弥生の三月です
昨年末の長期予報では、1月までは例年よりも降雪量が多く、2月には例年よりも高めの気温で推移・・・とありましたが、「事実は小説より奇なり」・・・先月は「今シーズンの最強寒波」が何度も「長期に居座る」日が続き、スキーよりスケートがメインの帯広で1日に120cmの降雪があったり、隣の青森県の酸ヶ湯では12年ぶりに積雪500cmを超えたりと、大雪の1ケ月でした。このような大雪の状況でしたので、先月催された国スポも無事閉会したようです。もう3月ですので、後は粛々と雪解けを待ちたいと思います。
さて年度末を迎え、国としては来年度の予算を審議しておりましたが、その中で「高額療養費制度の負担上限引き上げ」というものが物議を醸しています。総理の出身県の隣の島根県知事は「国家的殺人未遂だ」との強い批判をしています。一県の首長がそこまで言ってしまう「高額療養費制度の自己負担引き上げ」について今回は取り上げたいと思います。
そもそもの「高額療養費制度」とはどのような制度なのでしょう?私たちが医療機関で診療・治療を受けますと、多くの場合医療費の総額の3割を窓口で支払い、残りの7割が国保(=国民健康保険)や協会けんぽ(=協会健康保険 旧:社保)などから給付されます。ただ窓口支払いはいかなる場合も総額の3割を支払うわけではなく、医療機関や薬局の窓口で一か月に支払った総額(入院時の食費負担や差額ベッド代等は含まず)が上限額を超えた場合に、その超えた金額が支給されるのが「高額療養費制度」です。この「上限額」は一律定額というわけではなく、受診者の年齢や所得を参考に算出されます。例えば年収370万~770万円までの70歳の場合で窓口自己負担が3割の方では、ひとつきの外来医療費の総額が100万円の場合、窓口負担は30万円となります。でも年齢・所得による規定値80,100円に(総額医療費-267,000)の1%を加えた87,430円が「自己負担限度額」となり、差額の30万から87,430円を差し引いた212,570円が「高額療養費」として支給されることになります(年齢や所得により異なりますので、詳しくはhttps://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf をご覧ください)。
以上の「高額療養費」について、今年の8月と再来年の8月の2段階で「自己負担限度額」を引き上げる案が現在問題となっているのです。まず今年の8月の時点で年収によって自己負担額を5~15%を引き上げ、さらに現在収入の分類が5段階になっているところを、2027年8月の改正には13段階に細分化した上でさらに引き上げる案なのです。これによると月額自己負担限度額が、年収370万の方は現行80,100円が88,200円と増えますが再来年も88,200円に据え置かれます。しかし年収950万の方は現行167,400円が188,400円に引き上げられ、さらに再来年には220,500円の負担増となります。
「高額療養費」を受給するほどの疾患であると、それなりの身体的負担が高い状況であることは容易に想像されるでしょう。それまで普通に働いていたとしても、治療や療養のため時短勤務や休職が多くなれば、罹患する前と同額の給与が支払われるとは限りません。また年末に医療費控除が受けられるといっても、交通費など受診に関わる出費の問題もあるでしょう。この30年の間に所得の中央値は550万円から372万円に減少する一方、月当たりの社会保険料は3.5万円から6.7万円とほぼ倍増しています。この上さらに「高額療養費」の「自己負担限度額」を引き上げることは、社会的セーフティーネットがより脆弱になる心配があります。
少子高齢化が進行することで、国家予算における社会保障費の占める割合はますます増大することは明らかです。これ以上「保険料を上げる」「高額療養費の自己負担限度額を引き上げる」ことは、所得の低下が改善されない現在では、もう限界に近いかもしれません。となると家計の収支と同じように私たち一人一人が「社会保障費の無駄遣い」を控えるよう心掛けるのが肝要になります。例えば、①検診の有効活用:早期発見で早期受診 積極的な検診受診と検診結果の放置をしない、②不必要な時間外受診を避ける:時間外受診は正規の受診より費用がかさみます。3日前、果ては1週間以上前からの不調で時間外受診する方もおられるので、速やかな時間内受診をお勧めします。以上は国内の問題ですが、メディアでは日本の生活保護制度や国民皆保険制度が一部の外国人に「利(悪)用」されている事例も報告されています。本邦の社会保障費はきちんと税金を納めた方が適切な恩恵を受けられるよう配慮し「無駄遣い」を控えていただきたいものです(2025.3.1)。