お決まりの文言ですが・・・今年も師走を迎えました。
数日で溶けはしましたが、先月中旬にはしっかりとした雪景色をもたらした冬将軍が今年度初めて襲来しました。急に冷え込みがきつくなりましたが、当地では回数は減っても相変わらずクマの目撃情報が後を絶ちません。今年度は餌となるブナの実が大凶作のため、うまく冬眠できず冬場になってもアーバンベアが出没するかもしれません。こういうニュースがあると「じゃあ、ヒトの食べ残しを山にばらまけばいい」という解決策?なるものを目にしますが、一度味の濃いヒトの食事に慣れてしまえば、もうブナの実なんて見向きしなくなり、確実に残飯を得られる人里により下りてくることになるでしょう。捕獲するための箱罠も不足気味で、捕獲した箱罠は数百キロにもなるため、自衛官の協力がなければ地元民での対応が限界に来ています。。。これから発表されますが、今年の漢字は「熊」一択と私の心の中では決まっています。
さて全県的にインフルエンザの流行が猛威を振るっており、当地でも先月までに数校で学級閉鎖や学年閉鎖となっておりました。当院でも現時点で昨年比10%強のワクチン接種数となっております。流行が早いせいか、既に罹患された方には、もうワクチンをしなくていいとお考えの方もいらっしゃるようです。でも例年シーズン後半には現在のA型からB型が増加してくるため、かかったとは言っても予防注射はしっかりなさっておいてください。
引き続きワクチンの話になりますが、先月末に「妊婦に対するRSウイルスワクチンが新年度から定期接種となる」というニュースが飛び込んできました。以前の本稿でもお話ししましたが、RSウイルスというのは2歳までにほぼ100%の児が感染する「夏かぜ」の代表的なウイルスです。でも生後6か月以内の初感染では重症化したり、突然死につながる無呼吸発作を起こしたりすることもあります。さらに生後1か月未満では典型的な呼吸器症状を示さないこともあることから、診断が遅れ重症化に拍車がかかるともいわれています。乳児のRSウイルス感染症を予防するのに、昨年5月にアブリスボ®というワクチンが発売されました。これは妊娠24週から36週までに筋肉注射をすることで、妊婦さんが作った免疫(抗体)を胎児に渡して生まれてからの感染を予防するというものです。今までは希望の妊婦さんに行う「任意接種」という形式で、本年度より鹿角市・小坂町では市町村独自の補助が希望する妊婦さんになされるようになりました。しかし接種代金の半額の15,000円が補助されるといっても、元々が高額であるため、接種を希望する妊婦さんは当院でも2割もいないのが現状です。
しかし次年度からは法律に基づいて市区町村が主体となって実施する「定期接種」の扱いになります。定期接種によって予防する感染症には2種類あり、5種混合ワクチンに代表される集団予防を目的とする感染症(A類疾病)と帯状疱疹ワクチンのように個人予防を目的とする感染症(B類疾病)に分けられ、RSウイルスワクチンはA類扱いとなります。定期接種となるとほとんどのワクチンで接種費用は公費となりますので、該当する妊婦さんは次年度になったら接種について積極的にお考えいただきたいと思います。
「妊婦に対するRSウイルスワクチンの定期接種」を耳にし、高市新政権の所信表明にあった「攻めの予防医療」を思い出したところです。このワクチン接種が普及すると医療費の低減や小児医療従事者への負担軽減が図られることでしょう。ここ数年で効果は高いが非常に高額な分子標的薬等が多数販売されている一方、外科医不足で手術に数か月待ちという話も耳にします。高額な薬価・人材資源の疲弊で、日本の医療は崩壊に直面しているといっても過言ではありません。政府の打ち出した「攻めの予防医療」というのは、単に検診受診率を上げることだけではないと思います。検診で異常があれば受診するのはもちろん、毎年の検診データを自己管理し無症状のうちに医療機関に受診する。また軽微な病状であれば売薬で経過を見る(いまは医療機関で処方された薬剤も「スイッチOTC薬」として薬局で購入できるものもあります)方向にさらに進むことでしょう。
産婦人科的には緊急避妊薬が「スイッチOTC薬」として薬局で購入可能な方向に進んでいます。敷居の高い産婦人科を受診することなく、アクセスのよい薬局で購入できるというのは、利用者にとっての利便性はかなり向上することでしょう。しかしながら日常診療で緊急避妊薬の処方を希望された方に、まれに既に妊娠されている方もいらっしゃいました(当然避妊希望の性交渉以前に妊娠したていたものです)。政府の打ち出す「攻めの予防医療」の流れに乗るためには、自分自身の健康への関心=ヘルス・リテラシーを高める努力も求められることになると思われます。本稿も含め、今年もご愛読ありがとうございました。皆様よいお年をお迎えください(2025.12.1)。