性的刺激による「快」は、痛みの経路を用いて伝達するといわれており、そのためその「快」の感覚は「非嫌悪性疼痛」と考えられています。フランスからの報告ですが、32人の妊婦に対して分娩時の疼痛に、陰核(クリトリス)上方の恥骨部の靭帯へ振動装置(OVA)用いた自己マッサージを指導しました。その結果26名が計304回の疼痛に対してOVAを使用したところ、86.2%の高率で疼痛緩和が得られたとの報告でした。従来の指導では、妊娠中の性交渉によるオルガスムは子宮収縮を惹起するリスクがあるとお話ししていましたが、従来の呼吸法やハーブといった陣痛緩和の方法に比べ、この論文はデータが少ないながらも痛み刺激の経路や伝達を考えた疼痛緩和の可能性を示すものかもしれません。

 今回2つの報告を紹介しましたが、妊娠中の運動や性的刺激等、従来避けるべき忌むべきものが、年を経て好ましいことに再認識される・・・やはり知識のブラッシュアップには終わりがないものだと改めて認識したお盆休みでした(2026.9.1)。




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