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院長のカプリチョーザ

み なさん、こんにちは

 先月太平洋側ではここかしこで大雨に見舞われましたが、当地においてはようやく過ごしやすい気温になってきました。長期予報では今年は観測史上最も強い「スーパーエルニーニョ」の発生が予測されているとのことです。「スーパーエルニーニョ」の冬は、日本では平年より気温が高くなりやすく、太平洋側は雪が少なめ、日本海側は降雪・降水が多くなる傾向があり、一時的な強い寒気で大雪となるリスクもあるとのことです。大雪でも気温が低ければ軽やかに除雪ができるのですが、予報を聞いているだけでもうすでに腰に来そうで、、、今年の冬も一筋縄ではいかない感じですね。

 最近はむしろ肌寒さで起こされることがありますが、気温に変わらぬ朝のルーティンとしてメールとFAXの整理確認があります。メールは医療情報系のものが、またFAXは人材派遣会社や医療材料卸の広告・宣伝が多いのですが、それに交じって「マンジャロ!即納できます」といったDMも入ってきます。当院が産婦人科・内科を掲げているせいでしょうか、「医療ダイエット」で最近頻用される糖尿病治療薬であるマンジャロ・・・その販促DMです。話では日本国内はおろか、自国より安価で入手できるとのことで、マンジャロによる医療ダイエット目的に来日される外国人もいらっしゃるとのことです。自身の体型からもマンジャロには興味がないわけではないのですが、冷静にみてみたいと思います。

 マンジャロの一般名はチルゼパチドといい、商品名として肥満症薬としては「ゼップバウンド」、糖尿病薬として「マンジャロ」として販売されています。元来GLP-1受容体作動薬という糖尿病の薬ですから血糖を下げるのはもちろんですが、胃からの食物の排出を遅らせることで満腹感を増加させたり、食欲中枢に働きかけ食事量を抑制したりすることで体重減少に働いたりします。保険診療としてマンジャロは糖尿病薬なので当然使用は糖尿病の患者さんになりますが、ゼップバウンドを肥満症薬として使用する場合、下記の3つの厳格な適応があります。①BMI35以上の高度肥満、もしくはBMI27以上で特定の合併症がある場合(婦人科的には月経異常や不妊症)、②6か月以上食事療法に取り組んだ方(2か月ごとの栄養指導を受ける必要がある)、③医療機関が教育研修施設である・・・この3つがすべてそろわなければ保険診療としてゼップバウンドの処方ができず、そして条件3の時点で当院のようなクリニックでゼップバウンドによる肥満症治療は不可能であることはご理解できると思います。

 なので医療ダイエットのほとんどが糖尿病薬のマンジャロを自費診療として処方しています。糖尿病でマンジャロの処方を受ける場合5mg×4本(マンジャロは注射薬で自己注射します)の1か月分として3割負担で約4,618円ですが、自費診療の場合は当然健康保険が適応になりませんので、施設にもよりますがほぼ保険診療の10倍の価格で販売されています。多くの場合保険診療上の適応を満たさないケースがほとんどですので、前述のように薬剤費を含む医療費は全額自己負担ですし、その使用においては自己責任となります。実際BMI<25の適応外使用で低栄養と脱水で緊急搬送されたケースもあり、また別の例では自費診療という「かかりつけ医」がいないため、数か所から緊急搬送の受け入れを断られ対応に苦慮した例もあったとのことでした。

 本邦において肥満症の患者29名にチルゼパチドを72週間使用した論文を見ますと、、75.9%が食欲減退を感じ、62.1%が体重減少のよい感情を抱き、75.9%が治療継続する意思を示した。 さらに58.6%が新しい服を選べる喜びを感じ、51.7%が体の動きが軽くなったと感じたとのことでした。一方で治療終了後51.7%が食事行動の変化を維持していましたが、44.8%が運動等を維持できず、65.5%が食欲のコントロールが困難であるため、約75%が今後も薬物療法を継続したいと希望したとのことでした。以上から医療ダイエットはというのは、「我慢」や「努力」を要せず体重減少を図れる「理想の方法」と言えるかもしれません。でも「痩身」が第一義になってしまい「薬は毒にもなる」意識が薄れていること、また一度医療ダイエットにはまると、通常の体重管理に戻れず医療ダイエットの沼に沈んでしまう危惧がありそうです。非常に魅惑的な薬かもしれませんが、やはり薬は適応を遵守し使用するのが当然ですが最善かもしれませんね(2026.10.1)。

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