みなさん、こんにちは
10月を迎えても、なかなか最高気温が20度を下回らない日々が続きそうです。6月・10月は衣替えの時期ですが、日中の気温を考えると夏服の着用期間が4か月以上になるので、「衣替え」という言葉は残ってもその時期的や基幹的な意味合いは近年ではかなり変わり果てたんじゃないかなと思うところです。
こんな感じで言葉には時代の推移とともに使われなくなった「死語」もありますが、時代の変遷とともに出てきた「造語」もあります。もう少しすると「2024流行語大賞」が発表されます。今年は何でしょうね?・・・一時「蛙化現象(=一般には相手の些細な行動や仕草で、好きな人を嫌いになってしまう現象・・・と認識されているようです)」をよく耳に目にしましたけど、どうなるのでしょう?
新語・造語は日本語の場合ひらがな・カタカナ・漢字の組み合わせで何が出てくるかわかりませんが、英語の場合はアルファベット・・・それも今までの単語が組み合わさって新たな意味を持つ「造語」が作られるケースが多いようで、ITの普及とともに数多く生まれています。例えば「資料」や「事実」の意味がある「data」と「基礎」や「土台」の意味がある「base」が組み合わさって「整理集積された情報 大量のデータを一定の規則に従って蓄積し、一元的に管理できるようにしたもの」という意味の「database」という単語が生まれたのはコンピューター黎明期の1960年代です。私たち日本人的には「データ」といえば乱雑な?数値的な資料を、また「ベースbase」と言えば基盤、あるいは野球やガンダム、所ジョージさんを思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか?つまり母国語を英語にしていない私たちでも、単に「data」や「base」だけで「database」と捉える方はいらっしゃらないと思います。
先月までお話ししていました子宮頸がんワクチン・・・このワクチンの予防機序はHPVウイルスに含まれるたんぱく質「L1」に対して接種により抗体を作ってがんを防ぐことにあります。この「L1」タンパク質は人間の脳などにあるたんぱく質と分子レベルで類似しているため、HPVワクチン接種でできた抗体が脳などにも結合して器官の障害が生じるとする仮説が副反応の根拠とされていました。でも近畿大学の研究で、どうもその副反応の仮説は否定されるようです。
先に述べたように「data」や「base」だけで「database」と理解されないように、「L1タンパク質」=「database」と仮定すると、HPVワクチンは「database」を一塊として認識し抗体を作るのであって、「data」や「base」といった一部分までを認識してまで抗体を作りません。健常人のたんぱく質の中には「data」や「base」といった「database」の一部分があるので、HPVワクチンを接種することで「data」や「base」の一部分に対しても抗体が産生され健常組織を傷害する・・・これが副反応の仮説となっていたのですが、接種してもそれら一部分に対して抗体は産生されないので、この仮説は無理があるということです(専門用語でエピトープとは、抗原蛋白質のうち抗体が結合する部位のことをいいます。模式図のヒトたんぱくXやYエピトープは「data」や「base」にHPV1エピトープは「database」に例えました)。
子宮頸がんワクチンについて今まで軽重な副作用が報告され、そのため接種再開にかなりの時間を要したのは皆さまも十分存じ上げているところでしょう。子宮頸部異形成の発生を有意に抑えているデータは出ているとはいえ、皆さんが十分納得できるような日本における子宮頸がんの発生抑制のデータが得られるほど接種経験がないのも事実です。でも誤った仮説から導き出される不安をあおる情報を、証拠を提示した上で否定し安心していただくことが医学を含めた科学の役目の一つと考えるところです(2024.10.1)。