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院長のカプリチョーザ

新年度 4月です。

 先月入った早々の暴風雪は、すさまじいものがありました。「開院から」とまではいきませんが、10年以上当院の道しるべとなっておりました野立看板が強風でぶっ飛んでしまいました・・・強烈な春の嵐のおかげか、この暴風雪以降寒波は緩んで急速な春の訪れとなっております。高知では史上最速で桜が満開になったとのこと、当地でも本格的な春の訪れが待ち遠しい今日この頃です。

 当ホームページではトップページに市在宅当番医の私の担当日を記載しています。ほとんどが時間外に自分のクリニックで行うのですが、大体2か月に1回は日曜日にかづの厚生病院に出向いて診療応援をさせてもらっています。地域の中核病院ですから、休日といえども途切れることなく患者さんはいらっしゃいます。救急車で搬送される患者さんは常勤の先生に診察をお願いし、私は主に独歩で受診される比較的軽症と思われる患者さんの診察をしております。それでもその陰に重篤な疾患が隠れていないかというのは、常に気にかかるところです。

 皆さんも「心筋梗塞」という病気が非常に重篤な病気であるということは、十分ご承知のことと思います。心臓自身を養う血管が目詰まりすることで、心臓への酸素や栄養分が行き渡らなくなり、生命に関わることになる病気です。ただこの「心筋梗塞」の診断はちょっと厄介で、心臓の病気だからと言って必ずしも「胸が痛い」となるわけではありません。初期には胃のあたりの痛みとか左肩の凝り、はては歯痛やあごの痛みからという場合もあります。非常に重篤な胸部疾患であるにもかかわらず、3割ほどが胸とは関係のない症状がでる・・・心筋梗塞の診断を困難にさせている理由がここにあります。

 一方で食後に突然の胸の痛みを訴えるのにもかかわらず、全く検査に引っかからないことがあります。実は急いで食事をしたため、あまりかまずに飲み込んだ食べ物が食道にひっかっかって痛みの原因となっているのです。この状態を「ステーキハウス症候群(steakehouse syndrome)」と言われています。米国でも大食いや早食い自慢があるのでしょうね・・・噛み切りにくいステーキをあまり噛まずに飲み込んでしまって、このような状態がステーキハウスで多く起こることから命名されているのでしょう。

 非常に美味しそうな病名ですが、医学用語には食べ物に例えられたものが時々みられます、菌体の塊がそう見えるので「ブドウ球菌」、病状の外見が似ているので「いちご状血管腫」、大腸がんのレントゲン所見がリンゴの芯のように狭まっていることから「apple core sign」、また消化器感染症であるコレラの下痢は「米のとぎ汁様」なんて例えられています。

 では私の従事している産婦人科でこのようなものがないかと見渡すと・・・ありました!・・・「卵巣チョコレート嚢腫」です!「嚢腫」というのは液体が貯留したものの医学用語ですが、文字通りに卵巣に溶けたチョコレートのような液体が貯留するのです。当然ですがチョコレートではありません。では茶色くどろっとした液体の本体は何でしょう?

 その本体は「古くなった血液」です。子宮内膜症という病気は本来子宮の内側にのみ存在する「子宮内膜(もしくはその類似組織)」が、子宮内以外にできる病気です。子宮内膜は女性ホルモンの影響を受けて月経の源となりますが、「支店」である内膜症組織でも全身をめぐる女性ホルモンの影響を受けて出血が起こります。卵巣の子宮内膜症組織からの内出血が溜りに溜まったものが「卵巣チョコレート嚢腫」なのです。

 今回は医学用語と食べ物との絡みの話で、「卵巣チョコレート嚢腫」のさわりしかお話しできませんでした。しかしこの「卵巣チョコレート嚢腫」は婦人科臨床にとって非常に厄介な「難敵」なのですが、今回は時間となりましたので、続きは次回の本稿とさせていただきます(今回の本稿は食思の減退する内容を含んでいましたことをお詫び申し上げます)(2018.4.1)。



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