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院長のカプリチョーザ

みなさん、こんにちは
 
 ・・・本当に雪の少ない冬です。天気予報でも1日まると「雪マーク」がつく日は、ほとんどありませんでした。一日中気温が氷点下になる真冬日になる日もほとんどないため、地熱が保たれているせいか、雪が降ってもなかなか積もることができない様子です。例年小正月行事までは寒さが厳しいのですが、この状況を見ると今年は本当に春が来るのが早そうです。

 さて以前の本稿でもお話ししましたが、5年ほど前から性感染症である梅毒の流行が確認され、20代を中心に女性の梅毒報告数が増え続けています。梅毒はそれを診察した医師が7日以内に届け出を求められる「全数報告対象感染症」ですが、若年女性の患者数の増加を踏まえ、昨年より届出の際に妊娠の有無や直近6か月以内の性風俗産業の従事歴が、新たに項目して追加されました。この期間に届け出られた女性梅毒症例は1,117例で、このうち「妊娠症例」は106例でした。年齢別では、10歳代が10例(9%)、20歳代が68例(64%)、30歳代が27例(26%)、40歳代が1例(1%)であり、診断週数は19週までが74例(74%)、20週以降が26例(26%)でした。また全体の72%の76例が目立った症状のない「無症候梅毒」で、性風俗産業従事歴については、「あり」が5例(8%)、「なし」が56例(52%)で45例は不明という結果でした。

 女性梅毒患者さんの約10人に一人が妊婦さんであったというのは、驚くべき結果かもしれません。通常妊娠4か月までの初回健診において公費負担により感染症検査の一環として梅毒を全妊婦さんに対して調べますので、梅毒と診断された妊婦さんの7割以上が「無症候梅毒」として見つかったということは、妊婦健診において梅毒のスクリーニングが有効に機能しているといえましょう。しかしながら妊娠20週以降で梅毒の診断を受けた妊婦さんが4分の一を占めるということは、何らかの事情で妊婦健診の受診が遅れ初期スクリーニングが受けられなかったケースかもしれませんが、初期の梅毒スクリーニングののちに性交渉を再開してパートナーから感染したとも考えられます。いずれにしても胎盤を介して赤ちゃんが梅毒に感染してしまう「先天梅毒」のリスクを高めることになりかねません。

 妊娠中に梅毒が診断され適切に治療されていないと、おなかの中で赤ちゃんが感染して「先天梅毒」を発症してしまいます。女性の梅毒患者数の増加に伴い、先天梅毒症例の報告も多くなってきていますが、一方で数字として出てはいませんが、梅毒感染が分かった時点で妊娠中絶を選択している例もあるでしょう。確かに母体が無治療の場合、先天梅毒の発症のリスクは約40%と報告されていますが、適切な抗生物質での治療により発症を回避することが可能ですので、早急な中絶の決断を下さないようにして頂きたいです。

 妊娠梅毒症例の約4分の3は20歳未満で占められており、また性風俗産業従事歴の回答では半数近い45例が「不明」と回答していました。その背景に出会い系サイトやSNSを介して不特定多数と性交渉を持つという、近年の性風俗・性産業の多様化に起因していることが考えられます。先に述べた先天梅毒の撲滅には初期だけでなく妊娠中期や後期に再度検査を行うという医療側からの強い介入も有効でしょうが、「妊娠したからこそコンドームを使用する」という個人レベルでの意識改革がことさら重要です。今回は妊婦梅毒にスポットを当てましたが、近年の性意識の低下、および性産業に対するハードルの低下と裾野の広がりを改めることが、梅毒をはじめとする性感染症を抑制するファースト・アクションではないでしょうか(2020.2.1)。


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