今年もあと4分の一を残すのみとなりました・・・
先月は予報通り、残暑の厳しい一月になりました。そのようななか、線状降水帯による局地的豪雨がもたらされるときもあり、県内の数か所でも冠水を来した地域もありました。三重県では地下駐車場が冠水して200台余が水浸しになる事故もありましたが、当地には地下駐車場なんてありませんけど、これから台風シーズンを迎え、大雨対策は抜かりなく行いたいものです。
さて昨年の今頃はHPVワクチンの未施行世代に対する「キャッチアップ接種」の駆け込み需要が目立つ時期でした。年度が替わり定期接種に移行しましたが、駆け込み需要の賑わいもなく現在は「雨だれ接種」の状況です。一方以前本稿でお話しした妊婦さんへのRSウイルスワクチンの接種は、市町村補助がなされたことにより徐々にですが希望者も増えてきており、また今月の20日からはおなじみ?のインフルエンザの予防接種も始まります。同時に新型コロナウイルスワクチンの接種も始まりますが、これについては自費負担になってから需要がなかなかつかめません。
近々自民党の新総裁も決まるとのことですが、医療・・・特に昨今ではワクチン行政が「政争の具」にされることが少なくありません。事実HPVワクチンについてはキャッチアップ接種のもととなる「空白の8年間」がありましたし、新型コロナウイルスワクチンについてもmRNAワクチンという新たな方法によるワクチンの大量購入・接種について問題を提起している議員さんもいらっしゃいました。しかし早くからHPVワクチンを導入している国々においては子宮頸がんが制圧の方向に向かっているという事実、また集団免疫を目指した英国が結果的にワクチン接種を行っても、当初より行動制限とワクチン接種を勧奨した日本より5倍以上の死者数(英国3,44.1vs日本601/100万人)となったことをみると、「ワクチン接種は悪である」という論拠は成り立たないことは、お分かりいただけるのではないかと思います。
先のHPVワクチンのキャッチアップ接種について正式なデータはまだ出ていないのですが、対象人口約680万人のうち1回でも接種された方は59%、本年5月末までに3回接種を完遂された方は34%とのことでした。また同時期に小学校6年生から高校1年生相当への定期接種の初回接種率は22.1%で都道府県別の接種率を見ると、①山形県(37.6%)、②秋田県(32.0%)、③青森県(31.6%)で、高校1年生に限ってみても①山形県(67.3%)、②秋田県(57.1%)、③青森県(55.3%)と秋田県は全国2位の高い接種率でした。でも日常診療で現在もその高い接種率が維持されているかと問われると「?」であり、今後も引き続きワクチン接種の啓蒙が必要だと再認識するところです。
一方で男子生徒へのHPVワクチンの定期接種化への働き掛けも少しずつ動き始めています。既にオーストラリアでは男女ともに定期接種となっており、現在本邦における子宮頸がんの罹患率は人口10万人に対し16.6ですが、両性への定期接種によりオーストラリアでは2028年には10万人対4未満、2066年には1未満になる・・・10万人対4未満の罹患率のがんを「希少がん」といいますが、オーストラリアでは子宮頸がんがあと3年で希少がん、またあと40年程で世界に先駆けて子宮頸がんを撲滅する国になると考えられています。
男子へのHPVワクチン接種は肛門がんや中咽頭がんの感染予防効果が期待できるといわれています。しかし罹患率を見ると肛門がんは人口10万人対6例、中咽頭がんは1.2例(男性)とほぼ希少がんに相当する少なさで、男性のこれらのがんの予防ということを考えると子宮頸がんに比べワクチン接種の費用対効果が高いとは言えません。
現在子宮頸がん検診が新たな局面を迎えており、従来の細胞診からHPV検査単独法への移行が試みられております。HPV検査単独法の対象年齢は30歳から60歳で、性交経験が一度もないものは除外対象になっています。先のHPVワクチンの接種対象は小学校6年生相当以上であり、この年齢未満では性交は未経験と考えられるからです。以上HPV感染の契機には性交渉が前提となりますので、女性だけにワクチンを施行してもHPVの感染契機は残ります。男女ともにHPVワクチンを接種するというのは男性の希少がんの予防というよりは、女性の子宮頸がんの制圧を目指すのに重要な施策といえましょう。現在日本では年間約1万人が子宮頸がんに罹患し3,000人程が死亡しています・・・これは先進国G7でワースト1です。本方においてがん子宮頸がんを撲滅するためには、いまこそ男女両性へのワクチン定期接種という大鉈を振るう時期に来ているのではないでしょうか?(2025.10.1)