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院長のカプリチョーザ

みなさん、こんにちは

 7月は本県が大雨の影響を被りましたが、先月は台風6・7号により沖縄県や島根県を中心とした西日本に大きな爪痕が残りました。「線状降水帯」という昭和の時代には耳にしなかった気象現象は、「数年に一度の大雨」とか「ひと月分の降雨が一日で」という形で、年に数回も国内の至る所で発生しています。これからの私たちは、このような「荒天」が当然起こるという前提で、災害対応や被災予防をしていかないといけない・・・そういう時代に生活していかないとならなくなったようです。

 さて夏休みに入るところから、今年度の性教育講座の日程調整の連絡が入ってきました。今年度から各学校で年齢に応じて性暴力等を取り扱う「いのちの安全教育」が始まりますので、性教育講座でのお話の内容を少し見直す必要も出てきました。医師が係る性教育事業が始まり20年以上経過し、性教育に熱心な都道府県として注目されることも多々あります。そうなると「あまりにも熱心な性教育が少子化の一因となっているのではないか?」というご意見も出てきます。そこで今回は「本県の性教育と少子化」をテーマにしたいと思います。



 グラフの折れ線は一生の間にひとりの女性(15~49歳)が生む子どもの数に相当する合計特殊出生率(赤:秋田県 黒:全国)、棒グラフは秋田県の出生数の年次推移を示しています。ご覧いただいてお分かりのように、出生数は右肩下がりで減少してはいますが、性教育開始後に加速度的に減少しているわけではありません。また性教育開始前後の合計特殊出生率をみても、全国と本県との間に乖離の拡大は認められていません。以上から本県の性教育が、少子化を加速しているとは言い難いと思われます。
それでも先日発表された母子保健統計の速報値(2022年分)では、合計特殊出生率は1.3を切り1.26となり、秋田県は1.18と全国40位でした(宮城県は1.09,東京都は1.04)。また人口千人に対する出生数の割合である出生率は全国6.3に対し秋田県は4.3と28年連続最下位であり、年間出生数も3,992人と前年比-343人で、とうとう4,000人を割ってしまいました。

 以上赤ちゃん側からみたデータですが、お母さん側からも見てみたいと思います。1990年代に秋田県で生まれた女児の総数は135,490人でしたが、1990年代生まれの20代女性人口は-69.5%の41,302人、また30代女性人口は-69.4%の41,465人でした。つまり1990年代に生まれた女児の3割程度しか県内に残らず、20~30歳代の生殖年齢においてはAターンもほとんどないということです(同じ年代のデータを鹿角市でみたところ、20代では2割ほどしか市内に残っていないという結果でした)。県外の転出先としては仙台や東京が考えられるのですが、残念ながら双方とも秋田県の合計特殊出生率より低いところなので、本県から転出したとしても日本全体として少子化の歯止めに寄与しているとは、これもまた考え難いことなのです。

 医師が行う性教育というと、どうしても性感染症や中絶・避妊という項目に傾きがちで学校側も授業で教えにくいこともあるため、それらに費やす時間が多くなりがちです。しかし女性のライフスタイルの変化から喫煙や加齢といった身体的不妊に加え、就労状況・収入状態・介護援助が関与する社会的不妊に陥るケースも増えてきました。これからの性教育では若い時から一人一人のライフ・プランニングを立てる~それは子供を持つか持たないかから始まり、女性だけではなくパートナーとなる者も共にプランニングする~という意識を促すことも必要と考えられます(2023.9.1)。


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